⛲30〉─3─荒れた介護の現場。給料が安く重労働。介護業界から優秀な若い従業員が逃げるように辞めている。2015年~No.166No.167No.168 @ 

崩壊する介護現場 (ベスト新書)

崩壊する介護現場 (ベスト新書)

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2015年11月12日号 週刊新潮「ああ、無情
 介護職残酷物語
 人材不足で過重労働、薄給、イジメ、パワハラ
 年間約28万人が離職するとされている介護現場が荒れている。慢性的な人手不足で労働は過酷なのに薄給。来るもの拒まずで、モラルが低下し、虐待事件が急増。スタッフ間でもイジメ、パワハラが横行するという負のスパイラルに陥ってるのだ。
 ……
 安倍政権が〝新3本の矢〟の一つとして打ち出した『介護離職を2020年代初頭までにゼロにする』というスローガンは、当然のごとく介護現場で失笑を買って。慢性かつ、深刻な人手不足に苦しむ介護業界の離職率は昨年度、16.5%と高く、年間28万人以上が離職し、人材難に悩まされ続ける。
 親の介護のため離職する人をゼロにするためには、まず、介護業界の人材難を解決することが先決だが、真剣に現場をリサーチしたようには、とても思えない。
 川崎市山口県杵築市名古屋市などの介護施設で、職員が利用者を虐待する映像がニュースで取り上げられたのは記憶に新しい。全てが刑事事件であり、暴力剤に該当する。それらの映像を見ながら記者は驚きより、大いにあり得ることだと感じた。
 ヘルパー2級はやさしすぎる
 数年前、記者は介護現場の実態をリポートしようと、某施設で働いた。その間にホームヘルパー2級と介護福祉士の資格は取得した。
 介護業界に身を身を投じて、まず初めに驚かされたのは、ヘルパー2級の資格を得るための講習の際、テキストに書かれた漢字をほとんど読めない受講者の存在だった。『老人』『枕』『有無』といった小学生レベルのものさえ、読めなかった。さらに実習先の老人ホームでは、足元に便が散乱したなかで老人たちを入浴させているさまに言葉を失った。
 ヘルパー2級は費用さえ払えば、そう苦労せずに取れる。次のステップである介護福祉士も、日本で合格者が最も多い国家試験であり、中型自動車免許の筆記試験より難しい程度だ。実技も料金を振り込めば、多くの人がパスできる。
 つまり、やさしすぎるため、常識に欠ける人間でも得られる資格と言っていい。
 介護の現場は、男性よりも女性のほうが圧倒的に多い。介護労働安全センターによる14年度介護労働実態調査によれば、全体の約80%が女性だ。
 記者が勤めた施設は、女性9、男性1の割合だった。職員たちは転職を繰り返しており、やはり漢字を知らず、新聞など読まないタイプがほとんどであった。正社員もパートも、8割以上が3ヶ月以内に止めていった。そして、女性間のパワーハラスメントが日常的に起きていた。頻繁に目に為たのは、働きだして日の浅いヘルパーに、先輩社員が基本的なことを何も教えず、困っている姿を見て喜んでいる光景だった。
 あるとき、利用者が発作を起こした。ヘルパーたちにとって未経験であったため、かなりうろたえた。それを目にした責任者は『ダイアップ取って!』と怒鳴った。『ダイアップ』とは医療用医薬品名で、座薬のことだった。2人の女性ヘルパーが何のことかわからずオタオタしていると、責任者は『もういい!』と激怒して自分で取りに行った。ヘルパーたちは、『座薬』と言われれば間違いなく対処できた。同責任者は必要最低限の情報を伝えることなく、あるいは他者が理解できるように説明することもなく、いつも部下が働きにくい状況をつくり出していた。
 別の日には、利用者Tが、利用者Uを引っかく事故が生じた。T、Uともに知的障害者だったため、善悪の判断がつかない。あっという間の出来事で、防ぎようがなかった。同現場には私を含め、4人のヘルパーがいた。
 責任者は4人の中で入社したばかりの新人女性をターゲットとして、『なぜ防げなかったのか?』『あんたの責任だ!どうしてくれるのか』と詰問した。記者に火の粉が飛んでくることはなかったが、前出の五十嵐さんは業界で働く人についてこう評した。
 『大きな声では言えませんが、他の職では採用してもらえないとか、教養のない人が多いと感じます。誰でも入れ、気に入らなければすぐによそに移れる特異な職種だと思います』
 イジメ、パワハラ横行する悪循環
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 12年度の介護福祉士養成大学連絡協議会・公開シンポジウム資料では、09年9月時点で、大学で介護福祉士の資格を取得した数は、全体のわずか1.28%と報告された。
