⛲30〉─9─「絶望の超高齢社会 介護業界の生き地獄」が暴く〝不都合な真実〟。~No.184No.185No.186 @ 

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 2017年6月16日 産経WEST「【岡田敏一のエンタメよもやま話】極道ヘルパー、変態ケアマネ、老人はカネ…「絶望の超高齢社会 介護業界の生き地獄」が暴く〝不都合な真実
 介護現場の“不都合な真実”を暴露する衝撃の1冊「絶望の超高齢社会 介護業界の生き地獄」(小学館https://www.shogakukan.co.jp/books/09825282
 さて、今週、ご紹介する“エンターテインメント”は、久々となる話題の新書のご紹介でごさいます。
 内閣府が昨秋に発表した「平成28(2016)年版高齢社会白書」によると、平成27年の10月1日時点の日本の人口は1億2711万人ですが、このうち65歳以上の人は全体の26・7%、人数にして3392万人で、約4人に1人が、年金の支給が開始される“高齢者”です。
 さらに、45年後の平成72年には高齢化率が39・9%に達し、国民の2・5人に1人が65歳以上に。また75歳以上の人口が総人口の26.9%を占め、4人に1人が75歳以上になるとみられています。
 まさに世界に類を見ない“超高齢化社会”を迎えるわけですが、そうした事態を受けて昨今、にわかに注目を浴びているのが介護業界です。
 東京五輪の開催から5年後となる2025(平成37)年には、いわゆる団塊の世代(昭和22年〜24年に生まれた人)が全員75歳以上の後期高齢者となり、介護職は100万人も足りなくなるといわれています。
 ところが、介護の仕事といえば“低賃金で重労働”なのはよく知られた話。そのせいで介護職や介護の現場がいま、想像を絶する大変な状況に置かれているというのです。
 そんな介護現場の“不都合な真実”を暴露した衝撃の1冊が登場し、物議を醸しているのです。「絶望の超高齢社会 介護業界の生き地獄」(著者・中村淳彦氏、小学館新書、760円+税、5月31日発売 https://www.shogakukan.co.jp/books/09825282 )です。今週の本コラムは、いろんな意味で凄過ぎるこの新書の中身についてご紹介いたします。
 ■高齢者デイサービスセンターを運営し痛感…「介護の世界は不倫が…」
 <「高齢者と介護の仕事は、好き。だけど、介護の仕事をしてから、人生がおかしくなりました。負の連鎖がずっと続いています」「…でも、介護がこんな危険な世界とは夢にも思わなかった。今回も含めていろいろな失敗をしています。本当に酷(ひど)い世界です」>
 本書ではまず、こう嘆くバツ2で子持ちのシングルマザー(46歳)の悲惨過ぎる日々から始まります。
 最初の夫は浮気とギャンブルに走り離婚。その後、有料老人ホームで働き、同僚の年下の介護職の男性と職場恋愛で結婚しますが、夫のDVと浮気に耐えきれず、再び離婚します。出産でホームを退職した彼女はこう述懐します。
 <「…介護の世界は不倫がすごくて、男も女も旦那がいようが奥さんがいようが、すぐ肉体関係になってしまうんです…不倫カップルは私が在職中も何十組も見たし、もうムチャクチャですよ」>
 その後、彼女は特養ホーム(非常勤)や訪問介護の事業所で働きますが、劣悪な労働環境と低賃金(手取り月12万円)、そして、揚げ句の果てにその給与も未払いになるといった信じがたい仕打ちを受けます。その模様が本書でリアルに綴(つづ)られます。
 <「介護現場が普通に働ける場所になってほしいんです」>という彼女の訴えが悲痛すぎるのですが、これは序章。本書は、もっと凄まじい介護の現場がこれでもかと暴露しているのです。
 ■流行シニアマンションは「貧困ビジネス」「勝ち組ヤクザ1位“介護福祉サービス業”」
 例えば、2014(平成26)年、東京都北区の高齢者向け賃貸住宅「シニアマンション」で、入居者160人の80%強にあたる130人がベッドに体を固定される拘束状態にあったという騒動を引き合いに出し<入居者の80%が拘束介護>であるとの衝撃的な事実を暴露。
 おまけに、こうした虐待の一種と言っていい拘束介護や身体拘束がなくならない理由について、入居者である高齢者の転倒事故などを防ぐため(何と“動かないようにしてくれ”と要望する家族もいるとのこと)、常態化せざるを得ない辛い現状を説明。
