🚷33〉─3・A─75歳男性の「老後の暮らし」を“崩壊”させた、年金「繰り下げ受給」の落とし穴。~No.147 

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 老後生活費が幾らかかるかは、如何なる家庭状況で生活するかによる。
 夫婦連れか、離れて生活していても子供や孫がいるか、兄弟や親戚がいるのか。
 連れ合いも子供や孫の家族もいない全くの独り身で、兄弟も親戚もない天涯孤独な身の上か。
 住んでいるのが、一軒家か分譲マンションの我が家か、保証人が必要で毎月の家賃と更新手続きのある賃貸のアパートあるいはマンションか。
 などなど。
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 2022年8月11日 MicrosoftNews 現代ビジネス「75歳男性の「老後の暮らし」を“崩壊”させた、年金「繰り下げ受給」の落とし穴 まさか、こんなことになるとは
 拝野 洋子
 かつては大手企業に勤めていた清水正広さん(仮名、以下同)は、1歳年上の妻の元子さんとの二人暮らし。将来もらえる年金額を増やして老後の生活を安定させるため、60歳で勤め先を定年退職してからも個人事業主としてバリバリ働き、保険料を支払ってきました。
 そのような努力にもかかわらず、現在75歳になった清水さんの生活は苦しく、将来への不安は募る一方です。いったい清水さんの人生に何が起こったのか、【前編】『75歳男性が絶句…年金「受給額」を増やそうとして、逆に生活が「破綻寸前」な悲劇』に引き続き、過去に戻って70歳からの清水さんの暮らしを見てみましょう。
 ようやく、受給開始の70歳に
 それから5年後、70歳になった清水さんはまた年金事務所を訪れ、受給開始の手続きを行いました。5年間繰り下げたので、老齢基礎年金・老齢厚生年金は1.42倍に(1+0.7%×60ヵ月=1.42)。65歳から受け取っていれば年額約233万円だったのが1.42倍され、さらに65歳から70歳まで厚生年金に加入した分の年金額が加わり、年額は約342万円になりました。
 「70歳になり体力にも限界を感じるようになったので、会社を引き継いで完全にリタイアすることを決めました。もともと厚生年金に加入するのも法人化した目的の一つでしたが、もうこれ以上は年金額を増やせません。事業主として社会保険料を支払うのも負担が大きいと感じていましたし、潮時かと思いました」
 © 現代ビジネス Photo by iStock
 この時点で、妻の元子さんは71歳。彼女も70歳から繰り下げ受給していたため、老齢基礎年金・老齢厚生年金は約180万円になります。合計すると、夫婦で年額520万円以上の年金を受け取れるわけです。
 「繰り下げた年金で、ようやく悠々自適の暮らしができるはずでした。何しろ、年金だけで520万円ももらえるんです。この年になれば保険料が差し引かれることもなく、十分生活できると高をくくっていました。しかし年金生活でも、国民健康保険料と介護保険料は容赦なく徴収されるなんて……」
 70歳以降の保険料は…?
 ここからは、清水さん夫婦の家計について詳しく見てみましょう。年金を繰り下げて受け取っている70歳以上の高齢夫婦の国民健康保険料、介護保険料について考えます。
 まず、清水さんと妻・元子さんの2人分の国民健康保険料は、月額で約3万8000円、1年だと約46万円になりました。75歳になれば後期高齢者医療制度の対象になるものの、それまでは毎月支払い続けるのです。
 くわえて清水さんは月額約1万1000円、元子さんは約7300円の介護保険料がさらにかかります。つまり保険料だけで年に68万円近く支払わなければなりません。これは清水さん夫妻の年金収入の約2割に当たります。
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 しかし75歳を迎えて後期高齢者医療制度の対象になったとしても、清水さん夫妻の負担はさほど軽くなりません。後期高齢者医療保険料は、住民税を計算するときに使われる「課税所得」を基準に算出されるため、所得が多いと基本的に保険料も上がります。清水さんは年金を繰り下げて受給を開始したうえ、70歳ギリギリまで働き続けて厚生年金保険料を支払っていたため、年金額も多めになっています。
 先述の通り、2人の年金収入は合計で約520万円です。したがって、清水さん夫妻の保険料は月額1万9000円(清水さん1万7000円、元子さん2000円)になり、負担はさほど軽くなっていないことがわかります。 
 医療費「3割負担」に苦しむ日々
 そのうえ、清水さん夫妻を高額の医療費が襲います。後期高齢者医療制度の特徴は、医療費の自己負担割合が現役世代よりも軽くなる点にありました。しかし先ほどと同じく清水さんは繰り下げ受給を行ったうえにギリギリまで年金額を増やそうとしたため、むしろ所得は多めです。
