🚷9〉─2・D─若者が結婚せず子供を産まないのは低賃金による年収の低さが原因であった。~No.54 

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 現代日本において、「貧乏人の子沢山」は通用しない。
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 2023年3月8日 YAHOO!JAPANニュース「実質賃金が下がれば婚姻数は減る~少子化は「失われた30年」の経済問題を放置した報い
 (写真:アフロ)
 実質賃金大幅下落
 厚生労働省が7日発表した1月の毎月勤労統計調査(速報)によれば、1人当たりの実質賃金は前年同月比4.1%減ったそうである。
 こちらのニュースでも
 物価の変動を反映した今年1月の「実質賃金」は前の年の同じ月に比べて4.1パーセント減少し、消費税引き上げの影響を受けた2014年以来の下げ幅となりました。
 と報じており、コメント欄もにぎわっている。
 一方で、企業の賃上げのニュースもある中、なぜ実質賃金が下がるのか?と思う人もいるかもしれないが、賃上げ以上にインフレで物価高が進めば、実質賃金は下がってしまうのである。額面の給料があがっても、なんだかんだ差し引かれる額が多くなって可処分所得が減るのと同じことだ。
 これが影響を及ぼすのは、直近の我々の生活だけの話ではない。実質賃金は向こう何十年にもわたる人口問題と直結することになるのだ。婚姻数が減り、出生数が減り、人口減少が加速する。
 貧困国の出生率が高い理由
 常々、私は、「少子化ではない、少母化である。少母化は婚姻の減少である」と訴えているが、その婚姻の減少を招いた一因として若者の経済問題があることは否めないだろう。
 こう書くと、「金がないから結婚できないは嘘だ。じゃあ、なんで発展途上国などの貧困国の方が出生率が高いのか?」などの指摘がくるのだが、貧困国の出生率が高いからといって、決して「貧乏な方が子どもを産む」という因果にはならない。むしろ、貧困国がゆえに子どもをたくさん産まないとならない環境にあるといった方がいいだろう。
 以前、「出生率は乳児死亡率が下がれば下がるほど下がる」という記事を書いた。
 →長寿国家の日本「平均寿命が延びれば出生率は必ず下がる」という事実
 逆にいえば、出生が多い国というのは、乳児がたくさん死んでしまう国なのである。現在の日本は医療の発達などにより、乳児死亡率は1.0以下をキープしているほどとても低い。よいことである。生まれてきた子どもは死なずに成人していける国であるということだ。
 世界一、乳児死亡率が高い国は、西アフリカのシエラレオネ共和国で、出生千対78.3(2021年世界銀行統計より)である。が、日本も終戦直後の1947年の乳児死亡率は76.7だった。明治時代は、それこそ153.8もあったし、江戸時代はもっと高かった。「7歳までは神のうち」と言葉や、七五三を言祝ぐのは、そうした乳幼児の死亡が多かったためだ。
 出生率が高いということは、それだけ子どもが死んでしまう割合が高いことの裏返しであり、乳児死亡率が限りなくゼロに近づいた先進諸国が軒並み出生率が低下するのはそういうメカニズムによる。多くの国が「多産多死」から「少産少死」へと移行するのもそういうことである。
 実質賃金と婚姻率の関係
 同時に、「経済的問題があれば婚姻は減る」というものもデータの裏付けがある。
 ネットニュースなどではよく、国税庁の民間給与実態調査の平均給与をベースに論じているが、平均という指標に意味はないし、額面の給料にも意味はない。その時の物価とあわせた実質賃金で見ないと正確性を欠く。
 1990年以降の年実質賃金指数と婚姻率との相関をみてみよう。
 驚くほど、実質賃金指数の下がり方と婚姻率の下がり方がリンクしていることがわかる。相関係数は0.8953で、強い正の相関がある。
 額面の給料があがっても、税金や社会保障費がそれ以上に引かれて、ちっとも手取りが増えない。大幅に賃上げされたといわれても、それ以上のインフレが進んでいるから物が買えない。
 そんな状況が、まさしく30年以上も続いているわけで、子育てどころか、恋愛や結婚など考える余裕もないというのが正直なところだろう。長らく「給料500万以上」というものが定番のように言われ続けてきたのは、それこそ30年間も給料があがっていないというデフレ状態だったからだ。
 さらにいえば、こうした全体の実質賃金低下でもっとも苦境に立たされているのは、そもそもの実額給料自体が低い若者たちである。東京で大企業に勤める余裕のある若者はいいだろう。しかし、世の若者が全員キラキラ人生を送れているわけではない。
 (写真:イメージマート)
 真に求められる少子化対策
