🥓26〉─1─非正規のパラサイト・シングルと親の年金。生活保護の増加と年金の破綻。~No.121No.122No.123No.124 @ ㉑ 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 マスコミが時代の寵児として囃した「独身貴族」と「パラサイト・シングル」が、家族を持たず、子供をつくらず、一人でペットと楽しく暮らす孤独な老後を迎える。
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 愚かな日本人、それは団塊ジュニア世代である。
 自分で考える能力を失った者の自業自得。
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 貧困は、団塊世代から団塊ジュニア世代へと引き継がれる。
 貧困の深刻さは、世代を重ねる事によってさらに深化し、悲惨度を増していく。
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 自立・独立できない貧困化した子供の老後は悲惨である。
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 親たちによる子育ての失敗。
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 生物の逃れられない宿命として、青年も、少年も、赤ん坊も、年月と共に歳を取って老人となる。
 老人にならない人間は、誰もいない。
 誰もが、歳を取り老人となる。
 ただ、金持ちか貧乏人かの違いだけである。
 悠々自適な老後か、その日暮らしの惨めな老後か。
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 老人を嫌悪し、老人に悪態をつき、老人を虐待する、青少年とて何れは歳を取って老人となる。
 今は、法律と道徳、良心と善意で、まがりなりにも社会秩序が保たれている。
 将来、20年後、30年後、人口が減少した日本が今と同じとは限らない。
 現代の日本人の心が、金銭欲や物欲に支配され、弱者に対する攻撃性を強めていった時、日本はどうなっているのか。
 どういう未来を日本にもたらすかは、今の若者の気持ち一つであり、他人や社会のせいではなく、本人の責任である。
 それこそ自己責任であり、どんな時代が来たとしてもそれは自業自得である。
 明日は、我が身である。
 今のまま行けば、今のお年寄りも、将来のお年寄り、今の若者の老後は悲劇を通り越して悲惨である。
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 2015年9月18日号 週刊ポスト「長寿いとう悪夢
 失業息子、行き遅れ娘と同居すると『老後破産』!
 『子供を成人まで育て上げて仕事をリタイアした後は、可愛い孫に囲まれ穏やかな余生を過ごしたい』
 たっては『慎ましい幸せ』だったそんな老後を実現できる人は、今やほんの一握りしかいない。老後を支えてくれるはずの息子・娘の存在が、親の家計を崩壊させる……
 食事は1日1食
 洗濯物を干しっぱなしの薄暗い部屋で、80歳の父は小さなパックに入った巻き寿司を無言でほおばっていた。彼ら45歳になる息子と2人で暮らしている。息子は職を転々としていたが、昨年12月にリストラされ、市営アパートで父親との同居を決意した。父親は4年前に脳梗塞を患っており、そのことも気がかりだったという。
 父親が受け取る年金は月9万5,000円。これまでは生活保護で家賃や医療費が免除されていたが、勤労世代の息子と同居を始めたことで、生活保護は打ち切られた。息子の分の食費がかさむうえに、家賃2万円と税・医療費1万円の負担が増え、暮らしはますます苦しくなった。家賃は滞納し、医療費も払えないため、この1ヶ月は高血圧の薬さえ飲んでいない。──
 これは8月30日放送のNHKスペシャル『老人漂流社会 親子共倒れを防げ』に登場した、ある父子の生活の実態である。
 『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)の著者でNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏によれば、このような世帯はもはや珍しくないという。
 『正社員のリストラ、非正規社員の拡大、派遣切りといった状況のなかで、年金暮らしの親と40〜50代の子供が同居し、共倒れしてしまう。「Nスペ」を見て、ようやくこの問題にスポットが当たり始めたという印象を持ちました。こお7〜8年で顕著になっており、雇用環境の悪い地方ではより深刻になっています』
 低年金・低所得の高齢者は増加の一途をたどり、すでに200万人以上が生活保護水準なのに保護を受けずに暮らす『老後破産』状態にあり、予備群も含めた『下流老人』は600万人に達するという。そんな年老いた親のもとに収入の少ない子供が身を寄せれば、生活がさらに困窮するのは当然だ。
 総務省統計研修所が行った調査によれば、『親と同居の壮年未婚者(35〜44歳の未婚者)』は12年の段階で305万人、同世代に占める割合は16.1%にのぼる。03年は191万人(11.7%)、07年は262万人だったから、実数、割合とも激増している。調査を担当した総務省統計研修所研究官の西文彦氏がいう。
 『親と同居の壮年未婚者の失業率は、同世代平均の約2倍。失業者以外にもニート臨時雇用・日雇いの人など経済的に親に依存している人が70万人いるといわれています。親の高齢化に伴って今後5〜10年で親子共倒れはさらに増加することが予想されます』
 『親と同居の壮年未婚者』は親が団塊世帯、子供が団塊ジュニア世代にあたる。共に人数の多いこの世代で〝親子共倒れ〟が増えることは、極めて深刻な事態だ。
 ……
 親子3人で餓死していた
 親子共倒れの悲惨な事例は全国で相次いでいる。『Nスペ』には、北海道で一人暮らしをする母親の介護のために長男が離職して戻ってきたものの、生活が困窮し、自宅で親子ともに変わり果てた姿で見つかった例が紹介された。同様に、さいたま市でも60代の夫婦と30代の息子と思われる男性が餓死しているのが発見された(12年2月)。
 親の年金しか頼る収入がないため、親の死を隠すケースも後を絶たない。富山県では、母親が亡くなった後も母親の年金を受け取るために死亡届を出さず、1年以上も遺体を放置していた58歳の長男が逮捕された(11年9月)。
 愛媛県では『葬儀代がなかった』という理由で、母親の遺体を放置していた48歳の長男が死体遺棄容疑で逮捕された(13年8月)。同県では今年も、亡くなった母親の年金を受け取るために、母親の遺体を庭に埋めていたとして、41歳の長男が逮捕される事件が起きている(8月28日)。
 こうした『失業息子との共倒れ』による老後破産は、決して一部の人だけに起こる問題ではない。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会代表理事の佐々木延彦氏によれば、『一流大学卒で上場企業で出世したような人でも、家が経済的に破綻して返済相談に駆け込んでくる』という。破綻する理由はリストラや退職金の減額、自身や妻の急病などさまざまだ。
 『とくに高齢者は「迷惑をかけたくない」「恥ずかしい」という思いが強く、預貯金を取り崩してまで無理な返済を続けるケースが多い。結果、老後破産を招いてしまう』(佐々木氏)
 ……
 『希望なんてない』
 息子の失業だけでなく、〝行き遅れた娘〟も親にとって大きな負担となる。30〜34歳女性の未婚率は2010年時点で34.5%。しかもこの数字は今後さらに上昇する可能性が高い。
 『Nスペ』にも、老夫婦と37歳の失業中の息子、36歳独身の娘が同居する4人家族が登場した。子供たちはアルバイトしかできないため、父親は69歳になっても働き続けている。本人は70歳を過ぎても働き続けるしかないと思っているが、もし働けなくなったら家族はどうなるのか。父親は『希望なんてない』と暗い表情でつぶやいた。
 娘が離婚し、子連れで実家に戻ってきた場合は、さらに大変だ。社会学者で放送大学副学長の宮本みち子氏がいう。
 『年老いた親が娘だけでなく孫の生活まで見なければならなくなり、3世代が共倒れしてしまうケースもあります。高度経済成長期には、親の役割はある時期で終わるとされていました。ところが今はそれが成り立たない。やがて親が介護が必要な年齢になると、状況はますます困難になってしまいます』
