¥25〉─7・C─「日本に国家破綻はない」は本当か? 日本人は見たくない事実を見ない。〜No.135 ⑮ 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 日本と日本人は、バブル経済から超エリート層と言われたグローバル派の学者、エコノミスト、アナリストらによるの助言・提言、忠告を信じて、メディア業界や教育界に踊らされて人口激減と経済衰退した今日を迎え、そしてまた人口回復と経済復興の道を進もうとしている。
 つまり、1980年頃から今日にいたるまで、日本と日本人には見るところがない。
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 2023年8月1日 YAHOO!JAPANニュース 集英社オンライン「「日本に国家破綻はない」は本当か? 「今回は違います」と言われながらも、国家破綻が繰り返しやってくる理由
 インフレ課税と闘う!#1
 コロナ禍やウクライナ戦争を経て、エネルギー価格などが高騰した結果、世界中でインフレが日常化している。だが、給与所得は上がらず、しかもインフレからは逃れられないことから、これはまさに「インフレ課税」と言えるだろう。これまで「日本の国家破綻などありえない」と言われてきたが、果たして本当にそうなのか?
 【関連書籍】インフレ課税と闘う!
 元日銀で第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏の『インフレ課税と闘う!』より一部を抜粋、編集してお届けする。
 日本の財政赤字はひとり当たり1032万円
 過去30年間、日本経済の潜在的な不安は、財政赤字問題だった。その財政赤字は累増して、日本の巨大な政府債務残高をつくってきた。その残高は、1287兆円(2022年12月末、国債+借入金+政府保証債)。これは、経済規模(=名目GDP)の2・31倍である。総人口で割ると、国民ひとり当たり1032万円という途方もない数字になる。
 日本の財政は、借金大国、赤字たれ流し、など様々な悪いイメージで語られている。反面、「それがどうした?」という人も大勢増えている。狼少年のように、「危機が来ると叫んでも危機は来なかったではないか。これからも来ない」と主張する。「危機なのか?」「危機は虚構なのか?」という素朴な疑問が国民を混乱させる。まず、その辺りから整理しておこう。
 事実として、国家は破綻することがある。2022年だけを見ても、世界中でいくつかの国が破綻した。ガーナ、マリ、レバノンスリランカは、国債などの政府債務の支払いが停止されて、デフォルト(破綻)と認定された。中南米エルサルバドルも破綻寸前とされる。世界中のどこかで財政が行き詰まる国家が現れている。
 2008年に刊行された書籍に、国家破綻の研究をした『国家は破綻する─金融危機の800年』(日経BP社〈訳書は2011年刊行〉、カーメン・M・ラインハート、ケネス・S・ロゴフ)の著作がある。この巻末には、世界各国の国家破綻、債務危機金融危機の事例が山のように掲載されている。2022年の海外の破綻事例は、そうした氷山の一角に過ぎない。
 この本がふるっているのは、原題が「This time is different」(今回は違う)となっていることだ。国家破綻とは、毎回、「今回は違います」と言われてやってくるのだ。これは、バブル発生時の社会心理とも共通すると言える。かつて、筆者も何度も「今回はバブルとは違います」という言葉を聞かされた。だから、ロゴフたちの著作のことを知ったときは膝を叩いて、その通りだと思った。
 「日本に財政破綻はない」という人が挙げる3つの根拠
 近年、日本の財政破綻はないという主張が、たくさんの有識者によって語られている。これほど海外に破綻事例があるのだから、日本は絶対に破綻しないという主張は、「日本は例外だ」という理屈でしかない。日本政府がどんなに財政赤字を増やしても、いつでも破綻しないという見解は、非常にラディカルに聞こえる。
 ただ、そうした主張は、その具体的論拠よりも、今までも大丈夫だから、今後も問題なしという理屈のように聞こえる。それは帰納法である。昨日まで健康だったから、明日以降も健康だという理屈だ。最近、流行している行動経済学では、正常性バイアスという。何も異常なことは起こっておらず、常に正常が続くと思い込む。これは、今後の変化を過小評価する心理になる。
 筆者は国家の債務問題を、心理バイアスに囚とらわれず、地球環境問題と同じように、放っておけば必ず危機が来るからと、合理的に危機管理すべきだと考える。そのために、財政赤字の何が問題なのかを読み解きたい。
 「日本は例外だ」から、財政不安は来ない根拠として挙げられている理屈は、大別すると次の三つに分類できそうだ。
① 国内貯蓄による国債消化
 どんなに財政赤字を増やしても、日本には豊富な国内貯蓄(家計+企業)がある。さらに、経常黒字(=貿易サービス収支+所得収支の黒字)があり、国家の金融資産は増え続けている。だから、政府の資金調達を国内資金で受け止められる。
