⛲30〉─1─老老介護。介護餓死。介護疲れ。ノイローゼ殺害。無理心中。介護自殺。~No.160No.161No.162 @ 

介護崩壊 (晋遊舎ブラック新書 4)

介護崩壊 (晋遊舎ブラック新書 4)

  • 作者:凛 次郎
  • 発売日: 2007/12/10
  • メディア: 新書
   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 日本人、特に日本男性の精神力は思った以上に弱い。
   ・   ・   ・   
 2016年3月4日号 週刊ポスト「『老老介護の厳しい現実』18年間の大調査で『犯行の7割が夫』と判明
 『介護疲れ』で妻を殺した夫たちの『憤懣(ふんまん)』と『悔恨』
 認知症の妻に〝死ね〟〝ジジイ〟と罵られて──悩みを独りで抱え込んだ夫たちの心情とは
 年老いた配偶者を介護する老老介護時代において、介護の負担やストレスが原因で長年連れ添った伴侶を殺(あや)める悲劇が後を絶たない。そうした、『介護疲れ殺人』に関する調査によると、7割超が『夫が妻に手をかける』ケースだった。
 なぜ男性介護者たちは〝妻殺し〟まで追い詰められたのか。
 娘夫婦に迷惑をかけたくなかった
 今年1月、日本福祉大学の湯原悦子・准教授(司法福祉論)が過去18年間(98〜15年)に全国で発生した計716件の介護殺人事件(介護疲れなどが原因で発生した親族による被害者が60歳以上の殺人や無理心中)の調査結果を発表した。
 湯原氏が話す。
 『殺害者の性別は男性512件(72%)、女性194件(27%)。残る10件は複数犯などでした。厚労省調査によれば、在宅介護の担い手の7割は女性ですから、少数派の男性が加害者となる割合が高い。つまり男性の介護者は女性と比べ、介護現場において〝困難〟を抱えやすいと推測されます』
 716件の内訳を見ると、①夫婦間333件、②子供が親を死亡させた事件331件と両ケースだけで93%を占める。
 ①のうち、夫が加害者だったケース240件(72%)に対し、妻が加害者だったのは93件(28%)。②では息子が加害者だったケース235件(71%)に対し、娘は76件(23%)と、やはり男性が7割を占める。
 男性のほうが介護でより追いつめられる理由を湯原氏はこう指摘する。
 『男性は介護のことで困っていても、周囲に家庭内の悩みを相談する習慣がありません。ましてや頼ることなどそもそも思いつかない人がほとんどです。その分、介護の負担を独りで抱え込んで孤立してしまうケースが多い』
 仕事中心に生きてきた男性ほど思い当たる節があり、耳の痛い話ではないか。
 介護殺人は90年代までは年間20件台だったが、ここ10年間は平均で年間約45件と増加傾向にあり、社会問題化している。
 ……
 生きていても仕方がない
 ……
 気が付くと首を絞めていた
 介護殺人を特殊な事例と片づけるのは間違いと話すのは、男性介護の実態を研究している立命館大学准教授の斉藤真緒氏だ。
 『殺人にまで発展するケースは少数ですが、その一歩手前で苦悶している男性介護者は少なくありません。同様の事件が起きるたび、〝気持ちはよくわかる〟と感想を漏らす人たちを私は何人も目にしてきました。男性は介護を仕事と考えがちで、そのため弱音を吐いたり、他人に頼ったりしない。だから追い詰められやすい側面があります』
 北陸地方に住む冨田安治氏(仮名・69歳)は、まさに〝境界線上〟で今も介護に苦闘している。3年前、妻が脳梗塞で倒れたのを機に、悠々自適だったリタイア生活は一転、付きっきりでの介護生活に突入した。
 『食事や入浴補助のディサービスは受けていますが、介護は想像以上の大変さです。何が辛いって、公的サービスの枠を超えたイレギュラーな事故が日常的に起こること。脳梗塞の後遺症で妻の半身には麻痺症状が残っており、転倒や食事の喉詰まり、失禁が頻発にある。介護以前にそれらの目配りと処置だけで手一杯で、気の休まる暇がない』
 徐々にストレスが溜まっていった昨年暮れのある日の深夜。妻の失禁の後始末をしていた時に突然、かつて妻から言われた言葉がフラッシュバックしたという。
 『20年も前に口論した際に妻から浴びせられた〝ななたと結婚したこと後悔しているわ〟とも言葉です。気が付くと妻の首をしめていた。・・・ハッと我に返りましたが、この生活がこれからも続けば、そのうち妻を虐待してしまうんじゃないかと自分が恐くなります』
 『絶望に覆われている』と話すのは、都内在住の野呂吉彦氏(仮名・73歳)である。認知症の妻を10年近く介護し続けている。
