⛲13〉─3・C─日本は高齢者だけのものではない、多数派の横暴は許されるのか?〜No.47  

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 2023年3月16日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本は高齢者だけのものではない、多数派の横暴は許されるのか?
 日本そのものの高齢化が根本原因だ
 写真提供: 現代ビジネス
 バブル崩壊以来、日本が失われた○○年などという言葉で表現されたような状況に陥った原因は複数ある。
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 まずは、バブル崩壊以降つい最近まで数十年にわたって続いた「デフレ経済」である。特に2021年6月19日公開「米国企業が『デフレ』に強く、日本企業が『インフレ』に強い、納得の理由」で述べたように、日本経済は「デフレに弱い」ためうまく対応できなかった。
 さらに、バブル崩壊の原因は、昨年7月31日公開「日本の課題・競争力復活、その秘密は『現場重視』の日本型経営にあり」5ページ目「日本企業疲弊の原因」で述べた「本来の日本型経営」を忘れバブルに踊った無能な経営者にある。
 しかし、彼らはそれを棚に上げ「欧米(特に米国)型経営こそ正しい」と吹聴し、何の工夫もせずに多くの日本企業がそれを取り入れた。それも長年にわたる日本経済不調の原因である。
 しかし、意外に忘れられているのは「日本そのものの高齢化」である。いわゆる「少子高齢化」はかなり前からうんざりするほど騒がれているがそのようなことではない。
 日本を構成する人々が高齢化することにより、政治・社会システムあるいはメディアも高齢化しており、それが日本の進路を誤まらせる結果になっているということである。
 国土交通省の平成21年度「国土交通白書」序章第1節「大きな変化の中にある日本」によれば、1960年に約29歳であった日本の平均年齢は、1980年の約34歳を経て2008年時点では約44歳となった。そして現在は48歳を越え50歳に迫る勢いだ。
 ベトナムの現在の平均年齢が約33歳であるから、1960年当時の日本は驚くほど若い国であったが、現在は富裕層の引退先として有名なモナコに次ぐ世界第2位の「高齢国」であるとの資料もある。主要国の中で「世界最高齢国」であることは間違いないであろう。
 これは「日本という国の考え方そのものが高齢化」していることに他ならない。1960年当時の日本人から見れば、現在の日本は「年寄り臭いことばかり言って、覇気の無い国」になっているのではないか。
 「年より臭いことばかり言って、覇気の無い国」のまま、どのような「改革」を行おうとしても結局は上手くいかない。例えば年寄り臭い発想のまま行う「少子化対策」が効果を発揮しないのも当然だ。
 老犬のトリック
 さらに、社会全体が「年寄り臭く」なることによって、(人口構成では少数派=マイノリティになりつつある)若者の大事な未来を押しつぶすという現象も起こっている。
 だが、年を取ることそのものは決して悪いことでは無い。例えば、昨年12月21日公開「『金持ちは長生き』で『貧乏人は短命』って本当だが、貧富の差だけが理由じゃない」で登場したウォーレン・バフェットは92歳、相棒のチャーリー・マンガーは99歳である。
 彼らが「世界一の現役投資家」である事に異論は無いだろう。そして、バフェットは「老犬のトリック」という言葉をしばしば使う。「老犬は子犬に比べて体力的にははるかに劣るが、長年の人生(犬生? )で培った『知恵』を持っている」ということだ。
 バフェットは11歳から(株式)投資をしているわけだから、もちろん「老犬のトリック」を持たない時期もあった。しかし、その時には「年上の人間から教えを乞う」事によって補っていた。20歳の時に、彼が生涯の師匠となるベンジャミン・グレアムの著書を読んで感銘を受け、押しかけるようにして弟子になったことは有名である。
 また、バフェットは大変な読書家で「苦労して自分で体験しなくても、本を読めば多くのことを理解できる」とも述べている。要するに高齢者どころか、「先人の知恵」を最大限に活用せよということだ。
 そして、半世紀以上も続き、今年も3月2日公開「『大乱』こそが投資のチャンス! 『バフェットからの手紙2023』を読み込む」で解説した「バフェットからの手紙」では、「バフェットの知恵」を次世代に伝える努力をしている。
 このように、人生経験を積んだ高齢者は、社会に多くのものを与えることにより貢献できるのだ。つまり、高齢者は若者が持たない「トリック」をアドバイスすることによって、未来ある彼らを全面的にサポートすべきだということである。
 高齢者は、まずわが身を振り返るべき
 もちろん、多くの読者が感じているように、バフェットやマンガーは極めて恵まれたケースである。だが、その気になれば高齢者が若者をサポートする方法はいくらでもある。
 そのためには、まず高齢者が「国の宝」である子供や若者に対して愛情を持った温かい目で接する必要があるといえよう。
 新聞テレビなどの既存メディアはすでに「高齢者御用達」であるから、若者に対する「年寄りの小言」が繰り返される。さらに、ネットメディアでも、最近は高齢のユーザーが増えてきたせいか、同じような現象が見受けられる。
 要するに、「若者の未熟な行為を非難してばかり」という事である。だが、若者が「未完成」であるのは当然であるし、だからこそ伸びしろ=将来がある。
 また、したり顔で若者を非難する高齢者も、生まれた時から高齢者であったわけではない(老子は白髪の老人として生まれてきたという伝説があるが……)。彼らもかつては、ひ弱な子供、あるいは未熟な若者であったはずだ。
 「公園使用禁止問題」の是非
 象徴的なのは、いわゆる「公園使用禁止問題」である。
 公園で遊ぶ子供たちの声などがうるさいという主張を全面否定することはできない。だが、だからと言って、公園の使用に制限を加えたり、禁止したりすべきなのだろうか? 