② 資産・負債バランス説
 政府の歳出増は同時に、預金を生み出す。だから、新規国債発行=歳出純増=預金増加で常にバランスする。だから、自国通貨建てで国債発行をする限り、円資金は国内で回る。その結果、政府は資金調達が行き詰まることはない。
③ 日銀の無制限ファイナンス
 日銀は、政府が新発で募集した国債以外の既発債を買い取っている。いざとなれば、財政ファイナンスとして禁じられている新発国債まで全額買い取れば、市場を通さずに資金供給ができる。日銀ファイナンスでは、日銀が無制限に資金供給すれば、財政破綻はない。
 筆者が見るところ、この三つの根拠か、その変形の理論によって、日本で財政不安が顕在化しないという主張が展開されている。それらの主張をまとめると、「財政不倒神話」と言える。
 「財政不倒神話」の弱点
 ①と②の財政不倒神話の弱いところは、時間の経過とともに、顕在化した波乱がどう収束するかという経路が説明されていないところだ。例えば、長期金利が急上昇したときに、それをどのようにコントロールできるのかという道筋が登場しないところだ。
 金融のメカニズムに沿って、債券需給がどうなるのかを説明しないところは、金融マーケットの人を納得させられない弱点になっている。これは分析手法が、静態分析に終始していることに原因がある。静態分析は常にその状態が現在そうあることを説明するだけだ。時間の経過や、変化の因果関係は登場しない。常に、危機は来ないと予定調和の世界を描いてみせているだけだ。
 例えば、日本国債を海外投資家が持っていれば、それが売られたときに、国債価格が下がらずに済むシナリオはあるのか。長期金利がどうやって低下に転じるのか、どのくらい金利上昇が長期化するのか、がわからない。
 「日本は経常黒字国なので、海外投資家が保有国債をすべて売り切っても、日本の誰かが購入する」という話は、債券需給ではなく、国内資金移動の話だ。債券需給とマネー全体の話を同一視しているのも、金融関係者にはわかりづらい。
 しかし、ごく単純に考えて、国内貯蓄が、すべて国債消化のために使われるというのは間違いだ。銀行は常に国内で企業や個人に貸出をしている。その残りの資金で国債を買っている。国債購入は、余資運用と呼ばれる。余裕資金で行っている運用という意味だ。国債の入札では条件が合わず、入札不調になることは起こる。国債価格は需給バランスで変化するものだ。
 海外投資家が30兆円の日本国債を売ってきたとき、国内銀行がそれを全額消化できないことは十分に起こり得る。一国の国内貯蓄は、常に回転し続けていて、帳簿上のバランスシートで均衡が成り立っているように見えて、常に不均衡は生じている。その不均衡は、金利が上がったり、下がったりする価格メカニズムで調和が保たれている。
 国内貯蓄+経常黒字=国内調達の図式が成り立っていても、常に金利変動や為替変動は起こっている。これは③も同じで、バランスシートが左右で均衡しているから、為替・金利変動が起こらないという理屈にはならない。マクロ的な帳簿上のバランスと、金融市場の価格変動を混同して考えてはいけない。
 財政破綻に関する奇妙なパラドックス
 例えば、経常赤字の国は、常に資金が流出して通貨安になるとは限らない。米国は巨大な経常赤字国だが、ドル高である。帳簿上の変化は、需給を静止させた状態を記述するものであり、需給の変動そのものを説明することは原理的にできない。
 逆に言えば、静止させた状態で記述すれば、価格変動さえ発生しないことになる。「財政不倒神話」を語る人の話で、マーケットの需給の話をする人はあまり見当たらない。繰り返すが、国債価格は需給で決まっている。需要不足、供給超過が継続的に起こらないことは、資金移動を静止させた世界の記述では捉えられない。つまり、「財政不安など起こらない」という議論は、前提の中に結論が先取りされた議論になっている。
 では、資産価格の極端な変動を生むとすればそれは何なのか。ここが財政不安の本質だ。その答えは「信用」である。信用を失えば、日本国債は売られる。逆に、信用が保たれれば、海外投資家が国債をどんなに売っても、国内投資家は国債を買い支えるだろう。今までのところ、日本の財政の信用がぎりぎりのところで保たれているから、日本国債暴落などが生じていないと筆者は考えている。
 この見方は、奇妙なパラドックスを生んでいる。もしも、日本政府自身が、「財政は絶対に破綻しないものだ」などと言って、国債発行を乱発すると、たちまち信用を失う。なぜならば、国内投資家たちは、日本政府が元利払いを確実に保証し、将来的に財政再建をすると約束するから、その信用で国債を買っているのだ。日本政府が「財政不倒神話」を拒否するから、日本国債は信用されている。だから、政府は信用を失うような言動をしないのだ。
 文/熊野英生 写真/shutterstock
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