 『私のことも判別できなくなってしまった妻から〝死ね〟や〝ジジイ〟といった暴言を浴びせられるのは日常茶飯事です。時には殴られたり、蹴られたりすることも珍しくありません。こちらが介護で睡眠不足だったり、疲労困憊している時に妻に頭を殴られたりすると、やっぱりついカッとなって頭に血が上がってしまうんです。反射的に妻を平手打ちしたこともあります。〝こんな生活、もう堪えられない〟と心中を決意したこともありますが、妻の安らかな寝顔を見て何とか思いとどまっています』
 一線を踏み越えないなめにはどうすればいいのか。斉藤氏が指摘する。
 『男性はつい頑張ろうとしがちですが、介護は自分ひとりでは全うできません。公的な介護サービスを上手く利用して負担を軽減すると同時に、友人、知人、家にやって来るケアマネージャー、地域の家族会など、不満やSOSを言える複数のチャンネルを確保しておくことが大事です』
 無理なく介護することが、〝最悪の事態〟を回避する唯一の方法といえるのだ」
  ・   ・   ・       
 2016年12月11日 サンデー毎日「現場ルポ 『孤独』『長時間』『うつ』が引き金に
 介護自殺どう防ぐか  ジャーナリスト渋井哲也
 5年で1,375人・・・都道府県別、年代別データ付き
 『介護・看病疲れ』での自殺者は5年で1,375人──。若い世代にまで、『介護自殺』が広がり始めている現代ニッポン。どうすれば自殺防止できるのか、その処方箋はあるのか。著者が過酷な介護現場を歩き、自殺の寸前にまで追い詰められた介護者の声を聞いた。
 ……
 割り切れない真面目な介護者
 介護に疲れ果てた末の殺人事件が頻発する一方で、介護によって心身が疲弊し、自ら死を選ぶ『介護自殺』が後を絶たない。警察庁の集計によると、11〜15年の5年間で『介護・看病疲れ』を理由に自殺した人は1,375人。自殺者全体(5年間で約13万5,000人)の約1%。11年をピークに減少しつつあるが、一方で若い世代に広がっていること分かる。11年と12年に10代が1人ずついるものの、40〜70代が多いことが分かる。
 有職者が目立つ一方、無職者の中では、『主婦(主夫)』が半数以上に達する。冒頭の渡辺さんも一時は無職で、介護が長時間に及んだ。
 筆者の申し出に基づき、厚生労働省自殺対策推進室を通じて警察庁が行った特別集計によると、都道府県別では東京都が105人で最も多い。次いで愛知県の88人、大阪府の86人、兵庫県の75人、福岡県の64人と、大都市圏が多いことが分かる。
 自殺者全体に占める『介護・看病疲れ』の割合を見ると、滋賀県が最も高い。だが他県と数字上は大差はない。どこかの地域に偏っている問題ではない。
 淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は年間300人前後が介護自殺をしている現状に『介護者は孤立している。真面目な人が多く、やらなきゃいけないと思い込んでいる。施設に入れればいいなどと割り切れない』と分析する。
 孤立している介護者の中にはうつになる人もいる。うつは、自殺の引き金にもなりかねない。
 ……
 家庭内介護では特定の人に介護が集中し、精神的に負担になることがある。
 『兄弟姉妹がいると、親が好きな人が家に残る傾向があります。介護をしていると、結婚の機会を逃し、独身も多い』(松村さん)
 木村藍子さん(仮名、37)は未婚で、一人で介護をしている。介護の苦悩によって自殺を考えた。
 母親(63)と2人暮らし。家で仕事をしながら14年春から、母親を介護している。母親は物忘れがはげしいほか、うつ病でもある。
 『母には寝てもらわないと仕事になりません。しかし、見ていないと何をするか分からない』(木村さん)
 一人の時間がなかなか取れないが、母親が寝ている時に家を抜け出すこともある。ネットカフェが息抜きの場所だ。
 母親はプライドが高く、他人ができないことを理解できず、木村さんは頭にくることがある。
 『私の要領が悪く、家事などをうまくできない面を、母は理解できません』(同)
 介護ヘルパーはたまに来てくれているが、デイサービスに誘うと、母親は『家から追い出すつもりか?』と怒りが噴き出す。
 介護者の孤立防ぐ認知症カフェ
 介護をしていると話ができる友人が減る。同年代の友人は結婚し、近所にはいない。親類も遠い。
 『平均寿命を考えると、あと20年以上、こうした生活が続くことになる。それを思うと自殺を考える。今は「投げ出したい」という思いが強い。時々、「死んでくれないかな」と思うんです』(同)……」
・・・


