🌁48〉─1─学校の多様化。増加する外国にルーツを持つ学童達。~No.221No.222No.223 ㉛ 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 少子高齢社会で日本人の子供が減少し、増える外国人移民で外国人の子供が増加する。
   ・   ・   ・   
 2023年2月27日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済education × ICT編集部「地域格差が深刻、「外国ルーツを持つ子ども」の教育で教員が果たす重要な役割
日本国籍あるかないかは関係ない、問題の本質
 過去にはブラジルやペルーなど南米から、近年はベトナムなどアジアから。社会情勢に応じて各国の就労者を集める日本だが、定住した彼らが子どもを育てるための環境はまだまだ整っていない。国内の人口は減少し難民の受け入れも求められる昨今、移民とその子どもを排除することはもはや現実的ではないはずだ。多様なバックグラウンドを持つ子どものために、一人ひとりができることは何か。外国にルーツを持つ子どもの教育の状況を調査してきた、東洋英和女学院大学講師の山本直子氏に聞いた。
 さまざまなトラブルが認識されやすい「移民の集住地」
 「国内で就労する外国人の増加とともに、日本の学校に通う外国人の子どもが増えています。外国人の集住地では日本人住民とのトラブルも起き、20年ほど前にはゴミ出しのルールや騒音トラブルでメディアに取り上げられることもよくありました」
 こう語るのは、東洋英和女学院大学の国際社会学部で教える山本直子氏だ。2010年ごろから東海エリアや北関東の外国人集住地で、地域の学校と子どもを対象にしたインタビュー調査などのフィールドワークを行ってきた。近年では全国の自治体が持つデータを比較・分析する研究プロジェクトにも参加。さまざまな側面から外国ルーツを持つ子どもの生活の実態を追っている。
 山本直子(やまもと・なおこ)
 東洋英和女学院大学国際社会学部国際コミュニケーション学科専任講師。2019年、慶応義塾大学大学院博士課程修了(社会学)。日本語教師のボランティア活動をきっかけに移民の生活に興味を持ち、社会人経験を経て大学院へ進んだ。東京都立大学 子ども・若者貧困研究センター特任研究員、慶応義塾大学非常勤講師なども務める。
(撮影:尾形文繁)
 「私が最初に調査をした愛知県の豊田市では、1989年に出入国管理及び難民認定法入管法)が改正されたことで、ブラジルなど南米からの労働者が急増しました。受け入れあっせん業者が借り上げた公営団地では、居住者の約半数が自動車工場で働く外国人でした」
 こうした移民の集住地では、山本氏が述べたような「トラブル」も目立った。だがそれは裏を返せば、地域の問題が認識されやすいということでもあった。山本氏は言う。
 「豊田市には、外国にルーツを持つ子どもの教育についての意識・関心の高い教員が集まるようになっていました。知識のない教員への研修や自治体の制度もどんどん整備されて、彼らの学校生活をサポートする体制が整っていったのです」
 例えば学校から保護者への書類にふりがなをつけたり、三者面談には通訳を同席させたり、また子どもの日本語力に応じた取り出し授業なども行われている。
 「学校の3割程度を外国人が占めるような状況で、ノウハウが蓄積され、教員も彼らがどんなことに困るかという予測がつくようになりました。病院や公的施設も多言語への対応に取り組むなど、自治体の努力も大きい。地域に日系ブラジル人コミュニティーができていることもあり、外国にルーツを持つことによる孤独は比較的感じにくいと思います」
 だがそのコミュニティーの存在は、時としてデメリットにもなると山本氏は続ける。
 「学校からドロップアウトしてしまう子どもも一定数いるため、それが悪い意味でのお手本になるという面もあります。不登校を経て非正規雇用になり、しかもすぐ辞めて職を転々とする――。一度踏み外したときの転落の仕方は想像もつかないほど早く、深いところまで転がり落ちてしまう。彼らがつながることのできるセーフティーネットが少ないことは、これからの課題の1つだと思います」
 圧倒的マイノリティーになる「非集住地」での問題は
 集住地に対して「非集住地」の状況はどうか。上の2021年度のグラフでは、外国人の集住傾向を示す「5人以上」という学校が約2300校あるが、いちばん多いのは「1人」の学校だ。さらに調査対象の子どもの在籍数が「4人以下」の学校が全体の7割を占めており、耳目を集めやすい集住地よりも、実際は非集住地の事例が多いということがわかる。
