🌁29〉─2─日本経済のイノベーションを潰す「変化を嫌う」働かないおじさん・動かないおじさん。~No.121 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 10年後、「日本経済の現場は50%近くが高性能AIと高機能ロボットで自動化され」ると余分な人間は必要なくなり、変化への対応能力のない日本人、特に「働かないおじさん」は役立たず・用無し・無駄飯くらいとして解雇され失業する。
 つまり、年齢や性別に関係なく「働かない・動かない・動けないおじさん」は会社・仕事から切り捨てられる。
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 2022年2月10日号 週刊新潮「『45歳定年制』の衝撃
 あなたの隣るにも・・・
 変化を拒む『働かないおじさん』問題
 春闘の季節とはいえ、どうせ賃金があがろうと微々たるもの。なのに、職場のアイツは仕事もしないくせに高給を食(は)んでいる・・・。
 『働かないおじさん』。しかしこの問題は、当人たちを責めたところで解決はしない。企業、社会が一体となって考えるべき処方箋とは。
▶昔の『窓際族』との違い▶なぜ働かないのか▶当人を責めても始まらない
▶企業側の対処法▶あなた自身がそうなら『働くおじさん』に変わる術は?
 おじさんたちを追い出しても・・・

 世の中高年は受難の時代を迎えている。
 『45歳定年制』
 昨年、物議を醸したおじさんたちの『難問』である。しかも、仮に45歳での退職を免れたとしても、企業にいながらにして邪魔者扱いされ、『いてもいなくてもいい人、いや、どっちかと言うといなくなってほしい人』と思われているケースが少なからずあるのだ。
 世に言う『働かないおじさん』である。
 あなたの周りにも思い当たる人がいるはずで、もしかしたらあなた自身が働かないおじさんになっている可能性もある。我々は如何にして働かないおじさん問題と対峙すべきなのか。
 企業側、おじさん側双方にさまざまな課題がありそうだが、まずは『働かないおじさんが御社をダメににす』の著者で、相模女子大学大学院特任教授の白河桃子が『企業編』を論じる。

│企業はどうする?
 現在、とりわけコロナ禍において、日本企業には問題が山積しています。
 女性活躍の推進、ワークライフバランスの確立、働き方改革、リモート化の推進、DX(デジタルトランスフォートーメーション)の導入・・・。改革すべきことが山ほどあるわけですが、仮に経営者がやる気になっても、組織が頑として動かないという現実をよく聞きます。企業の『上』と『下』の中間に分厚い粘土層のようなものが存在し、上から水を流しても下まで浸透していかない。この粘土層こそが現代の『働かないおじさん』です。
 これまで働かないおじさんは、『窓際族』『Windows2000おじさん(窓際族なのに年収2,000万円もらっていう中高年)』と同義で、文字通りの意味で使われてきました。しかし現在問題になっているのは、先ほどの粘土層のような変化を拒むおじさんです。『働かないおじさん』と言うより『動かないおじさん』というべきなのかもしれません。
 変化を拒む働かないおじさんは、企業にさまざまな弊害をもたらします。例えば彼らは、昭和の価値観を引きずり、自分がどれだけの時間を企業に捧げてきたかで価値を計ろうとする。これを放置しておくと、長時間労働こそが命という古い価値観は変わらず、労働環境の悪化を招きがちです。
