🌁60〉─1─日本人はベトナム人を馬鹿にしている。~No.296No.397No.298 

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 2021年12月30日 MicrosoftNews 文春オンライン「「日本人はベトナム人を馬鹿にしている」家畜窃盗事件を起こした不良グループのリーダーが明かした“悲しすぎる犯行動機”《勃興する外国人マフィア》
 真樹 哲也
 ナイジェリア人のぼったくりバーの潜入取材で薬を盛られ、違法売春に堕ちていく少女を目の当たりにする……。日本の裏社会に潜む外国人マフィアに接触し、その実態を取材したフリーライター、真樹哲也氏の著書「 ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団 」(彩図社)が発売から好評を博している。
 2021年8月には工藤会のトップに初めて死刑判決が言い渡され、裏社会に激震が走った。かつての勢いを失いつつある日本のヤクザとは反対に勢力を増す外国人マフィア。日本の深層を追ったノンフィクション作品から、一部を抜粋して転載する。
 北関東で多発した家畜窃盗事件にベトナム人不良グループが関与しているという情報をつかんだ著者。グループの正体を解明すべく、取材を進めることにしたのだが――。
(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)
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 元凶は外国人技能実習制度のいびつさ
 私は群馬県警関係者から話を聞いていて、ベトナム人不良グループに対する怒りの感情をほとんど感じることができなかった。それよりも外国人技能実習制度に対する深い悲しみの気持ちが伝わってきた。
 ©iStock.com© 文春オンライン ※写真はイメージです ©iStock.com
 家畜窃盗を繰り返すベトナム人不良グループは許せないし、けしからない。それは至極、真っ当な意見だ。しかし、ベトナム人不良グループの台頭は、日本が国を挙げて実施する外国人技能実習制度のいびつさが大きな要因になっているのだ。
 「今回の事件は予想以上に世間を賑わせました。不起訴になったベトナム人がいることで、群馬県警は大きな批判に晒されました。被害に遭った方々からすれば当然でしょう。ただ、他の真面目に働いているベトナム人が差別、偏見の目で見られることが私には耐えられませんし、外国人技能実習制度の問題点を改善していかなければ根本的に解決はしないと感じました。
 ベトナムが豊かになって日本に出稼ぎに来るベトナム人が少なくなっても、次の新しい貧しい国からの外国人に対象が変わるだけです。犯罪を是正することは、犯罪行為をした人間を取り締まることは勿論ですが、それと合わせてきちんとした待遇で外国人を迎える日本社会にすることだと思います。群馬県は外国人と共生する多文化共生を掲げて、来年2021年4月には条例もできる予定です。その理念を嘘ではなく、忠実に実践することが大切だと考えています」
 警察関係者が捉え方によってはベトナム人不良グループを擁護するような発言をしたことが私には意外だった。
 「家畜は売ったり、食べたりした」家畜盗難事件の真相
 地道な取材を重ねていた私は、家畜窃盗事件で逮捕されたベトナム人不良グループのリーダー的存在である“群馬の兄貴”の関係者に会うことができた。小柄でスマートなベトナム人男性、グエン(仮名・30代)は、外国人技能実習生でベトナム人不良グループの一員である。見た目はどう見ても健全な外国人にしか思えない。
 グエンは警戒心が強く、取材を依頼したが何度か断られた。結局、私の古くからの知り合いの中国人を通じて取材を受けてもらうことができた。取材場所は中国人が経営する防音仕様のカラオケスナックを指定され、音声の録音取材は禁止でメモ書きをするだけという条件を押しつけられた。グエンは日本語がおぼつかないので、通訳を入れての取材となった。
 「ベトナム人、みんなお金に困っている。真面目に長い時間働いても、給料は少ない。雇用保険とか、いろいろ引かれて、10万円ぐらい。そこからベトナムの家族に送金したりする。送金するのは、ゆうちょ銀行が良い。手数料安い。送金したら、食事するお金も残らない。もっと稼ぎたくなる。
 ベトナム人なら牛、豚、鶏、解体できる。ベトナムで教わるから。だから、家畜を盗むのは丁度良かった。群馬県、栃木県は田舎。警備も甘いし、カメラも無い。簡単に家畜を盗めた。盗んだ家畜は売ったり、自分たちで食べたりした。Facebookで売っていたのはミスだ。自分、そんなことしない」
 これまでに暴力団関係者や警察関係者に聞いてきたように犯罪の背後には生活に苦しむベトナム人の姿があるようだった。
 「警察も把握できていないのですが、盗まれた家畜はどこに消えたのですか?」
 「盗んだ家畜をバレないで売れる場所がある。ヒントは日本人相手じゃない。日本人の店じゃない。自分は日本人を信用しない。あなたには悪いけど。だから、今回の取材で話すことも全部じゃない。友達の紹介だから仕方なく受けた。何かあれば私の人生、壊れる。あなた、その責任は取らないし、取ることもできない」
 淡々と話していたグエンが私の目をじっと見て続けた。
 「変なことになれば、あなた殺す」
 物騒な言葉に店内の空気が一瞬固まった。私は息を呑んだが、グエンの目を見返した。グエンは静かに言葉を続けた。
 「あなたが思っている以上に、日本で暮らしているベトナム人は大変だ。その気持ちを分かるのは、同じベトナム人か日本人以外の外国人。連絡も、記録が残らない方法を使う。仲間はSNSで集めた。困っているベトナム人はたくさんだから。誰かが裏切れば、自分が暮らすこともできなくなる。結束は固い。助け合い、生きている」
 「日本人はベトナム人を馬鹿にしている」
 おそらくは知り合いのベトナム人や外国人が経営する飲食店で、グエンは窃盗した家畜を売り捌いたのだろう。また、連絡手段においては日本の暴力団や半グレも顔負けである。通信記録の残らないシグナルやテレグラムなどの通話アプリを使いこなしていることが把握できた。さらには、ベトナム人不良グループのメンバーは、困っているベトナム人が要員となっていて、SNSで連絡を取り合い集めたことが理解できた。
 「しかし、何年も時間をかけて育てた家畜を盗まれた業者のことは考えないのですか? あなたたちが困っているのと同じように彼らも困っているのですよ」
 私が問いかけると、今まで無表情だったグエンが少しだけ動揺したように見えた。
 「悪いと思っている、本当。だけど自分たちも日本人に騙されてきた感覚がある。仕事は単純作業。給料安い。住む部屋は狭い。意味のない雇用保険のお金とか引かれる。もっと稼ぎたくても働かせてもらえない。日本人に媚びるベトナム人だけ評価される。日本人はベトナム人を馬鹿にしている。ずっと我慢してきた」
 「犯罪をおこなう理由は日本人への復讐ですか?」
 「違う。家畜を盗んだのは生きるため。ベトナム人の誰もが、犯罪したくてやってない。今までも困っていたベトナム人は、コロナでもっと大変になった。解雇されたり、ベトナムに帰れなくなったりした。私たちはとても苦しい」
 グエンは怯えたような表情をして答えた。私はそれ以上グエンを責める言葉を口にできなくなった。
 歌舞伎町“ぼったくりバー”でラテン系美女と飲んだ結末 屈強な黒人店員に羽交い絞めされ「スケベー野郎ー!」《勃興する外国人マフィア》 へ続く
(真樹 哲也/Webオリジナル(特集班))」
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