🎴3〉─5─団塊の世代800万人の死が目前。超超高齢の多死少生社会。2025年問題。~No.15 

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 2023年1月26日 【前編】火葬後の残骨灰を売却すると1億円超!? 東西で異なる拾骨事情が浮き彫りにした、減りゆく死との接点
 遺骨を拾骨した後、火葬場に残る微細な骨や灰の「残骨灰」はいったいどこへ行くのか? 火葬場で骨上げをする遺族当事者にならないとわからない日本の“死の実情”を探る。
 多死社会に直面する日本の「死の課題」#1
 #2
 #3
 知らないと火葬場でショック! 東西で異なる拾骨事情
 2022年秋に京都市が、“残骨灰(火葬後に残る微細な骨や灰)”から見つかる金やプラチナなどの有価金属を抽出・精錬して売却したことで得られる見込額は1億円超”になるとしたことがニュースになった。
 しかし、『中國新聞』(2019年12月13日掲載)によると、横浜市仙台市浜松市名古屋市など、一部の政令都市ではすでに残骨灰を売却している。取材中に得た知識で〈残骨灰 入札〉で検索したところ、福岡市、岐阜市下関市横須賀市など多くの都市で同様のとりくみが実施されていることがわかった。
 コロナ禍の観光客減により、財政難とされる京都が売却益を得ることで注目されたのか、ネットでも話題になっていた。そこで不思議に思ったのは、「個人資産じゃないの?」や「羅生門の老婆みたい」と感情的なコメントを書く人がいる一方、西日本在住らしき人は「割り切り方の問題かも」や「リサイクルは当然」とクールだったりする東西の温度差だ。
 これを端緒に調べた東京出身・在住の記者は驚いた。「東日本は全部拾骨」、「西日本は部分拾骨」と火葬後の骨上げの仕方が大きく異なっていたからである。そこで、浄土宗の僧侶で京都・正覚寺住職でジャーナリストの鵜飼秀徳さんにその違いを聞いた。
 「西日本は、火葬したあとにすべてのお骨を拾わず、多くの遺骨を火葬場に残すため、残骨灰のことの想像がつきやすく、それが残骨灰売却に対する反応の差になったのではないでしょうか。
 葬送儀礼は地域性が大きく、拾骨に関して、関東はすべてが当たり前、関西は部分。そのため、骨壷も関東は7寸(直径約21cm)、関西は3~5寸(9~15cm)と異なります。また、関東は納骨室に骨壷ごと収めますが、関西では納骨の際に骨壷から遺骨をさらしの袋に移し、土に還しやすい埋葬法をとります」
 東西で葬送儀礼の差が生まれたのは明治維新
 1991年にヒットした『アホ・バカ分布図』(アホ/バカの境界線を探る『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)発の企画)のような東西の差は、令和になっても人間が避けては通れない死に関して残っていた。東西で葬送儀礼が異なる理由は、明治維新まで遡る。
 「江戸時代、都市部は火葬が主流です。人口が多く土地が狭い、また衛生上の問題からですが、全国的に見れば土葬の地方もあり混在していましたが、明治政府が神道の国教化を目指したことで葬儀も神道式になり、全国で100%土葬になりました。
 ところが、土葬はお墓の規模が大きい。武家屋敷を墓地にしても土地不足に陥ったため、なし崩し的に火葬に戻り、コンパクトなお墓が作られるようになりました。成り立ちから考えると、関西の部分拾骨の方が理に適っているでしょう」(前出・鵜飼さん)
 全部拾骨と部分拾骨は、東日本と西日本の境目となるフォッサマグナあたりになる。引用:『火葬後拾骨の東と西』(日本葬送文化学会編/日本経済評論社
 境目では混在。富山県は火葬場ではなくお盆に拾骨する、地域独自の文化がある。引用:『火葬後拾骨の東と西』(日本葬送文化学会編/日本経済評論社
 関西のほうが合理的なのは、県民性もあるのだろうか。だが、ここでハッとしたのが、限られた身内が立ち会う火葬場の文化差は、当事者にならなければ気づけないということだ。
 日本と世界のメモリアル事情に精通する、日本葬送文化学会の会長という専門家である長江曜子さんに、遺族感情の複雑さを聞いた。
 死の接点が顕にした“気薄な現在の葬儀”
 火葬後の骨上げまで立ち会う人は、身内でも限られた人々だ。はじめての骨上げは祖父母だという人は多いだろうが、その場合の喪主は親であり、自身が幼いほど詳細な記憶が残りにくい。ましてや、10代で進学や就職などで実家を離れれば、地元の納骨事情を周囲の話から察する機会も激減する。
