⛲38〉─1・B─ネット社会における身元不明死、繋がりはSNSだけ。~No.216No.217No.218 

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 2024年4月16日 YAHOO!JAPANニュース ITmedia NEWS「ネット社会は「身元不明死」に対応できるか
 2025年問題というのをご存じだろうか。物流の「2024年問題」が来たばかりで、もはやいつがどの問題なのかわけが分からなくなっている方も少なくないと思うが、取りあえずこれから起こる一番近いのが、2025年問題である。
 【クリックで表示】65歳以上で一人暮らししている男女比率
 これは25年、第一次ベビーブームで誕生した団塊の世代800万人が全て75歳以上の後期高齢者になるという、超高齢化社会への第一歩を表した言葉だ。この800万人が加わる事で、日本の後期高齢者はおよそ2180万人、実に国民の5人に1人が後期高齢者となる。これに少子化が加わって、社会保障負担の増加や労働力減少により社会のバランスが大きく損なわれるわけで、その対策が必要とされている。
 実はその後も国内人口の3人に1人が65歳以上となる「2030年問題」、高齢者人口の割合がピークに達する「2040年問題」と、日本は問題がめじろ押しである。
 高齢者が増えるということは、このさき死に直面することも増えるという事でもある。ここ数年、コロナの影響もあったとはいえ、筆者のちょっと上の世代の有名人が亡くなるニュースが相次いでいる。自分が影響を受けた人達の新作がもう出てこないというのは、地味にダメージを食らう話である。
 先日NHKおはよう日本」の特集で、考えさせられる報道があった。歴史学者でもあった元大学教授が亡くなった際、親族が近所に住んでいるにもかかわらず、知らない間に身寄りがないとして自治体によって火葬され、無縁仏として霊園に納骨されていたという。
 妻子もなく一人暮らしではあったが、自分で救急車を呼び、心肺停止状態で救急隊員に発見された。死亡が確認されたのは搬送された病院内ということなので、死後何日も発見されないような、いわゆる孤独死でもない。
 自治体側で親族が探せなかったのは、戸籍情報を市内の範囲内でしか調べなかったからだ。こうした問題が起こった際、親族をどこまで追って調べるかに規定がなく、自治体判断になる。市内であれば3日ほどで調査できる一方、他都市の調査となると通常2週間ほどかかるという。自治体では長期間遺体を保存する事もできないため、先に火葬・納骨して申し出があれば引き取り、と考えていたようだ。
 ただ、この戸籍調査期間も、役所が言う額面と実際は違うのではないかと思う。筆者は数年前に行政書士補助者として戸籍調査の手伝いをさせてもらった経験があるが、市内なら当日、市外県外でも1週間かからず結果が返ってくるのが普通であった。もちろんそれは役所がITを活用しながら頑張っているからなのだが、紙調査していた昔の基準でいまだに調査期間の平均値を見積もるのもどうなのかなと思う。自治体DX化が完了して多くの手続きが共通プラットフォーム上に乗れば、さらにこうした調査速度は上がるはずだ。
 ただその一方で、戸籍のある場所である本籍地は、実際に居住したことがない場所でも任意に決められるという特徴がある。皇居を本籍地にしている人も多いと聞く。だが、自分に何かあって他人が戸籍調査をする場合、居住地と無関係のところに本籍地があると、たどるのに時間がかかるケースはありそうだ。戸籍謄本や抄本は、生命保険請求や遺産相続手続きで必要になるので、自分はもちろん親兄弟が亡くなるような年齢になったら、本籍地は居住地に移しておいた方がいいのかもしれない。
 今後、戸籍調査の精度やスピードが上がる事で、「取りあえず火葬して無縁仏」といった処理は見直されるだろう。もちろん「調査範囲に規定がない」という状態もまずいわけで、このあたりの法的手当も当然必要になると考えられる。
 「音信不通」をどう拾うか
