🚱21〉─1─ドライバー不足。運送業界の崩壊。宅配システムの破綻。~ No.88No.89No.90 @ 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 インターネット通販利用者数の激増で宅配配達員が不足して宅配業務継続が危機的状況にある。
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 人口激減で若者が減り、運送業の運転手が不足している。
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 2017年3月4日号 週刊現代「ニッポンの大問題 このままでは持たない
 アマゾンとセブンイレブンとヤマトがなくなる!
 『運ぶ商品』は山ほどあっても『運ぶ人』がいない・・・
 時間指定配送、送料無料、365日24時間つい忘れがちだが、これらはすべて『運ぶ人』がいて、成立している。その物流が今、危機に瀕している。私たちが生きる『便利な社会』はひどく脆い。
 『身代わり出頭』の背景
 『アマゾンから配送の依頼があり、3回ほど呼ばれて話を聞きに行きましたが、札束で頬を叩くような態度で不愉快な思いをしました。その札束が薄いんですから、話になりません。はっきり言って、条件が悪かったので断りました』
 トラックで宅配を請け負う吉祥寺総合物流(武蔵野市)の仁瓶直樹社長がこう言って続ける。
 『アマゾンは当日受けた注文を1時間以内に届けるサービスを自社配送でやると言っていますが、そんなことができるわけがない。アマゾンの配送は、ヤマト運輸に頼っていますが、彼らも本音では受けたくないはずです。このまま輸送業者にとっての条件が悪いままだと、アマゾンの配送は成立しなくなると思います。自分たちだけではすべてを運ぶことができないわけですから。ヤマト運輸が撤退したら、アマゾンは完全に成り立ちません』
 驚異的なスピードで日本でも成長してきたネット通販の巨人、アマゾン。扱う品目は書籍に留まらず、日用品や雑貨、食品と、今や多くの日本人の生活になくてはならない存在になりつつある。しかし足元が大きく揺らいでいる。
 アマゾンが扱う商品は日本市場だけで2億品目とも言われているが、それを運ぶ人間が圧倒的に不足しているのだ。物流の崩壊が、アマゾンを直撃する──。
 すでに配送を担う現場の疲弊は限界を迎えている。アマゾンの配送を請け負う運送会社社員の声を紹介しよう。
 『とにかく荷物が多くて、決められた時間内に仕事が終わることなど、まずなかったですね。アマゾンの荷物がものすごく多く、繁忙期になると1日300軒を回ることはザラでした。
 しかも時間指定の商品が多く、常に時間に追われている感じでした。毎日のストレスは尋常なものではなかった。それでいて、給料は安い。私も含めて、辞めていく人は多かった』(元ヤマト運輸配達員・30歳)
 ……
 元々、アマゾンの配送は佐川急便が一手に引き受けていたが、運賃が低く、採算割れだったため、佐川急便がアマゾンに値上げを申し入れる。ところが、交渉が決裂し、13年に佐川急便はアマゾンの配送から完全撤退した。だからといって、佐川急便で働く配送員の労働環境が改善したかというとそうでもない。
 08年から13年まで佐川急便に勤めたドライバーが実情を話す。
 『たしかに荷物は減りました。しかし、その分、配達範囲が広がり、結局、走る距離や必要な人手は変わらないんです。昨年、発覚した交通違反の身代わり出頭ですが、あれが横行していた背景は理解できます。佐川急便では事故や交通違反を起こすと、罰金を払えば終わりではないんです。働けなかったりペナルティがあったりして、会社で講習を受ける必要もある。ただでさえ、最低限の人手でやっているのに、自分が働けなくなったら、仲間にその分の負担がかかえいます。ごまかせるならごまかしたい気持ちはわかる気がします』
 給料が上がらない
 普通、労働が過酷になると、給料が上がる。ところが、物流業界では労働時間が長くなっているにもかかわらず、給料が下がるという異常な状態に置かれている。
 厚生労働省の調べによると、道路貨物運送業の給料は99年をピークに減少傾向にある。また、15年の全産業の年間所得が489万円だったのに対し、中小型トラックのドライバーは388万円。そのうえ、労働時間は全産業の年間労働時間が2124時間に対し、中小型トラックドライバーは2580時間と長い。単純計算で時給に換算すると、約1,500円。コンビニの深夜バイトと変わらない。数字の上からも、トラックドライバーの労働は平均的な労働者よりも長時間で安いことが裏付けられている。そんなトラックドライバーが日本の物流の実に9割を担っているのだ。
 『アマゾンの荷物1個の配送単価は、何十円といった低価格で抑えられているようです。対価が安いのに時間指定だったり、当日配送だったりと要求が高い。給料が上がるなら喜んでやりますよ。でも安月給のままで、何十円の代金で1日に何度も往復していたらアホらしくなります。
