⛲33〉─1─人生100年時代の超老老介護の悲劇。介護疲れの殺人。~No.203No.204No.205 ⑲ 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2019年2月18日 産経新聞「人生100年時代に「超老老介護」の悲劇
 70代の妻の首をネクタイで絞めて殺害しようとしたとして、殺人未遂罪に問われた夫(77)に対する裁判員裁判が平成31年1月、大阪地裁で開かれた。妻は認知症で、「老老介護」の末の思い詰めていたといい、地裁は「経緯は十分に酌むべき」として懲役2年6月、執行猶予4年(求刑懲役4年)を言い渡した。「人生100年時代」に突入しようとする中、介護を受ける側も担う側も75歳以上という「超老老介護」世帯も3割を超えた。専門家は「老老介護世帯が第三者に助けを求められる仕組みが必要だ」と訴える。
便箋に「もうあかん」
 「お父さん何するの、やめて」
 公判資料などによると、事件は平成30年8月6日午後2時ごろ、大阪府門真市にあるUR団地の一室で起きた。夫が6畳和室で妻の首にネクタイを巻き付け、絞めた。
 その後、夫はベランダで自分の首を包丁で切りつけて自殺を図った。しばらくして妻は意識が戻り、ベランダで倒れていた夫を発見。妻は夫を助けてもらおうと、近所の人らに通報を呼びかけた。妻は、まぶたの鬱血(うっけつ)など2週間の軽傷を負った。
 公判で夫は起訴内容を全面的に認めた。検察側の冒頭陳述によると、25年にがんの手術をして以来、思い通りに体を動かせなくなったが、その2年後、妻が認知症になった。介護を続けていたが、日ごろから「つらい」「もうあかん」などと、便箋(びんせん)やノートにつづっていた。
 「2人とも持病がいっぱいある。ぼけたらみじめ。一緒に責任を果たす。1人になっても元気でがんばってよ」
 長女に宛てた「遺書」も見つかった。
「超老老介護」3割も
 被害者の妻は捜査員に複雑な心情を述べていた。
 「お父さんは精神的に思い詰めていたかもしれません。お父さんを怖いと思います。しかし、お父さんがいなくて寂しいし、家に帰ってきてほしい」
 迎えた判決公判。地裁は「夫に第三者の支援を十分検討する知識や体力があったとはうかがえない。ほかの選択肢を考えられず、思い詰めて犯行に至った」と指摘。事件に至る経緯は十分酌むべきとした上で「犯情は重いとはいえない」と述べた。執行猶予付きの判決は、老老介護の苦境を考慮した地裁判断だった。
老老介護は年々増え、さらに“高齢化”もしている。
 厚生労働省が28年に実施した国民生活基礎調査によると、介護する人とされる人が同居する世帯のうち、65歳以上同士の「老老介護」世帯は54・7%と、過去最多を記録。両者とも75歳以上という「超老老介護」世帯は初めて3割を超えた。
「1対1の介護関係避けよ」
 介護問題に詳しい淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)によると、介護殺人の加害者に多いのは、献身的に介護を続けた人▽外部のサービスを利用するのが不得手な人▽介護を仕事のようにとらえる人-という。
 さらに、男性は女性よりも他者を頼ることにためらいがちで、外部のサービスを利用したくないと考える人も少なくないという。今回の事件でも判決は、夫が第三者の支援を受けるのが難しかったと指摘した。
 結城教授は「一人で抱え込んだ末に手をかけるケースが目立つ。介護者-被介護者という1対1の関係に陥らないことが重要」と強調。「介護カフェなど、同じような悩みを持つ人が集まって情報交換するような場はすでにある。次はそうしたサービスをより身近に利用してもらえる仕掛けを考える必要がある」と訴えている。
若若介護も
 問題は老老介護だけではない。
 シニア女性誌を発行する「ハルメク」(東京)の生きかた上手研究所、梅津順江(ゆきえ)さんは、「高齢者でない世代が介護する人とされる人になる『若若介護』がこれからの課題になる」とする。
 梅津さんによると、若くして認知症を発症した場合、体は自由に動くため、介護する側の負担はより大きくなる。体が思い通りにならないいらだちからか、介護する人に不遜な態度をとることもあるという。さらに、介護施設が高齢者以外に対応していないケースもあるなど、課題は多いと指摘する。
 梅津さんは「若若介護は先が見通せず、絶望感にさいなまれがち。事例としてはさほど多くないかもしれないが、遅かれ早かれ、深刻な問題になる可能性をはらむ」と警鐘を鳴らす。」


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