 威厳を保つためか、いつも不機嫌な顔の人も多い。職場内に不機嫌な人が増えると『心理的安全性』の低下につながります。これは、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した心理学用語で、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状況のことです。
 この心理的安全性が高い組織は、間違いを認めやすく、互いに協力し合い、新しいチャレンジを厭(いと)わない人が増える傾向にあり、必然的に生産性の向上に結びつきます。ところが中高年の社員は、組織内の上意下達に慣れてしまい、対等な議論やコミュニケーションを苦手とする傾向がある。そこからイノベーションは起こりづらく、生産性は上がりません。まずは、この現実を理解する必要があります。
 『アメとムチ』を活用
 その上で、なぜ働かないおじさんが生まれたのか。ここまで働かないおじさんと言ってきましたが、これは年齢や性別を問わず、『変化に対応できない人』の総称でもあります。ではなぜ、敢(あ)えて『おじさん』と言うのか。それは、ほとんどの日本企業のボリュームゾーンがまさにおじさんだからです。最大のボリュームゾーンが45歳前後である企業が多く、おじさん中心の企業になっているケースが目立つのです。
 高度成長期に大きくなり、世の中から優良企業と見られている立派な会社でも、組織全体が年老いているところが少なくない。こうした企業を、私は『昭和レガシー企業』と呼んでいますが、このおじさんたち、働かずに動かないおじさんたちを変えない限り、日本企業は変わりません。
 では働かないおじさんたちに、つまり固定観念が強く、変化を拒むおじさんたちを放り出してしまえば問題は解決するのか。答えは『ノー』です。より正確に言えば、そんなことは不可能でしょう。
 まず、超高齢社会を迎えている日本においては、彼らにもまだまだ働いてもらわないと社会が成り立たないからです。そして彼らが強いられてきた『昭和型の働き方』は、女性が専業主婦、パートタイマーになることを前提としていた面があります。つまり、働かないおじさんを企業から追い出すことは、その家族を含めて路頭に迷わせることになり、社会全体を不安定にすることになるのです。
 次に、働かないおじさんを放り出すのはあまりに無責任だからです。高度成長期から1990年頃まで、生産年齢人口が多かった『人口ボーナス期』の日本では、商品をできるだけ量産し、作るだけ売れる時代でした。そこでは、生産形態もベルトコンベヤー式の『工場モデル』が求められ、可能な限り同質性の高い人材が必要とされてきた。大学を出て22歳で就職し、会社の命令で転勤して、同質性を求められる会社員としての役割を必要とされ続け、それに専念してきたおじさんたちを、今になって時代が変わったからと放り出すのは理不尽でしょう。
 したがって、致し方のないリストラというものもあるでしょうが、企業は可能な限り、働かないおじさんたちを働くおじさんに変える努力をすべきだと思います。
 どうやったら、働かないおじさんに働くモチベーションを与えられるのか。各社、『アメとムチ』を活用しているようです。
 例えば、大和証券は『ASP研修』というものを設けています。45歳以上の社員を対象に、『数値分析のスキル』『PCスキル』といった40の講座を用意し、それをパソコンで受講するeラーニング方式で行う。そして講座を修了するごとにポイントがもらえ、そのポイントに応じて以後の処遇が決まる。つまり、勉強したらリターンがあり、企業がそうしたインセンティブを作ることで働かないおじさんに学び直しを促しているのです。
 また、サントリーHDは名誉職を設けてミドル・シニア社員の心をくすぐり、NECは新卒と同じくらい中途人材を採用し、外からダイバーシティを取り入れることで元からの社員の意識改革を促進しています。

