🚷18〉─2─少子化議論なぜか欠ける「婚姻減・少母化」の視点。「20代で子のいる家族」が2000年境に減少。~No.86No.87 

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 2923年1月9日 MicrosoftStartニュース 東洋経済オンライン「少子化議論なぜか欠ける「婚姻減・少母化」の視点 「20代で子のいる家族」が2000年境に減少
 出生数・婚姻数の減少は「家族の減少」を意味します(写真:show999/PIXTA
 毎年、成人の日になると「今年の新成人の人数は過去最少を更新」などというニュースが出ますが、そもそもそんなことは20年前の出生数を見ればわかりきっていたことで、今さら大騒ぎすることではありません(成人年齢は、昨年4月の民法改正で18歳に引き下げられましたが、多くの自治体では成人式は従来通り20歳で実施するところが多いとのこと)。
 【図表で見る】典型的な「家族」がグッと減っている現実
 逆に言えば、20年前はまだ年間100万人以上の子どもが生まれていたことになります。人口動態調査を見ると、年間100万人出生をはじめて割り込んだのは、2016年のことで、つい7年前の話です。随分と長い間少子化と言われ続けてきたので、もっと以前からそうだったと勘違いしている人もいるかもしれません。
 しかし、この出生数の減少幅は年々急降下しつつあり、2022年の出生数は80万人を切り、77万~78万人程度と予想されています。
■出生数・婚姻数の減少は「家族の減少」を意味する
 出生数の減少は根源的には婚姻数の減少であり「少母化」によるものであることは、『出産クーポン「的外れにも程がある」と言える根拠』の記事でもご説明した通りですが、出生数の減少および婚姻数の減少とは、同時に「家族の減少」を意味します。
 かつて「夫婦とこどもふたり」の4人家族が標準世帯と呼ばれた時代がありました。事実、長期の世帯構成人数推移を見ると、1970年代から1980年代までは「4人世帯」が世帯の中でもっとも多い構成比を占めていました。
 ところが、1990年代以降、そのトップの座は「1人世帯」に譲り、2020年時点では4位にまで後退しています。「1人世帯」が激増しているのは未婚化の影響もありますが、それだけではなくもうひとつ高齢者の単身世帯化も加味されます。
 結婚してもいずれ子どもは独立し、配偶者とは死別し、必ずどちらか一方は1人となります。大抵の場合は、平均寿命が女性の方が長いので、高齢女性の単身化という形になります。
 同様に、「2人世帯」も増えていますが、これも別に昔流行った「DINKs」夫婦が増えているわけではありません。高齢単身世帯化の直前の形態として、高齢の夫婦のみの世帯に戻ったパターンも多く含まれています。
 家族の構造は、婚姻や出生だけではなく、高齢化によっても大きく変化します。
■典型的な「家族」がグッと減っている
 より詳細に、15~64歳までの現役世代と65歳以上の高齢世代に分けて、世帯類型別長期推移を見るとわかりやすいと思います。
 1985年からの推移で大きく減少しているのは「現役世代の夫婦と子世帯」のみです。いわゆる典型的な家族だけがその数を減らしています。1985年に約1460万世帯あった家族は、2020年には約1100万世帯へと360万世帯も消滅しました。減少率でいえば、約25%減です。
 さらに、細かく、出生が可能な年齢とされる49歳までの「夫婦と子世帯」に限定すれば、1985年の約1063万世帯から2020年は約711万世帯へと約33%の減少です。
 1985年の出生数は143万人、2020年は84万人なので出生数も約41%減になっていますが、49歳までの夫婦と子世帯を分母とした「出生対象世帯あたり出生数」を計算すると、1985年から2020年にかけてほぼ変わりなく推移しています。
 合計特殊出生率ばかりが取りざたされますが、この指標は未婚が多い日本においてあまり意味をなしません。対象は15~49歳の女性ですが、その中には未婚者も離婚者も含みます。
 有配偶者だけを分母とし、嫡出子だけを分子とする有配偶出生率という指標もありますが、この「出生対象世帯あたり出生数」とは、少なくとも1人の子がいる家族がどれだけ出生しているかの目安となるもので、いわば「家族の出産力」といえるものです。
■出生数減少の根因
 要するに、これは結婚して夫婦となった場合の出生数は40年前とほとんど変わっていないことになります。つまり、出生数が減るのは、婚姻減であり、少母化であり、家族の減少によるものです。
 よくよく考えれば当たり前ですが、婚外子の極端に少ない日本においては、家族が作られなければ、子どもの数が増える道理がありません。しかも、それは、40歳をすぎてからの結婚では間に合いません。
