🚷11〉─5─子供ものいる女性のほうが幸福度が低く、多く産むほど不幸になる。~No.62 

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 2023年11月15日 MicrosoftStartニュース プレジデントオンライン「「子どものいる女性のほうが幸福度が低く、多く産むほど不幸」日本で子どもが増えるはずがない当たり前の理由
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 日本の少子化はますます加速している。なぜなのか。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「経済学の研究で、子どものいる女性のほうが、そうでない女性より生活満足度が低く、子どもの数が増えるほど満足度は下がることがわかっている。これでは子どもが増えるはずがない」という――。
 ※本稿は、佐藤一磨『残酷すぎる幸せとお金の経済学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
 子どもは本当に幸せの象徴?
 みなさんは『うちの3姉妹』というアニメをご存じでしょうか。松本ぷりっつ先生のブログで発表されたマンガが原作で、松本先生と子どもたちとの関係をおもしろおかしく描いた作品です。
 この作品では個性的な3姉妹が織りなすさまざまな問題や成長を母親の視点から描いています。これを見ると、「子育てって大変だな」と感じる半面、「でも、子どもっていいよね」とも思ってしまいます。
 この作品以外にも子育てを描いた作品は数多くありますが、いずれも「子育ては正直大変だけど、それ以上に得るものがあって、幸せ」というメッセージを読み取ることができます。このように、子どもを持つことが幸せにつながるという考えは一般的であり、多くの人が同意するものではないかと思います。
 しかし、これは本当なのでしょうか。本当に、子どもを持つことが幸せにつながるのでしょうか。
 前述のように、子育てには大変な面と子どもを持つことの喜びといった二つの側面があります。多くの人が子育てのプラスの面が大きいと考えているようですが、もしそうではない場合、子どもを持つことが親の幸福度を低下させている可能性もあります。
 この実態を本稿ではデータを用いて、定量的に明らかにしていきたいと思います。
 子どものいる女性のほうが生活満足度が低い
 子どもを持つことは、親、とくに子育ての主体となる女性の幸せにどのような影響を及ぼすのでしょうか。
 この問いは、これまで日本を含めたさまざまな国で検証されてきました。そして、それらの研究結果を見ると、ショッキングな現実が見えてきます。
 図表1は、日本の既婚女性の子どもの有無と幸せの関係を示しています。分析対象は約2万2000人の既婚女性であり、1993~2017年までが分析期間となっています。なお、ここでは幸せの指標として生活満足度を用いています。
 図表1から読み取れることはシンプルです。それは、「日本では、子どものいる女性のほうが生活全般の満足度が低くなる」ということです。
 図表1の分析結果は、統計的な手法を用いて年齢、学歴、世帯所得などのさまざまな個人属性の影響をコントロールしても変わりません。働く妻や専業主婦に分析対象を分けた場合でも、子どものいる女性の満足度のほうが低くなっていました。
 子どもの数が増えるほど、女性の生活満足度は下がる
 次の図表2では、子どもの数と既婚女性の生活満足度の関係を見ています。
 この図から、「子どもの数が増えるほど、女性の満足度が低下する」という傾向が読み取れます。「二人は欲しい」「できれば三人目も欲しい」と望む女性がいる中、実際に出産してみると生活全般の満足度が下がってしまう。これが日本の女性が直面する厳しい現実です。
 ほとんどの親にとって子どもはかわいく、愛(いと)おしい存在です。しかし、子どもの数が増えるにしたがって、生活全般の満足度が低下してしまう。このような厳しい現実が「もう一人」を生むことをためらわせ、出生数の減少につながっている可能性があります。
 続く図表3は、子どもの年齢別に見た既婚女性の生活満足度の変化を示しています。
 この図から、「女性の満足度は、子どもの年齢とともに低下し、子どもが思春期にさしかかると最も低くなる」という傾向が読み取れます。
 子どもが思春期になると、親子関係が悪化し、満足度が下がってしまう。しかし、それを過ぎて親子関係が改善していくと、満足度も徐々に持ち直していく。この結果は、すでに成人したお子さんを持つ親御さんにとって、実感に近いものではないでしょうか。
 女性の幸福度を下げる2つの可能性
 以上の分析結果は、子どもを持つ人にとってドキッとするものではないかと思います。子どもを持つことはポジティブなイメージをともなうことが多いため、分析結果とのギャップに驚いた人も少なくないでしょう。
