🌁49〉─8・A─円安で進む外国人労働者の“日本離れ”。日本から外国人労働者が消える。~No.243 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 人口激減で急速に若者の人材・労働者が不足する日本。
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 日本は、外国人に対する偏見と差別による虐待が存在するブラック社会である。
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 日本は世界で信用され、日本人は世界で愛されている、は嘘である。
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 日本人と言っても、現代の日本人と昔の日本人は別人のような日本人である。
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 2023年1月26日 Yahoo!ニュース オリジナル 特集「円安で進む外国人労働者の“日本離れ” 賃金だけでは「アジアに負ける」 労働力確保へ危機
 ミャンマーから働きに来た看護補助者のニン・メイ・ウーさん(24)とジン・ジン・モーさん(26)
 2022年に加速した円安。ドルをはじめ、さまざまな通貨で円の価値が下落した。そこで苦しんだのが外国人労働者だ。日本で働いてもベトナムなど母国への仕送り額が4分の1ほど目減りした人や、せっかく日本語を学んでも働き先にオーストラリアや韓国を選ぶ人たちが増えているという。長期化する円安に伴い、変化にさらされる外国人労働者たち、そして受け入れ団体などを取材した。(文・写真/ジャーナリスト・岩崎大輔/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
 給与は約4分の1目減り、母国への送金見送り
 千葉市北部のロードサイドのラーメン店。客の多い昼どき、長身の青年がテーブルの食器を手際よく片付け、除菌をし、辛味噌などの調味料を元の位置に戻す。レジや厨房で目まぐるしく動くのはベトナム人のヴァ・ヴァン・ロンさん(25)。休憩時間になると、スマートフォンをのぞき込むのが日課になっている。開いているのは日本円とベトナムの通貨ドンの為替レートのサイトだ。
 ベトナムから働きに来たヴァ・ヴァン・ロンさん(25)
 「為替は毎日チェックしています。でも、円は下がってばかり。いつベトナムに送金したらいいのか悩みます」
 ヴァさんは、2019年7月に技能実習生としてベトナム中部のハティン省から来日。日本語能力試験で「日常生活に困らない」レベルである「N3」の語学力を有している。技能実習生時代、とび職でパワハラを受け、転職し大工へ。外食の特定技能試験に合格し、2021年8月から味噌らーめん専門店『蔵出し味噌 麺場 田所商店』で勤務し、主にホールでの接客業務を担当している。
 ヴァさんの給与は額面で22万円。日本人と同様に健康保険や住民税、所得税国民年金保険料などを納め、手取りは18万円になる。ボーナスは年2回各1カ月分が支給される。スマホでできる国際送金サービスで毎月8万~10万円を母国の母に送ってきた。だが、2021年から円が下がりだし、昨年からは送金をたびたび見合わせているという。
 甘くてコクのある西京味噌らーめんがヴァさんのお薦め
 「円安が半年以上続いているので、あまり送金せずためていました。『円安が落ち着いたらまとめて送る』と家族にも伝えています。日本に来ているベトナム人の友人も同じで、2~3カ月分をまとめて送るだけでなく、帰国する別の友人にお金を託している人もいます」
 ベトナムドンは、ヴァさんが来日し、就労時の2019年9月時点で1円あたり約220ドンだった。だが、その翌年末の223ドンをピークに円が下がりだし、2022年10月には162ドンまで下落した。来日時と比べて約4分の1目減りした格好だ。
 日本で長く働きたいが…円安の進み方次第
 ヴァさんは、日本に来るにあたり、ベトナム政府から認可された労働者の送り出し機関に日本円で約100万円の借金をした。借金は2年ほどで完済し、現在の貯金額は150万円。だが、来日5年間での目標としていた400万円には達していない。
 「ベトナムの郷里で家を建てるのに必要な額は約10億ドン(2022年末時点で約560万円)。母に家をプレゼントし、日本のようなマナーのよい洋服屋を開きたい。そのためにもまずは貯金。町に出ても洋服などは買わず、見るだけ。もちろん食事はもっぱら自炊です」
 ヴァさんが勤める味噌らーめん専門店の本社、トライ・インターナショナルでは、現在35人のベトナム人が働いているという。人手不足の解消に向け、政府が2019年4月に導入した在留資格「特定技能制度」で来日した外国人を対象に雇用している。
