🥓31〉─1─モンスターペアレントの台頭と未婚化の急増。子の結婚に干渉する毒親。〜No.146No.147No.148No.149 ㉕ 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
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 1970年代、成長期の子供に夜尿症・喘息・腹痛などの症状が発症するのは、母原病が原因であると言われ社会問題になった。
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 日本の少子高齢化による人口激減は、人口減少に悩む諸外国とは違う理由がある。
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 2020年3月6日 msnニュース RESIDENT Online「2人に1人が「子の結婚に干渉する」という"毒親"社会ニッポン
 天野 馨南子
 © PRESIDENT Online ※写真はイメージです
 なぜ結婚しない人が増えているのか。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏は「2人に1人の親が子どもの結婚に干渉するつもりと回答している。日本の未婚化問題の背景には、他国から見るとかなり独特な親子関係が潜んでいる」という――。
 ※本稿は、天野馨南子『データで読み解く「生涯独身社会」』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
 モンスターペアレントの台頭と未婚化の急増
 親の過干渉といえば「モンスターペアレント」という言葉が頭に浮かぶ方も多いかもしれません。確認までに、モンスターペアレントとは、子どもの教育・生育環境に関して、教師や保育者や自治体などに過度のクレームを持ち込んで圧力をかける親のことです。
私はこのモンスターペアレントの台頭と未婚化急増はリンクしている可能性が高い事象同士なのではないかと考えてみました。これをデータとともに見てみることにします。まず、18~34歳の男女の非交際化についてのグラフです【図表1】。
 社会学者の指摘などからは、モンスターペアレントの存在が目立ち始めたのは1990年代後半であるといわれています。そして、社会問題化したモンスターペアレントに関する書籍が多数出版されるようになったのが2007年ごろからです。
 ある問題が書籍化されるほど注目されるようになるまでには多少の時差がありますので、2007年の少し前にモンスターペアレントの問題が社会で深刻化したと考えられます。
グラフからわかるように、日本で若い未婚者の非交際化が進み始めたのは、2005年ごろからのことです。ちょうどモンスターペアレント問題が深刻化したであろう時期に一致します。
 2つの事象の発生推移からは、親の過干渉が深刻化した時期あたりから非交際化が上昇し始めた様子がうかがえます。「わが子可愛さ」のあまり、時に学校や教育委員会にまで怒鳴り込んでいく親たち――。そんなモンスターペアレントが、わが子の交際関係についても「あなたのためなのよ」とばかりに過剰に口出しする姿は、想像に難くありません。
 親による過干渉の「長期化」
 過干渉な親たちの姿について、もう一つ興味深いデータがあります。彼らが過干渉を行使するのは子どもが学生のうちまでにとどまらない、というデータです。実は社会人の入り口の就職活動でも、親世代による子どもへの干渉が強まりつつある傾向がデータからは示唆されています。
 【図表2】では、親世代が子世代の就職活動にどれくらい関与したかが示されています。比較対象として、親世代が自ら就職活動をしていた際に、親のそのまた親世代からどれだけ関与されたかについても調査結果が示されています。
 親世代が昔、自分たちの親世代から就職について関与された割合は、男女とも3割を切っています。ところが、その親世代が自分たちの子に関与した割合は、10ポイント以上も高い約4割となっています。実に5人に2人の子どもが、就職を決める際に親から干渉を受けているのです。
 10ポイントもの差がついた理由として、一つは育った時代背景があると思われます。親世代(2016年に35~59歳)は、1957~1981年生まれになります。親世代の親(祖父母世代)は、まさに第二次世界大戦を挟む混乱期に自らの子ども、すなわち調査対象となた親世代を授かっています(25歳で出産とすると、1932~1956年に出産)。