 個人のしあわせとしての晩婚は結構ですが、物理的に出産年齢は限られています。つまり、若者が若者のうちに結婚できないからこそのこの「失われた家族」という現象が起きているわけです。
 20代で家族(夫婦と子世帯)となっている人数の長期推移を見ればより明らかです。
 1980年代から2000年まではほとんど変わらず推移していますが、2005年以降から急激に減少しはじめ、最大値であった2000年と比較すると約50%の減少です。20代のうちに結婚して家族となる人数が半分になってしまっているのだから、少子化になるのは当然です。
■「晩婚化」のせいではない
 これを「晩婚化のせい」などと適当なことを言ってはいけません。2021年の段階でも29歳以下の初婚の割合は男でも53%、女では63%もあります。半分以上は20代で初婚しているわけです。
 しかも、『「若者の非婚化」を後押しする日本の絶望未来』の記事で解説した通り、実情は晩婚化などではなく、起きているのは「結婚の後ろ倒しによる結果的非婚化」だからです。言い換えれば、「若者が若者のうちに結婚してもいいと思えなくなったがゆえの婚姻減少」なのです。
 なぜ、20代のうちに結婚に踏み切れないかは、20代の家族の減少が起きたタイミングとあわせて考えれば想像がつくでしょう。2000年代前半は、ちょうど就職氷河期と呼ばれる時代でした。
 希望する会社への就職ができなかった若者が大勢発生し、運よく入れた会社においても給料が上がらないという憂き目にあいます。その後もリーマンショックなどが発生し、「25年給料の上がらない時代」において、もっとも割を食ったのが20代の若者たちです。
 2014年ごろからやっと額面の給料が上がりだしたと思ったら、今度は社会保障費などの天引きが増え、消費税も上がり、いわゆる可処分所得は1996年時点と比較しても下がるという現象が2021年段階でも続いています。経済的不安定の中で結婚に踏み出せないのは仕方ないことでしょう。
 というと、すぐおじさんたちから「経済的に恵まれていないからこそ結婚する方がいいのだ。一人口は食えねど二人口なら食える」とか「夫婦共稼ぎでやればいいじゃないか」とかの声があがりますが、生活基礎調査から20代の可処分所得の中央値を計算すると、2021年でたったの272万円しかありません。
 半分以上が、300万円未満です。1996年の20代の可処分所得である281万円にすら到達できていません。若者からすれば「これでどうしろというのだ」といいたくもなるでしょう。
■結婚はやはりお金が重要
 恋愛はお金がなくてもできますが結婚は別です。それを裏付ける調査結果があります。2018年内閣府少子化社会対策に関する意識調査」では、20~40代の未婚男女を対象に、現在恋人がいる男女の自分の年収とパートナーの年収を聞いている項目があります。
 それに基づいて、独自に中央値を計算すると、20~40代未婚で恋人ありの男性の年収中央値は285万円、同じく恋人ありの未婚女性は244万円です。それが、20~40代で3年以内に結婚した子無し既婚男女で見ると、男性の中央値は482万円、女性は156万円となります。恋愛はお金ではないが、結婚はやはりお金が重要なのです。
 子育て支援も結構ですし、重要なことは否定しませんが、そもそもその前段階として、若い男女が家族を作れない状況に追い込まれていることはもっと深刻にとらえるべきでしょう。
 さらに深刻なのは、こうした全国の中央値とは無縁な一部の恵まれた家の子女たちがいて、そうした若者は潤沢な親の経済力に支えられ、奨学金なしで大学に通い、留学までさせてもらえて、帰国子女として大企業や外資系企業に就職し、20代のうちに全国の中央値の2~3倍の年収を手に入れます。
 出会いも結婚も経済的同類婚が進行しています。同じくらいの年収同士の男女が出会い、同じような価値観だと気が合い、結婚していきます。恵まれた家の子は高い年収を手にいれ、高い年収同時で共稼ぎ夫婦となり、経済的問題で結婚も出会いもない者との格差がより際立ち始めているのも現実としてあります。
 ドイツの社会学ウルリッヒ・ベックは、すでに1990年代において従来の伝統的な共同体であった家族は、「すでに死んでいるが、依然として形だけは生き残っているゾンビカテゴリー(死に体カテゴリー)」になったとまで表現しました。しかし、家族がゾンビとなる前に、もはや経済的に苦境に立つ若者たち自身が生きていけない世界になってやしないでしょうか? 
 荒川 和久 :独身研究家、コラムニスト
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