 後期高齢者医療制度では、「一世帯に本人以外の後期高齢者医療制度の被保険者の方がいて、かつ本人とその被保険者の収入の合計額が520万円以上である」後期高齢者が病院にかかるとき、自己負担額は変わらず3割となります。合計額は520万円未満であれば2割負担(令和4年10月~)でいいものの、頑張った結果ギリギリで520万円を超え、3割負担になってしまったのです。
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 先ほども少しふれましたが、清水さんは高血圧と糖尿病を患っています。病院へ行く度に医療費の3割を支払うとなると、思いのほか負担が大きく感じます。
 「もし病状が悪化して注射器を使うインスリン療法が必要になったら、通院1回につき自己負担額は約1万2000円にもなります。婦人科に通院している妻の分も合わせると、医療費だけで月約5万円、年間で60万円ですよ。保険料と医療費がこんなに負担になるなんて予想外でした」
 しかも年金は終身でもらえるものなので、この先も基本的に金額は減りません。亡くなるまで医療費の自己負担はもちろん、介護保険を利用して介護サービスを受けるときも3割負担になるのです。世帯ごとに計算するため、妻の元子さんも3割負担です。
 このほど後期高齢者医療制度が変わり、所得に応じた従来の「1割負担」と「3割負担」にくわえて、令和4年10月から新たに「2割負担」が創設されることになりました。もし清水さんが65歳の時点から受給を開始していれば、ここまでの額の年金はもらえませんでした。その場合、医療費の負担割合は2割、制度変更前であれば1割で抑えられたのです。
 「後からその事実を知って愕然としました……。保険料や医療費のことを考えたら、70歳まで繰り下げ受給しなかった方が、お得だったかもしれません。先に苦労を積んでおけば快適な老後が待っていると思っていましたが、もう少し早く年金をもらっていれば、良かったのかな…?」
 年金事務所で試算してもらったのは10年も前のことなので、一概には言えない部分もあります。ただし、当時と比べて年金から差し引かれる介護保険料も後期高齢者保険料も値上がりしていますし、今後も上がることでしょう。
 先のことを考えると、清水さんの口からは思わずため息が漏れてしまいます。しかし恐ろしいことに、繰り下げ受給の影響は清水さんが亡くなった後までついて回るのです。
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 妻の遺族厚生年金にも影響が…
 「ある時、自分が亡くなった後の妻の暮らしはどうなるのか、ふと気になりました。現在の収入の大半は私の年金なので、下手をすると私が死んだら妻の生活が成り立たなくなります。どうも不安になって年金事務所に駆け込み、妻が受け取る遺族年金の資産をお願いしてみました。ところが、対応してくれた職員の歯切れがどうも悪かったんです」
 その理由は、遺族年金の仕組みにありました。妻の元子さんも、70歳まで繰り下げして老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取っています。遺族年金には遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金があり、子供がいない清水さん夫妻は前者の受給対象になりません。
 遺族厚生年金ならば子供の有無にかかわらず受給できるのですが、なんと夫の遺族厚生年金から妻の老齢厚生年金を差し引いて支払われるというのです。
 つまり老齢厚生年金を繰り下げて高めの金額を受給している元子さんは、遺族厚生年金を少ししかもらえないということになります。どうりで年金事務所の職員も歯切れが悪いはずです。ただし老齢厚生年金には税金がかかるものの、遺族厚生年金は非課税なので、その分だけ負担は相殺されます。
 年金制度の改正にも注意
 先ごろの令和4年4月に年金制度の大改正が行われ、年金の受給開始を75歳まで繰り下げることが可能になりました。なお対象者は昭和27年4月2日以降生まれに限られるため、昭和22年6月生まれの清水さんは改正後も70歳繰り下げが限界です。
 仮に75歳まで繰り下げたとすると、その後の年金額は1.84倍(1+0.7%×120ヵ月=1.84)になります。この倍率は非常に魅力的であるものの、清水さんの例のように、繰り下げには「落とし穴」もつきものです。
 思ったより長生きできなかった時に損してしまうだけでなく、長生きした場合でも介護保険料や後期高齢者保険料を一生多めに払い払い続け、医療費の自己負担割合も3割になってしまうリスクもあります。
 65歳から受給すべきか、それとも66歳~75歳まで繰り下げるべきか、見込み試算を基にどのくらい保険料が異なるか、市区町村役場(介護保険国民健康保険)や都道府県広域連合(後期高齢者医療保険)に確認してから、決めると良いでしょう。」
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