 ……
 『生きていればいい』
 ……
 年金だけでは生活が苦しいところに、失業した息子や未婚の娘が加わったとしたら──。それは、いつあなたの身に起きても不思議ではないのだ」
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 大西連(NPO法人『自立生活サポーターセンター理事長』)「私たちが収入を得る要素は、労働、資産、家族の援助、社会保障の4つ。そして国民年金は、社会保障以外の3つの要素がある前提で成り立っている制度なのです。成人するまでは親に扶養され、学校を出てから働いて貯金する。結婚して子供が生まれたら、家族を養いながらマイホームを買い、資産を作る。そして定年退職を迎えたら、貯金と退職金、子供の援助に支えられて生活する──。実際、昭和にはそうした社会モデルが一般的で、現在の社会保障制度は、こうしたモデルを前提に設計されている。国民年金も、それ一本で生活を成り立たせるための制度ではないのです。
 高度成長期には正社員が当然で、終身雇用が前提で企業福祉も充実し、妻が専業主婦でも家族を養う余裕があった。しかし、現在は非正規雇用者が労働者全体の37%を占め、彼らは給料が低いので資産を形成できず、そんな状態では結婚して家族を養うこともできない。要するに、収入の4要素のうち3つがない人が増え、昭和モデルが通用しなくなっているのです。
 老後破産に陥る人は、一般企業の正社員だった人に多い。それなりに恵まれた家庭環境で育ち、大学も出た人が少なくないのです。
 そういう人は、自分がリストラされたり、熟年離婚せざるをえなくなったりしたとき〝恥〟だと感じて周囲や友人に言い出せません。20代、30代ならともなく、40代や50代で今までの不自由のない生活からグレードを下げなくてはならなくなっても、周囲に同じ様な境遇の人はおらず、話しづらい。いざ転職先を見つけても、20代や30代の若者が上司という事が多く、孤立を深め、精神的に病んでしまったり、相談できないまま、間違った選択肢を選んでしまったりするのです。
 ダウンサイジングする事の難しさ。
 仕事のストレスを解消する為に、高価な買い物に走ってしまう。それに月に300万円ももらった経験があると、浪費に歯止めがきかなくなりがちだし、周囲にも良い暮らしをしている人が多かったでしょうから、それを意識して、なかなか生活レベルを落とせなかったはずです。
 個々の生活として不器用な人、要領の悪い人、昔からの習慣や美徳に縛られている人ほど、自らの首を絞めてしまっている。
 うちに相談にきた60代の男性は、元々は一流企業に勤め、年収500万円ほどでしたが、50歳の頃に母親が認知症を患い、介護に専念する為に退職。しかし再就職しようにも、50代では条件に見合う仕事は見つからず、介護のストレスも溜まって鬱病になり、生活保護を受けています。介護つきマンションや老人ホームを探せば、仕事を止めずに済んだはずですが、それでも自宅介護を選んだのは、〝親の面倒は子が看る〟という、日本独自の価値観があったからです。
 ある50代の男性は、40代でリストラに遭って離婚を切り出され、持ち家と子供を妻に渡し、自分は賃貸アパートに一人暮らし。そのうえ養育費を月々支払い、新しい仕事は見つからない。リストラされたのなら、財産は半々にするなど、もう少し自分の人生設計を考えるべきでした。離婚後に苦しむケースは、男性が財産分与の際に見栄を張り、ほとんどを妻子に渡してしまう場合もあるのです」
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 石寺弘子(全国SLA協会事務局長)「家族のコミュニケーションが上手くされているかどうかも、老後破産を防ぐうえで大事な要素。
 全財産をはたいて二世帯住宅を建て、息子夫婦と同居を始めたものの、何かにつけ嫁と揉めて嫌気がさし、家を出てアパートを借りた方がいます。年金だけではやっていけませんが、財産はもうなく、息子夫婦に家賃の支払いを求めたところが、取り合ってもらえず困っている、という相談でした。また、家族の問題で最近増えてきたのは、自立しない子供を抱えた親からの相談ですね。働かない息子を抱え、生活の面倒は見てあげたいが、自分が病気をして入院中に貯金を下ろされ使われてしまい、退院したら生活費にも困る状態になっていた、という相談もありました」
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 2016年7月3日 読売新聞「日曜の朝に 非正規、独身女性の不安
 電話の向こうから母の願いが伝わってきた。『今のところで落ち着いてくれたらいいけれどねえ』
 那覇市の実家で、老父母と暮らす43歳の妹のことだ。今春、住宅関係の会社に正社員として再就職した。
 短大を出てから非正規で働いてきた妹は、40歳を前にして『ずっと安定して働ける仕事に就きたい』と正社員を目指した。最初の会社が倒産し、次のところは『給料が安くてやっていけない』と辞めた。今回が3度目の挑戦だ。
 非正規だった頃、母と父が大きな手術を受けた時には仕事を休んで付き添い、退院後の検査も車で送迎した。融通の利く職場だが、数年先はどうなるか分からないいうジレンマもあったようだ。
 福岡に住み私は、妹のおかげで普通に仕事を続けることができた。『親の介護も妹がいるので安心』と無意識のうちに思っていた。
 しかし、その献身を当然のこととし、あぐらをかいてきたのではないか。彼女の不安や焦りを受け止めてきただろうか、と最近考え込んでしまった。
 『独身で末っ子だと介護を担わされる』『婚活もしているがなかなかうまくいかず、自分が生きていくことができるのか見通しが立たず』──。横浜市男女共同参画推進協会などが3月にまとめた調査報告書には、非正規で働く35〜54歳の独身女性の切実な声がつづられている。
 これまでパートの主婦が多かった女性の非正規労働者に近年、独身が増えてきた。収入の低さや親の介護、自身の健康や老後に不安を抱える人が多いという。
 調査に参加した福岡女子大教授の野依(のより)智子さん(55)は、『女性の活躍推進で子どものいる正規社員が脚光を浴びる一方、非正規シングル女性の存在は見えにくい』と話す。
 9日、福岡市男女共同参画推進センター(同市南区)で野依さんの報告と意見交換会が開かれる。妹の気持ちに向き合うためにも、一緒に悩み、考えていきたい。(玉城夏子)」
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 人口減少は、20年〜30年先という中期的な視点で見るとバラ色の未来は存在しない。
 65歳が受け取る厚生年金の月額は、15年後で18万5,000円、35年後で13万円、50年後で10万円と、減額される。
 老後は年金で悠々自適な生活は存在せず、死ぬまで働かなければ生活できず、病気や怪我をして働けなくなったり寝たきりに成ったら悲惨な余生を送る事になる。
 問題は、今の老人ではなく、明日の老人である。
 本当の老後危機が訪れるのは、東京オリンピックが終わった後の10年後といわれている。
 その頃。税金や国民年金資金を株価操作に流用している、今の政治家や官僚達は大金を持って引退して優雅な老後生活を送っている。
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 2016年8月22 産経ニュース「「葬儀費用がなく…」同居の父の遺体を自宅に放置 死体遺棄容疑で長男逮捕
 自宅に父親の遺体を放置したとして、警視庁田無署は死体遺棄容疑で、長男で東京都西東京市田無町の無職、都築義昌容疑者(54)を逮捕した。「同居の父が5月下旬に死亡したが、生活費に困り葬儀費用もなかったので放置した」と容疑を認めている。都築容疑者は事件発覚直前から行方不明になっていたが、20日深夜に帰宅したところを捜査員が確保した。
 逮捕容疑は5月〜8月7日ごろ、自宅の1階和室に父、重男さん(84)の遺体を放置したとしている。重男さんは病死とみられる。
 同署によると、重男さんの6月以降の年金が口座から引き出されており、不正受給した詐欺容疑でも調べる。
 7日に、重男さんと連絡が取れないことを不審に思った長女が自宅を訪れ、一部白骨化した遺体を見つけた。都築容疑者は遺体が発見されたことに気付いて家を出た後、近くの公園で野宿をして暮らしていたという。」
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パラサイト社会のゆくえ (ちくま新書)

