🥓20〉─4・A─衰退する日本から海外に出稼ぎに行く性風俗の女性達。~No.90  

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 貧しくなる現代日本は、貧しい少女達を「からゆきさん」として海外に送り出した時代へと逆戻りし始めた。
   ・   ・   ・   
 2023年1月6日17:00 YAHOO!JAPANニュース AERA dot.「性風俗の女性が海外に“出稼ぎ”のワケ 数こなすしかない日本に違和感〈週刊朝日
 写真はイメージです (GettyImages)
 長引く不況で、「日本で働くより、海外のほうが稼げる」と海を渡る性風俗業の女性たちがいる。さまざまなリスクを背負いながら、それでも彼女たちを突き動かすものはいったい何なのか。当事者の声をもとにひもとく。
 【写真】まるで屋敷!?ドイツの風俗「FKK」がこちら
  *  *  * 
 「本気で行こうと思っている人は、とっくに海外に行って仕事を始めていると思います」
 海外で性風俗の仕事を始めて、6年になるというマリエさん(仮名・41歳)。特定の店に所属するのではなく、個人で顧客と直接やり取りして仕事を受けている。キャリアのスタートは、25歳で風俗関連企業で事務職として勤めたとき。その後、都内の風俗店で“接客”を始め、性風俗の世界を知った。
 一口に性風俗と言えど、その内容は多岐にわたる。マリエさんが選んだのは、いわゆる性交を伴わないスタイルで、「服を脱がなくても良い風俗があるんだ」ということも、接客の世界に足を踏み入れる後押しになった。最初の勤務で得た報酬は、数時間で2万5千円。ストレスもほとんど感じることなく、自然と「他の仕事より稼げそうだし、やってみようかな」という気持ちになったという。
 その後、10年近くその店で勤めた後、接客経験を元に、30代半ばで独立した。個人がSNSで発信するのが当たり前の時代で、オンラインを通じて仕事を獲得する動きもすでに浸透していた。長引く不況の中で、「日本人を相手に仕事をするより、海外の顧客(特に富裕層)を相手にしたほうが、格段に稼げる」というのは、性風俗業に身を置くマリエさんが肌身で感じてきたことだった。だから店に所属しているころから、主に海外の顧客の獲得を目的に、個人のホームページやSNSのアカウントを作り、積極的に発信した。
 主なターゲットは、日本に出張などで訪れる海外のリッチなビジネスマン。ホームページなどを通じ、マリエさんに興味を持った男性から、直接問い合わせが入る。日程や場所、金額や内容などの条件が合えば、男性の宿泊先を訪ねて仕事をするという流れだ。リピート客も多く、マリエさんは着実に顧客数を伸ばしていった。
 海外で仕事を始める転機になったのが、6年前に訪れた欧州での同業者らとの出会いだ。SNSを通じて知り合った女性たちと実際に会って話す機会があり、大きな刺激を受けたという。
 「特定の店に所属し、その店につけてもらった客の数をこなしていくスタイルが一般的な日本の風俗ビジネスと比べ、私が出会った海外の同業者は、“自分のビジネスを自分でやるのが当たり前”というスタイルで、プロ意識が大きく違った。金額も内容も自分で決めるし、顧客を増やすための自分のブランディングマーケティングについても惜しまず努力する。全ての責任を負う代わりに、全部自分で決められる。そんな働き方をしている彼女たちは、日本の風俗嬢とは桁違いに稼いでいました」(マリエさん)
■ツアー一回で5万ドルが目標
 また風俗=性交ではなく、「客と一緒に過ごす時間そのものが報酬の対象になる」という考え方など、さまざまな世界が広がる海外の性風俗のスタイルを目の当たりにした。「自分の中で、エロティックという概念が大きく広がった感覚があった」ともいう。