 同時に、こうしたシニアマンションについて<「貧困ビジネスですよ…住居を提供して高齢者を囲って、介護保険料を満額使わせる。不動産業者も介護事業者も商売になる。しかも医療法人だったら診療もできるので、医療も提供し放題。高齢者は金になる木なのです。なので、住居を提供してとにかく囲い込みたいわけですね」>という関係者の声を紹介し、介護の裏に潜む深い闇に迫ります。
 そんな闇のなかでも、最も驚愕(きょうがく)させられるのが「暴力団と元受刑者が跋扈(ばっこ)している」という第6章です。
 この章では<ある雑誌に「勝ち組ヤクザ転職ランキング」という記事があった。何と第1位に“介護福祉サービス業”が挙げられていた…>という衝撃の事実を紹介。
 さらに<「暴力団が介護事業に進出しているというのは本当の話ですよ。今現在、実際にたくさんの組織が、都道府県から認可を受ける指定介護事業所を運営していますから」>という暴力団の動向にも詳しいフリージャーナリストの声などを元に<雇用関係の助成金が手厚くて、不正がしやすい介護は(彼らの)格好のターゲットになっている>と指摘します。
 そして筆者の中村氏は、そのフリージャーナリストが頻繁(ひんぱん)に交流している組織が運営する法人と事業所を取材するのですが、その結果、<税金である医療報酬、介護報酬を不正取得し放題のムチャクチャな運営だ>と判明。
 さらに<介護事業所の不正の表面化は、内部告発がほとんどだが、暴力団の暴力を背景にした人材管理や、内部統制は凄まじいので、内部告発によって不正が明らかになるということはない…現実は不正請求まみれであっても、書類は整備されているので、第三者には不正の実態はわかりようがない>と警告します。恐ろしいですね。
 ■暴力団系事業者に助成金…「高額商品を買わせる“お散歩”」
 また、暴力団事業所が雇用保険が原資となる助成金詐欺に力を入れている現状も暴露。介護系事業者に対する助成金は手厚く、暴力団による詐欺の格好のターゲットになっていたというのです…。
 さらにこんな例も紹介されています。前述のフリージャーナリストの話。
 <デイサービスと居宅型介護支援、訪問介護をやっていた>というヤクザ絡みの施設は<「…資産を持つ一人暮らしの高齢者を狙い撃ちにしていました。“お散歩ですよ”とか言って老人を外に連れ出して、仲間の店に連れて行って高額商品を買わせる。…高齢者から騙(だま)し取ったお金を、仕事に関わった仲間で分配する…」>
 おちおち、介護のサービスを受けている場合ではないですね。
 実は筆者の中村氏は、編集プロダクションや出版社勤務を経たフリーライターでありながら、昨今の出版不況の影響で、2008(平成20)年から7年間、高齢者デイサービスセンターの立ち上げ・運営を経験したのですが<介護業界の異常さに気付いたのは、すぐだった。最初から普通ではなかった>といい<根本的な原因は限度を超える人手不足である>と悟るのです…。
 こうした経験を元に暴露される本書の内容は、あまりにも衝撃的です。筆者の中村氏はこう言い放ちます。<今後、介護施設を利用する高齢者は、豊かな介護みたいな幻想は捨てた方がいい>
 そんな本著は、帯に「2025年、介護崩壊!」「街中が徘徊(はいかい)老人で溢(あふ)れる」「『極道ヘルパー』は実在していた!」「老人はカネのなる木だ」といった過激なコピーが並びますが、実際に本書を手にとって読めば、誇張ゼロであることが分かります。
 ちなみに介護業界の乱れ過ぎた下半身事情に触れた第5章「好色介護職たちが集う狂乱の館」の内容については、とても本コラムではご紹介できません。
 本書を読めば、超高齢化社会へのさらなる対応策や介護業界の現状の抜本改善は、文字通り待ったなしの状況であることが分かります。安倍政権の手腕に期待したいところです。   (岡田敏一)
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 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。
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 ▼「絶望の超高齢社会 介護業界の生き地獄」(小学館)紹介のページ(外部サイト https://www.shogakukan.co.jp/books/09825282 )」




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