パラサイト社会のゆくえ (ちくま新書)

⛲21〉─4─働かない子供を年金で養う貧困老親。親子老後破綻。~No.103・ @ 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 老後を襲う『親子共倒れ』破産。
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 親の介護で結婚できず犠牲になる哀れな子供。
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 酒と賭け事をして働かず同居する子供を持った親達の悲惨な貧困老後。
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 親から自立できない未熟児のような子供は、成人しても、中年になっても、親の年金に依存して生活している。
 酒とギャンブルで明け暮れ子供は、時には泣き落としで、時には暴力で、親から金をむしり取って湯水のように使う。 
 子離れできない、大人になりきれない分別なき幼稚な親。 
 親が死んでも届け出ず、親の年金を不正に受給して生活する子供。
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 2014年12月7日号 サンダー毎日「貧困老後の現実
 カネも余生も・・・子に食いつぶされる
 ▼年収減に『わが子は非正規』で悪夢はおわらない
 リストラ、病気、子の失業・・・誰もが定年後破産、隣り合わせ
 教育費の増大が住宅ローンと重なり、40、50代の働き盛りの家計を圧迫する。ニートやひきこもり、非正規雇用の子を持つ親が年金生活に入っても子の生活費を抱え込む──。
 親子の脆弱な家計がもたれあうように結び付き、破産に突き進むケースが広がっている。
 ……
 家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、木村家のように子が親に経済的に依存するケースは昨今珍しくない、と言う。
 『教育費が家計を圧迫し、親(祖父母)の援助を受ける家計は増えていますね。月々5万円とか年間100万円と決めて、それも決して親が裕福、というわけではないのです』(横山さん)
 今の親世代は子どもを苦境から救えるほど豊かではない。バブル期に高値で住宅を購入し、住宅ローンを完済できないままに年金生活に突入する人も少なくないことは先週号でもお伝えした。年金額は減少、病気になったり介護が必要になって親が子どもに援助を願い出るケースもある。
 『親世代も子世代も余裕があるわけではなく、お互いに苦しい。生き残るために家計が結び付いている印象です。お金の援助だけではなく、同居を持ち掛けたり、2世帯住宅を建てたりして住宅費をカバーしてあげようという親御さんもいらっしゃいますね』(同)
 しかしながら、生活防衛のために結び付いている親子の家計は脆い。
 『突然のリストラや病気、介護など突発事態が起きると共倒れしてしまう危険性をはらんでいます』(同)
 冒頭の木村さんのもう一つの心配は〝子ども〟だ。
 『俺たちの時代は親の夢だった大卒、サラリーマンというコースを歩むことができた。親もそうなることを励みに働き、喜んでくれた、でも、自分の子どもが安定した職に就けるのかどうか』(木村さん)
 大学を出ても正規雇用されるのは新卒者の6割程度。20〜34歳の独身男性の3割が年収200万円未満だ。親が期待するような収入を子が得られる時代ではない。結婚、マイホーム・・・親世代には、〝フツー〟だった幸せは今や高嶺の花。子どもに〝親超え〟を期待してはいけない。という声はよく耳にする。
 子どもが就職できたとしても前途は平坦ではない。病気やリストラ、パワハラでうつになり、働けない子を親の稼ぎや年金で養う家計も増えている。
 高齢化する〝ひきこもり〟の子
 ……
 『若年層の問題』とされがつだったひきこもりやニートは、今や40代以上の人数がかなり増えてきている。50代も珍しくなく、必然的に親も高齢化して70,80代。畠中さんが受けた相談者の最高齢の子どもは62歳、親は87歳という。子のライフプランを考えるにしても、親の介護は切り離せない問題だ。
 『それでも「子どもの将来を考えることで精いっぱい。自分の介護問題どころではない」と、お怒りになる方もいらっしゃいます。多くの親は、死ぬまで自分が子の面倒を見なければならないと、思い込んでいる。けれど、子がどんな状態であろうと親が要介護状態になるリスクは一般の家庭と変わりません。早めの準備が必要なのです』(畠中さん)
 内閣府の2010年の推計によると、全国のひきこもりの人数は約70万人。さらに昨年、島根県が民生委員などを通じて把握した約1,000人のひきこもり53%は40代以上だった。
 理由はさまざまだ。不登校、病気、リストラ・・・。
 『最近増えていると感じるのは、就職はしたけれど思うような仕事に就けなかったり、職場の人間関係に疲れるなどで離職したり、再就職でもつまずいて意欲を失い、そのまま家にいるケースですね』(同)
 親が現役の間は、その収入で子も食べていける。だが、やがて親も定年を迎えて年金生活に入る。子どもが50代後半であれば、10年もしないうちに自身の年金で生活していくことになる。
 共倒れせず、さらに親亡き後も子どもが生き延びるためにも、子の住まいや生活資金を早めに手当てする『サバイバルプラン』が必要、と畠山さんは提唱する。
 サバイバルプランの前提は『子が働かない状態が一生続く』。ショックを受ける親もいるが、安易な励ましや楽観論は捨て、『どんな状況でも食べていく』べく、打てる手は全て打つことが大切だと畠山さんは言う。……
 親と子が肩を寄せ合って暮らす家計は、介護現場でも見受けられるという。
 『ここ5、6年でしょうか。ケアマネジャーの間で、要介護のお母さんと独身で無職の息子さんの家計がすごく増えてきたね、って話題にのぼり始めたのは。お母さんの年金で息子さんも食べていっているんです』
 横浜市のケアマネジャー、石井郁子さんはそう話す。石井さんによると、要介護状態になった親を献身的に介護する男性は多いが、一部には親の年金を頼りに次の仕事を探さず、介護が〝仕事化〟している人もいるという。そうした人はペルパーらに、『細かい注文を付けることが多い』と苦笑する。……
 要介護の親を支える薄給の子
 逆に、無年金や低年金で要介護状態の親を薄給の息子や娘が支えることもある。
 『息子さんは早朝から夜遅くまで働いて、お母様は通所リハビリなどのケアプランを受けていました。でも、お母様が「もうヘルパーもリハビリもいい」と突然言われた。息子さんが借金に追われ、自分の生活でギリギリ。介護保険料も滞納していたのです』(同)
 国民年金が満額に届かず、毎月3万円程度で暮らす人もいる。息子の扶養になっていると、虐待の場合を除いて生活保護の申請は難しいという。
 ……
 『明日は今日より豊かになる』と信じられた時代は確かにあった。
 『アベノミクスによって経済の好循環が生まれようとしている』(11月18日の安倍首相会見)
 11月21日、衆院は解散された。共感できた国民はどれくらいいるだろうか」
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 2015年12月6日号 サンデー毎日「増える非正規、高齢化する『ひきこもり』
 老後を襲う『親子共倒れ』破産
 親の年金で生活する中年シングル急増中
 失業やひきこもりなどで中高年になっても独り立ちできない子が増えている。年金が親子の生活費になっているため、介護費用を捻出できない家庭もある。老後破綻の〝引き金〟は、親のスネをかじり続ける子ども──。かつてなかった事態がニッポンの家庭に広がっている。
 いつの頃からだろうか。取材する介護現場のヘルパーたちから『親子同居』について、よく聞くようになったのは。
 ……
 総務省統計研修所が調べた35〜44歳の未婚の子が親と同居する割合は、グラフのように1980年には39万人だったのが、2012年には305万人に膨らんでいる。背景にあるのは失業と非正規の増加だ。
 つい最近の厚生労働省の調査では、労働者全体に占めるパートや派遣などの非正規雇用の割合は、初めて4割に達した。低賃金も深刻だ。非正規労働者のうち月収20万円未満は78.2%。男性でも6割近く、女性で9割近くになる。
 ……
