⛲27〉─1─認知症老人1,000万人。認知症老人の交通事故、万引き、暴力、暴言、痴漢と家族の役割。~No.127No.128No.129 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 若者の人口減少で、少年犯罪は減っている。
 それとは逆に、高齢者の増加で高齢者による犯罪が急速に増えている。
 一人暮らしの老人。家族に相手にされない老人、認知症老人等による犯罪は、万引き、無銭飲食、少額窃盗などである。
 全国の刑務所では、高齢受刑者数も増えている。
 高齢犯罪者は、行く当てもない為に再犯率が高い。
 日本の犯罪率減少は、人口減少が原因である。
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 親を捨てる子供は、次は自分が捨てられる。
 親を捨てる者は、自分も捨てられると覚悟すべきである。
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 2015年11月21日号 週刊現代「世界史にない異常事態、いったい何が起きようとしているのか
 『認知症老人』1000万人!ニッポンの大ピンチ
 医療も介護も、ぜん『認知症老人』1,000万人!ぶ吹っ飛ぶ
 全国民の10人に1人が認知症。町を歩けば、認知症の人を見かけない日はない──日本は間もなく、そして確実に、そういう国になる。その時になって『想定外』と嘆いても、もはや手遅れなのだ。
 もう手の打ちようがない
 2025年、日本の認知症患者・認知症予備軍お数は合計1,000万人を突破する──。65歳以上の3人に1人、全国民の約10人に1人がボケるという、人類の歴史でも例を見ない事態が、10年後に迫っている。元大蔵省主計官で、政策研究大学院名誉教授の松谷明彦が警告する。
 『残念ながら、日本の人口が2060年頃まで減り続けること、そして現役世代と65歳以上の高齢者の人口比率が限りなく「1対1」に近づくことは、現在の人口構成から確定しています。特効薬が開発されない限り、認知症の高齢者も確実に増え続けるでしょう。
 10人に1人が認知症ともなれば、現在のような高い水準の介護・医療サービスをすべての人に行きわたらせることは、とうてい不可能と言わざるを得ません。財政破綻を避け、なおかつ現状の社会保障を維持しようとすると、現役世代の収入を9割以上召し上げなければならないからです』
 日本はこの瞬間にも、未曾有の『認知症「超」大国』への道を突き進んでいる。そして、日本中に認知症の高齢者が溢れるころには、現行の医療・介護制度、そして年金制度も間違いなく崩壊している。認めたくはないが、それが現実だ。
 2025年には、団塊の世代800万人が75歳を超え、後期高齢者となる。そしてその子供たち、いわゆる『団塊ジュニア』──就職氷河期に直面し、非正規雇用の割合が約20%に達する、今の40代──が、介護する側になる。医療・介護の負担は重くなる一方、それを支える経済力は、ますます細くなってゆく。
 『認知介護』が急増する
 しかし政治家も官僚も何ら具体的な策を立てられず、『自分が任期中に責任を問われなければそれでいい』と、知らんふりを決め込むばかり。厚生労働省関係者が話す。『政治家は、認知症や高齢化の問題に「オレの知ったことか」「票にならない」と言って、誰もまともに取り組もうとしない。一方で厚労官僚は、「将来のことを考えるのは政治家の仕事」「われわれは、目先の課題をこなすだけ」と、責任を押し付け合っています。どちらも内心では、「もう、どうすることもできない」と気が付いているのです。
 厚労省は今年初めに「新オレンジプラン認知症施策推進総合戦略)」を発表しましたが、それでも「では、誰がいつ何をやるか」ということは明確になっていない』
 認知症の激増が、数年以内に社会問題になることは明らかだ。しかし、これに対応するための政府機関はいまだになく、認知症のためのセーフティネット作りも、地方自治体の自主努力に頼っているのが現状である。
 一方で政府は、今年6月に『2025年までに、全国の病院の病床数を、約20万床減らす』という方針を掲げた。ただでさえ介護施設の数が足りない中で、『認知症が重い高齢者は出て行ってもらう』という施設も増えてきている。『これからは、認知症老人の面倒は、家族が自宅で見るのが当たり前。カネがないのなら、尚更だ』──政府は、暗にそう言いたいのである。