 同居している家族があれば、何かあればすぐ分かる。だが高齢者の一人暮らしは、生涯独身だからという事ではなく、配偶者の死により一人暮らしとなった例も少なくない。令和5年公開の内閣府高齢社会白書」によれば、65歳以上の人口に占める一人暮らしの割合は、令和2年には男性15.0%、女性22.1%となっている。この傾向は、年々増加している。
 先の例では、亡くなったのが正月明けで、付き合いのあったご友人が異変に気づいたのが4月ということなので、およそ3カ月間、亡くなっていることに気付かれなかったという事になる。役所が頑張っていれば早く分かったと言えばそうなのだが、異変の発見には友人知人、近所の人など複数のルートがあっていいはずだ。
 そういえば、こんなことがあった。筆者がさいたま市に一軒家を借りて引っ越した際、隣の家は男性高齢者の1人暮らしだという話を聞いていた。あいさつに行っても面会は適わず、近所の人に聞いても居るはずだ、というだけで手掛かりがない。特に悪い評判も聞かなかったが、ご近所付き合いがないことで、詳細を誰も知らなかった。
 だが引っ越して数カ月後、突如隣家が取り壊しとなった。おそらく親族が売却したのか、更地となり別の家が立てられた。すでに筆者が越してきたときには入院や施設に入るなどしていなかったのか、あるいはそこで亡くなっていたのか、筆者も含め近所の住民には結局何も分からないままだった。
 「ご近所アラート」が発動するには、近所付き合いがあるかどうかが明暗を分ける。近所に住んでいても親しくなければ、他人の家の事情にはなかなか立ち入れないし、親族がいるのかいないのかも分からない。結局、行政か警察につなぐぐらいのことしかできない。
 元大学教授の例では、近所の方は救急搬送されたところを見ているので、居ないことは分かっていた。あとは病院で誰かが面倒みているのだろうと思って、親族への連絡は見送っていたのだろう。
 他に考えられるアラートとしては、友人関係がある。先の例もご友人が異変に気づいたから3カ月で済んだわけで、それがなければ来年の正月まで気付かれない可能性もあっただろう。
 解決策になりうるSNSの存在
 こんな例を見てしまうと、一人暮らしの高齢者にとって親しく友人とつながっているかどうかは重要だ。こうしたときに頼りになるのが、SNSである。高齢者はSNSなんか使わないだろうと考えるのは、認識が古い。
 令和4年総務省公開の通信利用動向調査によれば、60代で88.8%、70代で65.5%、80歳以上で33.2%がインターネットを利用している。
 SNSの利用率においても、インターネット利用者のうち60代で73.4%、70代で63.9%、80歳以上で63.8%が利用している。
 シニア向けSNSとしては、「らくらくスマートフォン」購入者の受け皿として誕生した会員数260万人を誇る「らくらくコミュニティ」がある。Facebookも高齢化が著しいとしてオワコンという人もあるが、「らくらくスマートフォン」世代より下の高齢者が集う場所として盛況であるというのは、見逃せないところだ。
 かく言う筆者もネット歴はパソコン通信時代までさかのぼるので、かれこれ35年ぐらいになる。その35年前にネットで知り合った友人達は、いまだFacebook上でつながっている。歳を取るにつれ、新たに信頼できる友人を作るのはどんどん難しくなっていくが、若い頃に知り合い、お互い実名や家庭の事情も知っている友人達とは、歳を取っても信頼度は変わらない。
 こうした長年の付き合いは、とくに意識してそうしてきたわけではないが、実際に高齢者に近づくにつれて加速度的に重要性が増していくようだ。仮に一人暮らしになったとしても、SNSで頻繁にコミュニケーションしていれば、それが途絶えたときに友人達は数日で気付くだろう。
 SNS元年は、Facebookmixiがサービスインした2004年と見る事ができる。そこから20年、高齢者がSNSで他者とつながっていることは、生存証明という意味合いも加わってきた。世界中がどこも経験したことがない、先進国の超高齢化社会。古くからネットコミュニケーションが発達していたということが、先進モデルとなり得るかもしれない。
 ITmedia NEWS
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