🚷26〉─2─年金支給開始年齢75歳時代。定年後の再雇用は天国の様な「ご褒美」か地獄の様な「ブラック」か。~No.117No.118No.119No.120 @ 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2017年9月15日号 週刊ポスト「『年金75歳支給』時代に備え方
 給料は半減、年下上司からの嫌味の日々、でも保険料は自己負担・・・それでも75歳までは自力で稼がなければならなくなる
 ごほうび再雇用、ブラック再雇用、天国と地獄の境界線
 75歳年金受給時代とは、『定年後も働く』ことを事実上〝強制〟される。受給開始年齢引き上げと再雇用延長(再雇用)はセットの政策だが、たとえ永く勤めた会社での再雇用に恵まれても、そこには『天国と地獄』が生まれる。
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 新卒から38年勤めてきた鉄鋼メーカーで60歳の定年を迎え、再雇用された62歳の男性。
 会社に行くのは週3日に減ったが、家を出る時は現役時代よりも暗い気持ちになるという。
 『家に長くいても妻が嫌な顔をするだけだし、先のことを考えたら安定した収入は確保したい。働き続ける以外に選択肢はないでしょう。でもね、再雇用される時に、これまでと同じ営業部門で勤務を選んだのが〝地獄〟の始まりでした。かつての部下が上司になり、敬語を使うのもおかしいから今まで通りに話しかけているのですが、向こうからすると説教されているような気分になるんでしょうね。声を掛けるだけで嫌な顔をする。給料は3分の1に減って、仕事も学生でもできるような書類整理ばかり、プライドを捨てなければ耐えられませんよ』
 この男性の会社では63歳になるタイミングで〝65歳まで会社に残りたいか〟と希望を聞かれるという。男性は来年に決断を迫られることになるが、
 『退職して、シルバー人材センターに登録することになるでしょうね・・・』
 と深くため息をつくのだった。
 13年4月の『改正高年齢者雇用安定法』の施行により、企業は社員を65歳まで雇うことが事実上義務化されたものの、多くの企業では『定年延長』ではなく、60歳以上の『再雇用』で対応している。
 それに伴い、再雇用後の労働環境を巡る問題も深刻になっている。
 同じ仕事をしてるのに・・・
 社会保険労務士の内海正人氏が解説する。
 『定年退職した人が同じ会社に再雇用されると、給与は定年前の50〜60%程度に減ることがほとんどです。
 上場企業など大企業の場合、給料が減るに合わせて仕事の内容も単純業務やルーティンワークに移るので、さらにやる気を削がれてしまう。一方、中小企業の場合はもっと深刻で、仕事内容も労働時間も変わらないのに給料だけが下がるという事例がよくある。こちらの場合は〝不当な賃金下げ〟として訴訟に発展するケースまであります。たとえば神奈川の運送会社で嘱託職員として再雇用されたトラック運転手3人が、賃金格差を不当として訴えた裁判。一審では原告が勝訴しましたが、二審では逆転敗訴し、今は最高裁で争われています』
 定年まで勤めた会社と裁判沙汰になるのは、働く側にとっても複雑な思いがあるはずだ。それほどまでに再雇用時の待遇が過酷な場合もあるということである。
 賃金だけでなく、冒頭の男性のように〝年下上司〟との関係にも苦しまされることになる。
 『相手のためになると思って成功体験を少し話しただけなのに、気にくわなかったのか露骨に避けられるようになった。その後、役員として残っている同期が〝人間関係で苦労していない?〟とわざわざ話しかけてきたから、たぶん年下上司が告げ口したんでしょう。さすがに惨めでしよ』(大手食品メーカーで再雇用された68歳男性)
 こうしたつらい思いをせずに済むのはほんの一握りだという。
 俺は〝換えが利く社員〟だったのか
 再雇用の天国と地獄を分ける一つの要素が『定年前の役職』だという。前出の鉄鋼メーカー勤務の男性はこういう。
 『うちの会社だと、部長クラスは関連会社や下請けの役員として〝天下り〟できることが多いが、それ以下の役職で終わっていると再雇用時の給料が半分以下になる。嫌なら他の仕事を自分で探すしかありません』
 役職のほかに『専門技能の有無』が関係してくるケースもある。大手メーカーに再雇用で5年間勤め、退職した68歳の男性が振り返る。