 親と未婚の子、それも非正規で30〜40代になった子との同居が増え続けている背景には何があるのか。シングルの子と同居する高齢者世帯の増加に警鐘を鳴らし続けてきた臨床社会学者で松山大人文学部元教授の春日キスヨさんはこう話す。
 『若年層の非正規雇用や失業者を大量に生み出した90年代以降の経済状況が大きく関わっています。最近は、正規労働に就いても労働環境が非常に過酷なため、体や精神を壊して働き続けることができなくなり、親元に戻ってくるという人も結構います』
 親が元気なうちは収入の少ない子を援助することも可能だが、要介護状態になったりした場合、親の生活も子の生活も破綻する『親子共倒れ』の危険性がある。
 虐待、介護殺人は極端かもしれないが、親の死を隠して子が年金をもらい続ける事件が各地で散発的に起きるのも、『子がいつまでも巣立っていかない』という家族の変容が背景にある。打つ手はあるのか。
 『抜本的な対策としては、不安定な非正規雇用を増やす政策をやめることです。しかし、これだけ事態が深刻化しているにもかかわず、政権は労働者派遣法を改悪し、非正規雇用を拡大しています』
 これでは、『一億総活躍』どころか『総貧困』に拍車がかかりかねない。低収入のために結婚をためらう人もいる。少子化の改善など望むべくもない。
 ……
 親子同居は、子の不安定な職や低収入だけによるものではない。ひきこもりの場合もある。
 内閣府の推計(2010年)によれば、引きこもりは約70万人。山形県島根県などの調査でも、引きこもりの期間は10年以上、年齢は40代が目立つ。
 これだけ長期化、高齢化した引きこもりは、もはや個人や家庭の問題として片付けられるほど単純ではない。拡大する非正規労働同様、この20年の日本の景気低迷や劣化した雇用環境が背景にあるともいえる。引きこもりの子の高齢化が進めば、いずれ『老後破綻』が激増しかねない。
 引きこもりの子を持った家庭に生活設計のアドバイスをしているファイナンシャルプランナーの浜田裕也さんはこう話す。
 『日本という国は、不登校や病気、失業なぢ、さまざまな事情で一度正規のルートから外れてしまうと、世間から「ダメなヤツ」と烙印を押されてしまうことが多く、軌道修正が難しい傾向があると思います』
 資産も負債も『可視化』する
 切実なのは、親亡き後、残された子はどう生きていくのかという──問題だ。
 各地で開かれるライフプランセミナーには、50〜70代の親たちが詰めかけている。講師を務める浜田さんはこう指摘する。
 『お子さんは40〜50代が中心。親御さんは60〜70代が多くなってきています。最近では60代の〝お子さん〟を持つ親御さんからの相談もありかした。』
 ひきこもり期間も長い場合は30年以上、なかには兄弟でひきこもっていたケースもあったという。
 『小中学生時代に不登校になり、そのままぞっと家に居続けたり、職場の人間関係に疲れて離職し、そのままひきこもるパターン。親の介護で離職し、その後も再就職ができず家にいる、といった人たちも最近増えている』
 親が生きているうちは親の収入や年金を頼りに生活が維持できたとしても、親に介護や認知症という問題が発生した場合、今までの生活が成り立たなくなるおそれも出てくる。
 一般的な打開策としては、『とにかく外に出る』『働く』ことと思いがちだ。しかし、浜田さんは『ひきこもり状態にあるお子さん働いて収入を得ることは難しい』ことを前提に、ライフプランを立てるようアドバイスする。
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 親と子の共倒れ──。変わっていく家族のかたちと、長引く景気の低迷が生んだ重い課題だ」
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 2017年1月1日号 サンデー毎日「急増中!ひきこもり高齢化
 〝親子共倒れ〟の過酷社会 ジャーナリスト 池上正樹
 内閣府が発表した全国のひきこもりは推計54万人。だが、これは実態と乖離(かいり)した数字という。ひきこもりの長期化・高齢化によって、親子が共倒れする悲惨なケースも出てきている。いま何が起きているのか。
 ……
 松山市では『40歳以上』が6割超
 全国には、社会と関係性を遮断された人たちが助けを望まないまま緩やかに死に向かっていく、こんな『セルフネグレクト』状態の『限界家族』が山ほどいる。冒頭の岐阜のケースのように顕在化するのは、氷山の一角といっていい。
 内閣府が2016年9月に発表した『ひきこもり』実態調査は、より深刻な状況に置かれた40歳以上を調査対象から外し、その数を全国で推計54万1,000人とし、『6年前の調査より約15万人減少した』などと、担当者が『支援の実績』をアピールしてみせた。しかし、実態と大きくかけ離れた『54万人』という数字だけが独り歩きして、地位方自治体では『ひきこもりの数を減った』からと、予算が削られるなどの弊害が生じていて、何ともチグハグだ。
 一方、自治体単独のひきこもり実態調査では、より高齢化の傾向が浮き彫りにされている。11月30日、愛媛県松山市が、民生・児童委員を通じて行った調査では、『ひきこもり』状態の該当者が183人。その年齢構成は、40歳代が突出して多い30.6%。全体に占める40歳代の割合は、65%を超えた。
 また岩手県洋野町では、支援の必要な70代夫婦が介護保険の利用を断った。理由を聞くと『ひきこもっている子供の将来を考えたら生活費を残したい。自分たちが使うわけにはいかないので』と説明された。地域包括支援センターがその実態を知り『ひきこもり』調査に乗り出したところ、ひきこもり者に占める40代以上の割合が6割を超えた。
 地域との関係が遮断されて『親子共倒れ』につながる危機を知り、調査によって課題を浮き彫りにし、未然に防いだ例といえる。
 唯一の家族会全国組織『KHJ全国ひきこもり家族会連合会』では、厚生労働省からの委託を受けて、高齢化の進む『ひきこもり』事例の初めての本格的な実態調査に乗り出した。…… 」
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 1月23日 産経ニュース「引きこもり高年齢化深刻 自治体62%「40代の相談」家族会が150カ所調査
 引きこもりの相談を受け付けている全国の自治体窓口のうち、家族会が150カ所を調べたところ、40代のケースに対応した経験があるとの回答が62%に上ることが22日分かった。50代も多く、高年齢化の深刻な状況が明らかになった。
 引きこもりが長期に及び40代〜50代になると、親も高齢になり、介護が必要になったり経済的に困窮したりして、親子で「共倒れ」になるリスクがある。国が昨年公表した引きこもりの実態調査では40代以上は対象外で、不登校や若者の就労など、主に青少年の問題と捉えられてきた。対策の見直しが迫られそうだ。
 調査は「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が昨年11月〜今年1月に実施。引きこもりへの対応経験があったのは129カ所(86%)。本人の年齢(複数回答)は40代が93カ所(62%)と最も多く、続いて30代が78カ所(52%)、20代が69カ所(46%)で、50代も67カ所(45%)あった。 
 40代以上の場合、父母から相談を受けた窓口が46%と最多で、本人は28%。」
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🧣47〉─3─引き籠もり中年息子に殺意を抱く孤独な老親。~No.186No.187No.188 @ 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2017年8月2日 産経ニュース「「自立せず自堕落な生活…」同居の43歳息子に不満募らせ刺す 75歳男を殺人未遂容疑で逮捕
 同居する息子(43)を包丁で刺して殺害しようとしたとして、大阪府警城東署は2日、殺人未遂容疑で、父親の無職、関地(せきぢ)常雄容疑者(75)=大阪市城東区関目=を現行犯逮捕した。容疑を認め、「自立せず自堕落な生活をして、家を出ていかない息子に不満がたまった」などと供述している。
 逮捕容疑は同日午前7時50分ごろ、自宅で就寝中だった会社員の息子の顔を包丁で刺して両ほおなどに軽いけがをさせたとしている。
 同署によると、関地容疑者は妻と息子の3人暮らし。息子を刺した直後に「私が息子をさっき包丁で刺した」と自ら110番したといい、駆けつけた署員が身柄を確保した。詳しい経緯を調べている。」