 会社の上層部は佐川急便からアマゾンの仕事を奪って売上高が伸びたと喜んでいるかもしれませんが、現場からすると会社の利益しか考えていないとしか思えません。ただでさえ、安月給で辞めていく人が多いのに、これ以上人手不足になったら、現場は回らなくなります』(前出・日本郵便社員)
 若い世代がやりたがらない
 なぜ、需要が拡大しているのに、給料が上がらないのか。物流業界のシステムを解説するのは、物流コンサルタントでイー・ロジットCEOの角井亮一氏だ。
 『配送業者はなぜ人材を確保するために人件費を上げないのか。それは配送料を上げられないからです。たとえば、通販業者の仕事を請け負っている配送業者が人手不足から運賃を上げたいといえば、その通販業者は契約を打ち切って別の配送業者に乗り換えるだけ。実際、佐川急便が料金の問題で交渉がまとまらず、アマゾンとの契約を打ち切りにしたが、その後をヤマト運輸日本郵便が引き受けて、それで終わりです。アマゾンも多少は配達コストが上がったでしょうが、受けた業者もアマゾンに対応する体制を整える必要があるため、必ずしも収益増になるわけではありません。
 運送業は1軒1軒に届ける手間がかかり、規模のメリットがほとんど利かないばかりか、仕事が増えればますます人手不足が深刻化します。給料はそのままで、運送会社も作業の効率化への努力が十分とは言えないため、さらに人材が確保しづらくなる悪循環なのです』
 人手不足の問題を解決しようとする動きはある。たとえば、ドローンによる無人配送や自動運転技術の向上だ。これによって人手に頼らず商品を配送することが可能になるとされている。
 だが──。
 『実験は進んでいますが、実用化にはまだまだ時間がかかるでしょう。……10年以内に実現することは難しいでしょう。それまで今の体制で日本の物流が持ちこたえられるかが最大の問題です』(角井氏)
 物流の危機はコンビニ業界にとっても他人事ではない。弁当やパンといった食料品から生活雑貨まで日常生活に必要なありとあらゆる商品が揃うコンビニという業態は、徹底的に効率化されたロジスティックスに支えられてきた。それを牽引してきたのが、業界最大手のセブンイレブンだ。
 同社の元社員で、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授の並木雄二氏が解説する。
 『コンビニは効率的に物を運べる状況を確保しないと出店できません。70年当時は1つの店舗に日々70台ものトラックが物を届けていました。それを10年かけ、配送センターに集めて共同配送にすることでトラックの数を減らしてきた。さらにその後の10年で、様々な温度の商品を一度に配送できるトラックを開発し、一層効率化を進めました。その結果、今は1日10台以下のトラックの数で配送が済むようになり、高い収益性を実現してきたのです』
 だが、時代が変わった。人口減少によって、地方部ではどれだけ効率化を進めても、採算が取れない可能性が出てきたのだ。並木氏が続ける。
 『コンビニ各社はビジネスモデルを、お客さまを店舗で待つスタイルだけでなく、お客さまの玄関まで御用聞きに伺うという「攻め」の形に変えようとしています。
 しかし、これは配送や人件費などのコストに見合う利益が確保できなくなる危険があり、現実は難しいでしょう。移動販売など、地域の特性に合わせて営業形態と組み合わせて取り組んでいうようになるはずです』
 労働者の高齢化も、ますます物流業界を苦しめる。すでに、トラック運転手の約4割は50代以上が占め、若い世代の参入は年々減少している。
 『俺はもうすぐ年金をもらうからマシなほうだけど、それでも12時間労働なんて当たり前だよ。若いやつは18時間ぶっとうしとかもあるし、労働基準法?そんなの守っていたら、指定された配送時間に間に合わないよ。結局、仕事を断ってクビになった若い同僚もいる』(60代男性)
 ……
 『配送料はタダ』と思う日本人
 もちろん、労働力不足は多くの産業に共通する課題である。国は移民を受け入れることで問題を解決しようと目論むが、運送業の人手不足の解決にはなりそうもない。
 『日本の流通はサービスの質の良さが最大の特徴ですから、宅配などで外国人を安易に使うことは難しいでしょう』(前出・並木氏)
 外国人はビザの関係で運転免許が取れないことも、移民が解決策にならないことの一因だ。
 ドライバー派遣や物流業務を請け負うウィンコーポレーションの中村真一郎氏が言う。
 『最近は高齢者がネット通販のユーザーとなって配送量が増えていますが、一方でドライバーは高齢化が進んで辞めていく人が増えているのが深刻です。大手のヤマト運輸も佐川急便も日本通運も慢性的に足りていない。ヤマト運輸は物流という社会的なインフラを守る意味合いからアマゾンの仕事を受けた側面もあると思いますが、一説にはアマゾンの仕事をやらないと地方での配達の仕事が極端に少なくなり、地方で採算が取れなくなると聞いています』