 以前から海外に対する憧れが強かったこともあり、自分が海外に行って現地で仕事をすることへの抵抗感はほとんどなかった。海外での仕事は、国ごとにいくつかの都市を訪れるツアーを組むのが主だという。事前にSNSで、訪問予定の都市と日程の目安について告知し、客からの問い合わせに個別に対応する。料金は米ドルで1時間600ドル(現在の日本円で約8万円)~に設定しているが、あくまで目安。短時間で良い客もいれば、数週間~1カ月単位と、長い期間を共にすることを希望する客もいる。中には「毎月これぐらい払うから、関係性を維持してくれ」という客もいる。そうした場合、客から額を提示されることになるが、提示額が料金設定を下回ることはないため、応じることが多い。
 支払いは当日前払いが基本だが、海外の場合には、預かり金として総額の10~50%程度を先に支払ってもらうなどしている。新型コロナウイルスが流行する前までは、各国を転々として稼いでいたが、現在の主戦場は「手堅く稼げる」という欧米とアジアの3カ国。一度のツアーの目標額は5万ドル(約670万円)で、今まで一番高額だったのは2週間で約270万円を支払った客だった。海外から日本に来る外国人も戻りつつある今、12月には1週間、客の国内旅行に付き合う仕事で1万ドル(約134万円)の報酬を得る予定だという。現在の固定客は40人ほどだ。
 「海外で現地の客を相手に仕事をしている風俗業の日本人女性はまだまだ少なく、人気が高いのにレアで、いわばブルーオーシャン。効率よく稼げるし、今の仕事を続ける上では、これ以上ない働き方で気に入っています」(同)
 今、「日本より海外のほうが稼げる」と、海を越えて“出稼ぎ”をする性風俗業の女性が出てきている。海外で働くには、就労ビザが必要となるが、性風俗業で出稼ぎをする場合、現地で働くことを伏せた上で観光ビザなどで入国し、短期間働いて帰国するか、別の国に移動する例が少なくない。中には、表向きには別の仕事で就労ビザを得て入国し、入国後に副業的に性風俗の仕事をする人もいる。
 背景には、バブル崩壊以降、“失われた30年”と呼ばれる景気停滞が尾を引く日本の現状がある。「海外のほうが稼げる」と海を渡る例は、性風俗業に限った話ではないが、出稼ぎを選んだ性風俗業の女性たちに話を聞くと、「稼ぐためには“数”をこなすしかない日本の風俗業に限界を感じた」「店に決められた枠内で、マニュアルどおりに仕事をすることを求められる日本の風俗業の働き方に違和感を感じた」といった声が多く聞かれる。SNSなどで、世界中の個人同士が簡単につながることができる今、あえて以前から続く日本の風俗業界のシステムに即した働き方をしなくても良いと考えているようだ。実際にSNSなどオンライン上には、海外で性風俗の仕事をしている日本人女性の姿がちらほら見られる。
 自身も風俗業界で働いた経験を持ち、性風俗業で働く当事者らを支援する団体「SWASH」で代表を務める要友紀子さんは言う。
■オンライン面接で海外でも手軽
 「性風俗業の日本人女性が海外に出稼ぎに行く動きは、10年ほど前から少しずつ見られています。私たちの団体も、これまでは海外から出稼ぎに来る女性たちの相談が多かったのが、最近は日本から出稼ぎに行った方が現地でトラブルに巻き込まれるなどして相談が来るケースが出てきています。彼女たちは日本で稼げなくて生活に困っているというよりは、本気で稼ぎに行っている人が多いように感じる。だから精神的にも相当タフで、行動力のある人が多い印象です」
 出稼ぎに行くきっかけはさまざまだが、知り合いで出稼ぎ経験のある人がいたり、現地の知人から誘いを受けたりするなど、何らかのつながりがあって海外に行くケースが多いようだ。
 「昨今は風俗業界でもオンライン面接が多くなり、海外の店で働く場合にも、リモートで手軽に面接が受けられます。SNSのダイレクトメッセージなどで誘われる例も見られます。風俗の場合、現地の言葉がそこまで話せなくても、仕事を得ることができます」(要さん)
 現地にいる知人からの誘いがきっかけで、英語はほとんど話せないがアメリカに飛んだのが、サンディエゴ在住のアイコさん(仮名・35歳)。アメリカではネバダ州を除く全土で、売春行為が違法とされている。ゆえに風俗営業を行う店は違法営業であり、表向きには別の業態を名乗るなどしている。アイコさんが5年間勤務した店は、表向きには“マッサージ店”をうたう、中国人女性がオーナーの風俗店だった。
