¥15〉─5─日本のGDPは世界13位から27位に転落し、先進国ではなくなった。〜No.61No.62No.63 

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 2023年10月9日 MicrosoftStartニュース AERA dot.「日本のGDPは世界13位から27位に転落 「先進国のグループから転落しかねない」
 日本のGDPは世界13位から27位に転落 「先進国のグループから転落しかねない」
 © AERA dot. 提供
 日本の国際的地位が低下している。2012年には日本はG7の中で上位グループだったが、いまや最下位に転落した。経済学者の野口悠紀雄氏は、「いまの状態が続けば、日本は、先進国の地位を失う可能性が強い」と指摘する。『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。
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■一人当たりGDPで韓国や台湾とほぼ同水準
 2022年は、日本が貧しくなったことが痛感される年になった。急激に円安が進んだため、様々な指標で日本の国際的地位が下がったからだ。
 10月に公表されたIMF国際通貨基金)のデータによると、2022年には、台湾の一人当たりGDPは4万4821ドル(世界第24位)となり、日本の4万2347ドル(27位)を超えた。ただし、2023年に公表されたIMFのデータでは、台湾は、日本をわずかに下回った。
 10年前の2012年をみると、日本の一人当たりGDPは、韓国の1.9倍、台湾の2.3倍だった。
 2013年に異次元金融緩和が導入されて円安が進み、日本の地位は顕著に低下した。それが2019年まで続いたのだが、2020、21年に、韓国、台湾が日本に急迫したのだ。
 IMFの予測によると、日本、韓国、台湾の相対的な関係は、今後も暫くはいまのままで続く。しかし、韓国の成長率が日本より大幅に高いので、近い将来に韓国も日本を抜く可能性が高い。
 これまでも、シンガポールと香港の一人当たりGDPは、日本よりかなり高かった(2022年で、シンガポールは世界第5位、9万9935ドル、香港は第16位、6万2015ドル)。ただし、人口は数百万人だ(シンガポールは569万人、香港は748万人)。つまり、都市国家であって、日本とは簡単に比較できない面がある。
 それに対して、台湾は人口が日本より少ないとはいえ、数千万人のオーダーだ(2357万人)。この規模の人口のアジアの国・地域の一人当たりGDPが日本とほぼ同じになるのは、初めてのことだ。
 韓国、台湾の成長率は日本よりかなり高いので、韓国、台湾が日本を抜くだけでなく、将来は差が拡大していく可能性が強い。
■賃金で日本が韓国に抜かれたかどうかは、議論の余地がある
 「賃金では、数年前から、日本は韓国に抜かれていた」との指摘があるかもしれない。確かに、OECDのデータによると、年間平均賃金では、すでに2015年に、日本は韓国に抜かれている。そして、2021年には、日本が3万9711ドルに対して、韓国が4万2747ドルになっている。
 ただし、このデータを見るには注意が必要だ。
 ここでは、市場為替レートでドルに換算しているのではなく、購買力平価で換算している。これは、世界的な一物一価が成立する為替レートだ。2021年には、1ドル=100.412円と、1ドル=847.457ウォンだ。他方、市場レートは1ドル=109.754円と、1ドル=1143.958ウォンだ。
 したがって、市場レートで見れば、日本は上記の値を0.915倍して3万6335ドルであり、韓国は0.741倍して3万1675ドルだ。だから、まだ日本の方が高い。
■国際的地位の低下は、低い成長率と円安による
 日本の一人当たりGDPが台湾や韓国に追いつかれたのは、2つの理由による。
 第1は、円安だ。2013年から14年、そして2022年に日本の相対的地位が急速に低下したのは、円安によるものだ。
 第2の原因は、自国通貨建てでみた一人当たりGDPで、日本の成長率が低かったことだ。
 2010年から22年までの期間の成長率を見ると、次の通りであり、大きな差がある。日本1.11倍。韓国1.60倍。台湾1.71倍。
 日本の成長率が低くなる大きな原因は、人口高齢化が進んで労働人口の増加率がマイナスになっていることだ。ただし、ここで見ているのは一人当たり計数なので、これによる影響はかなり緩和されている。
 もう一つ注意すべきは、韓国においても、出生率低下によって、労働力が減少していることだ。それにもかかわらず、韓国の成長率が高いのは、技術進歩率が高く、産業構造が高度化しているからだ。
 なお、以上で見た状況は、日本と韓国、台湾との間だけのことではない。日本と世界の多くの先進国の国との間で同様のことが言える。いまの状態が続けば、日本は、先進国の地位を失う可能性が強い。
アベノミクスで、日本は世界13位から27位に転落
 IMFは、世界の40の国・地域を「先進国」としている。
 アベノミクス・異次元金融緩和が始まる前の2012年には、日本は先進国の中で第13位だった。いまは第27位だから、この10年間に大きく順位を落としたことになる。いま日本は、先進国のグループから転落しかねない状態に陥っている。
 アベノミクス・異次元金融緩和が何をもたらしたかを、これほどはっきりと示しているものはない。
 2012年で日本より上位にあったのは、ヨーロッパの小国あるいは、北欧諸国が中心だった。
 G7諸国中で見ると、カナダ、アメリカ、日本の順だった。つまり、日本はG7の中で、上位グループにいた。一人当たりGDPで、アメリカと日本は、ほとんど差がなかった(アメリカ5万1736ドルに対して、日本4万9175ドル)。
 しかし、この10年間に、日本は、一人当たりGDPで英独仏に抜かれた。つい最近まで、イタリアが日本より下位にあった。しかし、2023年には、イタリアも日本を抜いた。つまり、いまや日本は、G7の最下位だ。
 そして、アメリカの一人当たりGDP(第8位8万9546ドル)は、日本の2.1倍になった。
 これほど大きな変化が、この10年の間に起きたのだ。
野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
 1940年、東京生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社、岡倉天心賞)、『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)、『2040年の日本』(幻冬舎新書)、『超「超」勉強法』(プレジデント社)、『日銀の責任』(PHP新書)ほか多数。
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