   ・   ・   ・   
 人の絆やつながりが脆弱化していく現代日本で、在宅介護が増えるや老老介護疲労が強まり、更なる悲惨な事例が多発する。
 老老介護
 息子や娘の離職介護。
 独身子供の親の年金頼りの介護。
 女性の社会進出に伴い専業主婦が減少すると、子育てと老親介護の世界は激変する。
 国家の借金は1,000兆円を超え、年間30兆〜40兆円の赤字が加算され、返済不能となっている。
 昔はあった隣組という煩わしいほどの濃密な地域社会の人間関係は、個の自由や私的なプライバシーなどで修復不可能に近い程にズタズタに分断されている。
 向こう三軒両隣は身内のようなものという時代は過去の事で、隣の住人すら分からない無関心な時代となっている。
 現代は、情緒的なお互い様・相身互いで寄り添って生きる時代ではなく、合理的にドライで金銭で全てを右から左へと感情抜きで事務的に処理する時代である。
 そうした合理的感情抜きの事務的処理方法は、少子高齢化が進めばさらに加速して行く。
 日本人は欧米人のように、大人になれば親子関係さえも個を確立した個人とスッパリと割り切って老後施設に死ぬまで入れておけない分、悲惨度を増す。
 「情において忍びない」という、情緒の強さが日本人の弱みであり、何時の時代でも日本に悲劇をもたらした。
   ・   ・   ・   
 日本社会は、自分の力のみで開拓・開墾した田畑を耕す農耕社会から発展しているだけに、家族・身内でもない他人の田畑を手伝って耕す義理もなく、その為に自己責任として地域的な助け合いは期待できない。
 狩猟社会は、獲物を仕留めなければ自分と家族が飢えて死んでしまう為に、みんなが一致協力して狩りしなければならない、狩りを成功させる為には助け合い支えあい慰め合わねばならなかった。
 農耕社会は、「自分は自分、他人は他人」で無関係ないという薄情な利己主義で、しょせん孤独に一人だけで生きる社会であり、見返りなく一文の得にもならなければ見捨てられる社会である。
 狩猟社会は、皆で行動する集団主義と個性を出す個人主義で、寄り集まってお互いの体温や息遣いを確かるコミュニケーションを大事にするコミュニティである。
 農作業は身勝手に一人で行い、狩猟は寛容に皆で行う。
 農耕社会は他人行儀で冷たく、狩猟社会は親しみやすく温かった。
 ボランティア活動は、狩猟社会で生まれ、農耕社会では生まれなかった。
 キリスト教イスラム教は人の情において、狩猟社会に受け入れられ、農耕社会には馴染めなかった。
 欧米社会で行われている成功例を真似して日本に導入しようとしても、社会や人情が異なる日本に根付く事は難しい。






   ・   ・   ・   

老老介護

老老介護