¥13〉─2─日本企業の敗因は新しいモノが理解できず排除したオッサンの壁であった。~No.50 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2022年5月19日号 週刊新潮「オッサン栄えて国ほろぶ
 評者 林操
 女の新聞記者が男の政治家と切り結ぶ構図、最近なら東京新聞の諸月衣塑子の『新聞記者』やその映画版・ドラマ版が頭に浮かぶし、ちょと昔に遡るなら大林宣彦が映画化した丸谷才一の『女ざかり』あたりが思い出されるわけですが、この『オッサンの壁』もまた、全国紙初の女子政治部長だった毎日新聞の佐藤千矢子がオッサンだらけの政治ギョーカイで仕事し続けてきての一代記です。
 フェミニズムともリベラリズムとも距離を置く現役論説委員の著書ゆえ、筆致は暴露とも糾弾とも無縁。それでも、随所で語られる自身や同性の同僚・知人に降り掛かった政治家や役人、同業者というオッサン連による無知に無理解セクハラパワハラ男の嫉妬その他いろいろに触れるだけで、この国のありさまに正しく絶望できる。オッサンであることは、男尊女卑と年功序列によって二段重ねに下駄を履かせてもらえる特権。今なおそこにしがみつくオッサンの醜悪からは、既存の政治、そして政治ジャーナリズムの最優先課題が既得権益の死守でしかないことが赤裸々に透ける。
 『バカの壁』髣髴(ほうふつ)のタイトルには引っかかるものの、中身を読んでみると、著者の周りに固くて高いオッサンの壁が実在してきたことが実感されて気にならなくなるし、さらにはこの題名、そもそも『バカの壁』を踏まえてのものだったのかもとさえ思えてくる。『オッサンの壁=バカの壁』という等式を煮詰めると『オッサン=バカ』ですから。」
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 2022年5月12日21:30 MicrosoftNews 東洋経済オンライン「映画『マトリックス』で見えた日本企業の敗因 新しいものを排除しようとする限り成長はない
 藤野 英人
 投資やビジネスにおいて、「先を読む力」は重要なスキルの1つです。先を読むことができれば、未来に先回りして手が打てるため、かなりの成功が約束され、しなくてもよい失敗を避けることもできるはずです。では、どうすれば先を読むことができるのでしょうか。
 © (C)東洋経済オンライン 日本の企業が競争力を弱めている背景にあるものを探ります(写真:YakobchukOlena/PIXTA
 運用資産残高1兆円を超える(※)レオス・キャピタルワークスを率い、カリスマファンドマネージャーと言われる藤野英人氏は、「先を読むとは、トランプの神経衰弱のようなもの」と言います。いったいどういうことか、藤野氏が新刊『プロ投資家の先の先を読む思考法』をもとに3回にわたって解説します。※2022年4月時点
 成長する企業とはどんな企業かと尋ねられたら、私は「Why(なぜ)を考え続ける会社」だと答えます。自分たちが手掛けているビジネスについて、なぜやるのか、なぜ今なのか、なぜ私たちがやるのかといったWhyを無限に問いかけ続けている会社が伸びるのです。
 例えばGAFAM(GoogleAppleFacebookAmazonMicrosoft)と呼ばれるメガテック企業には哲学者がいて、Amazonなら「買うとはどういうことだろうか?」、Facebook(現・Meta)なら「コミュニケーションとはなにか?」といったことを考え続けている人がいるといいます。
 そのようなWhyを問う議論を重ね、仮説に基づいたトライアンドエラーを重ねてきた結果が、今のGAFAMをつくってきたのではないかと思います。
 GAFAMにあって日本の企業にないもの
 ところが、日本の会社ではWhyを聞くことはあまり歓迎されません。例えば資産運用会社で、「そもそもなぜ私たちは資産運用をするのでしょうか」と尋ねる社員がいたら、「いいから仕事をしろ」と言われるでしょう。あるいは「あいつは空気が読めない」「面倒くさいやつだ」などと言われてしまうのではないでしょうか。
 哲学的な問いやそもそも論のような話をすることの重要性は、日本ではほとんど理解されていないと言っていいでしょう。
