🚱9〉─2─人口激減は東京一極集中で加速化して日本民族は消滅する。~No.39No.40No.41 

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 2019年2月3日 東洋経済オンライン「日本人は「人口減少とAI化」に立ち向かえるのか 東京一極集中のままでは少子化は止まらない
 印南 敦史
 c これから日本で何が起こるのでしょうか(写真:DNY59/iStock)
 日本ではこれから、経済や社会を根底から揺るがすような大きな変化が起ころうとしている――。『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』(東洋経済新報社)の著者である中原圭介氏は、そう指摘している。
 具体的には「少子化による人口減少」という70~100年単位の長期的な波と、「AIによる自動化」という10~20年単位の中期的な波、この2つの大波が日本に押し寄せようとしているというのである。
 少子化問題は「深刻で静かなる危機」
 まずは「少子化による人口減少」だが、少子化が進む要因としては、主に次の6つがあるとしている。少し長いが、重要なことなので引用してみよう。

 少子化の要因① 生き方の多様化
 1986年に施行された男女雇用機会均等法によって、女性の社会進出が進展したため、経済的に自立した女性が増え、結婚や出産を前提にする人生が当たり前ではなくなった。
 少子化の要因② 高学歴化
 要因①とも関連するが、女性の社会進出に伴い、女性の大学進学率が男性と比べても上昇の一途を辿ってきたため、女性の結婚率の低下や結婚年齢の上昇を招いた。
 少子化の要因③ 経済的な制約
 1997年の金融システム危機以降、労働者の賃金が伸びなくなったばかりか、じりじりと下がり続けた。また、90年代以降に行われた一連の労働関連法改正の結果、非正規雇用者が増え続けたため、結婚適齢期で十分な収入を得ることができなくなった若い世代は結婚をためらってきた。
 少子化の要因④ 子育て環境の未整備
 主に大都市圏の問題として、保育所などの託児施設の数が不足しているため、働きたい女性が子どもを産むのを躊躇してきた。
 少子化の要因⑤ 子育て費用の増大
 デフレが20年以上続いていたにもかかわらず、教育費を中心に子育てに関する費用は高騰を続けてきた。そのため、負担の重荷から2人目、3人目の出産をためらう夫婦が増えてきた。
 少子化の要因⑥ 若い世代の東京圏への一極集中