おじさんは? 
 企業に求められる働かないおじさんの『働く化』。他方、当の働かないおじさんたちはどんな心持ちで『昭和型』が通じにくい現代の難局を乗り切るべきか。続いて、『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか』の著者で、神戸松蔭女子学院大学教授の楠木新氏が『おじさん編』を語る。 

 『新しいスキルを一向に覚えようとしない』
 『あの人たちのやる気のなさを見せつけられると、こっちのやる気まで削がれる』
 20代、30代の会社員に話を聞くと、仕事に対して意欲が見られず、生産性も低いミドル・シニア社員に対する非難の声をよく耳にします。賃金も上がらず、労働条件やル同環境改善の見通しも明るくない。そうした状況で、将来への不安を感じている若手社員は少なくありません。そうして自らの境遇に不満や不安を募らせている若手社員たちの鬱憤の捌け口に、働かないおじさんが選ばれているようにも感じられます。
 働かないおじさんに対して苛立ちを覚えるのは理解できます。しかし、今は周囲の同僚の足手まといになっていたり、過去の成功体験や役職などを振りかざしているおじさんたちも、実は、これでいいのだと思っている人はごく少数です。
 ほとんどのおじさんが、本音ではもっと企業に貢献し、自らも輝きたいと考えている。しかし、本人も気付かない間に、または薄々勘付きながらも上手く対応できず、現在の状況になってしまった・・・。つまり、働かないおじさんは「働けないおじさん」と言い換えることもできるわけです。
 そう考えると、働かないおじさん問題は当人たちだけの話ではなく、社会全体の問題でもあると考えたほうがいいのではないでしょうか。なぜなら、『働かないおじさん=働けないおじさん』は、日本型の雇用システムが生み出したものでもあるからです。この構造が変わらない限り、批判している今の20代や30代のしゃいんがミドル・シニア社員になった時、彼らが『新たな働けないおじさん』になっている可能性があります。
 バブルが崩壊し、経済や企業業績が現状維持ないし縮小していくなかで、人材がダブつている。特に今の50代はバブル期の過剰採用の反映でもありかす。
 日本の会社組織では長期雇用を前提に順送りで人事処遇が行われる。その中で若い時には同期入社同士で競いあってハツラツと働いていても、40代になると事情が変わってきます。
 社内のポストは上にいけばいくほど少ないピラミッド型であることに加えて、同じ価値観の支配する会社内で長く働くことでマンネリ気分になり、『誰の役に立っているかわからない』、『成長している実感が得られない』、『このまま時間を過ごしていっていいのだろうか』という迷いを持つ中高年は少なくありません。
 その結果、40代、50代はまだまだ若いのにロートルになった気分で立ち往生する人が生まれてしまう。私は実際の定年の前に働く意味に悩むこの状態を『こころの定年』と名付けました。
 かくいう私も、『会社でこのまま働き続けているだけでいいのか』と感じていた47歳の時に、転勤に伴い環境変化に飲み込まれて体調を崩し、会社を長期休職しました。
 その後、復職と休職を繰り返し、50歳の時に体調は戻りました。ところが、仕事は楽で自分の時間もできたのですが、今度は何をしたらいいのかわからない状態に陥りました。いかに自分が会社にぶら下がっていたかを思い知らされました。
 その後、自分の働き方を見つめ直すヒントを得るために、中高年以降に会社員から他の仕事に転身した人たちに話を聞き始めました。小さな会社を立ち上げた人、職人になった人、社会保険労務士などの資格で独立した人など・・・。会社員時代より収入は減っても、みなさん『いい顔』をしていて魅力的でした。
 彼らの話を聞いていた時に『会社以外の居場所』を見つける重要性に気付いたのです。
 スキルの『棚卸し』
 もちろんいきなり会社を退職して起業や独立できる人はほとんどいません。そのため、会社に在籍しながら会社員とは違う『もう一人の自分』を持つことが大事だと知りました。
 そこで私は『楠木新』として、会社員の傍ら50歳から執筆を始めました。
 『もう一人の自分』を持つというとすぐに副業が頭に浮かぶかもしれません。しかし、身の丈にあった起業の準備や転職、趣味を充実させる。または地域活動やボランティア、学び直しなど幅広くとらえることです。特に収入が多いとか周囲からよく見えるといったことではなく、本当に自分に合ったものに取り組むのがポイントです。
 この『もう一人の自分』が育ってくると、会社の仕事の質も上がるのです。社外に楽な趣味を持っている人で会社の仕事をないがしろにしている人はほとんどいないと思います。私自身も執筆に取り組み始めてからは、週末が終わって仕事が始まる月曜日が来ると憂鬱になる『サザエさん症候群』とも無縁になり、会社の仕事の生産性や効率も高まったと思っています。
 働けないおじさんを脱したい人にとって大切なのは、主体性を取り戻して会社員以外の『もう一人の自分』を作り始めることではないかと考えています。
 そのためには身銭を切る、社外の人との付き合いを広げる、会社の枠組みの外で楽しみを見つけるなどの行動が求められます。
 この『もう一人の自分』を育てることが先ほどの『こころの定年』を乗り越えることにも重なります。『こころの定年』は老年期を充実して過ごすための通過儀礼でもあるので、ここを乗り切れば、70歳くらいまで現役でやっていけるというのが、定年後の人たちへの取材を重ねてきた私の実感です。

 最後に前出の白河氏は、働けないおじさんたちにこんな『試み』を勧める。

 培ってきたスキルや過去の体験が役立つとよく言われますが、DX化やグローバル化など、ここまで環境が激変すると、むしろこれまでの経験が足かせになってしまうことが往々にしてあります。今までの蓄積を一旦リセットし、まっさらな状態になって自分を見つめ直して、新たなスキルを習得する努力が大切だと思います。
 そのために私が推奨しているのは、学び直しと、転職の意志があるかないかに拘(かかわ)らず、一度、転職サイトに登録してみることです。大企業や歴史のある企業に新卒で就職し安住してきた人は、就職活動以来、履歴書を書いたことがないという人も多い。そこで、改めて履歴書と職務経歴書を書き、転職サイトに登録してみるのです。すると、自分の市場価値が分かります。
 数十年間、ひとつの企業文化の中だけで磨いてきたスキルは、客観的にどれほどの価値があるのか、その現実と向き合う。結果、自分の強みと弱みが何であり、どの能力を伸ばせば企業に、そして社会に必要な人材となれるかが分かります。会社に残るにしても、そうやって自分のスキルの『棚卸し』をしてみることで、あなたの現在地が確かめられ、『働くおじさん』に変わるチャンスを摑めるのではないでしょうか」
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