 志を持った若者を育て、少しでも介護業界を向上させたいと奮闘する十文字学園女子大学人間生活学部人間福祉学科の宮内寿彦教授は話す。
 『現在は大学での「介護福祉士」取得者1%未満と推定され、約75%は、3年間の実務経験を積み、国家試験を突破した方々です』
 宮内教授は福祉の教壇に立って18年目。近年の虐待事件等、介護現場の問題点を将来改善していってほしい、と学生に伝える。
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 宮内教授は一連の虐待事件についてもこう語る。
 『今、現場で暴言や虐待行為が発生している原因はいろいろとあるでしょう。職場の組織風土、人間関係、不満やストレス。しかし、いつか自分の親が施設を利用するかもしれない、自分も老いて、施設を利用するかもしれない。「あなたは、あなたの介護を受けたいですか?」と問いたい。利用者や家族の思いに寄り添うことが大切です。介護現場の入り口で最低限のモラルを備えるように、教育研修を強化していかねばなりません』
 厚生労働省は人材不足に対処するため、『介護人材の裾野を広げる』と言い、将来的に多くの未経験者が現場に立つ可能性を示唆した。
 『研修制度を充実させなければ、ケアの質は下がり、負のスパイラルに陥るでしょうね』(宮内教授)
 社員育成に頭を悩ませる介護施設経営者にも匿名で話を聞いた。年商3億2,000万円。100人弱の従業員を抱え、関東地方でデイサービスを展開中だ。
 『素直な話、全産業の平均年収より26万4,000円も低い(13年、国税庁発表)介護業界に、優秀な人間は集まってはきません。虐待事件なども、労働者の質の低さが大きな要因となっています。とにかく人手がほしいと、資格もない労働力をかき集めた結果でしょう。また、この世界に男性が少ないのは、妻子を養っていけないからです』
 『寿退社』という言葉があるが、介護の世界におけるそれは、男性社員が結婚を機に、より賃金の高い仕事に変わることを指す。
 『今後は弊社も大学で福祉を学んだ学生を新卒で採用したいですね・・・非常に難しいですが、ニュースも見ない、日本の首相の名も知らない、社会事情に疎いといった人間を教育していくには、徹底した研修しかないと思っています』
 職員38万人不足 課題は人材育成
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 団塊の世代が75歳以上になる2025年では、約38万人の介護職員が不足するとされる。賃金を度外視したモチベーションを持たなければ、介護業界でやっていくのは難しい、とも前出の宮内教授は指摘する。
 『給与の低さを口にする介護職員は多く、それで辞めていく人も多い。この状況で、1人の介護職員の給与を3万〜4万円も上げられるでしょうか? 今後、さらに保険料負担やサービス利用料を上げるのか・・・。財源確保となるでしょう。給与のアップが難しいのなら、介護職員に対して、どこか税制面等を緩和できないか、と個人的には思います』
 介護業界に明日はあるのか・・・」
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 2014年調査。介護職の月給は平均22万円で、全産業平均より約11万円低い。
 介護職員不足で、介護サービス事業者の倒産や事業所の廃止、休止が増えている。
 最低限の年金受給の老人は、受け入れ施設が無い中でどこへ行くのか。
 さらに、非正規社員で、低給料で貯蓄が少ない若い者は、さらにどこへ行くのか。
 自己責任。
 自力救済。
 自己努力。
 自己と自力。
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 12月10日号 週刊新潮「低賃金の重労働が『介護現場』をここまで荒廃させた!  国際関係学研究所所長天川由記子
 過酷な労働と低賃金に喘ぐ職員に、不祥事ばかりが取り沙汰される事業者、さらに、改善の道筋を示さない国や行政。その陰で、不安と隣り合わせの日々を過ごし、時として命の危険に晒される高齢者たち──。
 安倍政権は目下、〝一億総活躍社会〟の重要課題として〝介護離職者ゼロ〟を掲げ、様々な緊急対策を講じようとしている。だが、筆者には、〝現場〟の危機的な状況を政府が真に理解しているのかどうか、甚だ疑問に思えてならない。
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 でもしかヘルパー
 ……
 公益財団法人・介護労働安定センターの調査では、介護に携わる労働者のうち60歳以上は17.4%で、ホームヘルパーだけに限れば約34%に上る。つまり、ヘルパーの年齢構造は、中高年ほど比率の高い〝逆ピラミッド型〟なのだ。しかも、キャリア豊富なベテラン・・・。とは呼べない高齢ヘルパー。