 『設計や研究の部署で、〝匠〟と呼ばれるような職人技の持ち主や、特殊溶接などの熟練工などは、会社のほうからか〝頼まれて残る〟たちになる。大得意先と個人的に大きなパイプを持っている営業社員や、税務や法務に詳しく〝生き字引〟として頼られる人なども同じです。こういう人たちは、〝本部長付アドバイザー〟といった肩書きがつき、手当や一時金も別途あるので定年前に近い待遇のまま会社に残れます』
 そうした『ごほうび再雇用』は、企業側にとっても『功績を残せば再雇用で厚遇されると現役社員のモチベーション上昇に繋がる』(大手運輸の人事担当者)という意味を持っているようだ。
 だが、『そんな扱いを受けられるのは再雇用希望者の1割にも満たない』(前出の68歳男性)という厳しい現実がある。
 むしろ、長年勤め上げた者に対して会社がやることとは思えない『ブラック再雇用』が横行している現実がある。
 現役時代は、サラリーマンの加入する厚生年金や健康保険の保険料負担は『労使折半』だ。しかし、再雇用の際に雇用契約をパートタイムに切り替え、週の労働時間が20時間未満になれば、厚生年金、健康保険への加入は必要なくなる。
 前出。内海氏がいう。
 『一部の中小企業では、会社側の保険料負担を回避する雇用契約を結ぼうとする動きが出てきている。そうなると、国民健康保険の保険料などを個人として払わなければならなくなる。
 こうした動きは違法とはいえませんが、〝立場の弱い者にどんどんしわ寄せがいっている〟という印象が強い。もともと、年金の給付年齢を60歳から65歳まで引き上げ、企業に再雇用を押し付けたのは国です。そして、〝労働条件は会社と本人で決めていい〟ということになっているので余裕のない会社側が労働者側に、〝給料を払ってやるんだから、保険料は自腹で〟と不利な条件を示し、労働者はそれを断れない』
 もちろん、あまりに不利な条件を提示されるのであれば、別の働き口を求めるという考え方もある。だが、それも容易ではない。
 同じ〝アルバイト〟でも全然違う
 昨年8月、国家戦略特区の認定を受け、福岡県北九州市で誕生したのが、全国初のシニア専門ハローワーク『シニア・ハローワーク戸畑』だ。50歳以上を対象に、臨時の仕事ではなく、フルタイムに近い仕事を斡旋する。
 北九州市産業経済局の大迫道広課長は、『シニア・ハローワークができたことで、50歳以上の相談者は前年比で12%、就職決定は13%増えています』という。
 ただ、あくまで地域を限定した取り組みにとどまっており、定年後の雇用形態はアルバイトやパートなど非正規が圧倒的に多い。
 非正規雇用の比率は、55〜59歳を境に一気に増える。60〜64歳で57.1%65〜69歳で74.7%となる(高齢社会白書、平成28年版)。
 アルバイトやパート選びも、ひとつ間違えれば〝地獄〟の職場に行き着きかねない。
 68歳の元メーカー社員は、定年退職後にアルバイトを転々としてきた経験をもとに語る。
 『60代以上でもまず面接で落ちないのが、コンビニと飲食店のバイト。こっちも40年営業をやってきたから客あしらいには困らないが、シフトにたくさん入ってくれといわれるし、深夜勤務もあるから、どうしても体力的に厳しくなってくる。求人が多い警備会社も、研修後の配属先によって天国と地獄の違いがある。特に道路工事の交通整理は辛い。立ちっぱなしで、暑さ・寒さが老体にこたえる。特に夏の日中は地獄です。一方、病院やビルの警備だと、冷暖房完備だし、夜勤だと看護師さんが差し入れをくれることも。もちろん、どこに行くかは選べません』
 シニアライフアドバイザーの松本すみ子氏は、『体力的にも能力的にも自分に合った仕事を選ぶことが重要』と強調する。
 『非正規労働で高齢者の働き手が増える一方、長時間労働や過酷なノルマを強いる〝ブラックバイト〟も出てきています。そうしたバイト先を選ばないためには、事前に時給や勤務時間、勤務形態などを書類で確認することに加え、国民生活センターなどの消費者生活相談窓口に聞くのがよい。いろんな事例が蓄積されているので、類似した職場で過去に問題が起きていないかを教えてもらえます。仮に過酷なノルマを課されるようなアルバイト先で勤め初めてしまった場合、とにかくすぐ辞めること。相手も辞めようとするバイトを引き留めるプロですから意外と難しいのですが、〝労基署に訴える〟と宣言するくらいの勢いで離れるべきです』
 会社での再雇用を選ばなかったとしても、残されるのは茨の道なのである。
 それでも、75歳までは自力で稼ぎ続けることを求められるのだ」


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