 このままでは物流が止まり、アマゾンもセブンイレブンヤマト運輸もなくなってしまいかねない危機的な状況──順天堂大学特任教授の川喜多喬氏は、現状をこう分析する。
 『多くの消費者は、物流に対してコストを支払おうという意識が低すぎます。物流は「社会の命綱」とたとえられますが、まさにその通りです。労働力不足で機能しなくなれば、アマゾンやセブンイレブンなども壊滅的な状況に陥ります。情報は一瞬で届く時代になりましたが、現実の物は誰かが人力で動かないと経済は回らないのです』
 送料無料、翌日配送。365日24時間営業。これらは『運ぶ人』がいないと成り立たない。日本人が当たり前のように享受する『便利』が崩壊の危機に直面している」
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 2017年2月24日 朝日新聞「宅配急増 ヤマト疲弊
 ドライバー奔走『4割アマゾン』
 宅配最大手のヤマト運輸労働組合が今春闘で、荷物の取引量の抑制を要求した。インターネット通販の普及と人手不足でドライバーなどの労働環境が厳しくなっているため。経営側も協議に応じる構えで、収益減につながるテーマを労使で話し合う異例の事態となっている。宅配の現場に何が起きているのか。
 荷物量抑制 労使協議へ
 ……
 (内藤尚志、堀内京子)
 ネット通販も競争激化
 ……
 (和気真也)
 長時間労働、人手不足に拍車
 急速な少子高齢化を受け、国内企業の人手不足感は強まっている。なかでも物流を支えるトラック運転手らの不足は深刻だ。
 ……
 ドライバーは比較的低い賃金で長時間労働を迫られる。それが人手不足にさらに拍車をかける──。運送会社の労働組合でつくる運輸労連の幹部は、業界の現状をそう説明する。
 『配送料は安いまま、「即日配送」といった質の高いサービスも求められている。このままいくと日本の物流はパンクしかねない』
(千葉卓郎、贅川俊)」
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 日本式きめ細やかな宅配システムは、人口爆発時代のビジネス・モデル、成功モデル・経営モデルであって、人口激減時代では通用しない。
 ブラック企業、ブラックバイトなどブラックと批判される業種のほとんどが、人余りの人口爆発時代の遺物である。
 諸外国の宅配は、日本のお客至上主義的な至れり尽くせりのサービスは存在しない。
 利用者優位の日本式サービスは、「信用第一」とする日本民族日本人の同一性があってこそ可能であった。
 消費者と労働者が同時に増える人口爆発時代のビジネス・モデル、成功モデル、経営モデルを捨てなければ、消費者と労働者が不均等に減る人口激減時代では生きていけない。
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 現代は、少子高齢で通販利用者が増え宅配配達員が不足している。
 将来は、人口激減で通販利用者が減るが宅配配達員が余る。
 現代の労働者不足を補う為に大量の外国人を移民させると、将来の消費者が減少するや日本人労働者を保護する為に外国人労働者を解雇することになる。
 職を奪われた外国人労働者は、人種差別として不満を膨らまし、日本人労働者と同じ権利を主張すれば人種対立が深刻化する。
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 3月2日 産経ニュース「【産経抄】「サービスが先、利益は後」そんなヤマト運輸の「小倉イズム」が曲がり角に立たされている 3月2日
 住民に見送られるヤマト運輸のトラック
 大きくなった息子の洋服のお古を、甥(おい)に送ってやろうと思った。個人が小さな荷物を送る方法は、国鉄小荷物か郵便小包しかなかった。どちらも窓口の応対はつっけんどんで、日数もかかる。大和運輸(現ヤマト運輸)の社長だった小倉昌男さんの実体験である。
 ▼昭和51年から始める「宅急便」の大きなヒントになった。電話1本で自宅まで取りに行き、翌日には配達する。サービスを始めて、あらためて気づかされたのが、昼間の留守宅の多さである。小倉さんはコストがかかっても人手を増やし、夜間配達に踏み切った。「サービスが先、利益は後」。小倉さんがつくった標語の通り、その後も顧客が求める新サービスを次々に実現していった。
 ▼そんな「小倉イズム」が曲がり角に立たされている。最初の年170万個だった荷物の取扱量が、今や17億個、実に千倍の規模となっている。スマートフォンの普及で、ネット通販を利用する人が激増しているからだ。加えて人手不足が深刻化し、ドライバーは長時間労働を強いられている。
 ▼たまりかねたヤマト運輸労働組合は、今年の春闘で、荷受量の抑制を要求した。会社側も、昼間の時間指定の配達を取りやめ、夜間配達も早めに切り上げるなど、サービスを抜本的に見直そうとしている。
