¥34〉─1・C─日本企業の賃金アップが実現しないのは「間違った努力」が原因。~No.172 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2022年11月21日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「なぜ日本企業の「賃金アップ」は実現しないのか…間違った努力を続けている日本の「構造的な問題」
 「メイド・イン・ジャパン」の没落
 日本経済を復活させるには、賃金を上げる必要がある。これまで、多くの経済学者たちが同じ主張をしてきた。
 いったいなぜ賃金が上がらないのか。厳密な回答は難しいが、日本人の多くが「現実」を受け入れられず、政府を含め日本全体が誤った「幻想」を抱き、間違った「努力」を続けているから、としか考えられない。
 まず「現実」とは何か。それは、日本企業の競争力が低下してきているということだ。
 '20年における家電業界の世界市場シェアランキングをみると、韓国や中国が上位を独占している。1位は韓国のサムスン電子で家電業界の世界シェアの約15%を占めており、2位も韓国のLGエレクトロニクスで世界シェアは10.9%だ。また、3位は中国のハイアールで世界シェアの10.8%を占めている。ベスト10では、日本企業は4位のパナソニック(7.3%)、9位のシャープ(3.8%)しかない。
 © 現代ビジネス Photo by gettyimages
 低価格かつ高品質という「メイド・イン・ジャパン」の世界的イメージは、韓国や中国などに奪われつつあり、日本の製造業の競争力は急速に低下してきている。'70年代にアメリカは製造業分野で日本との戦いに敗れたが、アップルやグーグル、アマゾンなどの巨大IT企業を生み出し、いまや世界を席巻している。日本も「現実」を直視し、戦略を立て直す必要があるだろう。
 にもかかわらず、政府は拡張的な財政・金融政策で賃金を上げられるという「幻想」を抱き続けている。これがなぜ「幻想」なのか。やや極論だが、世界全体にはA国とJ国しか存在せず、生産する財・サービスが、(1)スマートフォンと(2)固定電話の2つしかない経済を考えてみれば分かるはずだ。
 「努力」の方向が間違っている
 A国は最先端の(1)を生産しているが、J国は旧式の(2)を生産しているとする。当然、両国の人々の多くが購入したいのは最先端の(1)なので、J国の人々は輸入で(1)を購入し、(2)の売れ行きは悪くなる。このため、J国の賃金は伸び悩み、政治は景気をサポートするため、拡張的な財政・金融政策を行う。しかし、これは一時的なサポートになっても、本質的な解決策にはならない。
 J国の状況は、言うまでもなく日本で起きていることと同じだ。ここで重要なポイントは、J国の人々がどんなに頑張って真面目に働き、低価格かつ高品質の(2)を製造しても、国際競争力がない財・サービスを生産する限りは売り上げが伸びず、賃金も上昇しないということだ。これは、間違った方向に「努力」をしていることを意味する。J国の賃金を上げるには、A国のような付加価値の高い財・サービスを生産するしかないのだから。
 日銀の異次元緩和は企業や政府の金利などのコスト意識や財政規律を歪め、拡張的な財政支出は将来世代にツケを先送りするだけだ。賃金を上げるには、経営者は適切な戦略を立案・実行し、労働者も生産性が高い産業領域に移行する必要がある。
 それができないのは、年功序列型賃金や硬直的な労働市場など、日本の仕組みに構造的な問題があるからだろう。根本的な議論をせず、非効率で非合理的なやり方を温存し続ける限り、真の「賃金上昇」が達成される日が来ることはない。
 「週刊現代」2022年11月19・26日号より」
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 2022年12月6日 YAHOO!JAPANニュース ベストカーWeb「「なぜ日本人の給料が上がらないのか」について自工会豊田章男会長がマスコミへ注文した内容がド正論だった…
 この30年間、日本経済は低成長を続けてきた。2022年11月に実施した日本自動車工業会の記者会見による資料では、この30年間で日本の実質GDPは約1.25倍にしか増加しておらず、他の先進諸国に比べると低い水準であり、その影響は主に「中間層の所得減」に現れているという。なぜ日本の労働者の給料は上がらないのか。その点について、トヨタ自動車の社長であり、日本自動車工業会の会長である豊田章男氏が、持論を語った。
 【画像ギャラリー】グラフで見る実質GDP推移と中間層家計の減少(4枚)
 文/ベストカーWeb編集部、画像/日本自動車工業会
■「話し合いの場」につけない人のために何をどう報じるか
 自工会会見資料より。グラフ左は先進諸国に比べて日本の実質GDPの上昇幅が少ないことを、グラフ右は「そのシワ寄せは主に中間層の所得減に現れている」、ということを示す図
 「今年の春闘(春季生活闘争)はどうなりますか?」
 年末が近づいたタイミングでの大手企業のトップや経済関連団体の記者会見では、定番の質問といっていいだろう。2022年11月17日に実施された日本自動車工業会の記者会見でも、質疑応答が始まると、指名された大手新聞社記者が「お約束のひとつ」という雰囲気でこの質問を自工会幹部へ投げかけた。
 「誠実に話し合いを進めてまいります」
 というような、通り一辺倒の回答が来るか、それとも物価高を背景にしたベースアップについてなど、具体的な話が出るか……記者側がそういった心の準備をしていたところ、「この回答はわたしから」とマイクを引き取った豊田章男会長から、非常に具体的かつマスコミ各社には耳の痛い(それでも文字通り痛快な)返答があったので、紹介したい。