 「部分拾骨の中部地区出身の方のお話です。その方が骨上げに立ち会ったことがあるのは全部拾骨の関東のため、それが“当たり前”と思っていて地元が部分拾骨と想像すらしてなかったそうです。骨壷を見て疑問に思ったのは父親の葬儀の夜で、文化の違いを事前に知っていれば全部拾骨をしたかったと言っていましたね。
 また、ずっと部分拾骨の文化圏に住んでいる場合でも、当事者になったら感情的にお骨を火葬場に残すことに耐えられない人からも話も聞きました。その方は火葬場に戻り、もうひとつ骨壷を手に入れて全部拾骨されています。文化の違いは尊重すべきことですが、拾骨で大事なのは遺族が納得するか、しないかですね」(長江さん)
 長江さん、鵜飼さんともに残骨灰の課題が目立つようになった理由のひとつに、就職や進学、また結婚による人の移動で葬送儀礼の「文化の混在化」により気づく人が多くなったことを挙げる。さらに、鵜飼さんは「人生において葬儀に参列する回数の減少も関係する」指摘した。
 「家族葬が増えて参列する回数が減り、新型コロナウイルスの影響で火葬場に出入りする人数が少なくなったことも重なり、弔いが形骸化した印象です。葬儀が家族葬で閉じた空間になる弊害は、死に対するリアリズムを経験する機会が減ることにつながる。
 家族葬が増える前の2005年くらいまでは、近所や会社の人など年1度くらいは参列することも多かったんじゃないでしょうか。“皆のおかげで弔われている”と学ぶ機会だったのですが……」(前出・鵜飼さん)
 町内会が協力するような葬儀は、都心部では失われた文化になっている。そして、コロナ禍以降、2022年は特に著名人の訃報が続いたが、近親者のみで葬儀が執り行うのが主流で、近年はワイドショーで大々的に葬儀の様子が流れることなどは稀だ。
放送の是非があるとはいえ、視聴者にとっては葬送儀礼を垣間見ることで、慣れ親しんだ人の喪失を実感するひと区切りの機会でもあった。
 このように、死との接点は年々体感しにくくなっている。
 一方、多くの人がコロナ禍により日常生活で死を身近に感じる時期にさらされてもいた。死生観がねじれた構造にある中で、ニュースになった残骨灰。
 そういえば、2022年10月にNetflixで公開された『ギルレモ・デル・トロの驚異の部屋』の1話で、借金苦にある登場人物が墓暴きをして遺体から金歯を盗むシーンがあった。残骨灰から有価金属を選り分け売却することは、はたしてこれと同じことなのか。
 #2「団塊の世代800万人の死が目前に。火葬代費用は税金で補填されている現在、火葬後の残骨灰から金歯や貴金属を“採掘”されるのは避けられない?」はこちら
 #3「“お墓事業”は異業種参入のビジネスチャンス? 宗教法人の経営破綻もあり得る時代において、選択肢は骨を残すか煙になるか!?」はこちら
 取材・文・撮影/Naviee
 教養・カルチャー
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 長江曜子 ながえ ようこ
 日本葬送文化学会会長、聖徳大学 生涯学習研究所所長、聖徳大学 児童学部児童学科教授、聖徳大学オープン・アカデミー校長。都営八柱霊園の「石匠あづま家」に生まれ、葬送文化・追悼としての墓地の研究を続ける。『欧米メモリアル事情 デスケア・サービス最新レポート』(石文社)、『21世紀のお墓はこう変わる 少子・高齢社会の中で』(朝日ソノラマ文社)など、葬送儀礼に関する書籍多数。
 鵜飼秀徳 うかい ひでのり
 作家・正覚寺住職・大正大学招聘教授
 京都市嵯峨野の正覚寺に生まれ、新聞記者、雑誌編集者を経て2018年1月に独立した。現在は住職を務める傍ら「宗教と社会」をテーマに執筆活動を行う。著書に『寺院消滅』、『無葬社会』(いずれも日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)などがある。
 Naviee
 編集者、ライター
 東京都出身。ティーン誌編集者を経てフリーランスに。書籍編集、グルメ誌やエンタメ誌で執筆ほか、『バイクで行きたいグルメ旅』をWEB連載(不定期)。
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 2023年1月26日 YAHOO!JAPANニュース 集英社オンライン「【中編】団塊の世代800万人の死が目前に。火葬代費用は税金で補填されている現在、火葬後の残骨灰から金歯や貴金属を“採掘”されるのは避けられない?