 地方出身のアイコさんは、高校卒業とともに上京。「特にやりたいことが見つからなかった」というフリーター時代を経て、25歳でキャバクラやスナックでの水商売をスタートした。働いて稼いだら、しばらく遊んで暮らし、お金が底をつきそうになったらまた働く。漠然と「いつかアメリカの大学に行きたい」という夢を持っていたが、どう動いたら実現できるのかわからなかった。
 その後、友人の紹介で出会ったアメリカ国籍の男性と結婚し、アメリカの永住権を手にする。男性とは価値観の相違から、数年で離婚することになったが、「せっかく永住権もあるし、アメリカのほうが稼げそうだし、行ってみようかな」と離婚後に渡米を決めた。勤務していたスナックの同僚がアメリカで風俗の仕事をした経験があり、「すごく稼げるよ」と話していたことも後押しになった。
 働く先のあてがないままの渡米だったが、現地の知人の紹介もあり、すぐに職を得ることができた。現地の風俗で働く日本人女性が数少ないことから、オーナーからも歓迎されたという。アイコさんが勤めた店にいる女性は、中国人、韓国人、ベトナム人が多かった。表向きにはマッサージ店を名乗る店であるため、勤務するには学校に通って免許を取る必要があり、最初の2年は自費で通学しながら、主に週末に店で働いた。
 風俗で働く経験は初めてだったが、「水商売の経験があったからか、そこまで高いハードルを感じなかった」(アイコさん)。アメリカの映画などで描かれる“夜の世界”に対する憧れもあり、「自分も経験してみたい」という好奇心のほうが強かったという。
■ガサ入れの危険と隣り合わせ
 アイコさんの働き方は、こんな具合だ。まず店に所属はするが、サービスの内容や金額は個人の裁量で決める。アイコさんが勤務した店は、客が店に1時間60ドル(約8千円)を支払い、接客する女性にはサービス代として客からチップが支払われる。
 そのチップが、アイコさんたち店で働く女性の収入となる。店からは「なるべく頑張ってリピーターを作ってね」とは言われるものの、ノルマなどを課せられるわけではない。客は現地の男性がほとんどだが、中には観光客もいる。マッサージ店だと思ってやってくる客には、「こんなサービスができます」と個別に交渉することになる。最初はほとんど英語が話せなかったアイコさんだが、働きながら徐々に話せるようになった。
 勤務時に稼いだ金額は、1日平均千ドル(約13万円)。週4日勤務が平均だったというアイコさんは、月1万ドル(約130万円)前後、年間で12万ドル(約1600万円)が平均的な収入だったという。
 「収入から家賃や生活費などを除いて手元に残るお金も、日本よりアメリカのほうが多かった。勤務日数を増やしたら、もっと稼げたと思いますが、いわば違法営業を行う店で働く“綱渡り状態”が、思った以上に精神的にきつくて、私は週4勤務が精いっぱいでした」(同)
 違法営業を行う店で働く“綱渡り状態”──。いわく、常に警察のガサ入れなどに気を配りながら接客せねばならない状態だ。ガサ入れ時には、オーナーが部屋の外から合図を叫ぶが、警察が部屋に入ったときに何事もなかった状態にしておかなければ、間一髪の差で現行犯逮捕されることもありうる。警察が突然、抜き打ちでチェックに訪れることもしばしばで、常に外の様子に神経を研ぎ澄ませながらの接客には、想像以上に疲労感が募った。
 「だけど仕事そのものは嫌いじゃなかったし、自分で試行錯誤しながら接客やサービスを頑張ると、成果が目に見えて返ってくる仕事にやりがいも感じていました。仕事を広げるために、豊胸手術もしたし、トーク力も磨いた。努力したら目に見えて返ってくるのが楽しかった」(同)
 店で働く女性同士は、ライバルではあるが、ガサ入れからみんなで身を守ったりと、いざというときの連帯感も強く、ファミリーという感じすらあった。「何の仕事をしてるの?」という話になったときに答えられないから、現地の日本人コミュニティーとは距離を置く生活を徹底していたが、店の女性たちと食事したり遊んだり、「それなりに現地の生活も楽しんでいました」(同)という。(後編に続く)
 (フリーランス記者・松岡かすみ)
 ※週刊朝日  2023年1月6-13日合併号」
   ・   ・   ・