 特定技能制度とは、人材確保が難しい外食業、建設、漁業、介護などの12分野で即戦力となる外国人労働者を受け入れるもの。途上国などへの技術移転を目的とする技能実習生よりも高い日本語力や技能が求められる。技能の習熟度合いで1号と2号に分かれ、上記の12分野は最長5年間の在留が可能な1号。2号は、そのうち高度な技能が必要な建設、造船・舶用工業の2分野が対象で在留期間の更新を何度もできる。2号では家族を呼び寄せることもでき、事実上、在留期間の上限はなくなり、永住も可能となる。
 同社は外国人労働者のために住宅はテレビや洗濯機などの家電付きの物件を社宅として借り上げ、半額を会社負担としている。同制度では正社員・フルタイムの直接雇用が原則だ。
 ヴァさんの部屋。家電付きの社宅で布団一式と自転車をトライ社から提供されている
 ベトナム人は勤勉で、真面目なスタッフが多く、急な残業や休日出勤をお願いしても快く対応してくれるので、非常に信頼していると同社人事部長の中川貴裕氏は語る。
 「『しっかり働いて稼ぐ』という意識が高く、ガッツもあります。当社では労働人口の減少を見据え、こうした外国からの労働者を積極的に採用しています。今後もよい人材を集めていきたいですが、円安が続いたらどうなるか。外国人の自動車免許の取得は難しいので、自転車を贈るなどして、できるだけ福利厚生を充実させて円安を補いたい。彼らが働きたいと思える職場でありたいと考えています」
 ヴァさんもいまの職場に不満はなく、ここで長く働きたいという希望を持っている。だが、円安が悩みの種だ。
 「このまま働きたいけど、円安が進んで150ドンを切るようなことがあれば、ちょっと考えてしまいますね」
 円より厳しいミャンマー通貨、日本選んだ2人の女性
 神奈川県川崎市にある認知症疾患専門病院「かわさき記念病院」。パープルのユニホームに身を包んだ看護補助者のニン・メイ・ウーさん(24)とジン・ジン・モーさん(26)が顔を見合わせて笑う。
 「日本の冬は寒いですね。私たち暖かいところから来たから。でも、雪は見てみたいです」
 ニンさん(左)、ジンさん(右)は「安全で安心して暮らせる日本が好き」という
 2人ともミャンマーの旧首都ヤンゴン出身。日本に来る前、ニンさんはマーケティング関連の仕事をし、ジンさんは看護師の職に就いていた。
 2022年7月に技能実習制度で来日し、9月から看護補助者として同病院で勤務している。国民年金や健康保険や税金、寮費などを引いて手取りで月15万円。2人とも毎月10万円を家族へ送金しているという。
 ミャンマーの通貨チャットは、円より厳しい状況にある。ミャンマーでは2020年からのコロナ禍で景気が陰るなか、2021年2月に軍事クーデターが発生。以後、欧米から経済制裁を受けた上、海外からの投資が急減し、経済は混乱した。対ドル相場でチャットは暴落し、2021年1月時点は1ドル1300チャットだったが、2022年12月には2100チャットまで下がった。一方、同時期の対円では12チャットから15チャットの下落にとどまり、国際的に円が安いせいもあって下げ止まっている。
 対円ではチャットの価値が相対的に維持されているからこそ、ミャンマーを出る働き手には日本を選ぶ人がいる。ニンさんの妹もその一人だ。ニンさんは言う。
 「18歳の妹も日本で働くために日本語を勉強しています。日本に来るには仲介業者に一定の費用を支払いますが、それでも日本でしっかり働けば返していける。日本だと安心して働けるし、『鬼滅の刃』など好きなアニメも多い」
 全日本病院協会常任理事の山本登さん。外国人人材を集めるために「日本人と同等、それ以上の待遇」を掲げる
 こうしたジンさんやニンさんら看護補助者の人材をアジアから呼び寄せているのが、全国約2500の民間病院が加入する公益社団法人全日本病院協会だ。外国人材受け入れの担当役員で、横浜メディカルグループの理事長、山本登さんは長く日本で働ける人材を呼び寄せようと活動してきたが、最近ベトナムでは確保が難しいと語る。
 「昨年10月にもベトナムに行きました。そのちょっと前まで、現地で日本語を勉強していた20人近くが訪日を約束していたのですが、『円安で稼げないからやめます』と半数から断られた。お金で勝負をしたら、台湾や韓国、オーストラリアに負けてしまうのです」
 どの産業、どの業種も人手不足に悩むが、ニンさんやジンさんが働く看護・介護業界は深刻だ。厚生労働省は介護人材が2025年度に32万人、2040年度には69万人不足すると推計している。
 全日本病院協会は現地の医療短大(ベトナム)や一般大学(ミャンマー)などと連携し、2019年から80人のベトナム人と20人のミャンマー人の技能実習生を受け入れ、全国38の病院に看護補助者として送り出してきた。
 だが、そうした試みを台無しにしつつあるのが円安だ。「日本人と同様の条件」という待遇や条件が、円安という状況変化によってアピール要素にならなくなった。時間をかけて日本語を学んできた人まで、その労を捨てて他の国に働きに出てしまう。「相当大きな変化が起きている」と山本さんは言う。
 経済成長著しいベトナムからの人材は“定員割れ”
 東京・麹町で、ベトナムを中心にASEAN諸国からの人材紹介事業に取り組むNPO法人MP研究会のベ・ミン・ニャットさんも日本向けの人材確保が難しくなってきたと感じている。