 多死社会に直面する日本の「死の課題」#2
 残骨灰の所有権は自治体だが、抽出した有価金属は遺族のもの? 公共福祉である火葬場がフル稼働するだろう2040年代に向けて、すべきこととはなんなのか。
 【画像】団塊の世代800万人の死が目前に。火葬代費用は税金で補填されている現在、火葬後の残骨灰から金歯や貴金属を“採掘”されるのは避けられない?
 800万人が亡くなっていく“超超”高齢化社会の日本
 火葬や埋葬は『墓地、埋葬等に関する法律』で細かく決まっているため、火葬場以外の施設で火葬することは禁止されている。そして火葬場の運営には都道府県知事の許可が必要で、公共施設の扱いだ。なので、残骨灰の所有権は自治体となる。
 このことから、残骨灰から有価金属を抽出・精錬して売却することは法律的には問題ないとされるが、死後の自分が鉱山のように扱われることを不快に思う人もいるだろう。
 そうはいっても、感情面だけで語っていられないのが、高齢化社会となっている日本の現状だ。約800万人いる団塊の世代後期高齢者となる2025年にかけて、日本は多死社会に入る。
 年間死亡者数はピーク時には168万人と推測され、2021年の143万9809人より約25万人増。火葬場がフル稼働するのは想像に難くない。残骨灰が課題になる背景には、この火葬場の事情がおおいに関係しているようだ。
 火葬料は地域により金額がまちまちで、公営の火葬場であれば無料や数千円程度の自治体もある。浄土宗の僧侶で京都・正覚寺住職でジャーナリストの鵜飼秀徳さんいわく、京都の火葬料の相場は1万5000円程度だそう。その理由を日本葬送文化学会の会長・長江曜子さんに教えてもらった。
 「火葬は公共福祉ですから費用は税金から補填されています。その地域で市民として納税や義務を果たしていた方というのを根拠として、原価から減額されているんですね。ただ、人を瞬時に骨にするには、莫大なお金がかかります。ひとりあたり約10万円程度ですが、燃料費の高騰で今はもう少し高くなっているのではないでしょうか」
 京都を例にすれば、ひとりにつき単純計算で8万5000円が補助されている計算だ。多死社会のピークに向けて、燃料だけでなく老朽化した施設修繕も含め、火葬まわりの支出が膨れ上がるのは確実だろう。
 死は個人の問題ではなく公共性という事実
 「村八分」とは、村の掟や習慣を破った者に対して課される制裁で、ほかの住民が結束して、その家と絶交することだ。但し、火事と葬式については例外であった。埋葬まで行わなければ衛生上の問題が起きるためで、古来より死は公共性を伴っているのだ。
 「そもそも、死を見送るのは自分ひとりではできないので、弔うには相互扶助の精神がないといけません。火葬から埋葬まで、近親者が残っていない人でも公務員や誰かが立ち会い、お見送りされます。ところが、死の話題はタブーとされ、議論することではないとされていることから、実情を知る機会が少なく、また公共教育がありません。かつては公共教育がなくても地域で行われる法事で自然と学んでいましたが、それも現在は失われています。
 どう死んでいくのかを学ばずして、どう正しく生きるのかはわかりません。社会の中で、死がどのように機能しているのか。故人の尊厳を守りながら、知る必要がある時代にきていると思います」(前出・鵜飼さん)
 公共性に重きをおけば、自治体が有価金属を売却して火葬場の施設運営費に充てることは次世代につながる人生最後のご奉公と思えるかもしれない。逆に、個人に重きをおけば何ひとつ他者には渡したくないと思うのも一理ある。
 共同体の一員として、死をどう振る舞うのか。それを考えるための知識も情報も経験値も、すべて足りないのが現在の日本なのだ。
 「なぜ残骨灰の売却を決めたのか。自治体は丁寧に説明し、火葬には費用がかかることの情報も開示する必要があります。国民的感情に配慮しなければ、理解は得られません」(前出・長江さん)
 「売却益は公明正大な使われ方をしなければいけません。民間の入札により不透明な部分があるために生じていただろう疑問の解消も必要でしょう」(前出・鵜飼さん)
 残骨灰から抽出される有価金属が自治体に渡るのが許せないのであれば、時計や指輪など貴金属を棺に入れない。金歯も子孫が相続する権利があると思えば、その口から歯をペンチで引き抜けばいいのだ。
 見送る人間の我欲を優先するのか、故人を思い出の品とともに見送るのか。火葬場は自身の人間性と向き合う場ともいえる。
 残骨灰はどこへ行く?