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🌁2〉─1─「貧富格差」の現実。所得格差のレベルは先進国でワースト8位 ~No.2  @ 

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 2019年1月22日 msnニュース 東洋経済新聞「日本がはまり込んだ深刻な「貧富格差」の現実 所得格差のレベルは先進国でワースト8位  岩崎 博充
 c 東洋経済オンライン 世界の貧困層は減少傾向にあるが…(写真:MaCC / PIXTA
 世界第3位の経済大国でありながら、日本には高い貧困率という問題が存在している。7人に1人が貧困にあえぎ、1人親世帯では半数以上が貧困に苦しんでいる。
 先進国の中で最悪のレベルに近い日本の貧困率
 日本では貧困率のデータは3年ごとに調査されている。最新の数字は2015年に発表された15.6%。ひとり親世帯の貧困率では50.8%となっており、先進国の中では最悪のレベルに近い。
 最新情報となる2018年の調査で改善されているかどうかが注目されるが、現実問題として賃金が増えていない状況では大幅に改善しているとも思えない。「有効求人倍率」は大きく改善して、業界や職種によっては人手不足が深刻だが、相変わらず正規社員と非正規社員との間には給与面での大きな溝がある。
 今年の4月から実施される「働き方改革」いわゆる「同一労働同一賃金制度」が、どの程度賃金体系に影響を与えるのか。その結果を見守るしかないだろう。
 とはいえ、安倍政権になって以来、年金の給付額や生活保護の給付金の減額が実施されており、日本の貧困問題は悪化して大きな格差になっていると考えるのが自然だろう。
 そもそも日本の貧困率バブル崩壊以来、継続して悪化を続けており、たとえば貧困率算定のベースとなっている「可処分所得」の推移をみてみると、日本ではこの20年間ひたすら下がり続けている。
 日本の1人当たり可処分所得は年間245万円(中央値=平均値、2015年現在)だが、この平均値の半分しか所得のない世帯を貧困層と呼んでいる。日本では、この貧困率の算定基準となる可処分所得の金額が、1997年からの20年間で52万円も下落した。失われた20年と呼ばれるが、日本の貧困率の状況が厳しさを増している証拠ともいえる。
 一方で、日本以外の状況を見ると違う風景が広がっている。世界中の貧困層は減少し続けており、とりわけ、この20年間で中国の貧困層の多くが、先進国の中流階級並みの仲間入りを果たし、この20年程度の間に6億人が貧困から解放されたとも言われている。
 日本と世界の貧困をテーマに、時代の流れを考えてみよう。
 一口に貧困と言っても、国や地域によってその事情は大きく異なる。周知のように「貧困」には大きく分けて2種類あり、必要最低限の生活水準が満たされていない「絶対的貧困」と大多数の平均に比べて貧しい「相対的貧困」がある。
 日本で言うところの貧困とは、言うまでもなく相対的貧困層だが、経済的な問題だけではなく、「教育の機会や就業の機会が得られない」「病院や住居など生活に必要な公共サービスを受けられない」といった形でさまざまな貧困が存在している。
 絶対的貧困については、世界銀行が定めている「国際貧困ライン」があり1日1.90ドル未満で暮らす人々を絶対的な貧困層と定義している。現在、世界中で取り組んでいる貧困撲滅の対象は、この1.90アメリカドル未満で暮らす貧困層と考えていいだろう。
 1.90ドルといえば、日本円にして210円程度、月額にして6300円程度の生活費ということになる。さすがに日本では絶対的貧困は存在しないと考えるのが自然だが、世界ではまだまだ数多くの絶対的貧困層が存在している。
 貧困率が初めて10%を下回る見通しに
 こうした絶対的貧困層を撲滅するために掲げられているのが「持続可能な開発のための2030アジェンダ」だ。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDG’s)」で掲げている17の目標のひとつに、この貧困撲滅が定義されている。
 ちなみに、 世界銀行は2015年10月に国際貧困ラインを1日1.25ドルから1.90ドルに改定している。この背景には、2015年の世界の貧困率が初めて10%を下回る見通しになったからだ。
 2015年現在の統計によれば、貧困層の多くはサハラ砂漠より以南の「サブサハラ・アフリカ地域」に集中しており、ここにインドなどの南アジア地域を加えると、85%以上がこの2つの地域に集まっていると言われている。とりわけサブサハラ・アフリカの貧困率は、41%が貧困ライン以下となっており、世界の中での格差が大きいことがわかる。いまだに世界には数多くの絶対的貧困層がいることを示していると言っていいだろう。
 世界銀行の調査によると、世界の貧困層は1990年には18億9500万人だったのだが、2015年には7億3600万人に大きく減少している。この四半世紀の間に、貧困層の数をざっと11億人以上減らすことに成功したことになる。
 この25年間で、世界は確実に貧困層を減らしてきたと言っていいが、世界銀行絶対的貧困の比率を、世界全体で3%まで減らすことを目標にしている。
 一方、相対的貧困については「OECD(経済協力開発機構)」のデータがベースになっている。最近のデータがないためにはっきりしたことは言えないが、2011年の時点の中国の相対的貧困率は28.8%に達している。13億人の約3割、5億人弱が貧困層となっていたわけだが、いまやこの数字は大きく改善していると考えるのが自然だろう。訒小平が進めた開放政策以降、中国では6億人程度が貧困から救われたと言われている。
 中国に次いで貧困層の多い国は、やはり人口の多いインドということになるのかもしれないが、貧困率のデータではインドは世界第5位になっている。ちなみに、貧困率の高い国はデータでは次のような結果になっている(2016年現在、OECD調べ、調査年は各国によって異なり2011年〜2015年、出所:グローバルノート)。

1. 中国……28.80%
2. 南アフリカ……26.60%
3. コスタリカ……20.90%
4. ブラジル……20.00%
5. インド……19.70%
6. アメリカ……17.80%
7. イスラエル……17.70%
8. トルコ……17.20%