 世の中全体が、認知症老人の面倒を見切れなくなったとき、何が起こるのか。間違いなく急増するのが、夫婦の片方が認知症になった後、介護にあたっていた夫や妻まで認知症を発症し、しかも誰もそのことに気付かないという『隠れ認認介護』世帯である。神奈川県・川崎幸(さいわい)クリニックの杉山孝博院長が言う。
 『すでに「認認介護」の問題は顕在化しつつあります。80歳前後の認知症発症率はおよそ20%なので、夫婦ともに認知症になる割合は単純計算で8%。現在でも、少なくとも11組に1組の夫婦が、ともに認知症ということになります。
 夫婦で認知症の進み具合が大きく違う場合は、訪問看護婦が服薬管理などのサポートをすれば、症状の軽いほうが介護することはできます。しかし、片方が食事をとれない状態だったり、痰の吸引などの医療行為が必要な場合、または暴力をふるいといった症状があるときは、介護が成り立たなくなってしまうことも少なくありません』
 暴走する『認知症ドライバー』
 離れて暮らす子供が仕事に忙しいと、発覚が遅れてしまう。また、認知症になりかけている、いわゆる『まだらボケ』状態の患者には、自分が認知症になったことを受け入れられない人もいる。本人が電話口では『大丈夫だから』と言っていても、実際に会ってみるとボケていた、というケースは珍しくない。
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 10月28日 、宮崎市内で73歳の認知症患者の男性が車を暴走させ、7人が死傷した事故は記憶に新しい。
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 かくして、街には道路を蛇行し、逆走し、暴走する『認知症ドライバー』が解き放たれる。65歳以上の免許保有者数は、13年末時点で約1,534万人だが、2025年には約2,824万人と、ほぼ倍増する見通しだ。免許返納の義務付けなどが実施されない限り、事故の数も同じくらい倍になる。
 介護士が『徴兵』される日
 10年後の日本では、すでに国民のおよそ3人に1人が65歳以上である。ファミリーレストランでは認知症の客を高齢者店員がもてなし、コンビニのレジにも高齢者と外国人ばかり。電車の座席は半分が優先席に変わり、スーパーやデパートでは迷子放送ではなく『認知症放送』が日常茶飯事になる。認知症高齢者の資産を狙って、詐欺だけでなく誘拐事件も多発するはずだ。昨年1年間でも、認知症が原因で行方不明になったとみられる人の数は1万783人にのぼっている。
 ……
 慶應義塾大学佐渡充洋助教厚生労働省の試算によれば、昨年の時点で認知症の介護・医療費、家族の負担といった『社会的費用』は年間14.5兆円にのぼっている。2025年には、その額は20兆円近くに膨らむ見通しだ。
 認知症対策に使われる国家予算があまりに膨大になれば、『認知症の高齢者に、そこまでしてカネをつぎ込む必要があるのか』という議論も今後は起こりかねない。誰を切り捨て、誰を助けるのか。それとも、全員で一緒に滅ぶのか──年金の原資が吹っ飛ぶかどうかの瀬戸際に追い込まれれば、全国民が見て見ぬふりを続けてきた、まさに『パンドラの箱』』が開く。
 こんな恐ろし事実もある。政府は、『経済財政の中長期試算』を2023年分までしか発表していないのだ。もし政府が、2025年前後に『社会保障制度が立ち行かなくなり、日本は財政破綻する』と予想しているのだとしたら。日本はその頃、徴兵制ならぬ『徴介護制』もやむを得ないような状況に追い込まれているかもしれない。
 介護離職者も数十万人に
 00年に介護保険制度が導入された後、福祉・介護分野へ乗り込んだ民間企業は数多かった。しかし、大手のコムスンワタミは不祥事などもあり撤退。倒産に追い込まれる事業者も増える一方だ。
 『介護は、モノを作って売るといった事業とは勝手が違いますし、どんどん儲かるというわけでもありません。営利企業が参入しても、なかなかうまくいかないのが実情です』(前出・宮澤氏)
 認知症の高齢者はどんどん増えるのに、介護の担い手はまったく足りない。にもかかわず、安倍総理は今年9月『2020年代初頭までに、介護離職ゼロを目指す』という目標をぶち上げた。厳しい現実と、明らかに食い違った目標だ。
 総理の発言と反対に、これから2025年までの間、介護離職の増加が大問題となるのは間違いない。総務省の調べによると、その数はすでに年間10万人に達している。10年後には数十万人になるだろう。働かないと、生活が立ち行かない。しかし、自分が介護するしかない──こう悩む人も、認知症の高齢者と同じ数だけ増える。