 「学校に1人だけ外国にルーツを持つ子どもがいるような場合、子ども本人が日本語を覚えて困難を乗り越えていくことがほとんどです。つまりは子どもの努力に任せきりの状態ということ。彼らは普通の学級に何の支援もなく存在していて、いじめられたり、孤立していたりするケースも少なくありません」
 山本氏は地域による「ケアの格差」が非常に大きいと指摘する。
 「豊田市のような手厚い自治体から、進学などで近隣の自治体に出たとき、途端に何のケアもなくなって戸惑う子どもや家族も多くいます。子が親の通訳をせざるをえない状況も頻発し、彼らをヤングケアラーにさせているのです」
 非集住地では問題が認識されにくい。知識がない教員の下では、見逃される問題は枚挙にいとまがない。例えば、母国で初等教育を受けていた子どもは、語学力に左右されない算数ならできると思われがちだ。だが必ずしもそうではないし、答えが合っていても、そこに至るプロセスが違うと子どもを叱る教員もいる。これにはすべての子どもが傷つくだろうが、外国ルーツを持つ子どもにはよりダメージが大きいと山本氏は言う。母国で受けてきた教育を否定されることで、「自分の国の教育は劣っていたのではないか」と感じてしまうからだ。
 国語の指導にも注意が必要だ。山本氏は「日本の学校では日本語力を重視しすぎて、それができれば万事解決とする傾向があります。そして彼らの抱える言語以外の悩みは『個人の問題』と切り捨てられてしまう」と苦言を呈する。
 「一見問題なく日本語の会話ができる子どもでも、学習言語として複雑な概念を理解するには至っておらず、学力以前のところで理解を阻んでいることも。こうした例は非常に多く、これは外国にルーツを持つ子どもの教育における不可欠な知識です」
 看過されやすい現状の課題はほかにもある。今度は、日本国籍を持っているか否かで子どもを見てみよう。
 「外国にルーツを持つ子どもは学校を離れやすいのですが、中でも外国籍の場合、小学校や中学校の『中退』が発生しやすい。『国に帰ります』と言われてしまえばそれまでで、自治体も追うことはできません。でも実際は日本にとどまっていて、引きこもりになっていたというケースもあるのです」
 日本国籍を持っていたとしても問題はある。文部科学省の調査などは基本的に外国籍を持つ子どもを対象にしているため、国籍によってはその実情をすくい上げることができなくなるからだ。
 「例えば父親が日本人で日本国籍を持っていても、ほぼ母子家庭の状態で、日本語力に困難を持つ子どももいます。でも彼らのルーツへの配慮が、日本国籍があることによって薄れてしまうのです。とくにアジア系移民で、外国ルーツであることが見た目にわからない子どもならなおさらです」
 「困難の本質は国籍ではない」子どもに寄り添った声かけを
 「日本人の保護者が『公立の学校は外国人の子どもが多いから、自分の子どもは私立へ進学させたい』と言う声をとてもよく聞きます。でも本当の問題は国籍や出身そのものではなく、それが理由で引き起こされている貧困であることもあります。そして貧困は、さらにたくさんの問題を引き寄せてしまうもの。どの国の出身でもどんな経済状況でも、子どもたちが可能性を断ち切られてはいけません」
 前述のグラフを引用した文科省の調査では、2021年度の日本語指導が必要な中学校卒業者の進学率は89.9%。全中学生等の進学率は99.2%だ。「ほぼすべての人が進学する中で、1割が進学しないというのは数字以上に深刻なこと」だと山本氏は語る。もし自分の教室に、外国にルーツを持つ子どもがいたら、教員はどうすればいいのか。
 「今、学校の先生は本当に忙しいと思います。この問題は教員がすべてを背負うべきことではないし、学校の中だけで何とかできることではありません。でも子どもたちとつながる場所は学校しかないことも事実なので、子どもたちを地域や支援につなぐ役割を果たしてもらえたら。本来なら、学校に1人でもそうした子どもがいるなら、ソーシャルワーカーや専門知識を持つ担当者が学校を巡回する必要があると考えています」
 この問題の最前線ともいえるエリアでフィールドワークをしてきた山本氏は、国の支援制度にも不足を感じている。
 「これまでの取り組みは、自治体単位やボランティアの尽力で進んできたことが主で、全国一律での施策はまだまだ弱いのが実情です。だからケアに地域格差が生まれてしまうわけですが、活用できる支援制度を知らない先生もいると聞きました。まずは自分の自治体にどんな制度があるかを調べることも必要です」
