🥓35〉─2─電車ベビーカー論争に終止符? ベビーカーは“邪魔者”だった過去。~No.612 

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 2022年10月31日 MicrosoftNews Merkmal「電車ベビーカー論争に終止符? ツイッター「子連れはハズレ」発言にみる、現代の病理とその抜本的対策
山本肇(乗り物ライター)
 マナー論議では解決しない
 子連れで新幹線に乗ったら、隣の席の人に「はぁーーー最悪」「ハズレだ」と聞こえるように言われた――。そんな体験談が先日、ツイッター上で話題になった。少子化の時代にもかかわらず、子連れで公共交通機関を利用することに冷たい視線を向けるケースが絶えない。現在、その体験談はツイッターまとめサイト「トゥギャッター」に「娘を抱えて新幹線に乗ったら隣の席の人が「ハズレだ」と言ってヘッドホンを付けたという出来事について「気持ちはわからんでもないが…」」というタイトルでまとめられている。
 【画像】「えっ…!」 これが鉄道会社の「年収」です(7枚)
 公共交通機関を子連れで利用することの辛さは、子どもを持つ親でなければわからないし、これまでも何度も提起されている問題だ。過去の新聞記事を検索してみたところ、お盆や年末が近くなると必ずと言っていいほど、読者からの投稿や記者の提言などの形で取り上げられている。つまり、問題視する人は多いものの、
 「抜本的な解決方法がない」
 とも見てとれる。
 単に
・マナー
・互いの配慮
 の問題として捉えれば、終わりの見えない“床屋談義”になるので、今回はまず、時間をかけて解決が図られた、電車内のベビーカー利用を例に取り上げてみよう。
 ベビーカーは“邪魔者”だった過去
 © Merkmal 提供 新幹線(画像:写真AC)
 例えば、都営大江戸線はベビーカーに子どもを乗せたままの乗車を想定した「子育て応援スペース」を一部車両に設けているが、つい10年前までは
 「子どもはおんぶして、ベビーカーは畳むべきだ」
 と主張する声が大半だった。実に、子育て応援スペース的な空間の確保が「常識」として定着するまで、半世紀近くもの時間が費やされたのである。
 かつて多くの鉄道会社は、ベビーカーを邪魔者扱いしていた。1970年代には国鉄、私鉄、地下鉄各社がベビーカーは
 「危険でほかの客の迷惑になる」
 として、「乗り入れ禁止」のポスターを掲示。その是非をめぐって論争になった。
 論争は一時注目されたものの決着はつかず、多くの鉄道会社は駅や電車内でベビーカーの使用を禁止し続けた。1998(平成10)年に千葉県の市民団体が行った調査によると、当時の千葉県内の鉄道会社(JR、京成、新京成東武営団地下鉄東葉高速、北総開発)のうち、ベビーカーの使用を認めていたのは、
 「JRと北総開発」
 だけだった。各社の言い分は
・車輪がしっかり固定されず、電車内で動きだす恐れがあるなどベビーカーの安全性に問題がある
・客から迷惑だと苦情を受けている
 というものであった。
 鉄道会社が打ち出した「自己責任論」
 © Merkmal 提供 ベビーカーと鉄道(画像:写真AC)
 この頃から、ベビーカーを畳まなくてはならないといった移動の困難は改めて問題視されるようになった。そして、1998年11月には関西の私鉄各社が、1999年1月には首都圏の鉄道会社各社が、ベビーカーに子どもを乗せたままでも電車の利用が可能になるよう営業規則を改めた。
 ところが、当時の各社が強調したのは
 「自己責任」
 だった。
 あくまで、ベビーカーに子どもを乗せたまま利用することを認めただけで、万が一の場合は親や保護者に責任があるという姿勢だった。さらに当時は、ベビーカーメーカーも
 「電車内の振動や衝撃に耐える設計はしていない」
 と訴えており、取扱説明書に禁止事項として盛り込むことを検討するメーカーもあった。そのため、ベビーカー使用に対する批判的な声は収まらなかった。
 このような現状が長く続いたため、東京都と首都圏の鉄道会社は2012(平成24)年、電車内でのベビーカー使用に理解を求めるポスターを製作し、駅構内などに掲示した。このポスターは
 「ベビーカーでの電車の乗り降りには注意が必要です。周りの方のお心づかいをお願いします」
 「車内ではストッパーをかけて」
 と呼びかけるものだったが、東京都と鉄道会社には苦情が殺到。その内容は
 「ベビーカーが通路をふさぐ」
 「ベビーカーをぶつけられた」
 「ベビーカーを畳もうというポスターもつくるべきだ」
 というものだった。
 やまない批判のなか、交通機関バリアフリー化を推進していた国土交通省が動きを見せた。同省は2014年、保護者が子どもと荷物を抱えながら、ベビーカーを畳んで乗るのは危険と判断し、電車やバスの車内ではベビーカーを畳まなくてもよいとするルールを提示した。そして、優先スペースに掲示するマークも決めた。これによって、ようやく利用が批判されない環境が整った。
 「婦人子ども専用車」を思い出せ
 © Merkmal 提供 サフィール踊り子(画像:写真AC)
 ベビーカーでもこれほどの時間がかかったのだ。冒頭の話題に戻るが、新幹線など長距離を移動する公共交通機関で、子連れに対する厳しい視線が向けられないようにするには、膨大な時間とルールの明確化などが必須である。
 ただ、このような問題に対処する取り組みは既に1990年代から始まっている。JR東日本は1990(平成2)年、当時新規に導入されたスーパービュー踊り子に「子供室(キッズルーム)」を設置。1994年のお盆期間中には、東北・上越新幹線の一部列車に「親子専用車両」を設定し、運行している。また、JR東海では2010年以降「お子さま連れ専用車両」を運行している。
 取り組みはさまざまで、もちろん評価できるが、
・一部の列車
・限られた季節
 の運行でしかない。よって通常期の子連れの移動は、肩身の狭い思いを強いられたままなのだ。
 問題解決の手段のひとつとしてあげられるのが個室だ。1985(昭和60)年に導入された100系新幹線では個室付き車両が導入され、子連れの利用が多かった。しかし、2000年に廃止された。一方、2020年から運行を開始した「サフィール踊り子」には個室付き車両が導入されており、子連れ旅行に歓迎されているようだ。となると、新幹線でも個室を復活させることはひとつの選択肢かもしれない。
 ただ、個室も数は限られるため、利用できる乗客は限られる。現時点での最適解は、通常運行している車両に、子連れ専用か、それに類するものの設定だろう。現在、多くの鉄道会社は女性専用車両を導入している。歴史を振り返ると、国鉄でも在来線に
 「婦人子ども専用車」
 を導入していたことがある。これは、交通事情が悪化していた戦後の混乱期、女性や子どもを安全に乗車させるために取られた措置だった。
 ゆえに、上記の提案は非現実的ではない。ほかにも、すべての列車にキッズスペースを設けるなど、長時間の移動で子どもが飽きてぐずらないようにするための方法は、いくらでもあるはずである。少子化への懸念が広がっているからこそ、子連れにはより優しい環境を考えていきたいものだ。」
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