🚷36〉─1─日本の政治家が少子化問題を解決できない理由。~No.155 

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 2022年4月29日 MicrosoftNews NEWSポストセブン「「人口減少」過去最大に 日本の政治家が少子化問題を解決できない理由
 © NEWSポストセブン 提供 人口減少で「シャッター通り」が増えた(時事通信フォト)
 総務省は先ごろ、昨年10月1日現在の日本の総人口が、前年比で64万4000人減の1億2550万2000人になったと発表した。減少幅は過去最大で、日本の人口減少がますます加速していることを印象づけた。なぜ人口減少=少子化問題は解決の糸口が見いだせないのか。世界的経営コンサルタントとして活躍し、各国の経済アドバイザーを歴任してきた大前研一氏が、この日本が直面する難問について解説する。
 【図表2点】2021年の出生数「75万人ショック」を表わすグラフほか
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 日本の少子化は今、ものすごい勢いで加速しています。いわゆる第一次ベビーブーム(1947〜1949年)というのは、戦争が終わって、兵隊さんたちが戦場から日本に帰ってきて、子供がたくさん生まれたことがきっかけです(図表1参照)。そのあとに、その方々から生まれた子供たちが結婚・出産の適齢期になって、第二次ベビーブーム(1971〜1974年)が起こりました。
 そして、今度はその第二次ベビーブーム世代の子供たちが適齢期になったら生まれるだろうと思っていた第三次ベビーブームは、結局到来しませんでした。つまり、この時期にはもう世の中が変わってしまっていたわけです。この時点で政府は、後述するような大胆な少子化対策を実施しておくべきだったと思いますが、結果的にはこの流れを変えることはできないまま、今に至っています。
 1人の女性が一生の間に何人の子供を産むかという統計で、「合計特殊出生率」というものがあります。世界的な比較でもこの数字を使っているのですが、日本は2019年の統計で「1.36」となっています。理屈から言えば、子供の親は2人ですから、出生率が「2」以上でないと人口は維持できません。それが、今は1.36ということですので、今後ますます人口減少が進むのは確実ということになります。
 人口=国力の低下ほど深刻な問題はない
 さらに、日本の場合には、もう1つ大きな問題が出てきます。
 国立社会保障・人口問題研究所は、日本の出生数についての将来推計を発表しています(図表2参照)。ところが2019年、つまり、新型コロナウイルス禍に襲われる前の時点で、「86万人ショック」というのがありました。人口問題研究所の推計に比べて予想以上に早く86万人になってしまったのです。さらに、2020年は84万人、2021年(推計)は75万人と、新型コロナの影響もあって、出生数が激減しました。もともと人口問題研究所の推計では、出生数が75万人になるのは2039年頃と考えられていました。したがって、18年も前倒しで出生数が減ってしまったことになります。
 少子化の問題は、この2年で一気に加速したわけです。政治家にとって、これ以上深刻な問題はありません。人口というのは、国力です。人口が減っているということは、GDPも上がらないし、人々の胃袋は増えないし、そもそも警察や消防、自衛隊など、国や地方の社会基盤を支える人材がいなくなるということです。
 しかも、介護や看護といった仕事をするのも比較的若い人ですから、この将来の人口が減るという問題以上に重要な問題はないはずですけれども、これに真剣に向き合って有効な解決策を提案している政治家はいません。
 政治家が関心を持っているのは、いま目の前の政治アジェンダだけで、そんなことをやっているとあっという間に選挙が来てしまいますから、オリンピックをどうするかとか、新型コロナ対策はどうするかといった話に終始して、本来なら5年10年かけていろいろ準備して進めなければいけない問題に取り組もうというような政治家はいません。今の政治家たちの政策の時間軸というのは、おそらく数か月程度ではないかと思います。
 しかし、私が近著『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』で詳述したように、この問題の根本的な解決なしには日本の“老衰”はいつまで経っても止まりません。
 少子化を加速させる4つの要因
 もともとこの問題の背景には「未婚・晩婚化」という著しい傾向が出ていることがありますが、未解決のままとなっています。男性で生涯一度も結婚しない人が24%を超え、女性で一度も結婚しない人も14.9%に達しています。2019年の婚姻件数は59万8965組で、ピークだった1972年と比べると半分近くに減っています。また、初婚の平均年齢が上昇していて、男性は30.1歳、女性が28.3歳となっています。
 もう1つ大きな問題として、配偶者がいる女性の出生率が低下しつつあります。もともとは、結婚した女性が産む子供の数は2人というケースが多く、理想の家族構成を聞いても子供2人という答えが多くを占めていました。そのため、有配偶者の出生率は2.0台を維持していたのですが、それが2015年に1.94と2を切るようになりました。
 これは結局、結婚していない人が増えているということと、もう1つは晩婚化が進んだことによって高齢出産が増え、年齢的に2人目の子供を産むことができなくなっていると考えられます。
 また、男性の長時間労働が慣行となっているため、夫が育児参加する率が低く、女性の「ワンオペ育児」が問題になっています。「ワンオペ」というのはコンビニでの就労などで問題になったように、人手が足りずに店員1人だけで働かされているということですが、女性のワンオペ育児というのは、育児、家事に加えて共働きで働いているというケースも出てきています。そうなると、とてもじゃないけれどやっていられないということで、子供2人なんてどだい無理だとなってしまいます。
 3つ目は、出産・育児支援制度の不備が挙げられます。たとえば、OECD平均ではGDPの2.34%を家族問題に使っていますが、日本はその平均を下回っています。加えて待機児童の問題や不妊治療の所得制限などがあって、出産・育児のために国が全面的に支援するという形にはなっていないと言われます。
 さらに、もう1つ大きな問題が戸籍制度です。結婚していないカップルの場合、子供が生まれても戸籍に入れられずに「非嫡出子」という扱いになる恐れがあって、妊娠しても結婚していないから子供を産めないとか、産んでも父親の戸籍に入れられないから可哀想だということになります。
 かてて加えて、新型コロナ禍によって、結婚の件数も大幅に減っている上、妊娠の届け出というのが、前年に比べて5.1%減っています(2020年1〜10月)。つまり、新型コロナ禍で感染リスクを懸念して、結婚・妊娠・出産を控える動きが目立ってきているというのが4つ目の要因です。
 感染リスクという意味では、里帰り出産が難しくなったということも挙げられます。日本の場合には、出産に際して、奥さんのほうの実家に帰って、出産やその後の育児を奥さんの親などに手伝ってもらうという人も多いのですが、新型コロナの影響で、東京や大阪などから地元に帰省するのはやめてほしいと言われるケースがあるそうです。そういった話も、この時期に妊娠・出産を控える方向に影響しています。
 それから、子供を産める年齢層の女性たちがいわゆるパートやアルバイトといった非正規雇用で働いている場合、新型コロナ禍での業績悪化でレイオフ(解雇)や一時帰休の対象になって、出産・育児をしているどころではない状況に追い込まれているということもあります。
 こうしたマイナスの要因に対して、役人や政治家が有効な対策をとれていないということは非常に大きな問題だと思います。
 ※大前研一『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館)より一部抜粋・再構成」
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