🌅2〉─8・C─名刹解体…突如の墓移設 不動産業者転売 檀家は憤り。〜No.15 

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 2023年5月8日 産経新聞「脱法売買-宗教法人法を問う
 ㊦名刹解体…突如の墓移設 不動産業者転売 檀家は憤り
 薬師寺の参道には、かつての境内から移設された墓石が並ぶ=4月30日、大阪市住吉区
 「何の説明もないまま本堂が取り壊され、墓を勝手に参道に移された。この怒りは表現のしようがない」
 弘法大師空海)に由来する名刹(めいさつ)で、約400年前の江戸時代初期に創建された大阪市住吉区薬師寺摂津国八十八カ所の一つにも数えられるこの寺で、祖父の代から数十年にわたり檀家(だんか)だった男性は、寺側から受けた仕打ちに憤りを隠さない。
 毎月の墓参を長年欠かさなかった男性と寺側との信頼関係に亀裂が生じたのは令和2年10月。突如、寺が売却されて住職が交代し、本堂などの不動産や本尊の薬師如来といった財産、さらには法人格が不動産業者側に売却されたのだ。
 薬師寺は、真言宗系の寺院を名乗るものの、高野山真言宗など大手宗派に属さない「単立宗教法人」。上位組織はなく、不動産の処分や法人トップである代表役員(住職)の交代も独自にできる。
 寺の事情に詳しい関係者によると、売却の手続きは前の住職と業者の間で進められ、売却額は法人格と不動産を合わせて1億数千万円。「前の住職側が金銭のやり繰りに困り、売却を決めた」のだという。
 瓦ぶきの荘厳な本堂は、地域のよりどころでもあったが、「業者の目的は不動産の転売益だけで、文化的な価値には目もくれなかった」(前出の関係者)という。売却に伴い、本堂をはじめ建物の全てが取り壊され、十数基の墓石は境内から参道へと追いやられた。
 更地となった土地は、令和3年夏ごろに2億数千万円で別の業者へ転売され、跡地では住宅建設が進む。転売先を探していた不動産業者のもとには、宗教関係者のほか、中国人投資家や暴力団関係者までもが売買交渉に訪れたという。
 もはや寺が元の姿に戻る見込みはなく、男性は檀家を離れた。「墓は別の場所へ移した。二度と寺とは関わりたくない」と話す。
 参道に墓石並ぶ
 法人登記簿によると、薬師寺の規則では境内の不動産などを処分する際、責任役員会や檀信徒総代会の議決を得なければならないと規定する。複数の檀家は、何も知らされないまま処分が進められたと寺側に苦情を訴えたが、業者側は「不動産の売却や建物の取り壊しなどのたびに、参道の掲示板で公告した。弁護士の指示を仰ぎつつ所定の手続きを踏んでおり、法的な問題もない」とする。
 200軒以上とされる檀家と法人格は3年10月、別の真言宗系の寺院側に引き継がれた。御朱印の発行や檀家の取りまとめは、寺の跡地から200メートルほど離れた文化住宅の一室で続けられている。
 ただ、住宅街に面した参道に墓石が並ぶという異様な光景に、近隣からの苦情は絶えない。
 「いつか仏罰下る」
 薬師寺の墓を巡っては、複数の法令違反も発覚している。あらかじめ遺骨を墓石に収納するのに必要な墓地埋葬法上の許可を取っておらず、移設した墓石が市道上にはみ出ていたのだ。
 取材に応じた薬師寺の担当者は「知らなかったとはいえ、こうした状態で引き受けたことには問題があると認識している」と釈明する。寺側は大阪市側に市道の一部払い下げを求めているが、墓地の経営許可を新たに受けるのは不可能だ。市側は、法令違反を解消するには「今のところ遺骨は許可のある別の寺に移すか、檀家のもとへ戻すしかない」と説明する。
 さらに、売却に伴い本堂などを壊したことで、宗教法人の存続に必要な礼拝施設が現地になく、本尊の薬師如来も別の場所で保管されるという不自然な状態が続いていた。寺側は参道奥の約100平方メートルを購入し、本堂の再建を進めてはいるものの、かつてとは異なり近代的な建物で、旧本堂の解体を知る関係者は「いつか仏罰が下るかもしれない」と恐れるありさまだ。
 有象無象のビジネス介入を許す宗教法人の売買。長年の檀家を悩ませるだけでなく、数々の法令違反にもつながっている。いくら売買を「脱法的」と位置づけようが、法令で禁じない限り食い止めようがない。
 文化庁は、売買によって暴力団が支配するなど宗教目的から外れれば、宗教法人法81条1項5号に基づき解散命令の対象になるとして「法改正は検討していない」と繰り返す。ただこれまで81条1項5号が適用された例は皆無で、都道府県の宗教担当者からは「どう手続きを踏めばいいのか」と戸惑いの声が漏れる。
 時代とともに信仰を守る「盾」として不完全なことが明らかとなった宗教法人法。そのあり方が今、問われている。(「宗教法人法を問う」取材班)
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