🌁26〉─2─外国人技能実習制度のウソ。新型コロナ禍で大量解雇。~No.100 

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 「外国人技能実習制度」のウソ
 「人手不足の補てん」「低賃金労働力」といった批判の中で導入された外国人技能実習制度。新型コロナ禍で大量解雇が進み、政府の「まやかし」が露呈された形だ。そもそも技能実習が目的なら大量解雇は矛盾する。かねてからこの問題を追及してきた立憲民主党石橋通宏参院議員が制度の見直しを提言する。(写真はゲッティイメージズ
 大量解雇!コロナ禍で暴かれた「外国人技能実習制度」のまやかし
 『石橋通宏』 2021/01/08
 石橋通宏参議院議員
 国内に滞在する外国人技能実習生は、今や40万人を超え、事実上、国内の多くの産業・経済分野、特に人手不足にあえぐ地方や農業などの一次産業において、生産・製造現場を支えてくれている。
 その技能実習生たちの中で、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて実習が休止状態となったり、解雇されたりして生活苦に追い込まれ、母国に帰りたくても帰れず、非常に厳しい状況に置かれている人が多数に上っていることをご存じだろうか。
 これは、私たちがかねてから指摘をしてきた現行の外国人技能実習制度の構造的な問題が、今回のコロナ禍で顕在化しているわけだが、この事態を深刻に受け止めるべきであり、これを機に技能実習制度の抜本改革を急がねばならない。
 厚生労働省によれば、コロナ禍の影響で解雇された外国人技能実習生は、すでにおよそ4千人に上っている。そもそも、なぜ、実習計画に基づいて技能を習得しているはずの実習生が、これだけ大量に解雇されなければならないのか。この実態こそ、技能実習制度の根本的な矛盾を露わにしているといえるのではないか。
 これまで政府は一貫して、技能実習制度は国際貢献策であり、人手不足を補うための対策ではないと言い張ってきた。しかし、国際貢献のための実習だと言うならば、受け入れ先の経営状況の都合で解雇されるのはおかしな話であり、受け入れ国としてはまったくの責任放棄である。
 ただ、いくら政府がごまかそうとも、技能実習制度の実態は人手不足を補うための労働力確保策であり、政府が表向き否定をしてきた未熟練の外国人労働者の受け入れ政策に他ならない。その現実の下、このコロナ禍にあって、彼らが雇用の調整弁となり、解雇されているのではないのか。
 確かに、コロナ禍の影響が長期化する中で、多くの産業分野において事業主が厳しい経営環境に晒(さら)されており、当初計画通りの技能実習の履行に困難を生じている実習実施者がいることは否定しない。
 だからこそ私たち立憲民主党をはじめとする野党は、早い段階から、中小事業主に対する国からの各種支援策の創設・拡充、特に雇用の維持や労働者の生計の確保を念頭においた施策の拡充を主張し、政府・与党に対する要請を行ってきた。
 国策として40万人を超える外国人実習生を日本に招聘(しょうへい)しているのであるから、その企業支援において、技能実習生に対する雇用と生計の維持への支援を特に重視し、手当てするのは当然のことではないだろうか。政府には、実習生たちの技能実習の継続と技術の習得はもとより、収入や生活を何が何でも支える責任があるはずだ。
 もちろん、一義的には、監理団体や実習実施者に実習の継続や生計・生活の維持の責任を果たしてもらわなければならない。やむを得ず休業する場合でも、雇用調整助成金など国の助成制度をフル活用して、6割以上と言わず10割の休業手当を支払い、技能実習生の雇用や生活の維持に全力を尽くすべきではないだろうか。
 多くの実習生は、日々の生活に必要な費用に加え、仕送りや帰国後のための貯金や、自らの借金返済のために毎月の手当の支払いが死活的に重要なのである。
 政府はこれまでのところ、解雇された技能実習生への支援策として、最大1年間、別の業種で働くことができるよう特例措置を講じている。そもそも、このような特例が可能であったこと自体、技能実習制度がごまかしであったことの証左だと思う。
 さらに、これは技能実習生のためと言うよりも、新たな実習生が来日できなくなったため、人手不足に窮している実習実施者や監理団体を救済するための措置なのではないかと疑わざるを得ない。
 だが、支援団体などによると、技能実習生を受け入れている「監理団体」の中には、再就職の支援などを行わず、解雇された実習生が住む場所を失って、行き場がなくなっているケースも多発しているとのことだ。
 ひどいところでは、事業主都合で解雇しておきながら、自分たちが不利益を被るのを防ぐために、自主退職したかのように偽装させている事例まで聞こえてきている。言語道断だ。そういった悪しき監理団体や実習実施者に対しては、今後の受け入れ停止や禁止などを含む断固たる処置をとるべきであろう。
 解雇されたり、無給の休業状態に置かれている技能実習生たちの中には、日本語が十分にできなかったり、監視下にあって声を上げられなかったりする人が少なからず存在していると思われる。
