⛲45〉─3・J─“ソロ社会”化が進む日本の行く末はどうなる?「おひとりさまビジネス」も限界~No.259  

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 2022年11月5日 MicrosoftNews マネーポストWEB「“ソロ社会”化が進む日本の行く末はどうなる?「おひとりさまビジネス」も限界
 © マネーポストWEB 提供 結婚意思がある18~34歳の未婚男女の「平均希望子供数」の推移
 政府はこれまでに少子化対策として様々な支援策を打ち出してきたが、出生率の低下に歯止めがかからない。国立社会保障・人口問題研究所が9月に公表した「第16回出生動向基本調査」によれば、結婚意思がある18~34歳の未婚男女の「希望する子供の数」も1982年以降、低下傾向が続き、2021年には男性が1.82人、女性は初めて2人を下回り1.79人となった。こうして単身世帯が増加し「ソロ社会」化が加速する日本には何が待ち受けるのだろうか。経営コンサルタント大前研一氏が考察する。
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 私は1989年に『平成維新』(講談社)を上梓して以降、日本を政・官・財の“鉄のトライアングル”が支配する「提供者(ノイジー・マイノリティ)主権の国」から「生活者(サイレント・マジョリティ)主権の国」に改革するための努力を懸命に続けてきた。1994年には新しい日本をつくるネクストリーダー養成学校「一新塾」を創設し、これまでに国会議員、自治体首長、地方議員合わせて220名を輩出している。
 さらに、本連載などで「低欲望社会」になって低迷から脱することができない日本の現状に警鐘を鳴らし、中央集権から地方分権道州制)への統治機構改革案をはじめ、抜本的な少子化対策案や教育改革案など、この国を再び成長・発展させて若者に希望を与える政策案を数多く提言してきた。
 しかし、それらの問題を歴代政権はことごとく放置してきた。岸田文雄政権も「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」「科学技術立国」「デジタル田園都市国家構想」「全世代型社会保障の構築」「構造的な賃上げ」など看板だけは次々と掲げているが、補助金をバラ撒くだけで抜本的・効果的な政策は皆無に等しい。
 「おひとりさま」ビジネスの限界
 一方、今の日本は「ソロ社会」化が加速している。
 2020年の国勢調査によると、世帯人員別の一般世帯数は単身世帯が最も多い2115万1000世帯で、全体の38.0%を占めている。国立社会保障・人口問題研究所は、単身世帯が2025年に1996万世帯、2030年に2025万4000世帯になると推計していたが、それをはるかに上回るスピードで増加しているのだ。
 では、このソロ社会にどう対応するか? これまでビジネスの世界では不特定多数を対象にしたブロードキャスティングから狭い範囲のターゲットを狙うナローキャスティングに移行してきたが、今後は個人をターゲットにしたポイントキャスティングが主流になる。
 とくに、私が提唱している「第4の波」の「AI(人工知能)・スマホ革命」ではポイントキャスティングが非常に有効であり、その象徴が中国の大手IT企業アリババグループの金融関連会社アントグループだ。
 モバイル決済プラットフォーム「アリペイ」、MMF投資信託)「余額宝」、信用評価システム「芝麻信用」を運営している同社は、利用者すべての学歴・勤務先・資産・人脈・購買履歴・支払い状況などあらゆる個人情報を把握し、それを基にAIで利用者の信用度をスコア化している。そして個々人の信用度と趣味嗜好に合わせた商品やサービスをポイントキャスティングで提供しているのだ。
 要するに、ソロ社会では従来の「セグメンテーション」が役に立たなくなり、1人1人のニーズを把握して、それにAIベース・スマホベースで対応した企業が勝つのである。
 さらにプラスアルファとなるのが、家族がいる人でも「ソロキャンプ」「ソロサウナ」「ひとりカラオケ」「ひとり旅」「ひとり焼肉」「ひとりディズニー」などの“ソロ活”が盛んになっていることだ。そうした「おひとりさま需要」に応えるビジネスが重要なのである。
 とはいえ、今後も日本の人口は減り続けるから、いずれは単身世帯も減少に転じて「おひとりさま需要」はシュリンクしていく。人口が減少しても経済を成長させて国力を維持するためには、国全体の労働生産性を引き上げるしかない。
 そこで参考になるのは、ドイツのゲアハルト・シュレーダー首相が断行した構造改革アジェンダ2010」である。企業が余った人員や不要な人員を解雇することを容認して労働市場の柔軟性を高め、その代わり失業者には国が責任を持って新しいスキルを身につけるための再トレーニングを行なったのである。
 そういう抜本的な改革を怠っていながら、岸田政権は「賃上げしろ」と大号令をかけ、その一方で「とにかく失業させるな」「雇用を守れ」と言っている。だが、労働生産性が上がらないまま雇用を守っていたら、企業は賃上げできない。だから日本は30年以上も給料が上がらず、平均賃金が韓国を下回ってしまったのだ。そんな基本的なことも理解していない岸田政権では、日本はお先真っ暗である。
 【プロフィール】
 大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『大前研一 世界の潮流2022-23スペシャル』(プレジデント社刊)など著書多数。
 ※週刊ポスト2022年11月11日号」
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