 東京圏は若者にとって就職に有利な大学や就職したいと思う企業が多いため、長期にわたって地方の若者が東京圏へと吸い上げられてきた。ところが、東京圏は生活コストが高いうえに、労働時間が長い傾向があるため、若い世代の結婚率の低下、晩婚化率の上昇、出生率の低下に拍車をかけてきた。(26~27ページより)
 こうした要因を内包する少子化は、日本社会の持続可能性を危ぶませる最大の問題だということである。そして、最大の問題点は、政府の先送り体質にあるという。少子化の問題を「深刻で静かなる危機」と認識していたにもかかわらず、政府はそれらの課題を30年近くにわたって放置してきたということである。
 経済学者による常識が通用しない時代
 しかも、日本は人口が減少する社会。すなわち老いが進行する社会であるため、経済の低成長が今後も続くことは覚悟しなければならないという考え方だ。
 そしてもうひとつの変化は、「AIによる自動化」である。現時点においてAIは、生産性を引き上げてくれ、人手不足を解消する手段として歓迎されているだろう。
 とくに日本においては、目先の経済上のメリットが強調されるあまり、AIの普及がもたらす雇用への悪影響は軽視される傾向が強まっている。しかし現実的には、早くも2020年代半ばには、人余りが顕著になるというのだ。
 製造業に目を向けてみても、AIによって自動化された工場が増え続けていくことは必至。おそらく10年後には、大企業の一部の工場では完全自動化が現実となり、この流れに早く対応できなかった国々は製造業では負け組へと転落していくというのだ。
 ただし、本質的に見逃してはいけないのは、工場の完全自動化で生産性を高める最大の要因が人件費を必要としない点にあるということです。つまり、競争力を高めた国ほど雇用は減っていくという事実と向き合わなければなりません。(118ページより)
 もちろん同じことは、小売業にもあてはまる。例えばコンビニの店舗運営も、AIを備えたカメラやスマートフォン決済の普及によって大きく変わろうとしている。そして事務などの単純作業の分野においても、AIが効率化を促すことになる。
 それどころか、高度な知識を必要とする専門職であっても、この先ずっと盤石であるという保証はないという。その専門職の代表格は弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの、いわゆる「士業(サムライ業)」だが、そうした人々の業務でさえ、AIの普及によって大半が代替可能になっていくという流れは避けることができないというのだ。
 もちろん、「最強のエリート」である医師にしても同じ。高齢化率の高止まりが続いていくであろう社会において、医師の地位は将来も盤石であるように思える。しかし現実問題として、AIやロボットが医師の仕事の8割程度を代替できることが、アメリカでの実証実験などからすでに明らかになっているのである。
 これらはほんの一例にすぎないが、こんなところにも、従来の経済学者による常識的な考えが通用しない時代が訪れていることが確認できるということだ。
ほぼすべての経済学者は今でも、技術革新(イノベーション)が経済を活性化させる最大の原動力になると信じています。技術革新により生産性が上がれば、経済の成長力が高まると同時に、雇用の増加や賃金の上昇が起こるだろうと考えているからです。(156ページより)
 確かに20世紀の世界であれば、新しい技術が新しい需要をもたらし、新しい雇用を生み出すことができた。20世紀以降の自動車・航空機・電気における技術革新(第2次産業革命)が莫大な産業集積を必要とし、大量の良質な雇用を生み出したことがいい例だ。しかし先の例を引き合いに出すまでもなく、今後は同じようにはいかない。
 これから国家や企業がしのぎを削ろうとしている技術革新は、これまでとはまったくプロセスの異なるものです。21世紀以降のIT、AI、ロボットによる技術革新(第4次産業革命)は、コストを抑えるために自動化を最大限にまで推し進め、これまでの産業集積や良質な雇用を破壊していくという性格を持っています。生産性が飛躍的に高まることで、経済の成長力が高まるというのはある程度は肯定できるものの、先ほど述べたように、資本家の取り分が圧倒的に増えるかたわらで、労働者の取り分は増えるどころかむしろ減ってしまうという好ましくない結果を生み出してしまうのです。(157~158ページより)
少子化対策に一石を投じるコマツの取り組み
 そして先に触れたとおり、日本が懸念すべき最大の問題は少子高齢化しかありえないと中原氏は断言する。少子高齢化が長期に及んでもたらす悪影響は、国の経済規模の縮小にとどまらず、社会保障費の膨張、赤字拡大による財政不安、防災・治安機能の低下など、われわれの生活水準の著しい劣化を招くことになるというのだ。
 だとすれば、少子化の大きな流れを緩和するためにはどうすればいいのだろうか? この問いに対して中原氏は、興味深い提案をしている。東京への一極集中がもたらす弊害については先ほど触れたが、その流れを逆転させるためには、「大企業の本社機能を地方へ分散する」しかないだろうと考えているというのである。
 大企業が地方で良質な雇用をつくる努力をすれば、それだけで効果的な少子化対策になり、若者の地方からの流出が緩和されることも期待できるというわけだ。そんなことが本当に可能なのかと思われる方もあろうが、それが机上の空論でないことを示すべく、中原氏はここで建設機械大手コマツ少子化対策への取り組みを紹介している。
 今や日本を代表するグローバル企業であるコマツは、国内の雇用をたいへん重視しているお手本のような企業です。同社の坂根正弘・相談役は2001年に社長に就任して以降、事業の選択と集中を進めアメリカのキャタピラーに匹敵する高収益体質をつくり上げた凄腕の経営者でありますが、その坂根氏が社長時代からコツコツと進めてきたのが、創業地である石川県への地元回帰を中心とした本社機能や工場の地方への分散であります。(203ページより)
 第一歩として2002年に、東京本社にあった部品調達本部を石川県の小松市に移転。次いで2007年には石川県金沢市茨城県ひたちなか市に新たな港湾工場をつくり、2011年には本社の教育研修組織と複数拠点に分散する研修施設を統合し、小松市に総合研修センターを開設。これまでの一連の地元回帰では、150人以上の社員が本社などから石川県に転勤していったという。
 少子化対策として大きな効果が
 ちなみにコマツのそうした取り組みに共感する中原氏は、2017年と2018年の2回にわたり、坂根氏にインタビューしている(東洋経済オンラインの記事では、2017年7月27日・28日、2018年9月11日・12日の4回におよびインタビューが掲載されている)。
 坂根氏は「なぜ本社機能を地方へ分散したのか」という私の素朴な問いに対して、「その本質的な動機は、この国の深刻な少子化問題を解決したいという思いにある」と強い使命感を持って答えています。コマツは1950年代に石川から東京に本社を移転し、その後は工場も輸出に有利な関東・関西に移していますが、多くの地方企業が同じような歴史を辿ったことによって、東京への過度な一極集中とそれに伴う少子化を加速させてきたという現実をしっかりと受け止めなければならないというのです。(205ページより)
 注目すべきは、コマツの本社機能の地方への分散が、少子化対策として大いに効果があったと認めることができる数字を残しているという事実だ。コマツのまとめたデータによれば、30歳以上の女性社員では東京本社の結婚率が50%であるのに対して石川が80%、結婚した女性社員の子どもの数が東京は0.9人であるのに対して石川は1.9人と、かけ合わせると子どもの数に3.4倍もの開きが出ているというのである(東京0.5×0.9=0.45:石川0.8×1.9=1.52→1.52÷0.45≒3.37)。
 坂根氏は地方回帰を進めてきた成果について、「女性社員の出生率が飛躍的に上がっている」だけでなく、「社員の生活が豊かになっている」「退職者の健康寿命が伸びている」などと述べたうえで、「代表的な地方出身企業であるコマツが先陣を切って地方への回帰で成功を収めれば、いずれは他の大企業も次々と回帰の道を辿ってくれるのではないか」という淡い期待も寄せています。坂根氏の思いを酌み上げるならば、コマツは日本の将来を憂い、強い使命感を持って経営にあたっているということなのです。(206~207ページより)
 現時点において、本社機能の一部を地方に移すという先進的な動きを実践している企業は限られている。しかしコマツの取り組みには、「少子化による人口減少」と「AIによる自動化」に立ち向かう企業のあり方のひとつが明示されているとは言えないだろうか。」


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