 忘れられがちな論点は「子供の健やかな成長に公園が必用だからこそ公費で設置されている」という事である。
 ドラえもんなどのアニメでは、土管が積まれた空き地がよく登場するが、そのような場所を見つけることができない現在、公園は「子供たちの必需品」である。公園で思う存分暴れまわることが、将来の人格形成にも重要だ。部屋にこもってゲームに熱中するよりも健康に良い。むしろ、子供たちを積極的に公園で遊ばせるよう、行政は力を尽くすべきである。
 しかも、夜中に騒いでいると言うわけではない。真昼間に、公園で元気に遊ぶ子供を「うるさい」としてクレームをつける高齢者の気持ちが正直理解できない。
 もちろん、個別の事情があるかもしれないから、一刀両断にはできない。しかし、現在行われている議論においては「公園が子供の成長の必需品」であるという視点が抜け落ちているし、子供たちに対する愛情も感じられない。
 同様に、若者を導いて育てようという愛情が感じられない、高齢者の重箱の隅をつつくような「減点主義」が若者を窒息させているように思える。繰り返すが、高齢者は若者のサポーターであるべきなのだ。
 年金保険料を払っているのは誰?
 さらに、付け加えれば、高齢者が土・日はもちろん平日の昼間から在宅して、余生を過ごすことができるのも、年金のおかげだ。つまり、子育て世代を含む現役が、自分の仕事を懸命にこなして稼ぎ、生活費、育児・教育費用の他に高額な年金保険料を払っているからこそ、高齢者が豊かな老後を過ごすことができるということだ。
 確かに、2019年7月22日公開「年金は巨大な『国営ねずみ講』だから、負の所得税に一本化すべきワケ」や、昨年1月15日公開「親方日の丸の巨大産業・医療-年金だけでなく健康保険も破綻はある」で述べたような問題は、政府の無策によって生じた部分が大きい。
 だが、そのような政策を行った政治家を選挙で選んできたのも、現在の高齢者だ。さらに、現在生じている社会問題の多くも、(現在の)高齢者が現役時代に種がまかれた。
 今、日本で暮らしている子供や若者達には、微塵の責任も無いことが明らかである。問題に対する責任を負うべきだとすれば高齢者だ。
 ところが、その責任の無い子供や若者たちに、問題の責任を負う高齢者が小言を繰り返しているのが、日本衰退の原因と思える
 若者の長所を伸ばすのが人生の先輩の役割
 2021年1月25日公開「企業競争力の源泉=個々の従業員の長所は後からいくらでも伸ばせる」5ページ目「長所進展法が最良戦略か?」で述べた船井幸雄氏の長所進展法は企業経営において極めて有効な戦略だ。
 また、2019年7月11日公開「人工知能時代に生き残るのは、意外と『こんな上司」だった」で述べたように、ドラッカーも「部下のあらさがしばかりをしている上司は、会社の雰囲気を悪くするから即刻解雇せよ」と主張する。
 また、欠点を見つけて直しても「並」にしかならないが、長所はいくらでも伸びるとも述べた。そして、「企業の優劣を決めるのは『並の能力』、ではなく『突出した長所』である」と指摘する。つまり、長所を伸ばすのが優秀なマネージャーだ。
 これは、会社だけではなく国家でも同じだ。若者が未熟なのは当たり前である。指導が必要な場合もあるが、至らない点ばかりを指摘していれば、社会(国家)が腐る。
 若者の長所を見つけて伸ばすのが、高齢者の役割(サポーター)であるべきだと考える。子供の声が公園から聞こえない国などすでに死んでいるとさえ思える。
 前記「『大乱』こそが投資のチャンス! 『バフェットからの手紙2023』を読み込む」7ページ目「今まで死ななかった人間はいない」で、チャーリー・マンガ―が「自分の訃報がどのように伝えられるかをイメージしながら人生を生きるべきだ」という内容の発言をしていることに触れた。
 特に私を含めた高齢者は、自分の足跡が次世代にどのように伝えられるのかをじっくりと考えながら行動すべきではないだろうか。
 大原 浩(国際投資アナリスト)
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