🌅11〉─1─無葬社会と多死社会。~No.58No.59No.60 @ 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 無宗教の日本は、葬式も、火葬も、納骨も、供養も、一切しない。
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 自己責任として、人の絆も社会の繋がりも断ち切られる「個」の社会。
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 人は死ねば、そのこに生きていた事が忘れられ、生きていた証も消える。
 死後の世界はなく、霊魂も消滅する。
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 2017年4月21日号 週刊ポスト「話題書から学ぶ人生の『終(しま)い方』新提案
 葬式もしない、火葬もしない、納骨もしない、供養もしない
 『無葬』という死に方は幸せか?
 3万円のゆうパック送骨
 遺体ホテルが大盛況
 『無宗派墓』の乱立
 3万5,000円のお坊さんチケット
 骨は拾わずに焼き切る
 火葬場が『友引』も営業
 墓に名前を刻まない
 年間160万人が死ぬ『多死社会』到来で激変する『日本人の死に方』を考える
 多くの友人、知人が葬儀に参列し、親しかった人たちに骨を拾ってもらう。そして毎年、墓参りには子や孫が訪れる──かつて当たり前だったそんな『死に方』が、この国ではもうすぐできなくなるかもしれない。すでに、激変の予兆はあちこちにある。
 遺体が多すぎる!
 ……
 病院で人が亡くなればその遺体は自宅に戻り、家族や親戚縁者に見守られて通夜や葬儀を迎える──これまで当たり前だった葬儀のあり方が、大きく変わりつつある。
 厚生労働省『人口動態統計の年間推計』によれば、15年の死者数は約130万人にのぼり、30年には160万人を突破する見込みだ。とくに都会では孤独死が急増し、30年には孤独死予備群は2,700万人近くにのぼると見られている。
 話題書『無葬社会』の筆者で浄土宗僧侶でもある鵜飼秀徳氏がいう。
 『きちんと地縁や血縁に根ざした供養を受けられず、誰にも見送られず、宗教的な弔いもなく送られていく。そういうケースが、年々増えています。それを私は〝無葬社会〟と呼んでいます』 すでに首都圏では大量の死者をさばききれない、深刻な状況にある。火葬場は過去に例がないほどの〝混雑〟となっている。
 『昨年、母が亡くなった時、火葬が10日後になるといわれました。葬儀社が、〝ドライアイスを入れ替えても遺体の痛みを防ぐのは無理〟というので、家に連れて帰るのは諦め、泣く泣く遺体を預けました。10日間も母を冷蔵庫みたいな場所で過ごさせるのは忍びなかった』(55歳・会社員)
 公営の斎場が満杯なら民間の斎場を利用する方法もあるが、公営なら数万円程度で済む費用が数十万円になることもある。
 火葬場サイドも対応に奔走している。一般的に友引は『友を呼ぶ』ということで、葬式や火葬を避けるのが常識だったが、もはや構っていられないのが現実だ。
 『横浜市の火葬場では友引の受付を始めました。都内や名古屋市などの一部の斎場でも友引の運用を行っています』(鵜飼氏)
 また、一般的に午前10時か11時というスケジュール設定が多く、その時間帯はどうしても混み合う。早い時間の火葬しか予約できない場合、前日までに葬儀を済ませ、一晩遺体をどこかに安置してから火葬場に向かうことになる。それもまた遺体ホテルの活況につながる。
 ワンクイックで供養
 火葬場が混み合う理由について、鵜飼氏が続ける。
 『葬儀場での葬式を省略し、火葬場でお別れをする。〝直葬〟の増加が影響していると見る専門家もいます。葬式をしない分、会葬者が火葬場で時間をかけてお別れする傾向が強いのです』
 簡略化の波は、僧侶の手配にも及んでいる。
