🚱22〉─1・B─人口激減で路線バスの運転手が不足し乗客が減っていく。~No.91 

  ・   ・   ・
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・{東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   2024年4月30日 YAHOO!JAPANニュース JBpress「《2025年問題の衝撃①》2030年に3万6000人不足する路線バスの運転手、減便や廃止で住民生活は大パニックに陥る!
 日本全国で減便が相次ぐ路線バス(写真:Beomjin Ahn/shutterstock)
 働き方改革に伴う長時間労働の制限によって、物流・建設業界などを中心に人手不足が常態化する「2024年問題」が早くもあちこちで顕在化しているが、団塊の世代後期高齢者(75歳)となる2025年はさらに深刻だ。社会保障の担い手である労働人口の大幅な減少は国民生活に大きな影響をもたらし、さまざまな格差も拡大する。縮みゆく国・ニッポンの末路はどうなってしまうのか──。ジャーナリストの山田稔氏が、「2025年問題」が現代社会に新たに突きつける課題をシリーズで検証する。第1回目は「公共交通の崩壊」だ。
 【グラフ】路線バス運転手数の推移
■ バス運転手の拘束時間を減らすため「減便」を決断
 運転手の長時間労働を是正する法規制の影響で、もともと不足していた運転手がさらに足りなくなっている。中でも各地で路線バスの運転手不足が発生し、減便せざるを得ない状況に追い込まれている。北海道では4月以降の平日で1日500便以上の減便となったと報じられている。
 これは「働き方改革関連法」の影響だ。運送業働き方改革や労働環境改善を目指した「改善基準告示」が2024年4月1日に施行され、バスやトラック、タクシーの運転手を対象に「年960時間以下」(特別条項)などとする残業上限が導入されたのだ。
 具体的な基準はどうなっているのか。バスのケースを見てみよう。
(1) 1日の拘束時間/13時間を超えないことを原則とし、最大でも15時間
(2) 1年・1カ月の拘束時間/年3300時間以内、月281時間以内
(3) 1日の休息時間/11時間以上を基本とし、9時間を下回らない
(4) 運転時間/2日平均1日(2日を平均した1日当たりの運転時間)9時間
 この「残業規制」に伴い、全国のバス事業者が「そもそも十分な数が確保できていない運転手の拘束時間を減らすために減便に踏み切らざるを得ない」(バス業界関係者)という状況に追い込まれているのだ。
■ 北海道では平日500便の減便、路線廃止の最悪事態も
 減便で大きなニュースになったのが北海道だ。北海道新聞(3月31日)は〈北海道内路線バス平日500便以上減便 4月1日以降、10社 運転手不足、路線廃止も〉と報じた。道内の主要バス会社27社のうち10社が、4月1日のダイヤ改正で路線バスを減便、平日1日当たりの運行本数が3月に比べて計500便以上減少するといった内容だ。
 衝撃的な数字である。北海道は乗降客の減少、採算割れに伴い鉄道路線が次々と廃線に追いやられてきた。旧国鉄時代に4000kmあった鉄道営業距離は、2024年には2255kmまで減少している。ほぼ半減である。
 そこへもってきて路線バスまで大幅な減便となったら、市民生活への影響は計り知れない。通勤、通学、通院、買い物など日常生活はますます不便になり、マイカ保有者と非保有者の“生活格差”は拡大する一方となる。
 路線バスの減便は地方だけの話ではない。筆者が暮らす東京23区郊外を走る小田急バスも減便に踏み切った。
 3月16日のダイヤ改正を機に、〈慢性的な乗務員不足、2024年4月から施行されますバス運転士の改善基準告示に合わせ、多くの系統において、運行回数・運行時刻変更のダイヤ改正を実施いたします〉と告知。新宿から永福町、吉祥寺駅を経由して武蔵境駅南口まで走っていた名物路線の「宿44」(新宿駅西口─武蔵境駅南口)は運行終了となったほか、多くの路線で減便となった。