 繰り返すが、少子化は、少なくとも結婚を望んでいる若者が若者のうちに結婚できずに、年を重ね、気が付いたら結婚する年齢を過ぎてしまったがゆえの非婚化によるものである。晩婚化ではないし、全員が選択的非婚でもない。真に求められている少子化対策とは経済対策である。景気の底上げである。
 そうすると、また「若者の給料をあげれば結婚するようになるのか?」というくだらない揚げ足取りが出てくるのだが、そういう因果の話をしているのではない。「貧乏でも結婚する奴はいる」と言われればそれはいるだろう。しかし、こちらの記事(「金がないからイライラ?」現代夫婦の離婚事情がハードボイルド化)でも書いたように、離婚原因もまた経済問題だったりすることも事実だ。
 経済問題だけではなく、そもそも社会的な結婚お膳立てシステムの崩壊など婚姻減の要因はひとつではないのは当たり前の話である。
 少なくとも、この30年間のファクトをフラットに分析すれば、「若者が結婚しなくなった」のではなく「経済的に結婚できなくなった若者が増えた」という見方の方が妥当だろう。
 子育て支援はそれとして別途やるべきだが、本当に少子化対策として出生数を少しでも増やしたいと思うのであれば、やるべきことは一過性のバラマキではなく、根本的な経済対策であり、少しでも若者の可処分所得が増えるような体制を整えない限り、何の効果も出ないだろう。
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 記事に関する報告
 荒川和久
 独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。
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 日本企業は、バブル経済崩壊で高賃金の日本人正社員は経営を圧迫するリスクと考えて大量リストラをおこない、経費を黒字にする為に低賃金の派遣社員契約社員非正規社員を大量に雇った。
 バブル崩壊後の日本で求められた「人材」とはまやかしに過ぎなかった。
 若者達は、政治家、官僚、企業家、エコノミスト・メディア業界、学者・教育界に騙され、大人達の甘い言葉に騙されて貧しくなった。
 その結果、人口激減は加速化してきた。
 その被害者が、氷河期世代以降の若者達である。
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 日本経済は、夢と希望を失い気力や意欲をなくした日本人若者に期待する事を諦め、優秀な外国人若者を積極的に雇おうとしている。
 それが、外国人移民奨励の狙いである。
 それは、日本人を日本民族から日本国民に入れ替える壮大な計画である。
 それは、古い日本人をバージョンアップするリノベーションではなく、全く新しい日本人を作り出す破壊的イノベーションを意味する。
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 4月5日 YAHOO!JAPANニュース「「結婚なんて無理」20代後半の若者の半分が年収300万円に達しない国・令和のニッポン
 荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
 若い世代の所得を増やす?
 3/31に政府は例の「異次元の少子化対策」に対するたたき台として試案を提示した。その基本理念の1番目に「若い世代の所得を増やす」とある。
 第一に、若い世代が「人生のラッシュアワー」と言われる学びや就職・結婚・出産・子育てなど様々なライフイベントが重なる時期において、現在の所得や将来の見通しを持てるようにすること、すなわち「若い世代の所得を増やす」ことが必要である。
 …とあるが、これには全く異存はない。むしろ、少子化対策のキモはこれに尽きるといってもよいと思っている。
 しかし、残念ながら試案の中に具体的な「「若い世代の所得を増やす」方策については何一つ書かれていない。基本理念の一番目に提示しながら、単なるお題目に終わっている。
 賃上げは大企業だけ
 確かに、新年度の開始に伴い、新入社員の賃上げのニュースが続いている。若者の賃上げはとても喜ばしいことであり、昨今の物価高などを勘案すれば、むしろ必須でもある。しかし、ニュースで伝わってくるのは、大企業の初任給アップの話ばかり。
 就業人口の7割は中小企業である。いくら若者の人口減少で売り手市場になっているからといって、新入社員全員が大企業に就職できるものではない。体力に余裕のある大企業ばかりが賃上げして、中小企業が据え置きとなるのであれば、これは格差が拡大してしまう問題を発生させる。
 東京圏など大都市の大企業に勤める若者はより恵まれた環境になり、そうでない若者は相変わらず「失われた30年」が続くのであろうか。
