⛲26〉─5・E─「小遣いをやれないから、孫に会えない」野草も食べる79歳男性の清貧年金生活。〜No.126 

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 2023年11月26日 MicrosoftStartニュース サライ.jp「【家族の貧困】「小遣いをやれないから、孫に会えない」野草も食べる79歳男性の清貧年金生活~その1~
 取材・文/沢木文
 親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。
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 2023年10月13日、内閣府は「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報(参考系列)」を発表。これは日本の家庭の財布事情を表すデータともいえるのだが、それを見ると、可処分所得に占める家計の貯蓄率が2023年4ー6月期(季節調整値)で1.8%と5期ぶりに増加していることがわかる。
 高額な維持費に危機感を覚え、マンションを売却
このことを知り、「そう、貯蓄はした方がいい。なぜなら、高齢無職になると、貯金が生命線になるから」と語るのは、現在都内の高齢者住宅で独り暮らしをしている康夫さん(79歳)だ。康夫さんはかつて、フリーランスの芸能関連プロデューサーとして活躍していた。当時は、芸能人と交際したり、海外ロケに行ったり、三ツ星レストランで食事をしたりと派手な生活をしていたという。
 「あのころはデタラメだったから。昔を振り返りたくないけれど、やはり考えてしまう。今は独居の貧困老人だから。収入は国民老齢年金と、女房の遺族年金、あとは給付金(年金生活者支援給付金)を合わせて10万円くらい。これで、家賃、光熱費、スマホ代、介護保険料、食費を払うのだからカツカツ。生活費は1日1000円と決めてやりくりしている」
 住まいは、都営住宅だ。50代後半のあるときから、ぱったり仕事がなくなり、それまで住んでいたマンションを売却し、都営住宅に移り住んだ。
 「これがとてもよかった。あのマンションは、年間の管理維持費が15万円ほどかかり、固定資産税も15万円くらいあった。持ち家なのにさらに金がかかるって、ばかげた話。女房は“持ち家で終の棲家だから”って反対したけれど、私は維持費をかけないほうをとった。いま、ウチの団地の友達とたまに話しているんだけど、賃貸は楽だってこと。貧乏人の負け惜しみかもしれないけれど、不動産の所有には金がかかる。あの時売っておいてよかった」
 しかし、売却したのは、東京のマンションが底値だった2000年代前半。いまならもっと利益があったのに、と康夫さんは笑う。そんな彼が今のような苦しい生活になったのは、5年前に妻が死去してからだという。
 「マンションを売ったのは、還暦のころ。あの頃は貯金もあったのよ。ウチの娘2人は海外の大学を出ているのだけれど、それができたのは私の収入も合ったけれど、女房も稼いでいたから。この年にしては珍しく、一般企業に定年まで勤めた女傑なんだよね。今でいうダブルインカムだから、それなりに貯えもできたわけ」
 【妻の厚生年金は15万円もあったが……次のページに続きます】
 死が迫る生活は、旅行だ食事だとお金を使ってしまっていた
しかし、その妻は65歳のときに胃がんになる。定年後、親の介護に追われひと段落したタイミングだったという。「さあ、これから夫婦で人生を楽しもう」というときにがんが見つかり、緊急手術をする。しかし、予後が悪く、腸閉塞や発熱などで入退院を繰り返した。
 「食道がんも見つかって、もうダメだと。それで、いろんな人にすすめられるまま、あやしいサプリを試したり、転地療養、祈祷、免疫細胞治療などなどあらゆることをやったよ。旅行もしたよ。病気にいいとアメリカのセドナまで行ったから。それが気分転換になったのか、9年間生きてくれたからよかったけれど、自費治療もあったから、3千万円くらいあった貯金はかなり減ってしまった」
 妻は65歳から年金を受給しており、その金額は月12万円程度だったという。
 「いつ死ぬかわからないから、受給開始とともにもらうことにした。それで74歳で死ぬまでの9年間、2人の年金を合わせると、毎月15万円以上の収入があったわけ。あの頃は女房のお兄さんが持っていたマンションを格安で借りていたんだよね。病院も近いし、車いすの移動になった時も楽だって。とはいえ、死が迫っている生活だから、ついついお金を使っちゃっていた」
 康夫さんの手厚い看病もあり、妻は胃がんの発見から9年間生き、5年前に74歳の生涯を終える。
 「それで、女房の望む通りの葬式を出したの。トータルで200万円くらいかかったかな。女房も“まだ、金はある”と思っていたんだろうね。でも、いろいろ書類を見ると、入っていると思った生命保険が解約されていたり、思ったより貯金がなかったりして“これはヤバいぞ”となったわけ」
 妻の兄は康夫さんの献身を見ていたので、マンションに住み続けてもいいと言ったが、人の好意に甘えるとろくなことにならないというのは、今までの人生で学んでいたので断った。
 「これが人生最後の引っ越しになる。それなら、生まれ育った23区内に戻ろうと、区の窓口に相談したの。女房の死後の手続きで、役所の人が親切だってわかったから、軽い気持ちで行ったのね。そしたら、今住んでいる高齢者向けの住宅について教えてくれた。アドバイスに従って、ひとまず住民票を娘のところに置いてもらい、半年くらい家の片づけやいろんな手続きをして、無事に入居することができた。兄さんには“リフォーム代です”って30万円包んで、久しぶりのひとり暮らしが始まった」
 【金がないから孫に会いたくない……後編へと続きます】
 取材・文/沢木文
 1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。
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