🎴2〉─3・A─結婚しない、子供を産まない社会とは死が漂う多死社会である。~No.4 

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 少生多死社会には、夢も希望もない死が漂う陰気な社会である。
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 2023年2月5日 YAHOO!JAPANニュース AERA dot.「多死社会目前、暗くて悲しい従来の「葬」を超える新しいデザインに注目度が高まる〈AERA
 狭山湖畔霊園の「管理休憩棟」。建物外部の水盤に映る四季折々の景色と水面の揺らぎが天井に反射して、内部に敬虔な雰囲気を作り出す(撮影/写真映像部・高野楓菜)
 団塊世代後期高齢者になり、やがて日本は「多死社会」に。それなら墓地や墓標にだって、カッコいいデザインがほしい。暗い、悲しい、冷たい「葬」を刷新する動きがある。AERA 2023年2月6日号より紹介する。
 【写真】狭山湖畔霊園の「狭山の森 礼拝堂」
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 1998年から2010年まで、世紀をまたいで一世を風靡(ふうび)したドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)」シリーズ。NYを舞台に4人の女性が、甘く、辛く、それぞれの人生を謳歌する、おしゃれでウィットに富んだ物語だ。21年には10年以上の年月を経て、待望の続編「AND JUST LIKE THAT…/セックス・アンド・ザ・シティ新章」が世界各国で放映・配信され、話題を呼んだ。
 ここでファンたちに衝撃を与えたのが、第1話で主人公キャリーのパートナー「ビッグ」に死が訪れたこと。50代、60代に突入した登場人物たちに、時の流れがしのびよる展開だ。
 しかし、キャリーは涙を流しながらも、美意識へのこだわりを捨てない。従来のお花だらけの甘ったるい葬儀を拒否して、NY流のスタイリッシュなセレモニーを執り行う。さすがのファッショニスタぶりなのである。
 キャリーと同じく、かつて若かった私たちにも、現実は容赦なくやってくる。
 国立社会保障・人口問題研究所の統計「日本の将来推計人口(17年度)」によると、20年に138万人だった日本の死亡者数は、40年には168万人に増加する見込み。昨年から来年にかけては、日本人口の最大ボリュームである団塊世代が全員、後期高齢者になる。多死社会は目前に迫っている。
■座禅の半眼モチーフに
 一方で、近年に顕著な動きが「墓じまい」だ。厚生労働省の「衛生行政報告例」では、お墓の引っ越しを意味する「改葬」が、20年度は約11万8千件で、20年前の6万9千件から比べると、1.7倍に増えた。
 家族のあり方とライフスタイルが変わる中で、先祖代々の土地で「家」を継承する従来の墓の形は、だんだんと時代にフィットしなくなっている。経済的、時間的に負担が大きいのであれば、さらに、その形が避けられていくのは必至だ。
 となれば、従来の「葬」を超える新しい概念、デザインが日本にも登場していい。都会ではすでにマンション型や宗派不問、合祀などの形で、お墓の合理化が進んでいるが、一方で、建築家、アーティストらが、暗い、悲しい、冷たいといった「葬」のイメージを変えていく事例も登場している。
 関東平野の西部、狭山丘陵の風光明媚(ふうこうめいび)な自然の中に位置する「狭山湖畔霊園」は、歌手の故・尾崎豊さんのお墓があることで知られている。同時に、建築家の中村拓志さんが手がけた斬新な「管理休憩棟」(13年完成)、「狭山の森 礼拝堂(らいはいどう)」(14年完成)が注目を浴びている。
 お墓参りや法事に集う人たちのための管理休憩棟は、座禅の「半眼」をモチーフに、軒を極端に低くした平屋が、周囲の自然に溶け込むようにたたずんでいる。建物の外側には水盤が設けられ、そこに建物が浮いているような幻想的な趣だ。
■50カ国以上から見学
 内部に入ると、視線の高低によって、二つの違った景色が味わえる。立っている時は、外の眺めが遮断され、おのずと心の内側に意識が向くように。座ると今度は、水盤の向こうに広がる森林の景色が視界に入り、人が自然とともにあること、そして死もその一部であることを、思わせてくれる。
 少し歩いた先にある礼拝堂は、管理休憩棟の水平的な構成と対比して、垂直のラインが圧倒的な迫力を持つ建物だ。251本のカラマツ集成材が「合掌造り」で組まれ、構造をそのまま生かした内部が、森の聖性をダイナミックに表現する。