 せっかくの特例措置も、実習生たちが知らなければ使いようがない。外国人技能実習機構は、相談体制の強化とその周知の再徹底を行うとともに、技能実習生の実習継続や収入・生活実態について早急に調査し、解雇されたまま放置されたり、長期にわたって無給の休業状態に置かれて、日々の暮らしにも困難をきたしているような実習生がいないかを早急に把握すべきだ。その上で、実習実施者や監理団体に対しては、休業手当の支払いや再就職・生活支援の徹底を指導するなどの対応を行ってほしい。
 前述の通り、今回、コロナ禍において顕在化している問題は、外国人技能実習制度が抱えている構造的な問題であり、もはやパッチワーク的な改善策では対処できない。これを機に、改めてその抜本的な改革に向けた議論を本格化させるべきだ。
 最大の問題は、国策であるはずの技能実習制度が民間の契約ベースの下に運営されており、送り出し国側でも日本国内側でも悪しき民間ブローカーが介在し、多数の実習生が多額の借金を抱えて日本にやってくることである。この多額の借金のため、人権侵害やハラスメントを受けたり、賃金未払いや過重労働などがあっても拒否できず、逃げられず、声を上げられず、帰国することもできない。
 日本で監理団体や実習実施者の違法行為に声を上げた結果、実習途中で強制帰国させられた技能実習生も多数報告されているし、帰国後に契約違反だとブローカーから訴えられ、多額の違約金を払わされるような事件まで発生しているという。
 外国人技能実習法は、手数料や保証金の類の徴収を禁止しているし、意に反した途中帰国や労働法令違反の禁止を明記しているが、今なお違反は後を絶たない。
 また、コロナ禍で解雇されたり、人権侵害などに堪えきれず逃げ出した実習生たちが、生活苦に陥り、詐欺集団らの片棒を担がされたり、犯罪に手を染めたりする事件も発覚している。
 もちろん、犯罪行為は許されないが、彼らをそういった状況に追い込んだ技能実習制度そのものや、彼らを適切に支援・救済しなかった監理団体や技能実習機構にこそ、その責任を問うべきではないのかと、立法府としての責任を痛感している。
 このように、現行の技能実習制度が構造的に破綻していることはもはや明らかだろう。できるだけ早期に、現行制度を発展的に解消し、現在滞在中の技能実習生を含め、正規の労働者として就労・在留ができる外国人労働者のための雇用許可制度を新たに整備すべきだ。
 こうした現状を踏まえ、立憲民主党は、私が座長を務めている「外国人の受け入れ制度及び多文化共生社会のあり方に関するPT」において、この新たな雇用許可制度の具体的な検討を進めている。
 その柱となるのは、国同士の公的な責任の下に制度を管理・運用することであり、これによって民間ブローカーの介在を排除することだ。
 その上で、国が国内労働者では求人を充足できない状況にある事業主を認定し、日本での就労を希望してくれる外国人労働者との透明性あるマッチングや、出国前の日本語などの研修、入国後の継続的な研修や生活支援などにも責任を持ち、現行制度の問題の根源にある実習生の借金問題をも解消することをめざしている。
 このような抜本的な改革なくして、世界から「奴隷労働」とも評されている現行の技能実習制度の改革は実現できないと考える。併せて、国内における多文化共生社会づくりのための努力を国が責任を持って実施しなければならない。
 技能実習生はすでに40万人を超えたが、国内にはすでに166万人(2019年10月末時点)もの外国人労働者が就労し、そして地域において生活し、納税している。子供のいる外国人世帯も多数に上っており、地域によっては就学児童の一定割合を外国人の子供たちが占めている。技能実習生や就労留学生を含む外国人たちは、それぞれが居住する地域における生活者であり、地域共生社会の構成員なのである。
 しかし、これまで国は、本音と建前の使い分けの中で、技能実習生を労働者や生活者として適切に保護する責任を放棄し、外国人労働者や居住者が急増する中にあっても、その責任を地方自治体や事業主に丸投げしてきた。
 その結果として、本来提供されるべき公的な保護やサービスが届かず、人権侵害にあっても声を上げられなかったり、子供たちが就学できなかったり、生活苦に陥ってもなんの支援も受けられなかったりしているのではないだろうか。
 このような社会問題への対応も急務であり、私たちは技能実習制度の改革と併せて、多文化共生社会を構築するために国の責任や施策を明確化するための基本法案も構想している。
 世界に例を見ないスピードで人口が減少していく日本の経済・社会をこれからもしっかりと支え、成長させていくためにも、今こそ、外国人技能実習制度の抜本改革や多文化共生社会の構築に向けた努力を、党派や思想信条を越えて断行すべきである。
 すでに世界は、人材獲得競争の時代に入っており、アジアも例外ではない。これまで夢と希望と憧れを持って日本に来てくれていた外国人技能実習生たちが、今回のコロナ禍で再び顕在化したように、雇用の調整弁や都合のいい低賃金労働者、いやまるで奴隷労働者のように使い捨てられ、日本に絶望して帰国するような事態が今後も続くようであれば、遅かれ早かれ、日本が選ばれなくなる国に転落することを覚悟せねばなるまい。それだけ、状況は危機的だと認識すべきである。」
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