⛲38〉─5・B─孤独死で事故物件化。家を借りられない高齢者の住まい迫りくる危機。~No.229No.230No.231 

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 2024年3月26日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「家を借りられない「高齢者の住まい」迫りくる危機にどう対処する?孤独死で「事故物件化」ほかにもトラブル続出
 お金の有無にかかわらず、高齢者が部屋を借りにくくなっています(写真:maroke/PIXTA
 2023年1年間に生まれた子どもの数は、外国人なども含めた速報値で75万8631人。で、前の年より4万1097人減少と8年連続で、統計開始以来、過去最少になったことが報道されました。 少子化と表裏一体の課題が「超高齢化社会」です。
 医療の発達により、いわゆる不治の病が少なくなり、なかなか「死ねない」時代がもうそこまでやってきています。
 一般的な定年の年を過ぎても長く生きなければならないこれからに備え、何をどのように準備しておけばいいのか――医療、お金、住まい、相続など、さまざまなジャンルの専門家8名の著者による『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)から、一部抜粋・編集してお届けします。
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孤独死によって「事故物件化」
 お金の有無にかかわらず、高齢者が部屋を借りにくくなっています。
 いま賃貸物件に住んでいる中高年も10年、20年と経てば高齢者になり、亡くなる可能性が高くなります。孤独死もあるでしょう。
 基本的に、事故物件となるのは自殺や他殺が原因であり、病気などで亡くなった場合は含まれません。ところが、病死であったとしても、発見が遅れてしまって特殊清掃が必要になったりすると、事故物件になってしまいます。
 そうなると自殺や他殺のように告知義務も発生し、次の入居者を確保できにくくなるという問題が生じてきます。孤独死が原因で事故物件になった場合の家主や不動産会社の悩みを紹介します。
 孤独死が発生したが身寄りがなく、ご遺体の対処、滞納された賃料、リフォーム費用などがすべてこちらの負担となった。
 賃料を下げても風評被害でその後の入居者を見つけることができなかった。不動産の売却依頼を受けたが、やはり売れず、苦労した。
 浴室で孤独死が発生。
 死亡翌日に発見され、病死だったことから本来次の入居者への告知義務はないが、入居後に知ることになる可能性が高いため、告知をしている。
 浴槽の交換をして家賃も下げたが、入居希望がなく、ずっと空室のまま。このようなことがあると、高齢者への紹介には二の足を踏んでしまう。
 木造2階建てアパートで高齢女性が浴室で孤独死。原因は心不全。ご子息が母親と連絡が取れないことを心配して入室確認し、死亡が発覚した。
 死後2週間ほど経っていた。残置物は処理業者に依頼して処分。
 しかし、腐敗臭は残ったため、賃貸物件として貸すことが不可能に。他の部屋の入居者も徐々に退去。その後、家主の希望もあって募集はせず、建物は解体して更地に。
 もともと家主は貸さないと言っていたにもかかわらず、死亡した高齢女性がどうしても借りたいと申し出て貸した経緯があったため、家主は今後中高年の単身者には貸さない方針を明確にした。
■事前に知っていたら借りなかった
 病死も、新しい入居者から「前もって知っていたら借りなかったのに」というクレームが来ないよう、家主側は告知しています。しかし、告知したらしたで、次の入居者を確保できなかったり、賃料を下げざるを得なかったりして、資産価値低下につながっています。
 結局のところ、入居者が孤独死すると家主側の負担が非常に大きくなります。そのため、入居者確保が少々困難になったとしても、事故物件化を防ぐために高齢者に貸すのを避けるしか方法がないのです。
 しかし、このような現状は家主にとっても、賃貸を借りたい高齢者にとっても不幸な事態です。
 人は生きている限り、どこかに住まなければなりませんし、生きている人は誰しも必ずいつか死を迎えます。
 人が亡くなった場所をすべて事故物件化していたら、この日本に高齢者の住む場所はどこにもなくなってしまいます。高齢者の増加によって死亡者数が増え、人口が減少していく「多死社会」もすぐそこまで来ています。今後は『死』に対する認識を、日本人は変えていく必要があると私は考えています。