 ちなみに、こうした貧困のデータは164カ国を対象とした世帯調査に基づいており、各国の政府によって3〜5年ごとに実施されているが、データの収集や分析は国によって大きく異なるため、なかなか最新の数値が出てこない。
 いずれにしても、この四半世紀で貧困層を救済するという点では、人類は大きな前進を遂げたと言っていいだろう。
 日本の所得格差は先進国中ワースト8位?
 さて、日本の貧困問題はどうなっているのだろうか。日本の貧困問題とは相対的貧困であり、言い換えれば格差社会の表れであることをきちんと把握するべきだろう。
 格差社会についてはさまざまなデータがあり、世界の超富裕層8人と下位36億人の資産額が同じといったデータ(NGO団体「オックスファム」調査)には驚くばかりだが、日本の所得格差も実は深刻なレベルに達している。
 たとえば、ユニセフの調査によると日本の所得格差のレベルはOECD加盟41カ国中、格差が大きい順に8位という報告がされている。先進国の中でワースト8になる。これはユニセフがまとめた報告書「子どもたちのための公平性」によって指摘されたもので、底辺に置かれた子どもが平均的な子どもから比べてどの程度を取り残されているかを示したもの。いわゆる「底辺の格差」と呼ばれるもので、所得や学習到達度、主観的な健康状態、生活満足度などに関して、平均的な子どもと比較した数値である。
 同報告書によると、世界全体で見て1985年から2012年にかけての子どもの相対的所得は拡大しており、中間層の所得は上昇したものの、底辺では逆に減少している、という指摘がされている。
 とりわけ、先進国で暮らしている子どもの貧困は徐々に拡大しており、2002〜2014年の12年間で、すべての先進国の子どもの、貧困の格差は拡大していることが示されている。
 世界第3位の経済大国である日本が、ワースト8に入っていることは恥ずべきことだが、日本の場合、メディアが積極的に報道しようとしないために、政府も本気で改善に力を入れようとする姿勢が見えない。問題の深刻さは、経済再生=アベノミクスの陰でクローズアップされていない。
 もっとも、現在世界中で起きている極右勢力の台頭やポピュリズムの動きも、貧困や格差社会がその根底に流れており、貧困や格差の問題を政治の問題にすり替えようとする動きが大衆迎合主義などにつながっていると言っていい。
 深刻なのは、子どもだけではない。厚生労働省国民生活基礎調査によると、日本の貧困率はひとり親世帯の貧困率が50.8%なのだが高齢者世帯の貧困状態も深刻になりつつある。65歳以上の高齢者のいる世帯の貧困率は27.0%に達しており、4世帯に1世帯以上が、現役世代の収入の半分以下の収入で暮らしていることになる。
 しかも、単身世帯での貧困率はさらに深刻で男性単身世帯で36.4%、女性の単身世帯では実に56.2%が貧困層と定義づけられている。65歳以上の女性の一人暮らしは、2人に1人以上が貧困の状態というわけだ。
 家計調査年報(2017年)によると、無職の高齢者世帯が得ている収入の平均は月額で12万2000円、年換算で147万円となっている。その一方で、高齢者世帯(2人以上世帯のうちの勤労世帯)の平均貯蓄額は70歳以上で2385万円、60代で2382万円と、現役世代に比べて圧倒的に高く、40代の2倍以上となっている。
 つまり高齢世帯ほど貧富の格差があるということだ。公的年金制度の存続が大きなカギとなるが、高齢世帯の貧富の格差は今後大きな社会問題になるかもしれない。
 格差社会の縮小こそが貧困対策
 世界の絶対的貧困問題にしても、また日本の子どもや高齢者世帯の貧困問題にしても、解決方法はそう簡単なことではない。政府が積極的に格差社会の縮小に乗り出し、アメリカのような極端な自由主義を改め、富裕層から税金をたくさん徴収してそれを貧困層に配分する必要がある。
 アメリカの共和党政権や日本の自民党政権などの保守系政党が最も嫌う政策だが、現在のような状況がいつまでも続けば、フランスのイエローベスト運動に見るような、一般の民衆が立ち上がる時代になっていくのは避けられないかもしれない。
 民衆の抗議行動を軍事で押さえつけるには限界がある。アメリカのトランプ大統領が誕生した段階で、格差社会が縮小しなければ、 ポピュリズムや保守党政権の政策が間違っていることを示すことになる。
 「貧困撲滅のための国際デー(10月17日)」に合わせて声明などを出している「国際労働機関(ILO)」なども、さまざまな活動を実施しているが、異常気象や国際紛争などによって、時々刻々と新しい貧困層が誕生しているのも現実だ。
 2016年時点で、世界全体では3億2700万人が働いていながらも極度の貧困に陥っている、と言われる。
 最近になって、現在の資本主義には限界がきている、とする指摘が多くなってきた。確かに、これまでの資本主義社会は限界に近づいているかもしれない。大きな時代の流れの中で、格差をどう捉えていくのかを考える必要があるのかもしれない。」


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🚱20〉─1─過疎地のスーパーが閉店。買い物弱者・買い物難民。~No.85 @ 

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 少子高齢化による人口激減。
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 日本民族日本人としての人口が増えなければ、人口を増やす方法は外国人移民を必要な人数だけ受け入れるしかない。
 それが、1,000万人外国人移民計画である。
 受け入れる外国人移民とは、中国人移民である。
 日本人が知らないうちに、九州など日本全国で中国人移民が始まっている。
 近い将来、隣近所に中国人移民が急増する。 
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 2019年1月21日 msnニュース 毎日新聞「過疎地のスーパーが閉店 買い物弱者対策は…
 c 毎日新聞 35年の歴史に幕を閉じたにしがき宇川店=京丹後市丹後町で2019年1月19日午前10時、塩田敏夫撮影
 京都府京丹後市丹後町のスーパー「にしがき宇川店」は20日、閉店した。宇川地区唯一のスーパーで、住民有志は署名活動を展開して存続を求めたが、撤退の決定は覆らなかった。宇川連合区は近く、全世帯を対象に閉店後の買い物ニーズを聞き取るアンケート調査を実施する。地域づくりの視点から買い物弱者対策を行政に求める方針だ。【塩田敏夫】
 20日午前9時半。強い雨が降る中、宇川店が最後の営業を開始した。入り口には35年間の営業に感謝する掲示板が張られていた。
 開店とほぼ同時に、リュックサックを背負った高齢の女性が店内に入り、食料品や日用品を買い求めていく。次々と車が止まり、買い物客が店内に入っていく。
 背中のリュックサックに買い物したばかりの商品を詰め、手にも荷物を持った女性(84)は「困るね。店に歩いてこられる中浜(地区)に住んでいるけどこれからは困る。車の運転はできない。息子は外(他の地域)に住んでいる。これからどうする?わからない」と語り、足早に立ち去った。
 店の近くに住む瀬川善麿さん(85)は「今は車の運転ができるから峰山町や大宮町に行って買いだめをすることになるが、いつかは運転できなくなる。その時は本当に困ると思います」と話した。
 宇川地区は近畿最北端に位置し、過疎・高齢化が進んでいる。宇川連合区によると、昨年2月現在で593世帯、1290人。一番近い間人地区のスーパーまで車で20分はかかり、しかも急カーブの多い海岸沿いの道を走らねばならない。冬場の凍結時は特に危険だ。
 宇川地区の住民有志は存続を求めて署名活動を展開してきた。「買い物ができるスーパーが無くなったら宇川に住み続けることができない」などと高齢者から切実な声が上がったためだ。昨年10月5日、都会に出た子どもたちも含む1703人の署名をにしがき本社に提出した。代表世話人の増田光夫さん(80)によると、その際、同社は「正式には閉店は決まっていない」と回答した。
しかし、同社は昨年12月19日、「今年1月20日の閉店」を増田さんに通告。その理由について「市に対して援助がほしいと何回も求めたが、誠意ある回答がなかった」と説明した。これに対し、市は「にしがきから具体的な提案、要求は公式には一切なかった」としており、両者の主張は真っ向から対立している。
 宇川連合区によると、市は昨年12月28日の連合区長会で一連の経緯を説明した。それによると、市はにしがき以外のスーパーに宇川地区への出店を打診したが、「人口3000人以上」などの条件に合致せず、収益性の観点から「無理」との回答だった。
 一方、市は18日、宇川連合区からの要請で「社会資源マップ」の配付を始めた。宇川地区に配達できる弁当業者や公共交通などの一覧で、弁当や食料・日用品配達は3月末までと期間限定としたケースが多い。
 宇川連合区の小倉伸会長は「23日の連合区長会で了解を得たうえで全世帯を対象にアンケート調査を実施し、にしがき閉店後のニーズをしっかりと聞き取りたい。買い物弱者の問題は宇川地区だけでなく、市の他の地域にも広がっている。社会福祉協議会の協力も得て宇川地区に最も必要な社会資源は何かをつかみ、大きな地域づくりの視点から買い物弱者対策を市に求めていきたい」と話した。
 にしがきの撤退問題に取り組んできた増田さんは「にしがき本社は私たち世話人に2回にわたり、計3時間以上も面談に応じてくれ、誠実さを感じました。にしがき本社が移動販売車について市に資料を出すなどさまざまな提案をしたと聞きましたが、市は何も聞いていないという。どうなっているのか。市の対応はどうにも納得できない」と話した。」