 これは高度経済成長期の教員不足で登場した〝でもしか先生〟と同じ構図だろう。リストラされたり、定年退職した中高年が、〝仕事がないから介護でもしよう〟〝技術がないので介護しかないか〟といった後ろ向きな理由で、〝でもしかヘルパー〟になっている。
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 〝男の寿退社〟
 一方、現場の混乱を尻目に、ビジネスとしての介護業界は依然として活況を呈している。
 一昨年の総務省の統計では、65歳以上の高齢者が3,186万人と過去最高を記録。日本の総人口に占める割合で、初めて〝4人に1人〟が高齢者となった。こうした急速な高齢化に支えられ、介護業界は右肩上がりの急成長を続けている。
 介護保険法が施行された2000年度に3.6兆円だった介護保険には9兆円に膨らんだ。それどころか、2010年に閣議決定された『新成長戦略』では、2020年の介護市場は19兆円規模に上ると試算している。これはパチンコ業界に匹敵する市場規模だ。
 将来の需要増は確実だが、それでも、介護業界ほど〝成長〟という言葉が虚しく響くビジネスも他に見当たらない。 
 その最大の原因は、現場の疲弊にある。なかでも、〝賃金〟の問題は深刻だ。
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 先の介護労働安定センターの調査によると、2014年度の、施設で働く介護労働者全体の平均月収は約21万5,000円で、全企業の平均月給と比べて10万円以上の開きがある。また、訪問介護員では18万7,000円程度に留まる。
 そもそも、今年の大卒新入社員の初任給20万2,000円と同じ程度では、介護職員が将来に希望を見出すことは難しい。
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 介護業界の離職率は16.5%で全産業の平均を上回る。しかも、離職者の7割は仕事を始めてから3年未満の者が占めているのだ。景気回復も相まって20代、30代の若年層が早々に見切りをつけ、転職してしまう様子が窺える。
 先の男性が続けるには、『特にホームヘルパーは慢性的な人手不足なので、常に募集をかけている状態です。ただ、応募者のなかには明らかに金に困っている人もいます。事業者に余裕がないと、おざなりな人選で雇ってしまい、教育も施せない。そのせいで、未熟な職員による事故や窃盗事件が起きています』
 38万人の不足
 介護の現場に質の低下をもたらしている原因とそて、行政の怠慢も無視できない。
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 安倍政権は11月26日、特別養護老人ホームなどの介護施設を、2020年代初めまでに50万人分増やすという目標を発表した。厚労省が在宅介護の推進を掲げるなか、ここに来て〝箱物〟にテコ入れするというのだから、ちぐはぐな印象を否めない。
 また、厚労省の調査では、団塊世代が75歳以上になる3025年には、介護職員が38万人不足するとされる。たとえ施設を量産したところで、介護職員の質と量が伴わなければ、介護問題の根本的な解決とはならない。先述の給与データから推定すると、介護労働者の年収は300万円前後に過ぎないが、これを最低でも、国税庁が発表した、民間企業に勤務する従業員の平均年収〝415万円〟まで引き上げなければ、職員の確保は困難だ。
 介護という国家的な〝危機〟を前に、限られた財源は現場で汗を流す〝人材〟にこそ投じられるべきである」
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 2017年11月4日 産経ニュース「介護職の80%が「不満」 低賃金改善されず
 月給制で働く介護施設職員の約80%が働く上で不満を感じ、その理由として「賃金が安い」が最多だったことが、介護職員を対象にした労働組合の調査で3日分かった。政府は介護職員の処遇改善を掲げて政策を打ち出してきたが、多くの人が効果を実感できていない現状が明らかになった。
 調査は「日本介護クラフトユニオン」が3〜4月、介護施設などで働く組合員計4277人を対象に実施。月給制職員1854人と時給制職員1002人が回答した。
 月給制職員のうち79・7%が「働く上で不満がある」と回答。理由は「賃金が安い」が56・3%で最も多く、「仕事量が多い」「何年たっても賃金が上がらない」が続いた(3つまで回答可)。また73・9%が「働く上で不安がある」と答え、理由は「将来が不安」が最多だった。」
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