🥓22〉─6─女性が結婚しない選択をしただけで貧困に陥り自分ひとりを養えない。〜No.110 

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 2021年12月14日 MicrosoftNews PRESIDENT Online「「結婚しない選択をしただけで貧困に陥る」女性が自分ひとり養えない日本社会の罪深さ
 © PRESIDENT Online ※写真はイメージです
 就職氷河期に就活をしたロスジェネ世代の中には、非正規雇用などで収入が不安定なまま歳を重ねている女性も少なくありません。ジェンダー問題の研究者である田中俊之さんは「今は未婚化や晩婚化も進んでいますから、男だから女だからではなく、一人ひとりが自分で自分を養えるだけの収入を得られる社会にしていかなければなりません」といいます──。
 今から正社員になっても間に合わない
 10月に朝日新聞デジタルから配信された「ロスジェネ単身女性の老後 半数以上が生活保護レベル 自助手遅れ」(2021年10月14日)という記事は、非常に衝撃的な内容でした。記事によれば、現在40~50歳ぐらいのロスジェネ世代の独身女性は、その大半が老後に貧困化するというのです。
 ここで言う「独身」には、未婚の女性も夫と離別した女性も含まれます。いずれであっても、現段階での仕事が非正規雇用の場合、たとえ今から正社員になったとしても貧困化は防げないという、かなり絶望的な話でした。
 そもそも結婚や再婚をするかどうかは個人の自由なのに、女性の場合は「しない」を選択しただけで老後の生活に困ることになるわけです。これは非常に大きな問題だと思いました。
 現状は働く女性の約半数が非正規雇用で、男女の賃金格差も依然として大きいままです。独身女性の貧困化を防ぐには、これらを早急に改善する必要があるのではないでしょうか。
 男性に高年収を払える企業は少ない
 しかし、こうした問題に無頓着な男性は少なくありません。先日は福島県相馬市の立谷秀清市長が、少子化問題について「女性に悪いけど、男性の所得を上げていかないと人口問題は解消しない」「男性の年収と婚姻率は面白いように比例する」などと発言しました。男性の年収アップこそが結婚や出産につながるのだという意味合いでしょう。
 この意見はいろいろな前提が間違っていると思います。今の日本で、家族を養えるだけの給料を男性社員全員に払える会社がどれだけあるか。日本の平均賃金は世界的に見て低いと言われており、今では韓国にも大きく負けています。
 「大黒柱=男性」の呪縛は邪魔なだけ
 子どもを多く生み育てようとすれば、夫婦が共に働いて家計を支えるしかないわけですが、男性が「働けば少なくとも自分が食べていく分だけは稼げる」可能性が高いのに対して、女性にはそうではない人が多くいます。働き続けても非正規雇用のままである場合も多く、その賃金では自分で自分を養い続けることすら難しいのです。
 これは、日本が「大黒柱=男性」を前提とする社会であるからにほかなりません。人はいずれ結婚して、男性は働き女性はそのサポートをするものだ──。立谷市長の発言は、こうした昔ながらの家族像がいまだに根強い呪縛として残っていることを痛感させるものでした。
 今は未婚化や晩婚化も進んでいますから、「男だから」「女だから」ではなく、一人ひとりが自分で自分を養えるだけの収入を得られる社会にしていかなければなりません。その意味では、昔ながらの家族像の呪縛は邪魔になるだけです。これを解かなければ、独身女性の老後貧困問題も男女の賃金格差問題も解消しないのではと思います。
 独身が問題なのではなく、独身では食べていけないことが問題
 しかし、家族像に対する呪縛は男女ともにあるものです。僕の知人の女性も、つい先日「うちの長女は40代なのにまだ独身で……」と気まずそうに話していました。今は未婚の人も増えていて全然珍しいことではないのに、まだまだ「独身=困りごと」と捉えている人が多いように感じます。
 困るのは独身であることではないのです。問題は、独身であるがゆえに食べていけないこと、そしてそうした環境が特に女性に対していまだに続いていることなのです。
 とりわけロスジェネ世代の独身女性には、働けば自分で自分を養えるという環境に入れないまま歳を重ねてきてしまった人が多くいます。非正規雇用のまま40代を超えると、何らかのスキルがない限り、どこかの企業に正社員として雇われるのは難しいものです。今の自由市場の中では彼女たちを救うのは難しく、老後貧困問題は今後もますます深刻化していくでしょう。
 女性差別の縮図
 これは彼女たちの自己責任なのでしょうか。僕は絶対に違うと思います。現在の収入が不安定なのは、たまたま就職氷河期に社会に出たからです。そして景気がよくなった後も、多くの企業は非正規雇用の女性たちを正社員に登用しようとはせず、男女の平均賃金格差を大きく広げてしまいました。この流れは、まさに女性差別の縮図ではないかと思います。
 ロスジェネ独身女性の貧困化問題は本人の力だけでどうにかできるものではなく、社会全体で考えていく必要があります。ではどう考え、何を発信していくべきなのでしょうか。
 僕としては、今こそ本来の意味のフェミニズムが必要なのかなと思います。女性学者の井上輝子さんは、女性学を「女性による女性を対象とした女性のための学問」と定義しました。学問の世界では当時、いい議論が出てくると男性が成果をかっさらっていくことが多く、それを懸念して「女性による」を入れて定義したのだと聞いています。
 そうした出発点に戻って、女性が女性のことを考え発信するムーブメントをつくり上げるのです。最近は、フェミニズムを打ち出して活動する若い女性も増えています。
 ロスジェネ世代も声を上げるべき
 ジェンダーフェミニズムと言うとハードルが高いように思えるかもしれませんが、こうした活動には当のロスジェネ世代の女性も参加することが大事。今は井上先生の時代とは違い、SNSなど発信できる場や集まれる場がたくさんあります。こうした場を活用して、解決策を出し合っていくことが必要ではないでしょうか。
 フェミニズムに関しては、マスコミは若い女性の活動家ばかりに焦点を当てがちですが、それはそうしたほうが新しいムーブメントに見えるからではないかと思います。でも、本来は男女賃金格差の当人である40~50代のロスジェネ世代も積極的に声を上げていくべきですし、マスコミもこの世代の意見をもっと取り上げるべきです。
 古くさいと思うかもしれませんが、昔は主婦による生活クラブのような団体があり、自分たちの意見を社会に反映させるためにここから議員を出そうという運動もありました。いわば、自分たちの暮らしと政治をつなげるための運動だったのです。
 女性に関する問題を改善していくためには、そうした活動を現代版にアレンジするのもひとつの手だと思います。答えは意外にも、古くさいと思われがちなものの中にあるのかもしれません。幅広い世代の運動が広がり、男女格差の解消に、ひいてはロスジェネ独身女性の貧困問題の解消につながっていくことを願っています。

                    • 田中 俊之(たなか・としゆき) 大正大学心理社会学部准教授 1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2017年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。 ----------」

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