 『今後数十年間、現役世代の人口が増えることはありません。1人1人の収入が大幅に増えるということもないでしょう。しれなのに、いきなり「もう国は面倒を見きれないから、認知症は家族で何とかしてくれ」と言われて、対応できる人がどれだけいるでしょうか。まず現役世代の所得水準を上げることが必要なはずです』(前出・松谷氏)
 現役世代の活力と生産力が介護に食われ、経済のパイが縮み、社会保障の税収はますます減る。日本はもう、そんな負のスパイラルに片足を突っ込んでいる。
 十分な介護を受けられない認知症の高齢者が、町に溢れる日があと10年でやってくる。日本人は『座して死を待つ』しかないのか」
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 内閣府の平成27年版「高齢社会白書
 一人暮らしの65歳以上の男性高齢者は、1980年で約19万人で、高齢者人口に占める割合は4.3%であった。
 2010年では約139万人、11.1%になり、今後も増加すると予想されている。
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 11月22日号 サンデー毎日「交通事故、万引き、暴力・・・
 『認知症』と家族の『役割』」
 10月28日、宮崎市中心街で軽自動車が歩道上を暴走し、歩行者ら7人が死傷する事故が起きた。車を運転していた73歳の男性は、事故2日前まで認知症の治療を受けていたことが明らかになっている。
 警察庁によると、昨年8月までの2年間で、高速道路での逆走は447件。約7割が65歳以上の運転者で、そのうち認知症認知症が疑われる人は約4割にのぼるという。
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 〝暴走〟は車の運転だけではない。認知症にはさまざまな種類があるが、中でも『前頭側頭型認知症(ピック病)』のように、自分の欲求を抑えられず万引きなど反社会的な行為に及ぶケースも少なくない。
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 07年12月、愛知県大府(おおぶ)市のJR共和駅で、認知症の男性(当時91)が線路に立ち入り、列車にはねられ死亡。男性の介護には、当時85歳の妻と、介護のため近所に引っ越してきていた長男の妻が目を離したすきに男性は家を出て徘徊し、線路に入ってしまったのだ。
 名古屋地裁は13年8月、注意義務を怠ったとして、妻と長男に約720万円を鉄道会社に支払うよう命じた。遺族側は控訴したが、14年4月の2審の名古屋高裁も妻の責任を認め、約360万円の支払いを命じ、双方が上告した。
 認知症の家族が事故や事件を起こしたら、裁判では『法的に「責任能力の有無」が問題になる』と、弁護士法人アドバンス代表の五十部紀英弁護士は説明する。
 『責任能力あり』」とされると、刑事責任を問われたり損害賠償責任を負ったりする。『責任能力なし』」とされると、刑事責任を問われたり損害賠償責任を負ったりすることはないが、家族が『監督責任』を問われる可能性もある。五十部弁護士は『被害者が家族の責任を重視する場合には、本人と家族の双方に損害請求をする可能性も考えられる』と話す」
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 11月23日 産経ニュース「利根川で無理心中し高齢夫婦死亡 殺人の疑いで三女を逮捕
 22日午前9時10分ごろ、埼玉県熊谷市間々田の利根川で、ボートに乗っていた男性が川の中で同県深谷市稲荷町北の無職、藤田ヨキさん(81)が死亡しているのを発見、110番通報した。約300メートル上流の浅瀬では、夫の無職、慶秀さん(74)も死亡しているのが見つかった。
 埼玉県警深谷署は23日、殺人と自殺幇助(ほうじょ)の疑いで、三女の無職、波方敦子容疑者(47)を逮捕した。波方容疑者はヨキさんの近くで低体温症で発見された。容疑を認めているという。「貯金も現金もなく、父が『死にたい』というので3人で川に入った」と話しており、同署は無理心中を図ったとみている。
 ヨキさんの発見現場から約2キロ離れた同市石塚の利根川上流の浅瀬で、3人が乗っていたとみられる軽乗用車が見つかった。波方容疑者は「車が止まったので一緒に歩いて水の中に入った」と話しているという。」
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 世の中は、他者に依存する事なく、助けを求めず、自己責任と自己努力が強く求められている。