 つまり、子どもに干渉しているどころではなかった世界大戦前後時代に生きていたのが祖父母世代であり、少なからずそのことで、自らの子ども時代に寂しい思いをしてきたであろう世代が親世代なのです。
 就活相談でも親同席の三者面談
 そのように考えると、「自分が親になったら子どもにきちんと構ってあげて、もっと甘やかしてあげたい。自分は、自らの親にそうしてほしかったから。物にも不自由させたくない」という考えに至ってもおかしくはありません。
 裏を返せば、それほど祖父母世代の親世代への関わり方が歴史的に見て異常だった(世界大戦の影響を色濃く受けた時代)のです。そんな、歴史的に見て特異な子ども時代を過ごしたことの反動がデータ上、親世代による子世代への過干渉を生んだ可能性はありうると思います。
 仕事上、大学の先生ともお話しする機会も多いのですが、「就職相談で親・子・先生の三者面談をする」という話をよく聞きます。「自分たちが学生だった頃には親が就職相談に関与するということはなかったので、正直戸惑っている」と語る先生も少なくありません。
 【図表2】からは、親世代の子どもへの関与の割合が父親と母親とで違っていることもわかります。父親よりも母親のほうが干渉割合が高い傾向にあり、娘に対しては14ポイント、息子に対しては5ポイント、母親の関与が父親を上回っています。
 ここで、母親の干渉度合いの強さについて一つ懸念されることがあります。それは、過干渉な母親の存在が、夫婦の役割について時代遅れな価値観を子どもにもたらしかねないということです。
 時代が変わっても自分の「理想」を押しつける
 夫婦の働き方はこの20~30年で大きく変わりました。なお、【図表2】のデータで調査対象となっている子世代(2016年時点で中学生から29歳)に対して、親世代(2016年時点で35~59歳)が結婚したのは今から20~30年前です。
 ここ20~30年間における夫婦の働き方の変化を示した【図表3】を見てください。グラフは、非農林業における専業主婦世帯と共働き世帯の割合を示しています(農林業は原則として、家族経営・共働きが前提なのでデータには含まれない)。
 親世代が結婚・出産したであろう20~30年前の1990年あたりは、ちょうど専業主婦世帯がマジョリティだった時代から、共働き世帯と専業主婦世帯が拮抗する時代へと移行した頃でした。その後、共働き世帯割合が専業主婦世帯割合を追い抜き、2017年で65%の世帯が共働き世帯となっています。
 また、厚生労働省国民生活基礎調査によれば、18歳未満の子どもを持つ母親に限定すると、その7割が仕事を持っています。このように夫婦の働き方が大きく変化してきているなかで、親世代が自らの時代価値観を捨てられない場合、子世代の実情やトレンドとは反する「常識という思込み」を子どもに押しつけるリスクが生じます。
子どもの職業選択やライフデザインがゆがむ可能性
 専業主婦が圧倒的だった時代の常識を捨てられない母親が子どもの就職に干渉しすぎるケースでは、子どもの職業選択やライフデザインが実体から離れてゆがむ可能性が高くなります。
 たとえば息子に対して、「パパのように大黒柱としてしっかり一家を養いなさい(それがカッコいい夫の姿)」「パパよりも就職偏差値の高い会社を目指しなさい(だってあなたは大卒だもの)」と、過剰な期待を抱く。
 娘に対しては、「女は子どもを産むのだから、仕事を頑張るのはそこそこにして、稼ぎのいい夫に養ってもらいなさい。それが女の幸せよ(だってママがそうだから)」「どうせ結婚・出産したら仕事をやめるかセーブするのだから、そこまで頑張らなくてもいいわよ(ママもそうしてあなたを育ててあげたのよ)」と、法整備を含む社会変化という「前提条件の変化」をまったく考慮しない「自らが歩んだライフコースの理想化と押しつけ」を行なったりしかねません。
 社会人になっても続く親の過干渉
 データで見てきた“過干渉親”の影響は、就職活動だけにとどまりません。無事に就職し、社会人となってからも、まだまだ親からの干渉は終わらないということを示唆するデータがあります。
 【図表4】によれば、子どもが社会人になっても「自分の近くにいてほしい」と回答した親が6割弱にも達します。息子については両親とも5割以上が、娘については6割以上が、就職後も「自分の近くにいること」を望んでいます。