 山本氏が挙げる「教員がすべき最も重要なこと」は、彼らに寄り添う声かけと、個を認める姿勢を持つことだ。
 同氏がインタビューしたある子どもは、英語圏の出身ではなかったが、教員に「英語の発音がきれいだね」と褒められたことで自信がつき、英語力を生かした入試方式で難関大学への進学を果たした。自分のルーツを強みと捉えて、外資系に就職した例もあった。またある子どもは、信じがたいことだが教員から「ばかなんじゃないか」などと罵倒され、「ああ、もう学校には行けない」と勉強への意欲をなくしてしまったという。
 「日本人のクラスメートが外国ルーツの子どもを受け入れられるかどうかも、教員の指導の結果だと思います。前向きに勉強を続けてこられた子どもに話を聞くと、『先生に認めてもらえた』という経験を語る子どもが実に多いのです」
 (文:鈴木絢子、注記のない写真:fizkes / PIXTA
   ・   ・   ・   
 2023年4月30日8:02 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済education×ICT「増える「外国にルーツを持つ子ども」学校での課題 少人数指導や取り出し授業は日本人にも利点が
 全校児童の8割が外国籍の時代を経て、少人数指導を確立
 写真:東洋経済education × ICT
 古くから「国際都市」として成長してきた横浜市だが、1980年代以降には公立の学校の多様化が進んだ。国際情勢や法改正の影響で、中国やベトナムなどから多くの人々が同市に移り住み、「外国にルーツを持つ子ども(※)」が地域の学校で学ぶようになったためだ。小・中学校合わせて外国にルーツを持つ子どもの在籍数は1万1303人、そのうち日本語指導が必要な子どもは3297人に上る(2022年5月時点、横浜市教育委員会による)。長く彼らの指導に当たる横浜市上飯田小学校の菊池聡氏に、その状況を詳しく聞く。
※本記事中では、外国籍および外国につながる子どもの総称として用いる
 この記事の画像を見る
 現在は横浜市上飯田小学校に勤める菊池聡氏。宮城県出身で、過去の自身を「元は体育担当で、バリバリの学級担任志向でした」と振り返る。最初に赴任した小学校には海外経験の豊富な教職員が多くおり、その影響を受ける形で香港の日本人学校へ。2004年に帰国して「国際教室を担当してほしい」と言われたときは、外国にルーツを持つ子どもを取り巻く状況についての知識もなかったという。
 「対象の子どもがどれぐらいいるのかも知らなかったし、当時はその重要性や責任もわかりませんでした。『何をするんだろう?』と思いながら引き受けたのを覚えています」
 だが以来20年、複数の小学校を経験しながら、国際教室担当一筋に情熱を注ぎ続けている。
 菊池氏が帰国当初から10年間勤めた同市立飯田北いちょう小学校(14年にいちょう小学校と飯田北小学校を統合して開校)は、全児童の8割近くが外国にルーツを持つ子どもで占められていたこともあったほどの超国際的な学校だった。
 「インドシナ難民の定住促進センターが近くにあったことや、近隣の自動車工場が外国人労働者を受け入れたことなどから、1980年代後半から90年代初頭にかけて、外国籍の子どもが一度に10人単位で増え続けた時期があったそうです。先輩教員の苦労も大きかったと思いますが、私が前身のいちょう小に来た際には、外国にルーツを持つ子どもの指導のための加配がすでに行われていました」
 2014年、同校と隣接する小学校との統合に合わせて、菊池氏は、毎日の国語科と算数科の学習で徹底した完全少人数指導体制を整えた。同年の法整備によって「日本語指導が必要な児童生徒を対象とした『特別の教育課程』の編成・実施」が正式に認められ、日本語力や学力に応じた取り出し授業や少人数指導も行えるようになった。
 「授業の目標はもちろん、子どもが内容を100%理解することです。でもいきなりそれは難しいと感じるなら、まずは80を目指すグループで学ぶ。それでも厳しそうなら、60を目指してやってみる。そうした姿勢で選べるよう、国語と算数は3から4つのグループに分けました。グループは日本人も外国にルーツを持つ子どもも関係なく、事前のプレテストの結果でクラスを決めたり、子ども自身がクラスを選択したりしていました」
 体制的に複数グループがつくれない場合でも、1つのクラスに3~4人の教員が入って、一人ひとりを丁寧に見るようにした。また、教室や担当教員をつねにシャッフルするようにもした。これは「できないグループ」の固定化を避け、子どもたちに劣等感を抱かせないための工夫だった。