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⛲17〉─2─親の遺骨を捨てる下流中高年の子供達。身寄りなき下流老人の哀れな末路。~No.73No.74No.75 @ 

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 一人者の下流老人は、死んだら遺骨の引き取り手がなく無縁仏となる。
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 2015年9月18日号 週刊ポスト「『下流老人』のあまりに哀しい末路
 親の骨を『捨てる人々』が増えている
 火葬した後、墓に納骨せず遺骨を『置き去り』にする事例が増加している。神社や寺院の境内、駐車場、電車内などに遺骨が放置され、警察に落とし物として処理される件数がここ数年で増加傾向にある。
 『忘れ物』として置いてゆく
 置き去りにあれる遺骨の多くに共通するのは、道端などに捨てるのではなく『忘れ物』を装って、電車の網棚の上や神社などの施設内に放置されるという点だ。
 遺骨をしかるべき保管場所以外に放置すると刑法190条の『死体遺棄』にあたり、3年以下の懲役に処せられる。罪に問われたくないという思いや、『捨てるのは忍びない』という意識が手伝い『忘れ物』という形で放置される例が増加している。
 千葉、埼玉両県警の管轄内で『遺失物』として処理された遺骨は3013年1月から15年8月までで21件。年々増えつつある状況にあるなか、千葉県警は4年前、埼玉県警は3年前から落とし物の項目に新たに『遺骨』の分類を作った。
 いくら名目上〝忘れ物〟だとしたところで、事実上は捨てられたことに変わりない。しかし捨てられた背景を顧みると、やむにやまれぬ状況が垣間見えてくる。
 10年11月、ある男性が08年に両親の遺骨を遺棄したとして逮捕された。逮捕まで2年もかかったのは、男性が貧困の末に住む家すら失っていたかあだった。
 男性の両親は東京都内に住んでいた。母親が死亡すると、その遺骨は父が管理した。ところが父親も数年後に死亡。最終的に両親の遺骨を引き取ったのが逮捕された一人息子だった。男性は仕事の都合でかって住んでいた宮城県仙台市まで車を飛ばし、市内の駐車場に車ごと遺骨を放置。その後職を失い、親類を頼ることができず、家を売り払い、ホームレスとして路上生活を送っていた矢先に逮捕された。男性は『金がなく、どうしようもなく捨てた』と供述したという。
 07年には神奈川県藤沢市で、寺の境内に夫の遺骨を遺棄した疑いで73歳の女性が逮捕されている。この女性は、『これ以上は保管が困難』という理由とともに『子供に迷惑をかけたくなかった』と漏らした。遺骨は白い布にくるまれ、ポリ袋に入れられた状態で境内に置かれていた。遺骨の中には火葬許可書の切れ端があり、記載された受理番号から女性だと特定された。『墓を見つけて納骨する金銭的余裕がなかった。自分の先行きも長くないと思った』
 逮捕後、女性はこう供述している。夫は04年に病死しており、しばらくは遺骨を自宅に保管していたが、結果として寺に放置した。遺骨が置かれた直後、せめてもの誠意なのか、それとも遺骨を弔えなかった罪悪感からか、寺に『供養してください』という手紙とともに現金2,000円を送ったという。
 ……
 親や兄弟の遺骨を捨てる──行為自体は咎められて然るべきだが、捨てる人々の事情や思いを考えると、やりきれない気持ちになる。
 100万もの放置予備群
 やむにやまれず遺骨を捨てる大きな理由には、前出の例のように『経済的困窮』がある。日本エンディングサポート協会理事長・佐々木悦子氏の話。
 『都内でお墓を買うとすれば、標準的なおのでも130万円から140万円、それに年間維持費で数千円から1万円程度かかります。最も安価な永代供養墓だと3万円から5万円程度で維持費もかからないのですが、実はそれすら払う余裕がないという方が増えています』
 そのためか、遺骨を自宅などで保管している人は意外に多い。首都圏だけでも100万柱あるといわれており、墓に納められないまま時が経過し続けている〝放置予備群〟は年々増加している。老人ホームなど施設に入居する際に遺骨を持ち込めなくて困っている、といった相談も少なくない。何らかの契機で保管者に金銭的余裕がなくなり、『下流老人』化すれば、それらの遺骨が『忘れ物』と化するおそれがあるのだ。
 さらに遺骨の遺棄が増えたもう一つの背景について、日本人そのものの変化を指摘する声もある。
 僧侶の資格を持ち『寺院消滅』(日経BP社刊)の著書があるジャーナリストの鵜飼秀徳氏はこう話す。
 『核家族化や生活の都市化によって、人間関係が希薄になり、死を簡単に処理しようとする人が増えています。一昔前までは家族は祖父母から孫までが一緒に同居し、親戚づきあいも盛んで、その分、人の死に触れる機会も多かった。自分の肉親が亡くなったときには周りの目もあったので、きちんと弔わなければならなかったし、手助けしてくれる人も多かった。
 しかし現代では、都会の生活に慣れたせいで田舎での人付き合いが煩わしくなり、親戚やお寺との付き合いが希薄になりつつある。結果、周りの目もなくなる。どうしても煩わしさが先行してしまい、責任感もなくなって「捨てる」という行為につながってしまうのではないでしょうか』
 しかし肉親の、しかも親の遺骨となれば捨てるのにかなりの抵抗があるのではないか。そう考えるのが一般的だろうが、実際に遺骨が目の前に存在し続ける状況になると、事情は変わってくるようだ。
 『多くの人は最初は丁重に扱います。が、遺骨が目の前に常に置かれていることに圧迫感を感じ、「お墓に入れないと祟られるんじゃないか」「弔うこともできない自分は穢れているんじゃないか」という自分を責めてしまう場合がある。その結果、遺骨を自分の目の前から遠ざけたくなることがあるようです』(前出・佐々木氏)
 『下流老人』の定義には『経済的困窮』とともに『社会的孤立』がある。その両方が要因である『遺骨遺棄』の増加──これは、日本の下流化が進行していることを露呈しているのではないだろうか」
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 下流社会で死生観、人生観、幸福感が激変し、親や兄弟の遺骨を弔わず捨てる人々が増えている。
   ・   ・   ・     
 自分と親、自分と兄弟、自分と子供の繋がりが希薄となる。
 祖先と自分、自分と子孫の絆が遮断される。
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 日本は薄情、
 日本人は親不孝。
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 生きていた、存在していた、ここにいた、それら全てが消され忘れさられる人びと。
 それが現代日本人である。
 忘れ去られ行く現代日本人。
 現代日本人は「無」である。
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 祖先から切り離され、子孫からも切り離された、分断と遮断の中で生きている「個」としての現代日本人。
 個は無である。
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 2015年9月25日 産経ニュース「中韓は親孝行、日本は薄情? 「親の世話したい」4カ国最低の37% 高校生意識調査
 高齢の親の世話をしたい高校生は少数派? 国立青少年教育振興機構が昨年実施した意識調査で、高齢となった親を「どんなことをしてでも自分で世話をしたい」と答えた日本の高校生は37・9%で、日米中韓4カ国の高校生の中で最低だったことが25日までに分かった。
 最も高い中国は87・7%。韓国57・2%、米国51・9%で日本以外は半数を超えた。日米中の3カ国が対象だった2004年調査では日本43・1%、米国67・9%でいずれも減少。中国は84・0%から微増した。
 一方、「経済的な支援をするが、世話は家族や他人に頼みたい」は、日本が最も高い21・3%。米国19・3%、韓国7・3%、中国6・3%だった。「分からない」との回答も、日本が31・5%と突出。米国17・2%、韓国7・7%、中国2・9%だった。
 調査は昨年9〜11月に行い、4カ国の計約7600人が回答した。」