 2018年に行われた調査でも、家主や不動産会社の大半が「できたら高齢者に貸したくない」と思っているという結果が出ています。そこには、賃貸借契約の相続や孤独死に絡む問題以外にも、さまざまなトラブルがあることがうかがえます。
・ 高齢者の認知症が進み、実質面倒をみなければならない
・ 家族が対応しない。言ってもしてくれない
・ 共有部分で失禁・ 糞尿をする(制御できない)
・ 電球を替えられない、テレビが映らない(単なるコンセント抜け)、エアコ
ンのリモコンが反応しない(単なる電池切れ)などの理由で呼び出される
・ 耳が遠く、大きな音でテレビを視聴するため、他の入居者とトラブルになる
・ 室内を片づけられず、汚部屋になる
・ 隣人に金の無心をしたり、被害妄想で近隣や警察に迷惑をかけたりする
・ ボヤ程度だが、火事を起こした
・ 生活スタイルの違いから、隣人と生活音トラブルになる
 一昔前までは家族や親戚が対応していたことを、民間の家主や不動産会社が対応しなければならない状況が起こっているのです。彼らができるだけ高齢者に貸したくないと思うのも、仕方のないことだと思ってしまいませんか。
■本来なら優良顧客の高齢者
 本来なら家主側にとって、高齢者の賃借人はいったん入居すると若い人ほど引っ越しすることが少なく、結果として長期入居してくれる「優良顧客」です。
 しかし、老化が進むとさまざまなトラブルを引き起こす可能性もありますから、入居審査の判断は簡単ではありません。
 若い人もトラブルを起こすことはありますが、家主側の負担が大きい高齢者によるトラブルのほうが数が多いといえます。ところが、トラブルの相手が高齢者の場合、法律だけで事務的に解決できないことも多々あります。
 たとえば、賃借人が家賃を滞納して、話し合いでは解決できなかったとしましょう。そのときは訴訟手続きで明け渡しの判決をもらい、強制執行という手続きで滞納した賃借人を強制的に退去させることができます。
 ただ、高齢者の場合はスムーズに退去させられないこともあります。
 執行官が「この高齢者をここから追い出した場合、その後生きていけるのか?」とためらってしまうと、判決は出ていても執行してくれない場合があるからです。
 こうなると家主は大変です。家賃を払ってもらえないから仕方なく訴訟を起こし、判決をもらって強制執行を申し立てたのに退去させられない。八方塞がりになってしまいます。
 私が出会った明け渡し訴訟の相手方の高齢者は、タイミングを逸して転居できなかった人たちが非常に多いです。
 60代でまだ仕事をしていれば、家賃保証会社の加入だけで部屋は借りられます。ところが70歳を超えてしまうと、高齢者に部屋を貸したくない家主側は、滞納の心配というより亡くなった後の手続きをしてくれる身内の連帯保証人を条件とします。身内はいるでしょうが、頼れる関係ではないのでしょう。
■部屋探しは諦めるしかない? 
 高齢になれば、兄弟姉妹も高齢なので連帯保証人になれるほどの経済力がありません。そうなると子どもか甥・姪になりますが、そもそも疎遠で交流がないのが大半です。
 そのような背景があるので、身内の連帯保証人を求められてしまうと、この段階でほとんどの人が撃沈。1つめのハードルを越えられず、部屋探しは諦めるしかなくなってしまいます。
 また高齢になると日々の生活で精一杯で、先のことを考えて行動できないようです。
 見たくないのか、自分の収入もいつか減るということをなかなか想像しません。その時のために、あらかじめ安い物件に引っ越そうとせず、問題を先延ばしにしてしまいます。
 さらに今より安く狭い物件に引っ越すためには、当然、荷物も断捨離していかねばなりません。これが2つめのハードルです。
 元気そうに見えても、年を取ると荷物の処分を自分ではできません。誰かの手を借りなければ、断捨離や部屋の片づけは難しくなります。
 結果、安い物件に引っ越すことができず、トラブルに発展してしまう高齢者は後を絶ちません。
 家主側が一度こういったトラブルを経験してしまうと、次から高齢者には貸さないと決めるのは当然の帰結です。結果、高齢者がますます借りられない世の中になっていきます。「貸さない家主が悪い」とは、誰も言えないのです。
 私は今も毎週のように裁判所に通い、複数の賃貸トラブルを解決するために走り回っています。すべて紹介することはできませんが、他にもこのような事例があるということを知っていただければと思います。
 太田垣 章子 :OAG司法書士法人 代表司法書士
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