 有価金属を選り分けられた残骨灰は、どうなるのか? 公共福祉である、火葬に税金が補助されていると頭では理解しても、“行方の説明”がなければ、死後の自分が物のように扱われる不安がつきまとう。
 「自治体により方法は異なるとはいえ、供養をしています。また、自然サイクル保全事業共同組合が、『全国火葬場残骨灰共同供養会』を行っていますね。以前、大阪の方から合同供養に出席し、息子さんを見送ったことで気持ちが晴れたと聞いたことがありますから、火葬場に聞くなどして参加されるといいかもしれません。
 骨は物ではないので敬意をもって取り扱わなければいけませんから、このようなことも含めて情報を表に出すことで、得られる安息もあると思います」(前出・長江さん)
 ダイオキシンほか有害物質が付着している場合もある残骨灰。有価金属を抽出するだけでなく、有害物質の除去も行われた上で各自治体は供養をして最終埋葬地に納骨している。誰にでも平等に訪れる死に対して、基本的には故人の尊厳を最大限に守っているのだ。
 そして、各自治体も残骨灰の取り扱いについて市民に問いかけはじめている。
例えば、大分市は2022年9月に有識者を集めて残骨灰処理のあり方について検討会を開き、市民アンケートを行ったことが、小さい扱いながらニュースになった。
 『令和4年度さいたま市インターネット市民調査』にも、設問があった。結果は、「残骨灰が残ることを知らない」が43.7%、「残骨灰に有価物が含まれていることを知らない」が54.6%、「火葬残灰の有価物を火葬場運営に役立てている市町村があることを知らない」が85.4%で、認知度は低い。それでも、設問されることで、知られていない事実を知ることが重要だ。
 ※さいたま市は有害物質を除去、供養して埋蔵
 残骨灰にまつわる情報が徐々に広まっている傾向にあるが、「2025年問題」を控えて議論がより活性化することが望まれるのが、日本の現在地といえる。
 取材・文・撮影/Naviee
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 1月26日14:01 集英社オンライン「“お墓事業”は異業種参入のビジネスチャンス? 宗教法人の経営破綻もあり得る時代において、選択肢は骨を残すか煙になるか!?
 多死社会に直面する日本の「死の課題」#3
 埋葬のトレンドは「樹木葬」と、多様性の時代に突入しているが、本当に墓石はいらないのか? 自分自身を見送るのにも不可欠な準備とは?
 【画像】“お墓事業”は異業種参入のビジネスチャンス? 宗教法人の経営破綻もあり得る時代において、選択肢は骨を残すか煙になるか!?
 多死社会を前に人気の樹木葬コスパ最強?
