¥34〉─2─日本人の“低賃金化”。非正規雇用者だけでなく「名ばかり正社員」まで…~No.173 

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 2022年11月7日 YAHOO!JAPANニュース 幻冬舎ゴールドオンライン「非正規雇用者だけでなく「名ばかり正社員」まで…日本人の“低賃金化”がとまらないワケ
 元通産省官僚・株式会社二十一世紀新社会システム研究所代表である、本田幸雄氏の著書『劇症型地球温暖化の危機 太陽光エネルギー革命で日本を再生する』より一部を抜粋・再編集し、日本の労働環境の実態について見ていきます。
 非正規労働者層の拡大
 アベノミクスで有り余る資金が低金利で借り換えできて、従業員は景気に合わせて自由に伸縮自在にできることになりました(本来、従業員にそれに見合った賃金を出せない企業はそもそも存続する資格がないのです。企業を解体してそれができる産業、企業に人材を供給しなければ、経済は回りません)。
 これでは新しいことに手を出してリスクを冒す必要はありません。
 アベノミクスで金は存分に供給してくれる。人間は余ったら非正規を切ればいい。これで少なくとも現状は維持できるのだから、経営者としては、これほど楽なことはありません。
 余った金はいつ起きるかわからない将来のために積んでおこう。社内留保だけ積みあがる。これがアベノミクス時代の企業経営の実態です。
 平成年間の前半は国がたっぷりと公共事業費を出してくれました。これで当社は助かりました。平成年間の後半はアベノミクスで金を存分に供給してもらい、非正規で不況を乗り切りました。社内留保もたっぷりとため込みました。
 このような安易な官僚と企業の癒着がバルブ崩壊後の企業運営から真剣さをなくしてしまったのです。これでは日本産業が衰退するはずです。
 アベノミクスを9年〈第2期安倍内閣〉も維持したのです。企業はすっかり弱くなりました。
 非正規労働者は、1999年に25%、2003年に30%を超え2012年には過去最高の35.2%を記録し3人に1人超を占めるようになりました。また、若年層の非正規雇用率については、学生を除いた15~24歳で31.2%、25~34歳で26.5%であり、全体と比較すると低いものの上昇傾向にあります(これでは少子高齢化が進むはずです)。
 今の政治は見て見ぬふりをしていますが、これも次世代に対するツケ、大変大きなツケです。
 歴史に逆行する世襲身分制度というツケですから、これほど大きなツケはありません(人類の歴史は身分制度の撤廃の歴史でもありました。それを歴史に逆行して、実質、平成年間に身分制度を新たに導入したのですから、これほどの悪政はありません)。
非正規だけでなく正規社員も…“劣悪”な労働環境の実態
 非正規雇用者は職場でも精神的にも極めて弱い立場にあります。
 2000年代は輸出産業である製造業が好調でしたが、人手不足は外国人労働者を含む派遣社員を中心に非正規雇用で賄われました。そのため、日本国外市場の減速が製造業を直撃した2008年のリーマンショック以降の解雇・雇止めの増加は、まず非正規雇用者から行われました。
 製造業の派遣社員は、派遣会社の提供している寮に入居している者が多く、職を失った多くの非正規雇用者たちが路上へ放り出されました。また、製造業以外の職種でも非正規雇用労働者の解雇・雇止めが進みました(これでは結婚どころではありません)。
 経済学者の岩田規久男氏は「アジアなどで生産される輸入品は、現地の未熟な低賃金労働者が作っている。それに対処するために、非正規就業者の賃金は低い水準に抑えこまれている」と指摘しています。
 つまり、グローバル競争に対応するため、大企業は日本の非正規雇用者を途上国の労働者の低賃金に合わせるように使っているのです(本来、企業は従業員の給料を出せるように懸命に新商品の開発をするとか新マーケットの開拓をしなければなりません。そのために金を使わなければなりません。ところが今はその必要がないので、企業の社内留保や現金所持は史上最高になっています)。
 まあ、企業は合法であれば、企業の利益のためならそれをやるでしょうが、政府が見て見ぬふりをするのはよくないことです。
 一方、正社員の中にも「名ばかり正社員」と言われる、非正規社員と大差ない低い給与(毎月の固定給制ではなく日給制や時給制の会社もあります)で、雇用保険労災保険・厚生年金・健康保険に未加入で、交通費・昇給・ボーナス・退職金制度等もない労働者が目立つようになっており、正社員も非正規社員と同等の劣悪な労働環境に追い込まれるケースが増加しているそうです。
 ここに官僚の不作為が見られます。(ブラック企業と呼ばれています。長時間労働サービス残業・サービス休日出勤も強制的に命じられます。人間は弱いもので、自分より下の身分(非正規)ができると絶えず、自分もそこに落とされる不安にかられ、現状に不満を言わなくなります。
 アメリカの歴史で年季奉公人とその下の奴隷の関係はそうでした。人間が考えることはいつの時代でも同じで、新しい社会システムを導入してそれを正させなければ、ほっておくと短期間で限りなく下方へ向かってしまいます。)
 アベノミクスも安倍長期政権で長続きしましたが、日銀総裁もその間「躊躇なく金を貸し出します」を7~8年繰り返すだけで経済・産業が劣化しようが中身にはお構いなしでした。なんと日本は、雑で無頓着な政治・官僚社会になってしまったことでしょう。

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 本田 幸雄
 1942年、島根県生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業。通産省入省、重工業局、資源エネルギー庁、工業技術院、(文部省出向)長岡技術科学大学教授、通産省機械情報産業局、中国通産局長。
 通産省退職後、医療福祉研究所、(財)愛知国際博覧会協会などを経て、現在、(株)二十一世紀新社会システム研究所代表。
 著書に『21世紀の社会システム』、『水田ハ地球ヲ救ウ』、『ベンチャービジネス成功への決定的条件』、『西暦2000年への選択』(監訳)、『地球白書』(監訳)、『21世紀地球システムの創造』(共著)など。」
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