 母親は認知症で、娘は離職して介護していた。
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 2018年10月8日 msnニュース 東洋経済オンライン「「万引き」を止めたくても止められない根因 誰もが依存症に陥る可能性を秘めている
伊藤 歩 2018/10/08 13:00
万引き依存症の治療に当たってきた医師による、再犯率を下げるための提案とは?(写真:amadank / PIXTA
 『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)で、世間一般的な痴漢像に対する誤解を解き明かし、その治療法の提言をした精神保健福祉士社会福祉士の斉藤章佳氏が、新著『万引き依存症』(イースト・プレス)を上梓した。
斉藤氏の勤務先である大森榎本クリニックは、アジア最大規模の依存症専門医療機関。万引きを依存症の一種ととらえ、専門外来で200人以上の万引き依存症の治療に当たってきた経験の集大成が本書である。
日常の中で繰り返せるから依存できる
 ――万引き依存症の人は、女性、それも主婦に多く、そのうえ経済的には余裕がある人だそうですが、なぜ女性、それも主婦に多いのでしょうか。
 人は強いストレスや不安にさらされると、何かに耽溺することで、心の「痛み」を緩和しようとする。目の前のつらい現実から逃避し、過酷な状況を生き延びるためであって、快楽に溺れるためではない。
 依存する対象は手に入りやすい、行動化しやすい日常の中で選択される。大きく分けると「物質」と「行為・プロセス」。前者がアルコールやドラッグなどで、後者が買い物やギャンブル、痴漢や万引きなどだ。また、本書では触れていないが関係性に耽溺する関係依存もある。依存する対象は、その人の日常の中で、ストレスから解放される場所と密接な関係がある。男性の日常は家と電車内と会社。特にまじめなサラリーマンはストレスを発散したり優越感や達成感を得られる手段として、電車内での痴漢行為があり、だからこそハマっていく。
 物質依存の代表格はアルコールだ。これに対し、子育て真っ最中の共働き夫婦の妻の日常は家と職場とスーパー。家や職場はストレスがかかる場所であるのに対し、スーパーはストレスから解放される場だ。逆に言えば、依存対象は日常的に繰り返せるものである必要がある。人間は、案外特別なことにはハマりにくい。
 ――経済的に余裕がある人が多いのも、ストレスと関係がありそうですね。
 盗むことよりも非日常的なスリルと達成感が味わえることが目的だから、食べきれないほどの量の食品を盗み、腐らせても平気でいるケースもある。もっとも、最初に盗むものは小さくて、しかもまったく必要ないものかというと、そうでもない。見つからない、捕まらないという成功体験を積み重ねていくうちに「学習」し、徐々にエスカレートしていく。ポケットに突っ込んだ鮭の切り身が、ポケットからはみ出していても平気で店を出て、捕まった例などもある。
 ――男性は万引き依存症にはなりにくいのでしょうか。
 男性は依存対象がアルコールやギャンブル、痴漢行為になるケースが多いので、女性に比べれば少ないというだけで、男性でも万引き依存症の人はいる。ただ、女性が盗る対象は圧倒的に食品だが、男性の場合はスーパーが日常の場になっている人は少なく、食品を盗る人は少ない。
 多いのは本。同じ本を何冊も盗ったり、まったく関心のない本を盗って自宅にため込み、たまると捨てる。経済的な目的で盗っているわけではないので、古本屋に売るということはしない。このほか、文具や日用品、芳香剤などが対象で、電化製品など高額のものを盗るという話は転売目的の人が多いためクリニックに来る人はいない。男女ともに共通するのは、単価が比較的安いものが対象になるという点だ。
 ――なぜ安いものが対象になるのでしょうか。
 表層的には万引きをやめたいと思っていても、根っこのところでは続けたいと思っている。しかし、人のものを盗む=犯罪行為という認知のまま常習的に盗み続けることは心理的葛藤が大きいので、認知の枠組みを自分に都合のいいように歪める。これを認知の歪みといい「大したものを盗ったわけではない」というのはよく聞くセリフだ。罪悪感を低減するために、本能的に高額の商品は避けているということだろう。
依存症に陥る人はまじめで責任感も意思も強い
 ――依存症の治療にあたっては、その原因となったストレスや引き金が何であるのかを特定することが、まず治療の第一歩のようですが、女性の場合は配偶者との心理的葛藤がいちばん多く、次が親子兄弟とのトラブルだそうですね。