 「コロナの前までは『いま募集をしていますか』『次の募集は?』と頻繁に問い合わせがきたのですが、今季はとても少ない。人気のプロジェクトだったんですが……」
 NPO法人MP研究会のプロジェクトコーディネーター、べ・ミン・ニャットさん
 MP研究会は、2015年からベトナムの国立大学で建設系を専攻する学生を日本企業に紹介・育成するプロジェクト(日越人材開発雇用促進プロジェクト)を行ってきた。
 2019年度は50人の枠に5倍の応募があり、国内63社が209人を採用した。そのうち数人はベトナムにUターン帰国したが、9割以上が日本に残って働き続けている。同プロジェクトでは高度外国人材と呼ばれる技術・人文知識・国際業務の在留資格での就労となる。スキルを学ぶ条件で来日する技能実習生とは異なり、すでに高い技能や知識を有しての来日で、技術者が不足する地方の企業には喜ばれたという。
 ところが、新型コロナの影響で来日者数が激減し、受け入れが一旦停止した。さらに2022年以降は円安に。ベトナムからの人材は減り、2022年秋の募集では定員割れになった。
 ニャットさんは、ベトナム経済が好調なところでの円安が響いたという。
 2022年10月には一時期1ドル150円台にも下がった
 「いまはベトナム国内でも、よい企業に就職できれば日本円換算で月10万円は稼げます。経済が発展してきたことで、日本との賃金差は縮まりつつあります。一方で、SNSを通じて、よい話も悪い話もすぐ伝わります。『円安で2割も減る』『あそこはブラック企業だよ』と。多額の借金を背負ってまで、日本に行くべきかと踏みとどまる学生が増えています」
 円が弱くなると、日本で働く外国人が来なくなる。そうなると、特定技能制度も効果を発揮しにくくなる。現状はコンビニエンスストアや飲食店、建設現場に介護施設、農林業や漁業など、多くの業界が外国人労働者によって支えられている。彼らが日本を選ばないとなれば、日本経済が労働力の面で危機に直面することを意味する。
 外国人が働けて暮らしやすい国へ「考え直す時期」
 NPO法人日越ともいき支援会の吉水慈豊代表理事(左)、吉永さんは浄土宗僧侶でもある。右はベトナムから来たチャン・ティー・ミーリンさんと1歳の女児
 ベトナムからの技能実習生らを支援するNPO法人日越ともいき支援会の代表理事を務める吉水慈豊さんは、日本で働けることを売りに外国人労働者を集めるような考えはもう通用しないと語る。
 「もはや受け入れ企業が選ぶ時代から、選ばれる時代へと移っています。賃金もさることながら、福利厚生も日本人と同水準、または円安分の担保を用意できないと彼らに選んでもらえない。優秀な外国人材に集まってほしいのであれば、外国人の視点や発想に立って考え、結婚や育児を含め、外国人が安心して暮らせる環境整備が求められます」
 神戸大学大学院国際協力研究科の斉藤善久准教授は「日本で長く働いてもらう仕組み作りを考えるべき」という
 外国人の労働問題に詳しい神戸大学大学院国際協力研究科の斉藤善久准教授も、賃金の差だけで労働力を呼び込める時代はもう終わったとの見方を示す。
 「『日本に行けば稼げる』と考えるアジアの若者はいまも一定数はいます。しかし、円安で『稼げる』イメージにも陰りが生じている。30年前は人手不足を補う労働力として中国人が主流でしたが、中国の経済発展や少子高齢化で人件費が上がり、ベトナム人が取って代わった。そのベトナムも経済発展で間もなく中国と同じ道をたどるでしょう。円安をきっかけとして、外国人材をどう受け入れていくべきか、真剣に考え直す時期に来ています」
 前出の全日本病院協会の山本理事は、将来不足する介護人材を確保するためには「お金以外の価値を増やす」しかないと指摘する。
 「すでに働いている女性たちからも『資格を取りたい』と聞いていますが、彼女たちが技能実習や特定技能でいる5年間のうちに日本で介護福祉士などの国家資格を取得すれば、実質的に在留資格の定めなく永住できます。もちろん母国に帰りたいという人は、日本で資格を取った後に途中で帰国し、母国の医療機関で指導的な役割を担ってもらってもいい。まずは日本に来た看護補助者たちに『日本の病院で働くのはよい』『日本で暮らすのはいい』と実感してもらうことが大事。彼女たちが日本社会に溶け込めるようにバックアップをしていくのが、受け入れ団体側にとって必要なことだと思います」

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 岩崎大輔(いわさき・だいすけ)
 ジャーナリスト。1973年、静岡県生まれ。講談社『フライデー』記者。政治やスポーツをはじめ幅広い分野で取材を行う。著書に『ダークサイド・オブ・小泉純一郎 「異形の宰相」の蹉跌』(洋泉社)、『激闘 リングの覇者を目指して』(ソフトバンク クリエイティブ)、『団塊ジュニア世代のカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』(講談社)がある
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