 日本における未婚男女の親子同居率は、ほかの先進諸国に比べて非常に高くなっています。「親の近くで働いてほしい」という回答率の高さは、少なからず親子同居率の高さにも影響しているかもしれません。
 就職後も近くにいて欲しいと思う親の割合と、日本の未婚者の親子同居率が実はほぼ一致しています。これは非常に興味深い結果だと思います。
心配という名の「過剰な支配」
 次に、【図表5】ですが、こちらは子どもの結婚活動に対してどれだけ親が関与すると回答しているかを示したものです。
 子どもの相手選びに関与するとしている親は、父親も母親もほぼ半分にのぼることがデータからはわかります。およそ2人に1人の親が子どもの結婚に干渉するつもりでいる、という結果です。
 このように子どもが社会人になってからも、その行動に干渉し続ける親がかなり多いことがデータからは見えてきます。良く言えば「過剰な心配」ともいえますが、悪く言えば「過剰な支配」、もっと言えば子どもを所有物、まるでペット扱いしているようにも見えるデータです。
 「子どもだけに結婚を決めさせるのは心配だ」という親心は理解できなくもありません。しかし、そもそも論でいうならば、その子が成人するまでのステージで、成人後に自力でライフデザインの選択が可能なしっかりとした判断力を持った子どもに育てるべき、という視点が欠落している考えであるともいえます。
 本来ならば、子どもが「独り立ちできること」をサポートするのが親の役目であるはずです。いつまでたっても自分ひとりでは人間関係の構築や意思決定もままならないような子どもに育てて、「心配、心配」と支援し続けるのが親の役目ではありません。
 “毒親”が日本の未婚化を加速させる
 以上のデータからは、モンスターペアレントに象徴されるような過干渉親がかなり強く、ここ数年、ネット上で「子ども部屋独身」と指摘されるようになった日本の未婚者の姿に影響している可能性の高さを垣間見ていただけたのではないかと思います。
 日本の未婚化問題には、他の先進国から見るとかなり独特な親子関係のあり方の影響が非常に色濃く投影されているように思います。モンスターペアレントに象徴されるような過干渉な親は、最近よくメディアなどでも話題になる“毒親”とも言えます。
 日本の未婚化という現象もこの毒親が加速させている側面があることについては、否めないように思います。“毒親”という言葉は、元々は子どもに対して暴力的・精神的に虐待を加える親のことですが、広義には「子どもをスポイルする親」「自らの価値観で子どもの人生を支配しようとする親」も当てはまると思います。
 子どもの成長を阻む“毒親
 暴力的・精神的虐待をする親であれ、意識的/無意識的に自らの人生観どおりに子どもの人生を支配しようとする親であれ、両者に共通するのは、子どもが自分の頭でライフデザインを考え、自分自身の感情や喜びを大切にし、自分で行動を起こし、その責任も自分でとる――子ども自身が挑戦と失敗から自ら学び、さらに成長していくことを阻んでいる、という点です。
 “毒親”によって親に与えられた以外の価値観を奪われた、または親以外の他者と融合することが困難になった子どもたちが、パートナーとの交際や結婚の希望を持ちつつも、「子ども部屋」にたたずみ続けている――。毒親問題は、日本の未婚化問題を考察するうえで、看過することのできない大きな問題の一つだと思います。
 ---------- 天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員 東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年、日本生命保険相互会社入社。99年から同社シンクタンクに出向。専門分野は少子化対策少子化に関する社会の諸問題。厚生労働省育児休業法関連調査等を経て結婚・出産。1児の母。不妊治療・長期の介護も経験。学際的な研究をモットーとし、くらしに必要な「正確な知識」を広めるための執筆・講演活動の傍ら、内閣府少子化対策関連有識者委員、地方自治体・法人会等の少子化対策・結婚支援データ活用アドバイザー等を務める。 ----------
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