 静謐でありながら、強い存在感を放つ建築は、数々の建築賞を受賞し、世界中の建築好きの間で「マスト・ゴー(見に行くべき)」の場所になった。運営元の公益財団法人「墓園普及会」によると完成以来、50カ国以上から見学者が訪れているという。
 同財団理事長の大澤秀行さんは、墓地の供給・管理事業に携わる一方で、現代美術コレクターとしてもキャリアを重ねてきた。その審美眼をもとに、兵庫県で運営する「猪名川霊園」では、モダニズム建築の世界的権威、デイヴィッド・チッパーフィールドさんを起用した。
 墓じまいの機運が進む中で、墓地事業は新規投資が見込めない領域とみなされがちだが、同財団では逆に、高度なブランド化を進めることで、将来的な発展を図る。その際に鍵となるのが、世界に発信できるデザインなのである。
 手がけた中村さんは語る。
 「狭山湖畔霊園では『祈り』の建築を作りたいと思いました。建築は言葉を発しませんが、空間全体で来る人の気持ちに寄り添うことができる。『死』は建築家にとって避けるべき言葉ではなく、むしろイマジネーションを広げてくれるものなのです」
■死は永遠を意識できる
 「死」をめぐる哲学的思考と建築家の構想力は、相性がいい。著名な建築家による墓地の名作は、内外に数多く存在する。
 筆頭として挙げられるのが、北欧の巨匠、グンナール・アスプルンドによる1900年代前半のマスターピース「森の墓地(スコーグスシュルコゴーデン)」だ。ストックホルム郊外の森林と丘を、そのまま生かした景観の中に火葬場、礼拝堂、墓標などが、ひっそりと、おごそかに配置されている。
 産業革命以来、鉄とコンクリートの「近代的」な建築が世界を席巻する中で、古典的な情緒をまとった森の墓地は、時を超えて人々の共感を呼び、94年には、20世紀以降の建築として初めて、ユネスコ世界遺産文化遺産)に登録された。
 日本でも、槇文彦伊東豊雄安藤忠雄隈研吾ら、当代の一流建築家が、墓園、火葬場、葬祭場などを設計した例は多い。
 隈さんは、室内墓所など今日的なものも手がけながら、自身の家のお墓を究極のモダニズムで作ったり、仏壇や棺桶(かんおけ)のデザインに挑戦したりしてきた。
 「棺桶は市場性の観点で、まだ商品化は見込めていませんが、いずれ需要はあると思っています。高度成長時代に『死』『老い』は社会から覆い隠されていたけれど、建築家にとって、それらは永遠を意識させてくれるいいテーマ。短期的に消費されるのではなく、長い時間軸で建築を人々に見つめてもらうためのキーワードになります」
 隈さんは91年に東京都内で、自動車メーカー・マツダショールーム「M2」を設計し、その挑発的なデザインがバブルの象徴として、建築界から激しいバッシングを浴びた。バブルが弾けた後、建物は葬祭事業者に売られ、03年に斎場の「東京メモリードホール」として生まれ変わった。
■樹木に遺伝子埋め込む
 「完成当時は斎場に転用されるとは思ってもいませんでしたが、そうやって時代とともに命を永らえていくのは、建築の運命として、むしろ望ましい。建築はキラキラするものだけのためにあるのではない」
 と、隈さんは肯定的だ。
 墓地や葬祭場だけでなく、今は墓標にも革新的な概念が登場している。
 バイオアーティスト、福原志保さんとゲオアグ・トレメルさんが04年にイギリスで発表した作品「Biopresence(バイオプレゼンス)」は、バイオ技術により、樹木に故人の遺伝子情報が埋め込まれた新時代の墓標だ。この作品は、先鋭的な発想とともに、そのような操作が、倫理的に許されるのかという物議をかもした。
 「議論がわきあがった時点で、作品としては成功したと思っています。死は決して怖いものではなく、生の延長にあるとイメージが変わることで、今を生きる気持ちも強くなる。時代がだんだん作品を許容する雰囲気になってきていることも感じます」(福原さん)
 まだ実現には至っていないが、私なら冷たい墓石よりも、樹木の方に親しみを持つし、そこに自分の遺伝子が残るという感覚は、どこかホッとする。さらに、その墓標のあるところが、カッコいい墓地だったら、もっとうれしい。
 ちなみに狭山湖畔霊園で、見るからに高グレードな区画の価格をたずねたら、郊外の2DKマンションに匹敵するものだった。現世のビジネス視点でいえば、まさにブルーオーシャンがここにあるのだ。(ジャーナリスト・清野由美)
 ※AERA 2023年2月6日号」
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