 映画『マトリックス』は、マトリックスというコンピュータが世界の調和を考えて支配する「完璧な世界」を前提として描いています。この映画が面白いのは、マトリックスという完全なAIがわざとシステムのバグを発生させることによって、つねにマトリックスを不安定な状態にし、その「不安定を安定化させる努力」によって結果的にマトリックスの完全性を担保しているというところだと思います。
 私が『マトリックス』を見ていて思うのは、つねにシステムを疑い、システムに対して挑戦をすることによって、システムをリフレッシュし続けていくことがとても重要なのだということです。
 これは別の言葉でいえば、「サスティナブル(持続可能)である」ということだと思います。近年はSDGs(持続可能な開発目標)が重視され、企業の成長もサスティナブルであるべきだと考えられるようになっていますが、サスティナブルというのは「システムを否定し続け、そのシステムをアップデートし続ける」ことによってこそ、可能になるはずなのです。
 そしてWhyを考え続けることは、現状を疑い、ときには否定し、不完全さを受け入れてアップデートし続けることだともいえます。
 ところが、日本社会には「自分たちが間違えていることなどあってはならない」「自分たちは完全である」という前提に立ち、その完全性を担保するために新しいものを排除しようとするところがあります。
 この結果、システム全体が時代遅れなものになってしまったというのが、日本が世界における競争力を失っていった大きな背景ではないかと思います。言い換えれば、日本はWhyを考えることをせず、「すでにある完璧なものを守る」ことに腐心し、オールドファッションなシステムや社会体制に対して疑いを持つこと、アップデートし続けることに失敗してしまったのです。
 私が高く評価している企業の1つが、ソフトウェアテスト事業を手掛けるSHIFTというIT企業です。創業経営者の丹下大さんに会って衝撃を受けたのです。私は「この人はヤバい」と思いました。日本の40代の経営者の中でナンバーワンに近い能力を持っていると確信しました。
 IT業界には、広告業界と並ぶ根強い「中抜き構造」があることはよく知られています。元請の会社に下請の会社がたくさん連なっており、場合によっては6次下請まで存在していたりするのです。なかには、業務を下請けにパスするだけで利益を持っていく会社もあります。丹下さんは、その業界構造に疑問を抱き、中抜きをやめるべきだと考えています。
 日本の競争力を下げている給料の安さ
 彼は、日本の問題は生産性が低く、そのために給料が低いことだといいます。給料が低ければ自分がやっている仕事に対する意義を感じにくく、結果的に仕事に魅力を感じられず、会社に対するロイヤリティも低い。それが、日本の競争力を下げている――。
 私も、丹下さんの言う通りだと思います。この状況を変えるには、生産性を上げて給料を上げなければなりません。そのためにDX(デジタル・トランスフォーメーション)が必要だというのが彼の主張です。
 SHIFTがDX化を推し進めて生産性向上に寄与すれば、IT業界で給料を引き上げられるだけでなく、当然、DX化を発注したお客さまの会社も生産性が上がって給料が上がるはずです。
 そのような価値を提供することによって、根っこから日本の競争力を高めるため、自分は存在しているのだと丹下さんは言います。「そのためにSHIFTは大きくならなければならない」と。「だから従業員の給料もどんどん上げていきたい、成長もしていきたい」と言い、実際に2014年の上場以来、売上高を毎年5〜6割も伸ばし続けているのです。
 DX化で成長するというIT企業は山ほどあります。しかし「中抜き構造を変えたい」とは普通は言いません。それは根本的に業界の秩序を乱すことだからです。
 丹下さんがやろうとしているのは業界の構造改革だともいえます。やり遂げられれば、働いている人が高い給料をもらうことができ、お客さまは安く発注できるようになり、SHIFTは収益力の高い会社になるでしょう。
 丹下さんの話を聞いていてわかるのは、彼がWhyを考え続け、自分が何をやるべきなのかを明確にしていることです。
 経営者に知性とパワフルな実行力があり、高い目線を持ってばく進しながら成長し続けている会社はなかなかないと思います。業界もこれから5年、10年とまだまだ追い風でしょう。
 重要なのは、成功しそうなのはどんな人なのか、そのパターンを知り、そのような人に賭けることができるかどうかなのだと思います。」
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