 東京圏に住んでいると、同類縁でつながる者同士は同じような年収同士の出会いになる。大卒で大企業に勤めるならば、初年度の年収が300万円を超えることは容易いだろう。しかし、悲しい事に、日本全体でみれば、20代で300万円の年収を超えることは普通のことではない。25-29歳の未婚男性のほぼ半分が300万円の年収にすら届いていないのである。30-34歳であっても43%が300万円未満である。
 ちなみに、結婚を希望する未婚男性のうち約25%が「経済的理由で結婚できない」と言っている。それは、もっとも初婚の多い年齢帯である25-34歳において、未婚男性のほぼ半数が年収300万円に達しないことと、決して無関係ではない。
 年収300万円の壁
 男性の結婚には「年収300万円の壁」というものが存在する。延々と30年以上もこの壁の金額が300万円から全然あがっていないこと自体が、給料デフレそのものなのであるが、それは置いておいたとしても「300万を超えるか超えないかで既婚率が大幅に変わる」という現実は認識していただきたいと思う。
 2021年の「21世紀成年者縦断調査」に基づいて、男性の独身者と既婚者の年収階級別構成比が計算できる。対象年齢は29-38歳である。調査原票は月収表示なので、単純に12倍して年収換算とした。
 これを見ても、独身男性の最頻値は240-300万未満であり、300万円に中央値として届いていない。一方、既婚男性の最頻値は300-360万円である。明らかに「300万円の壁」が存在していることがわかる。
 もちろん、300万円を超えれば誰でも結婚できるというものではないが、統計上、男性が結婚の踏ん切りを付けられる目安が300万円であることは明白である。
 とかく非正規の問題にすり替えられるが、決してそうではない。非正規率4割という数字は女性も含むものであり、男性のこの年代における正規雇用率は80%を超える。つまり、正規社員であっても300万円に達しないケースが多いということである。
 物価高に見合う十分な賃上げができない中小企業の全部が決して搾取をしているわけではないが、これだけ若者人口が減少していく中で、安い給料では若者が離れていくということを覚悟しなければならないだろう。
 年収240-300万の未婚男性の構成比は22%である。この22%のうち半分の11%が300万円を超えただけでも、随分と気分が変わるだろう。平均すれば年収で約30万円、月にすれば2.5万円のアップだ。決して無謀な数字ではない。
 少子化の根元は婚姻数の減少であり、その要因として大きいのは若者の経済環境の悪さであることは否定できない。しかし、その改善は、決して宝くじが当たるような大金が必要なのではなく、300万円に達しない若者の10%に対して、月2.5万円の賃上げでも劇的に風景を変えることができる。
 すでに300万円を超えている大企業の若者の賃上げは否定しない。それはそれでやっていただくとしても、地方を中心とした低賃金の若者の雇用環境を改善することは急務だと思う。
 大人たちの責務
 しかし、額面で300万円を超えればいいという話でもない。報道では、この少子化対策の財源を社会保障費によって補填するという話もでているが、額面があがっても手取りが減るのではまったく意味がない。この記事でも書いたように(結婚どころではない若者~給料が増えたように見せかけて、手取りがむしろ減らされている)、事実この25年間というもの、額面給料があがっても、税金や社会保障費がステルス値上げされており、29歳以下の若者の可処分所得の中央値も300万円に達していない。
 「若者の給料をあげたところで結婚が増えるわけではない」と文句を言ってくる輩がいる。しかし、年収増によって結婚前向き度が増えることは事実である。
 →「モテない」以前に結婚意欲すら「持てない」未婚の若者の厳しい現実
 また、「社会のせいにするな。自分で稼げ」と一見ポジティブそうなことをいう大人もいるが、まだ社会に出たばかりの若者が社会環境の影響を受けないはずがない。全てを彼らの自己責任にするのは酷である。自分らの若い頃も大人たちがお膳立てしてくれたからこそ今があることを忘れてはいけない。
 そういう精神論は、少なくとも若者の年収の中央値が300万円を超えるような環境整備をしてから言ってほしいものである。というより、若者の半分が300万円も稼げないような国にしてしまったのは一体誰なんだろうか。
 そして、若者自身も、自らの希少価値を認識して、十分な対価を支払ってくれる相手と付き合っていってほしい。
 対価を払わない言い訳として「勉強になるから、経験になるから」なんて言葉は無視していい。対価をもらいつつ、勉強も経験もすればいいのである。
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 荒川和久
 独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。
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