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下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書)

  • 作者:藤田孝典
  • 発売日: 2015/06/12
  • メディア: 新書
老人漂流社会

老人漂流社会

子どもの貧困連鎖 (新潮文庫)

子どもの貧困連鎖 (新潮文庫)

🧣47〉─2─年金収入の親が死亡すると孤独なひきこもり子供は貧困老人として取り残される。~No,183No.184No.185 

  
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 2017年6月18日 msnニュース「「60代のひきこもり」が増えている
 「親亡き後」に突入するひきこもりの当事者が増えています。もし、何の対策もしなければ親の支援がなくなった途端、生活は行き詰まり、住まいも追われかねません。「働けない子どものお金を考える会」の代表を務めるファイナンシャル・プランナーの畠中雅子さんが、ひきこもりの子どもを持つ家庭の実態と対策について解説します――。
 79歳男性のSOS「私が死んだら息子は……」
 関東に地方に住む79歳の男性はこう言います。
 「母親(妻)が亡くなって、働けない息子と2人暮らしをしています。もともと息子と会話する機会は少なかったのですが、この1年くらいは、お互いの顔もろくに見ていない状態です。私ももうすぐ80歳です。息子はひとりっ子、私が死んだら路頭に迷わせてしまうのでしょうか……」
 独り言とも、SOSとも取れる、しぼり出すような声でした。
 私は「働けない子どものお金を考える会」の代表を務めています。この会は、ひきこもり、ニート、あるいは障がいをお持ちのお子さんを抱えるご家族の家計を考える、ファイナンシャル・プランナーの集まりです。
 親だけでなく、お子さんの生涯、とりわけ親亡き後をどう生き抜いていくかを模索する「サバイバルプラン」を中心に資金計画を立てるお手伝いをしています。
 高齢化した「ひきこもり」が着実に増えている
 その活動もはや25年。四半世紀が過ぎました。
 アドバイスを始めた頃は、ひきこもりのお子さんの存在が世の中に認知されていたとはいえず、生活設計のアドバイスをすること自体、奇異な目で見られることも少なくありませんでした。同時に、「親が死んだ後の話をするなんて、縁起でもないことを言うな」と、当事者の家族から怒られたこともありました。
 25年という時間が流れ、「ひきこもり」という言葉が理解されるようになった今では、私たちが提唱している「サバイバルプラン」を受け入れ、具体的な計画を立て、実行に移してくれるご家庭が増えてきています。
 とはいえ、それは、ひきこもりのお子さんの数が増えている現実を表すだけではなく、後述するようにひきこもりの状態から抜け出せないまま、お子さん自身が高齢化している現実も意味しています。
 「50代はもう珍しくありません。最近は60代もいます」
 私たちが提唱する「サバイバルプラン」とは、働けない状態がこの先も続くと仮定して、親が持つ資産でどうやって生き抜いていくかを考え抜くプランです。
親が持つ資産というと、金融資産だけをイメージする人が多いのですが、不動産活用も重要なポイントです。親亡き後も、住み続けられる住まいを確保できなければ、生活は行き詰まってしまいます。
 住まいを確保する方法として、都市部では賃貸併用住宅への建て替えが選択肢になります。一方、地方在住の場合は、老朽化した家から築浅の家への住み替えを促します。また、親に介護が必要になった場合に備えて、親子別居のプランを立てるケースもあります。
サバイバルプランの具体的な手法については、この連載で徐々に触れていきます。なかでも最近、深刻化しているのは「働けないお子さんの高齢化」です。
 親は80代以上というケースが増加「待ったなしの状態」
 私のご相談者の中には、お子さん側がすでに60代に入られたケースが何例も出てきています。50代のご相談者は、もう珍しくありません。ご相談者の親御さんの年齢が80代というケースも増えていて、中にはすでに「親亡き後」へ突入している人も出てきています。ひきこもりの高齢化は、待ったなしの状態になってきているのです。
 ひきこもりのお子さんが高齢化すると、「就業は絶望的であり、お子さん自身の生活設計など立てられない」と考えるのが一般的かもしれません。しかし、「早めの対処・対策」を立てることによって、親も子もサバイバルすることは可能です。
 「全く働けない子ども」が2人以上いる家庭も増えた
 「高齢化」のほかに見逃せない問題は、ひとつのご家庭に、「働けない状態のお子さんが複数いる」というケースのご相談が増えていることです。2人とも働けないだけではなく、中には3人や4人のお子さん全員が働けない状態のご家庭もあります。
 働けない状態にあっても障がい年金を受給することなどで、サバイバルプランが成り立つケースもありますが、本来なら「親亡き後」に手続きなどで力を貸してくれるはずのご兄弟がいないという、別の問題を抱えていることになります。
 さらに親側にとっても子ども側にとっても厳しいのは、親が持つ資産が減ってきていることです。企業業績は改善していますが、給与相場はそれほど上がっていませんし、年金受給額も減っています。
 ひきこもりの子を支える親の資産は減っている
 私が相談を受け始めた25年前は、ご相談者の多くが、親(お子さんにとっての祖父母)の持つ資産でサバイバルプランが成り立ちました。ところが、時間が経過するごとに親側の資産に余裕のないご家庭が増え、現在、サバイバルプランが成り立つのはご相談者の半分程度に減っています。
 サバイバルプランが成り立たないと思われるご家庭こそ、先ほど申し上げたように早めの対策が必要になります。
 資産の少ないご家庭は、厳しい現実に向き合わない傾向があります。「子ども自身がなんとか収入を得てくれれば……」といった現実的とはいえないプランしか立てていないケースが多いのです。厳しい現実から逃避しても、明日や明後日の生活に困るわけでもありません。しかしそれは、いつか訪れる「親亡き後」について先送りしたまま、あるいは考えることをフリーズしたままにしているだけです。
 「親亡き後」のお子さんの生活を守るためには、この先も働けない状態が続くという現実を受け入れる勇気が、何よりも重要です。資産が少ないご家庭ほど、1日も早くサバイバルプランづくりに取りかからなくてはいけません。
 今、働いている子が突如、働けなくなる日
 また、ひきこもりの問題というと、ごく一部のご家庭の問題であり、自分の家庭とは関係のない話だと捉える方も多いでしょう。ですが、ひきこもり状態ではなくても、フリーターやニート(仕事も通学も求職もしない)のように、定職についていないお子さんが増えている現状*を考えれば、ひきこもり家庭の状況は決してひとごととは言い切れないはずです。
 (*編注)2017年版「子ども・若者白書」によれば「ニート」を含む若年無業者数(15〜39歳)は2016年で約77万人と依然高い水準にある(ニートの割合は男性2.8%、女性1.6%)。この白書は調査対象の年齢が39歳までであり、実際は40歳以上の者もかなりの数にのぼると推測できる。
 「新卒で働き始めた会社で、老後の手前まで働く」というのは、親の世代には常識として通じても、お子さんたちの世代にとっては難しい現実になってきています。「一生働ける仕事に就く」という願いでさえも、かなわない現実があるのだと受け入れる覚悟が必要です。「働けない状態の子どもを抱える」というリスクは、どのご家庭にも起こりえます。そうした現実を、一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。」





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