 横浜市営バスも同様だ。〈市営バスでは、乗務員不足により運行の確保が困難になったため、保土ヶ谷営業所が運行する一部の系統で、平日の日中から夜間を中心に減便いたします〉(横浜市営バスのホームページ)と発表。全体の6.4%、77便の減便となる。横浜市営バスでは4月1日に290本の減便に踏み切ったばかりで、同月中に2度目の減便という異例の状況となっている。
 このようにバス運転手の労働環境改善のための規制強化に伴う措置で、各地のバス事業者が減便に踏み切っているのだが、問題の根っこには慢性的な運転手不足という事態がある。
 昨年、日本バス協会が全国のバス会社778社に聞き取り調査を行った結果、2023年度は全国で12万1000人の運転手が必要なのに、実際に確保できていたのは11万1000人で1万人の不足だった。今後も運転手不足は続き、24年度は2万1000人の不足、2030年には3万6000人の不足が生じるとの試算をまとめている。
■ 運転手不足の背景にある「低賃金・長時間労働」の実態
 では、慢性的な運転手不足の背景には何があるのか。バス業界の現状を調べてみた。「交通政策白書(令和5年度版)」によると、全国のバス事業者数は5966社で乗合バスは2377社。そのうちの2263社(95.2%)が中小事業者だ。
 バスの運転手・整備要員数は12万人(2021年度)で、女性比率はわずか1.7%。平均年齢は53.4歳(2022年)、労働時間は193時間(2022年)、年間所得額は399万円(2022年)となっている。
 全産業平均は平均年齢43.7歳、労働時間177時間、年間所得額497万円。それに比べてバス運転手の労働環境、待遇面の低さ、格差が一目瞭然だ。早朝深夜勤務がある上、人命を預かっているのに年間所得が全産業平均よりも100万円も低いというのだから話にならない。
 コロナ禍で運行本数が減ったときに離職者が相次いだが、そのまま戻ってこないケースが大半だという。この待遇では仕方あるまい。
 こうした状況を改善するために日本バス協会では、次のような政策提言(2024年1月の常任理事会での会長挨拶より)を行っている。
(1) 人材確保に必要な賃上げのための定期的な運賃改定
(2) 外国人運転手制度
(3) EVバスの導入
(4) キャッシュレス環境整備
(5) 自動運転の本格化
 これに対し政府も今年3月に外国人労働者在留資格である「特定技能」の対象にバスやタクシーなどの運転手を追加することを閣議決定した。とはいえ、「第2種免許」取得には日本語スキルが必要で、容易な話ではない。また、安全管理やコミュニケーションで高い能力が求められるため、他の分野よりも厳しい日本語能力試験(N3以上)のクリアが条件となっている。
 絶対的な運転手不足に対し、ようやく政府も対策に乗り出したといったところだが、待遇改善を満たした上での運転手確保はそうそう簡単に実現できる話ではない。
■ 公共交通機関を維持させる「第3の道」を模索
 現実問題として、運転手の平均年齢が全産業平均よりも10歳も高いこと、高齢化の進行、労働人口の減少といった状況を考えると、30代、40代のバリバリの現役運転手が増加するというイメージがどうにも湧いてこない。ハイレベルな日本語スキルを身につけた外国人運転手をどれだけ確保できるのか。運転手不足の解消は一朝一夕にはいきそうもない。
 地域の自治体がバス事業会社と提携して路線を維持していくのが本筋なのだろうが、人口減が続く自治体も疲弊しきっていてバス会社を支えるような力がない。
 高齢者ドライバーの交通事故が相次いでも、足がないから免許返納が進まない。減便という現実を受け入れながら、最悪の路線廃止を避けるための知恵を絞るしかないのが現状だ。
 観光地でのインバウンド向け料金体系変更、富裕層からの寄付集め、ふるさと納税のバス版、話題を集めそうな人気アニメとのコラボバス投入など、できることは全てやるしかない。
 縮みゆくニッポンでは、バスの事業会社や地方自治体が主体となって公共交通機関を維持していくのは至難の業となってきている。これからは「第3の道」を探るしかないだろう。
 山田 稔
   ・   ・   ・