 少人数指導のメリットは日本人の子どもにとっても大きいものだ。また教員にとっては実質的にチーム担任制が導入されたことになり、学級の問題を一人で抱え込むストレスが軽減されただろう。現在も、同校ではこの少人数指導が続けられている。
教員だけでなく、学校がある地域のすべての人と協働
菊池氏は、国籍もルーツもさまざまな子どもたちが一緒に過ごすことで起こる化学反応を何度も目にしてきた。
 「子どもは教員よりもよくほかの子どもを見ていることもあり、彼らが苦手なことだけでなく、できることもよく知っています。日本語力に課題がある子どもが授業中に困ったときには、率先して手助けしてくれる例がよくありました。彼らに教えやすいように座席もいつの間にか移動していたり、『先生、この子これならできるからやらせてあげて!』と教えてくれたりするのです」
 こうした助け合いは、教室に多様な相乗効果を生む。外国にルーツを持つ子どもはピンチを救ってもらえてうれしいし、相手の状況や気持ちに応じた行動を取ることは、日本人の子どもにとっても大きな学びとなる。
 国籍を問わず、学校全体を巻き込んだ取り組みは授業だけにとどまらない。柔軟な働き方ができる外国人は多くないため、日中には子どもの学校のPTA活動に参加できないケースが多かった。そこで前身のいちょう小学校では、PTAの会合を19時以降に開催することにした。すると外国籍の保護者の多くが関心を持って参加するようになったという。とくに負担のかかるPTA会長を複数人体制にして、外国籍の保護者が担当した年もあったそうだ。共働き世帯が増え続ける昨今、PTAのあり方は全国でさまざまな議論を生んでいるが、こうしたフレキシブルな変化は、日本人の家庭にとってもありがたいことだろう。
 この地域では、日本人もベトナム人や中国人も保育園時代から共に育つため、偏見や差別が少なく、学校でのいじめも起こりにくい。さらに加配の専門教員が複数いる状況は「恵まれている」と言われることが多かった。しかし加配教員が比較的多い飯田北いちょう小でも、外国にルーツを持つ子どもやその保護者も巻き込んで「隣の生活者」として扱わなければ、学校運営そのものが成り立たないのだ。
 「飯田北いちょう小では、多文化共生の地域・学校づくりのためにさまざまな方と協働してきました。学級担任はもちろんのこと、養護教諭や栄養職員、用務員、自治体や地域ボランティアなど、学校がある地域のすべての方々と共に取り組んだのです」
教室で「お客さん扱い」されるマイノリティーの子ども
恵まれているとされる環境では、思いがけない弊害もあるという。
 「教員は通常業務だけでも忙しいので、国際教室担当の教員が多いほうがいいというのもとてもよくわかります。ただこれは私見ですが、専門の担当教員が多いと、学級担任との温度差も生じうるのではないでしょうか。子どもが学校でいちばん多くの時間を過ごすのは自分の教室です。学級担任が『国際教室の担当に任せればいい』と考えてしまうと、子どもにとって教室での時間がつらいものになりかねません」
 例えば現在菊池氏がいる同市立上飯田小学校は、飯田北いちょう小と1キロ程度しか離れていないにもかかわらず、外国にルーツを持つ子どもの割合は全体の7%にすぎない。こうした学校では、彼らはいわば「お客さん状態」で扱われることがあると菊池氏は語る。菊池氏は、自身が過去に見たその例を挙げた。
 「国語の授業で、句点で区切って子ども一人ひとりに音読をさせることがありますよね。そのとき教室には来日したばかりの子どもがいましたが、日本語がわからないことに配慮したのか、教員はその子を飛ばして授業を進めていました。そのほかにも、日直など当番制で回ってくるものはすべて同じ扱いをしていたと聞きました」
 前述のとおり、子どもはほかの子どもを非常によく見ている。日本人の子どもにとっても、外国にルーツを持つ子どもが困っている場面は成長のチャンスなのだ。だが教員が「その子はお客さん扱いしていい」という慣習を作ってしまえば、すべてはそこで終わってしまう。菊池氏も「長くやっている専門教員がいなかったり、加配教員がいなかったりする学校でこそ、どう工夫して子どもを支援していくかが重要だと考えています」と語る。次回は、こうした「外国にルーツを持つ子どもがマイノリティーになる学校」での実例や課題を掘り下げる。
 (文:鈴木絢子、撮影:大澤誠)
 東洋経済education × ICT編集部
   ・   ・   ・