⛲45〉─3・O─62歳女性おひとりさまが陥る「友人という病」。~No.259 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2023年3月19日 MicrosoftStartニュース サライ.jp「【友人という病】「女友達と過ごす理想の老後はただの夢だった…」62歳“おひとりさま”が後悔する、友人との同居生活~その1~
 シスターフッド(女性同士の連帯)を描いた映画やマンガがヒットし、女性同士の友情が注目されている。しかし、現実は、うまくは行かない。これは女性の友情の詳細をライター・沢木文が取材し、紹介する連載だ。
 【友人という病】「女友達と過ごす理想の老後はただの夢だった…」62歳“おひとりさま”が後悔する、友人との同居生活~その1~
 © SHOGAKUKAN Inc.
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 最近、「カサンドラ症候群」という言葉をよく見かける。これは、発達障害傾向があるパートナーと意志の疎通が円滑にできないことに悩み、不安や抑うつなど、心身が不調になることを指している。
 ちなみにカサンドラとは、ギリシャ神話に出てくる王女の名前だ。彼女は予知能力があったが、アポロン神に呪いをかけられ、自分の予言を誰にも信じてもらえなくなる。その結果、悲劇の予言者となってしまうのだ。
 「同居している友人が、おそらく発達障害傾向があるかもしれない。パートナーだけでなく、友達でもカサンドラ症候群になることもあるのではないでしょうか」と話すのは、愛知県に住む麻紀さん(62歳)だ。
 建築会社で定年まで勤務、父親のDVで独身を選ぶ
 麻紀さんは地元の短大を卒業後、上京する。会社員として勤務し定年まで勤めあげた。
 「中堅の建築会社で総務のまま定年を迎えました。私がいた部署は、花形の設計や営業などとは異なり、とても地味な部署。“お局の吹き溜まり”“お局の姥捨て山”などと揶揄されていました」
 世代的に「寿退社」や「肩たたき」などのプレッシャーもかけられたのではと推測する。しかし、麻紀さんが勤務していた建築会社は、処理する事務の量が膨大な割に、いつも人手不足。出世街道から外れた男性社員が課長以上のポストに就いており、皆優しくセクハラもパワハラもなかった。
 「目立たない部署だから定年までいられました。それに、女性は給料がそもそも安いからリストラにさえ遭わなかった。私、最後まで手取りの給料が20万円以下でしたから。年収は300万円もなかったですよ」
 麻紀さんは会社の居心地がよかったこともあり、結婚をしなかった。小柄で目立たず愛らしい雰囲気だから、「お嫁さんにしたい」と言われたこともあったという。
 「父親がいわゆるDVだったんです。対外的にはいい人なのに、家族にはひどかった。兄は父に殴られて家出を繰り返し、音信不通に。去年、連絡があり独身のまま新潟県で亡くなったそうです」
 兄は心筋梗塞で倒れ、救急病院に搬送されたものの、処置を受けて自宅に返されてしまい、その後亡くなったという。手術や入院の保証人となる家族がいないため、退院させられてしまったのだ。市役所の担当者から、麻紀さんに連絡があったという。
 「コロナもあり、火葬されていました。遺骨をもらいウチの墓に入れることにしました。私という妹がいたから、兄は無縁仏にならずに済んだ。でも私には頼れる親族が誰もいない。東京で老後を過ごすのはかなりお金がかかり、誰かに迷惑をかける可能性がある。だから地元に帰ることにしたんです」
 【東京の家を処分し、実家に帰る……次のページに続きます】
 親が元気なうちに終活をする
 麻紀さんは、盆と正月には実家に帰っていた。退職後、実家に戻る話をすると、両親は喜んでくれた。
 「兄が先に逝ったこともあり、親は喜んでくれました。兄の死の経緯を調べるほど、死ぬというのは大変なことだとわかり、終活を始めたのです。親の財産目録を作り、定期購入しているサプリなどを聞き、親族の一覧表を作り……気が遠くなるような作業でしたが、総務畑40年の底力を発揮し、がんばりました」 
 実家に戻ってから1年目、父親が88歳で亡くなる。自転車に乗っていて転倒したのだ。即死だったという。それにショックを受けた母親は目に見えて衰えていき、半年後にこの世を去った。葬式から目まぐるしい事務処理で忙殺されたという。
 「すべてが終わった後に、たったひとりになってしまった。足元がすくむような孤独に襲われているときに、まとまったお金があるから家を建て替えようと思ったんです。近くに大学があるので、下宿として貸し出せるように、玄関共用の二世帯住宅タイプにしました。下宿側にはミニキッチンと小型の浴室をつけました」
 総務勤務とはいえ、元建築会社の社員。納得がいく家を建てることができた。近所の人に入居者を募集していることを話すと、麻紀さんの高校時代の親友だった良子さん(62歳)が離婚し、家を探していると聞く。
 「60歳だと家も借りられず、大変だという。明るくて社交的な良子と暮らすのもいいと思ったのです。良子に20年ぶりに会うと相変わらず、明るくて楽しい。私も家賃が入ることはありがたいし、正直、見ず知らずの人に貸すのは不安だったので、すぐに賃貸契約書を作り良子に家を貸すことにしたのです」
 玄関に入ると、麻紀さんの部屋の扉があり、良子さんに貸し出す家の扉があるという構造だ。いずれも施錠ができ、プライバシーは確保されている。
 「今、良子に家を貸し出して半年です。最初のワクワクはすでになく、良子の部屋の物音を聞くだけでも気分が滅入る。そして、良子が家にいるうっとうしさ……家にいるのが苦痛で、ホテルに泊まりに行くこともあるんです。老後資金がじわじわと食いつぶされているのが本当につらい」
 良子さんは、朝から昼にかけて近くのお菓子工場に働きに行っている。この間だけがホッとするのだという。
 【明るいというのは、うるさいということ……その2に続きます】
 取材・文/沢木文
 1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。
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