 葬儀関連のベンチャー企業『みんれび』は、15年12月にアマゾンで僧侶の手配サービスの販売を開始した。その名も『お坊さん便』。ネット上で『法事法要手配チケット』を購入し、日時と場所を指定すれば僧侶がやってきて、お経をあげる。価格は3万5,000円から。『みんれび』は同様のサービスを13年から始めていたが、アマゾンで申し込めるようにしたら注文が急増した。
 ……
 故郷に菩提寺があっても、法要や法事のためにわざわざそこから僧侶を呼ぶのは大変だ。
 『田舎に寺はあるが、誰も住まなくなった実家はもう取り壊していて、法事のためだけに帰省するのも大変でした。そんな時に都内で施設に入っていた父親が他界。最初は田舎から住職を呼ぼうと思いましたが、お布施をいくら包めばいいのか、戒名料はいくらかとか、その後の付き合いは、と考えるうちに面倒になり〝お坊さん便〟を頼みました』(50代・自営業)
 大都市の住民の意識が変わっていくなかで、地方では多くの寺院が存亡の危機にあるという。
 『仏教界の実態は深刻です。檀家の減少や、墓の都市への改葬などによって、貧困にあえぐ寺院が増えています。例えば浄土真宗本願寺派が09年に実施した調査では、村落にある寺院の60%以上が年収300万円以下でした。他の宗派でも似たりよったりでしょう。〝お坊さん便〟に登録する僧侶たちが増えている背景には、〝食えない僧侶〟の増加があるのは間違いありません』(鵜飼氏)
 都会では、墓も足りていない。
 葬送をめぐる実態の深刻さは、こんなニュースにも表れている。15年4月、東京都練馬区のスーパーの屋外トイレで人の頭蓋骨が発見された。骨は焼かれた状態で、洋式便座の中に転がっていたという。
 『骨を捨ててしまう事件は後を絶ちません。遺棄される場所でとくに多いのは、電車内です。網棚に骨壺を乗せ、置き忘れたフリをして去っていく。近年、骨壺は警察に届けられる遺失物、捨得物の定番になっている』(鵜飼氏)
 兵庫・大阪・京都の2府1県における遺骨の捨得物は10〜15 年で少なくとも91件にのぼり、うち69件、76%が所有者が不明だと報じられた。
 お骨の回収サービスも登場
 お骨をどうするか。そんな悩みに応えるために、NPO法人『終の棲家なき遺骨を救う会』が13年4月にスタートさせたのが、『送骨サービス』、通称〝ゆうパック送骨〟である。
 申し込むと、3万円の代金引き換えで『送骨セット』が送られてくる。骨を入れた骨壺の蓋をガムテープで固定して桐箱に入れるなどし、火葬証明書と埋葬承諾書とともに段ボール箱に入れて送る。すると、『終の棲家なき遺骨を救う会』にお墓を開放している南春寺(東京・新宿)に埋葬され、永代供養してもらえるという仕組みだ。
 ……
 さらには『骨を残さない』という選択肢すら出てくる可能性がある。欧米では1,200度以上の高い温度の炉で遺体を焼いて、骨が灰になるまで焼き切ることも多い。
 『都市部を中心に、遺骨を焼き切って引き取りの必要がない状態にしてほしい、といったニーズも出てきています。火葬場に遺灰がある程度溜まったら、僧侶がお経を上げて埋葬してくれればいい。そんなスタイルがこれから主流になるかもしれません』(鵜飼氏)
 宗教か、ビジネスか
 司法の判断も含め、葬送のあり方は激変の最中にある。鵜飼氏はこう話す。
 『葬送の簡素化は、社会のニーズであるとともに、現代人の心から葬送の気持ちが薄れてきていることの表われでもあります。金銭的な余裕がないとか、ムラ社会の衰退など、さまざまな問題がからんでいますが、きちんと手を合わせて供養していくという日本人の美徳が薄れていくのは、社会全体にとってマイナスの影響がある。例えば食事の前に手を合わせて『いただきます』というのも宗教的な行為で、供養の心につながります。無葬社会とは、そうした日本人の心を失ってしまった社会ともいえるのです』
 賛否両論あれど、抗えない流れだとれば、私たちはその変容を受け止めるしかないだろう」


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