 さて、ここで疑問になってくるのが「なぜ子どもを持つことが女性の幸福度を下げるのか」という点です。何が原因となり、子どもを持つ女性の生活満足度が低くなっているのでしょうか。この背景には、大きく言って二つの可能性が考えられます。
 一つ目は、「子どもの存在自体が女性の幸福度を低下させる」という可能性です。
 二つ目は、「子どもを持つことにともなうさまざまな変化が、女性の幸福度を低下させる」という可能性です。
 これら二つの可能性のうち、前者については、妥当ではないと考えられています。というのも、子どもを持つことが人生における精神的な充足や幸福につながるメリットがあると指摘する研究があるためです(*1)。
 子どもとの触れ合いやその成長を見守ることは、自分の人生に大きな意味があると実感することにつながるだけでなく、日々の生活に充実感をもたらします。愛すべき存在が近くにいてくれるということは、それだけで幸せを実感させてくれます。これらの点から、子どもを持つこと自体は、幸福度を高める効果があると言えるでしょう。
 女性の幸福度を低下させる原因①お金
 そうなってくると、原因としては子どもを持つことにともなう生活の変化が有力です。それでは、子どもを持つことにともなう生活の変化の中で、何が女性の幸福度を低下させるのでしょうか。これまでの研究を見ると、①お金、②夫婦関係、③家事・育児負担の三つが候補として挙げられます。
 まず、①お金ですが、子育てには金銭的負担がともないます。子どもの衣食住を整えるだけでも多くの支出をともないますが、これに加えて教育費が重くのしかかってきます。今の日本のように、高校生の約半分が大学へ進学する現状を考えると、大学までの学費を準備する必要が出てくるでしょう。また、近年、都市部を中心に中学受験が増えており、さらに多くの教育費が必要になる可能性もあります。
 これらの金銭的負担が日々の生活に重くのしかかり、家計を預かることの多い女性の幸福度を低下させるわけです。
 女性の幸福度を低下させる原因②夫婦関係
 ②夫婦関係ですが、出産にともない、「夫・妻」といった役割に「父・母」といった新たな役割が加わります。「父・母」といった役割を最初から十分にこなすことができれば問題ないのですが、すべての夫婦がうまくいくわけではありません。とくに第1子の場合、慣れないことの連続であり、夫婦ともに精神的・肉体的なストレスを抱え、夫婦関係が悪化することが考えられます。
 このような夫婦関係の悪化が女性の幸福度を低下させると考えられます。
 女性の幸福度を低下させる原因③家事・育児負担
 ③家事・育児負担ですが、②夫婦関係と密接に関連しています。多くの夫婦は、子どもを持つことにともなって大きく増加する家事・育児負担を「誰が」「どの程度」担うのかといった問題に直面します。「男性=仕事、女性=家事・育児」といった役割意識が色濃く残る日本では、女性に家事・育児負担が偏ることが多くなっています。
 このような重い家事・育児負担が女性の幸福度を低下させる可能性があります。
 以上、①お金、②夫婦関係、③家事・育児負担の三つが女性の幸福度を低下させる原因として考えられるわけですが、おそらく、この三つの要因がそれぞれ影響力を持っており、その大きさが異なると考えるのが自然でしょう。
 幸福度を下げる最大の原因は「お金」
 では、三つの原因のうち、どの要因の影響力が強いのでしょうか。
 この点に関して、アメリカのダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授とフランスのパリ経済学校のアンドリュー・クラーク教授は、ヨーロッパの延べ120万人以上を調査したデータを用い、子どもを持つ女性ほど幸福度が低くなる原因を分析しました(*2)。
 彼らの研究で注目しているのは、ズバリ「お金」です。
 彼らの分析では、お金の影響を統計的手法によってコントロールした場合、子どもを持つことの影響がどのように変化するのか、という点に注目しました。もし子どもの影響がマイナスからプラスに変化した場合、幸福度低下の原因は、お金であると考えられます。
 反対に、子どもの影響がマイナスのままであった場合、幸福度低下の原因は、お金以外の要因だと考えられます。
 実際の分析の結果、お金の影響を統計的手法によってコントロールすると、子どもの影響がマイナスからプラスへと変化することが明らかになりました。
 つまり、子どもを持つことによって女性の幸福度が低下するのは、金銭的負担が主な原因であり、子ども自体は女性の幸福度を高めている、というわけです。
 日本において、子どもを持つことにともなうお金の問題は頭の痛くなるものですが、ヨーロッパでも事情は同じようです。
 ヨーロッパでは、子どもを持つ女性ほど幸福度が低くなる原因について研究が進んでいますが、日本ではまだ研究がありません。このため、何が女性の幸福度を引き下げる決定打になっているのかは、明確にはわかっていない状況です。
 ただ、これまでの日本国内の研究を整理すると、お金だけでなく、夫婦関係も女性の幸福度の低下に大きな影響を及ぼす可能性が高いと予想されます。
 夫婦関係が急速に悪化するきっかけ