 (豊田章男会長による「今年の春闘はどうなりますか?」という質問への回答ここから)
 自動車産業は、幅広い人たちに還元や分配を続けております。
 このコロナ禍においても、日本全国で約88万人の雇用が減少しているなかで、自動車産業は27万人の雇用増を成し遂げました。この27万人に平均年収500万円をかけると、約1兆3500億円というお金を、家計に分配しているということになります。
 これだけでなく、自動車・部品産業は2009年以降、賃上げ率は約2.2%/年となっており、これは全業種平均(約2.0%)を上回っております。
 しかしながら、この「流れ」の中に組み込まれているのは、私どもがよくいう「(自動車関連産業)550万人」のうちの約3割の人々であって(※)、残りの7割の人たちは現在「話し合いの場」にすら立てておりません。
 先ほどご質問にあった連合(日本労働組合総連合会)と経団連との話し合いですが、この話し合いは毎年やっておりますけれども、あれも(全労働者のうちの)約8割の方(※2)が話し合いに入れていない(組合化されていない)んですね。
 (※編集部注/厚労省産業別労働組合員数及び推定組織率(令和3年版)」によると、製造業の推定組織率は26.7%、組織員数は267万人で全業種中トップ)
(※2編集部注/同資料によると全業種の雇用者における労働組合組織率は16.9%に留まる)
 日本全体の「賃上げ」を達成するためには、この(労働人口のうち「賃上げに関する話し合いの場」に立つことができていない)70~80%の人たちに、どう影響を与える活動をしてゆくか、ということだとわたくしは考えております。
 正直申し上げまして、継続的に昇給している会社って、かつて(マスコミから)褒められたことがありません。メディアの皆さんも、年始の賀詞交換会から「今年の賃上げはどうなりますか」、だとか、あとは「どこが満額か」、「そうでないか」という報道ばかりになります。この点について、マスコミ各社もぜひ「動き方」を考えていただきたい。
 いま、日本において広がりつつある「格差」をこれ以上広げないためには、中間層を中心に「みんなにどう働く場を与えていくか」だと考えております。そのために、何をどう報じるのか。
 「自動車産業がやってきたことを見習ってほしい」などと横柄なことを言いたいわけではありません。言いませんが、我々は経済波及効果が高いがゆえに、ずっと以前から「分配」ということを考えてきた歴史があります。そのことについて、「我々はこんな動きをしてきましたよ」ということは伝えてゆきたい。
 話し合いの場につけた人だけが「達成できたよ」と喜ぶのではなくて、そういう場につけない人たちのために、どういう動きをすればいいのかを考えております。
 ですので、ぜひこの「春闘」というものが日本国民全体のためにどうあるべきか、それが国民の皆さんにどう映るのかも含めて、マスコミ各社の皆さまにもぜひご協力いただければと考えております。
 (豊田会長の回答引用ここまで)
■日本人の7割が賃金交渉をしない
 「賃上げ要求(交渉)」をするかどうか、「する」として(雇用主と)個人でするか、組合を通してするかは、風土的、文化的な背景がある。
 それにしても、「そもそも日本人は会社と賃金交渉をあまりしない」という調査結果がある。
 リクルートワークス研究所が発表した「5カ国リレーション調査」(2020)によると、日本人の労働者のうち賃金について「要望する」が約3割で、「要望しない」もしくは「わからない」が約7割とのこと。そのいっぽうで海外(同調査ではアメリカ、フランス、デンマーク、中国)では「要望する」が約7割で、「要望しない」もしくは「わからない」が約3割とのこと。
 日本人は、世界的に見て「賃金交渉したがらない国民」だということがわかる。人口が増え続け、産業が急成長し続ける社会であれば、それでもよかっただろうが、この21世紀、このままでいいのだろうか。
 もちろん日本経済が低成長を続けていることには、さまざまな要因が関係している。しかし他国が成長を続けているなかで、日本だけ前に進めていない事情のひとつに「中間層の低賃金化」があり、さらにその要因のひとつに「賃金交渉の場に立てていない人たち」の存在が大きいのではないか。
 マスメディアの中で、労働組合があって会社側と毎年しっかり賃金交渉する会社は少ない。おおむね賃金交渉についての関心が低い業界であり、そのいっぽうで年末が近づくたびに「春闘はどうなる」とか「ベアはあるのか」、「満額回答はこことこと」と報じるわけで、今回「その姿勢はどうなんだ」、「もっと目を向けるべきポイントがあるのではないか」と問われたわけでありました。
 自工会としては「国内市場が盛り上がってもらわないと困る」という事情があるし、「そのためには中間層の所得がもうちょっと上がってもらわなくては困る」という背景があるのはよくわかる(かつてフォードが実践した「フォーディズム」は、自社製品(クルマ)が買えるくらい自社社員の給与を上げる、という思想だった)。
 ざっくりまとめると、「自動車メーカーもがんばるから、マスコミ各社ももうちょっとがんばってよ」という大変耳の痛い話だと受け止めました。中間層の所得が減少すると困るのは、報道各社も同じなはず(もちろん当社も困ります!!)。日本経済全体の底上げのため、もっと幅広い視点で賃金上昇について調査し、報道するよう努めます。
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