 多死社会に向かっている都市部では、お墓の確保が大問題である。集団就職で都市部に移動した人が多い団塊の世代800万人が2040年代にかけて鬼籍に入り、田舎のお墓を他の近親者が継ぐのであれば、現在住む都市の近くでお墓を購入することになる。
 ところが、首都圏はとっくに公営墓地の空きがない。民間の墓地は、抽選の上に永代供養料は200万円とも300万円以上ともいわれ、墓石の購入も必要なため経済的負担が重くのしかかる。そこでいま、注目されているのが一般的なお墓以外の形態だ。
 『第13回お墓の消費者全国実態調査』(2022年/鎌倉新書)によると、購入したお墓の種類は「樹木葬」が41.5%で、3年連続のシェア1位。「一般墓石」が25.8%、「納骨堂」が23.4%と続く。平均購入価格は、「樹木葬」が69.6万円、「納骨堂」が79.4万円、「一般墓石」が158.7万円。ほかには海洋葬やデジタル葬もあり、お墓事情も多様化の時代に突入している。
 日本葬送文化学会の会長・長江曜子さんは「樹木を墓石の代わりにして周りに埋葬する樹木葬が注目されはじめたのは12年ほど前で、兄弟で入る2人用、夫婦と未婚の子供が入る4人用が売れていますね。おひとり様用はまだ売れていません」と現状を教えてくれた。
 各家庭の事情により一般墓石以外を選んでいる様子だが、この流れに警鐘を鳴らすのは、浄土宗の僧侶で京都・正覚寺住職でジャーナリストの鵜飼秀徳さんだ。
 「樹木葬は野山に咲く木々といったイメージがよく、墓石もプレートだったりするのでコストもかからない。ところが、肝心の樹木は霊園の片隅にあることや、しだれ桜の下のドラム缶にお骨を入れた合葬の場合が多いんです。生前に現地を確認しなければ、ご自分がイメージするようには埋葬されません」
 2000年から本格的に広まった墓じまい(墓石を撤去し、墓所を更地にして使用権を返却すること)にも疑問を呈す。
 「自分は“墓がいらない”から撤去するというのは、自分勝手だと思います。子供が先に死ぬ場合も、孫が先に死ぬ場合もあります。その時、同じように言えるのでしょうか? 継承者がいるにも関わらず墓じまいするのも考えもので、いざその時に困るのは自分です。先祖がいるからこそ自分が存在するんです。お墓が必要になった時に入る場所がないという、想像力の欠如による墓じまいのトラブルは枚挙にいとまがありません」 (前出・鵜飼さん)
 死ぬ前に人生で一番の見極め力を発揮せよ
 お墓は「足りない」「墓じまい」など、これまでも問題に焦点があたっていたが、もっともセンセーショナルだったのは2022年10月下旬に北海道札幌市の納骨堂「御霊堂元町」の倒産だろう。こんな事態を予想して購入する人なんていないはずだ。
 「お墓は破綻してはいけないビジネスにも関わらず、杜撰な経営だったのでしょう。納骨堂で利用期限が終われば合葬するタイプは、管理料を別途払わなくていいので購入しやすいのが利点です。
 ただ、納骨堂は土地の権利ではなく、地上権を買うもの。経営が破綻したからと購入者の納骨堂の使用権は取り上げられませんが、別の会社が事業を継続するのか、税金が投入されて合葬されるのか。扱いが不透明です。
 墓地の経営は公共団体・財団・宗教事業型がありますが、多死社会ではビジネスチャンスでもあります。困っているお寺に墓地経営をもちかける異業種からの参入、大手が下請けに丸投げするような目先の利益にとらわれた経営が増えることが懸念されます。“宗教法人は倒産しない”幻想を持ちがちですが、倒産は現実にありますから、契約内容をしっかり確認するという買う側の見定めが肝心です」(前出・長江さん)
 さらに、長江さんは別の問題も提議する。
 「65歳以上の3世代同居は10%以下です。伴侶のどちらかが亡くなった後は、ひとりで死ぬことになります。お墓があっても納骨する人がいないということになりますから、弁護士や司法書士などに死後事務委任の契約をしておくことです」
 そんな死後にまつわる世界は、今後どうなっていくのだろうか?
 「いずれ遺骨を全て燃やしきり、煙にするようになると思います。お墓を作りたくない、必要ないと思う人が出てきますから。核家族化がすすみ、今後は子供の有無にかかわらず、孤独死が大きな問題になります。近親者がいない場合は自治体葬になりますが、遺骨を誰がどう扱うかという話も煙になってしまえば解消します。
 また、遠縁の方がいても、1回くらいしか会ったことがなければ遺骨の引取を拒みがちですし、親の遺骨であっても同じように考える人が一定数出るでしょうから、煙にすることを選ぶと思います。相互扶助の精神が失われた、個人主義で薄情な世の中になりつつありますね」(鵜飼さん)
 なんとも切ない話だが、家族だけでなく、自分自身を見送るのにも相応な準備が必要な時代ということなのだろう。
 取材・文・撮影/Naviee
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