🚷36〉─3─手遅れの「子ども予算の倍増」でも日本の人口減少問題は大きく変わらないワケ。~No.157 

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 今時の大人には、人口激減に対する危機感は発言に比べて乏しい。
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 2023年1月4日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「「子ども予算の倍増」でも日本の人口減少問題は大きく変わらないワケ 最大の少子化対策は将来に対する希望だ
 河合 雅司
 出生数が急減している人口減少日本で各業種・職種や公共サービスに何が起こるのか?
 累計100万部突破の『未来の年表』シリーズ最新作『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
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 © 現代ビジネス
 2022年の年間出生数は77万人程度に
 日本人の出生数はコロナ禍前時点で急減傾向が見られていたが、感染拡大に伴う政府の過剰な行動制限要請によって下落に拍車がかかった。
 2022年の年間出生数は77万人程度にとどまる見通しだ。出生数の「先行指標」である婚姻件数も低迷が続いており、2023年の出生数は一段と少なくなりそうである。
 こうした状況に、政府の全世代型社会保障構築会議は報告書で「国の存続そのものに関わる問題」と危機感を示し、「流れを変える」として少子化対策を前面に打ち出した。
 ところが、肝心の財源は完全に腰砕けである。「将来的にこども予算の倍増を目指していく上での当面の道筋を示していくことが必要である」と何とも歯切れが悪い。
 岸田文雄首相は「財源がないからしないということで済む課題ではない」と意気込むが、数兆円規模の恒久財源を捻出するのは簡単なことではない。岸田首相が防衛費の大幅増額の財源確保策を優先させたこともあって、子育て世代などには「子ども政策はいつも後回しだ」と失望感が広がっている。
 優先順位の低さだけでなく、政府内で検討されている案も本気度が感じられない。例えば、消費税増税だ。防衛費増額のための増税案だけでも物価高に苦しむ国民の反発が強くハードルは高そうだが、問題はむしろ若い世代も負担増となる点だ。子育て支援を強化しても、そのために負担増となるのでは意味が分からない。そもそも、経済的負担の大きさが出生数減少の主要因の1つとなっている。
 全世代型社会保障制度の限界
 全世代型社会保障制度も限界がある。高齢者を“弱者”扱いとせず、年齢にかかわらず所得に応じて支え合う仕組みへと改め、これによって浮いた予算を当座の子供向け政策の財源にしようというのである。
 これを受けて、厚生労働省は現行原則42万円となっている出産育児一時金を来年度から50万円に引き上げる財源の一部を75歳以上の中高所得者医療保険料を引き上げることで賄うことを決めた。
 現行の社会保障制度は負担が現役世代に偏っており、世代間の不公平さの是正は喫緊の課題だ。「全世代型」への転換は合理的な判断ではあるのだが、高齢社会の実情を分析すると首をかしげざるを得ない。
 今後増加する世代の中心は80代以上だからである。2015年に494万人だった85歳以上人口は、2040年には1024万人へと倍増する。85歳にもなれば何らかの医療や介護サービスを必要とする人が大半だ。高齢者の負担をわずかばかり増やしてみたところで、それを上回る勢いで社会保障サービスの利用量が増えたのでは、政府が想定するほどの財源は捻出できない。
 副作用も大きい。85歳以上にもなると「老後の蓄え」が底をつく人も出てくるだろう。厚労省の「2021年国民生活基礎調査」によれば、女性の「単独世帯」で最も多い年代は85歳以上(24.3%)である。社会保障費の抑制に成功しても、生活が困窮して他の政策経費が膨らんだのでは元も子もない。
 高齢者向けサービスを削った分、家族や親族の負担が増えることも問題だ。総務省の「2021年社会生活基本調査」によれば、50代の介護者は183万6000人だが、この中には介護離職に追い込まれた人も少なくないだろう。
 キャリアが途切れると、介護が終わって再就職しようと思っても困難だ。高齢者向けの社会保障サービスの抑制が、「近い将来の高齢者」の老後生活を厳しくしかねないのである。
 こうなると、老後の蓄えが少ない「近い将来の高齢者」が増え、それがさらに次の世代の社会保険料負担を大きくするという「マイナスの循環」につながっていく。
 そうでなくとも、祖父母のケアに苦労する親の姿を見て、自分の将来の姿を想像し結婚や妊娠・出産を思いとどまる若者が少なからずいる。全世代型社会保障もやり過ぎると、むしろ将来的な結婚難や出生数減を招きかねない。
 若者たちが希望を持てない国
 「子ども予算の倍増」という方針を否定するつもりはないが、まずはどんな政策を講じるつもりなのかを明らかにすることが求められる。どんな政策を積み上げると、予算が倍増することとなるのか。この点をあいまいにし、“額ありき”で話を進めたのでは効果の乏しい政策が紛れ込みかねない。
 政策を積み上げるには出生数の減少を招いている要因を分析することが不可欠だ。仕事との両立の負担、低収入、男女の出会いの機会が少ないなど要因は複雑で多岐にわたるが、根源的な問題は多くの人が日本の将来に対する希望を持てなくなっていることにある。
 「人生100年」と言われるほど寿命が延びたが、老後生活への不安は広がっている。少子化対策というと、子育て期間中の課題の解消ばかりに目が向くが、人というのは将来に展望を見出せなければ子どもを持とうとしない。
 子育て後を含めて希望が持てるようにしないかぎりは、出生数の減少の流れを変えることはできないのである。いまや若い世代にとって「未来」という言葉はネガティブなワードに転じている。
 そうでなくとも少子高齢化に伴う人口減少で、日本経済は成長が阻害されているのに、人々の将来不安が募っていけば、日本社会は実人口が減る以上に縮小へと向かう。
 市場の縮小ペースが速まれば一層の投資不足を招き、潜在成長力を弱めて生産性を低下させていく。このまま人々の将来不安が払しょくされなければ日本経済はどんどんとマイナスのループへ陥っていくのだ。
 これまでも積極的に投資をしないので企業には内部留保が積み上がり、人々の賃金はほとんど上昇することはなかった。それはデフレを長引かせる要因となってきたが、同時に結婚や妊娠出産を阻害する背景の1つでもあったといってよい。
 出生数減少のスピードを少しでも緩めようとするならば、子ども予算の倍増もよいが、若い世代が希望を持てる国を取り戻すことがどうしても必要なのである。
 そのためには人口が減っても経済成長できるよう社会や企業の仕組みを改めることが重要となる(その具体策については、私の最新刊『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』に詳しいので同書をご参照ください)。
 仮に出生数が回復に転じたとしても、生まれた子どもが社会の担い手となるには20年ほどかかる。いずれにしても、この間の日本は人口減少を前提として何とか成長しなければならないのである。
 ところが、現在の政府や国会ではこうした議論は全くと言っていいほどなされていないのが現実だ。今回の「子ども予算の倍増」も、残念ながら日本人が希望を取り戻す政策とセットとはなっていない。
 この点を改めない限り、無理して財源をかき集めて政策を講じても成果は期待できない。そうした間も、出生数はどんどん減り続けるだろう。日本に残された時間はあまり多くはない。
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