 夫との問題、介護も含む義母との問題、実の親との問題、子どもの進学や結婚などが幾重にも重なるのは間違いないが、キーワードとなるのはやはり介護と育児のケア労働。どちらも女性が無償で行う仕事という価値観は根強い。うまくやれて当たり前、誰の手を借りることもできず、ねぎらいの言葉ひとつもかけてもらえないまま、1人でストレスをため、あるとき万引きというSOSとして逆説的な形で表面化する。
 これをパラドキシカルメッセージと呼んでいる。まじめで責任感が強く、人の評価、つまり夫や家族、周囲の人の評価を気にする人ほど陥りやすい。逆にいい加減で人の評価をそれほど気にしない人は依存症にはなりにくい。万引きの最初の動機は節約だったという人は少なくない。家計を預かる責任感ゆえだが、繰り返すうちに目的が変わってしまう。
 つまり「節約のための窃盗」から「窃盗のための窃盗」になっていく。幸い、治療に来る人たちの大半は、ストレスの原因となった家族がそのことを理解し、家族支援グループに参加するなど治療に協力的である。
 ――万引きで繰り返し捕まった人への処罰のあり方にも異議を唱えていますね。
 先進諸国の場合は、治療的司法(TJ:Therapeutic Justice)という枠組みで刑罰以外の処遇が司法の制度に組み込まれているが、日本は処罰のみに偏っている。処罰が効果的なまだ常習化していない対象者の層もあるが、嗜癖化している層には逆に再犯防止効果は薄く、監視や厳罰化が問題行動を亢進するのに役立っているケースもある。
 万引き依存症者に反省を促したところであまり意味がない。そのときは反省していても、ある特定の条件がそろうと、スイッチが入るように行為に及んでしまうからだ。つまり、反省の深さと再発率にはほとんど相関性はないのだ。よく、依存症者に対して反省してないから意志が弱いから再犯を繰り返すのだという人がいるが、それは違う。彼らは逆に非常に意志が強いから、やるとなったら強い意志を持って実行する。
 そもそも300円のものを盗んだ窃盗犯を仮に刑務所に入れておくのにかかるコストは1人当たり年間300万円以上もかかる。出所すれば再犯に至ることがわかっていながら、その都度刑務所に入れ、その都度これだけのコストが税金で賄われているという現実を放置すべきではない。依存症者にとって有効なのは刑罰ではなく治療なのだ。
ストレスは依存症への扉を開くカギ
 ――斉藤先生のクリニックでは、具体的にはどのような治療を行っているのでしょうか。
 週3回以上の通院治療が基本で、目指しているのは、「盗めない環境で盗まないのではなく、盗める環境で盗まない」こと。専門のワークブックを使って自分の犯行パターンを可視化し徹底的に振り返り、何がトリガーとなっているのかを理解し、盗まないためのスキルを身に付けていく。同じ問題を抱える仲間とつながり、ともに時間を過ごすので、体験を分かち合うこともできる。
 ――依存先を多様化することの重要性も説いています。
 過度なストレスが継続的かかって、他者に助けが求められなければ誰でも依存症やこころの病に陥る可能性を秘めている。彼らは特別な人ではない。逆説的だが、人に依存するのが下手なのだ。自分は依存症にならないと思っていた人が、依存症になった例は無数にある。ストレスは依存症への扉を開くカギだ。
 しかし、社会で生活する中で、ストレスを回避することはできない。ストレスを受け続けても依存症にならないためには、ストレスを発散させるための依存先を多数持つことが重要。そして逃げることはもっと重要。動物はいのちの危険にさらされたら逃げる。
 逃げないのは人間だけ。これをコーピングと言うのだが、たとえば会社以外にストレスを発散できる場所をいくつも持っていれば、どれか1つに集中してしまうリスクを回避できる(依存先の分散)。重要なのは早期発見・早期治療。万引き依存症も、治療的司法(TJ)の発想から「クレプトマニア・コート(アメリカの薬物裁判の概念を病的窃盗に適用したもの)」のように刑罰と治療がセットになった処遇が盛り込まれるようにならないと、再犯率は下がらないと思う。   ・   ・   ・


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認知症になった私が伝えたいこと

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認知症の「真実」 (講談社現代新書)

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