 シカゴ大学の山口一男教授と日本女子大学の永井暁子教授の研究によれば、子どもを持つことによって夫婦関係満足度が低下することがわかっています(*3)。とくに山口一男教授は論文の中で、第1子出産時に夫婦関係満足度が低下すると指摘しています。
 実際に第1子出産前後の夫婦関係に満足している割合の推移を見ると、出産直後から大きく値が低下しています(図表4)。
 図表4の結果は、「第1子出産直後に夫婦関係が急速に悪化する」ことを意味します。
 このような夫婦関係の悪化は、いわゆる「産後クライシス」と呼ばれる現象と近く、女性の幸福度を押し下げる大きな要因になっていると考えられます。さらに、山口一男教授は別の論文の中で、第1子出産時の否定的な育児経験が第2子出産への障害になると指摘しています(*4)。第1子出産後に夫の育児の支援が得られず、夫婦関係が悪化した場合ほど、第2子の出産が抑制される傾向にあるわけです。
 子どもをもつほど幸せではなくなる厳しい現実
 整理すると、①第1子出産→②夫の子育て支援などが得られず夫婦関係が悪化→③女性の幸福度低下&第2子出産の抑制、といった流れがありそうです。
 このような関係があることを考慮すれば、出産後の夫婦関係のケアの重要性は高いと言えます。第1子出産後に急速に悪化する夫婦関係に対処するためにも、「出産後学級」などの施策がより必要となるかもしれません。
 夫婦関係の悪化は「家族の問題」として捉えられ、自分たちだけで解決しようと考えがちです。しかし、出産後の夫婦関係の悪化は、その後の結婚生活だけでなく、「もう一人」の出産にも深刻な影響を及ぼす恐れがあります。このため、外部の力を活用したケアを検討することも重要でしょう。
 現在、日本は少子化という大きな課題に直面しており、この課題に対処するためにも、さまざまな政策が実施されています。
 しかし、日本の女性は子どもを持つほど、そして、その数が増えるほど、生活満足度が低下する厳しい現実に直面しています。
 男性の家庭進出を加速させる政策が必要
 「子どもの数は増えてほしいけど、その結果として、女性の満足度が低下する」
 このように、社会の求める方向性と個人の幸せが逆行する状況となっています。これは、日本の社会が直面する「大きな矛盾」だと言えるでしょう。
 しかし、近年、男性の家事・育児参加が進み、男性も主体的に子育てに携わるといった望ましい流れが出はじめています。この中で、男性も子育ての大変さや仕事と家庭のバランスをどのようにとればいいのかという点に悩み、苦しむ事例が出てきています(*5)。
 この悩みや苦しみは、これまで女性が長年にわたって経験してきたものであり、男性側がそれを追体験している状況だと言えます。
 男性と女性のそれぞれが仕事と家庭を両立させることの大変さを理解した上で、「じゃあ、どうすればいいのか」をオープンに話し合い、新しい方法を模索できる準備がようやく整いつつあるということです。ただし、それを各家庭の責任にまかせるのではなく、育休制度や働き方改革しかり、男性の家庭進出をよりいっそう加速させる政策が必要でしょう。
*1) ①Stanley, K., Edwards, L., & Hatch, B. (2003). The family report 2003:Choosing happiness?. London: Institute for Public Policy Research.
 ②Toulemon, L. (1996). Very few couples remain voluntarily childless.Population, 8, 1–27.
*2) Blanchflower, D. G., & Clark, A. E. (2021). Children, unhappiness and family finances. Journal of Population Economics, 34, 625–653.
*3) ①永井暁子(2005)「結婚生活の経過による妻の夫婦関係満足度の変化」,『季刊家計経済研究』, 66, 76–81. ②山口一男(2007)「夫婦関係満足度とワーク・ライフ・バランス」,『季刊家計経済研究』, 73, 50–60.
*4) 山口一男(2005)「少子化の決定要因と対策について――夫の役割、職場の役割、政府の役割、社会の役割」,『季刊家計経済研究』, 66, 57–67.
*5) 朝日新聞「父親のモヤモヤ」取材班(2020)『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』, 朝日新書.

                    • 佐藤 一磨(さとう・かずま) 拓殖大学政経学部教授 1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。 ----------

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