 ▼宅急便に対しては、会社を創業した父親はじめ会社幹部の全員が反対していた。それに対して労組が賛成の立場をとったのは、オイルショックで会社が危機に陥ったときも社員の雇用を守った小倉さんへの信頼からだ。
 ▼小倉イズムは、「顧客第一」だけではない。「社員第一」でもある。平成17年に80歳で亡くなった小倉さんも、業界トップのヤマトが進める働き方改革にエールを送っているはずだ。」
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 2018年3月5日 産経ニュース「ドライバー不足… 今春は“引っ越し難民”現実味 業者は人手確保に躍起
 引っ越し中堅のアップルは人工知能を活用し、人員配置の最適化を図る=2月中旬、東京都墨田区佐久間修志撮影)
 深刻化するトラックドライバーの人手不足で、学生や会社員が新生活を始める3月下旬以降、希望のタイミングで引っ越しできない“難民”が発生する恐れが現実味を帯びている。運送業界は取引先企業に対し、人事異動に伴う引っ越し時期をずらすよう要請を始めたほか、料金値上げなどでドライバー確保を図るなど対応に追われている。
 東京都墨田区の住宅街。2月中旬、マンション前で段ボール箱や家具などが次々とトラックに積み込まれた。時刻は午後4時過ぎ。請け負った引っ越し中堅のアップル(東京都中央区)によるとこの日だけで3件目の作業だが、チームを統括する埼玉支店の沢田直之キャプテンは「単身者の引っ越しで1日3件は珍しくない」と打ち明ける。
 依頼した会社員の女性(23)は3月下旬に配属先が変わる予定。2月に引っ越すと現在の職場からは遠くなるが、「今年は3月の代金が高いと聞いたので早めがいい」と苦渋の決断をした。アップルの文字放想(もんじ・ゆきお)社長は「このままでは代金が高くなるだけでなく、依頼を受けられないケースも100件を超える」と危機感を募らせる。
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 トラックドライバーは50歳以上が約4割を占めるなど高齢化し、求職者に対し企業の求人がどれぐらいあるかを示す有効求人倍率は2倍を大幅に上回るなど人手不足が進む。他産業より労働時間が長く待遇が低い傾向があり、若手を中心に定着が難しい。最近は働き方改革が叫ばれる中、運送業者が残業抑制を余儀なくされ、稼働できるドライバーを確保できない状況だ。
 こうした実態にもかかわらず、引っ越しは年間需要の3〜4割が3月下旬〜4月上旬に集中し、「3月の件数は通常月の2・5倍」(国土交通省)。石井啓一国交相は2月27日の閣議後の記者会見で「人員と車両の両方の確保の面で、ピーク時の対応が困難になっている」と警鐘を鳴らす。
 運送業者は、ドライバーや作業スタッフの引き留め、確保に躍起だ。
 日本通運ヤマトホールディングスは単身者向けのシーズン割増料金を台車1台当たり5千円にする。前年は2千円だったが2・5倍に引き上げた。業界関係者は「今年は通常で10万円前後の料金なら40万円以上にまで跳ね上がりそう」と見通しを語った上で、「ドライバーに2カ月で150万円の給与を提示する会社もある」と打ち明ける。
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 このままでは引っ越し依頼自体が受けられないケースが多くなるとして、全日本トラック協会は今春の引っ越しに関し、「特に混雑するのは3月24日〜4月8日」とする混雑予想をまとめ、3月前半か4月中旬以降に引っ越し時期をずらすよう呼びかけている。
 引っ越し大手のアートコーポレーションも法人向け割引料金を繁忙期は見合わせるとともに、取引先企業に対し引っ越し時期の分散を要請する。
 アップルは引っ越しを請け負う範囲を首都圏から本州内に絞った上で、人工知能(AI)を活用。スタッフの作業能力と依頼案件の作業時間を数値化し、チーム編成などの最適配分ができるシステムの運用を始めた。生産性を高めることで依頼を最大限、引き受けるのが狙いという。
 物流政策に詳しい流通経済大学の野尻俊明学長は「日本では需要の繁閑差の大きい分野が多く、物流、とりわけ引っ越し運送は最たるものの一つ。労働集約的な産業で人手不足が深刻化する中、需要の分散化で社会全体として生産効率をあげる取り組みが必要」と指摘している。(佐久間修志、写真も)」
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 3月8日 msnニュース朝日新聞デジタル「今春、引っ越しピンチ 待遇改善の宅配業界へ転職相次ぐ
 春の入学や就職、人事異動の時期を控え、希望日に転居できない「引っ越し困難者」が発生する懸念が例年以上に高まっている。宅配業界との間で人材の争奪戦が激しくなり、ドライバー不足が見込まれるためだ。採用コストが高くなれば利用料金の値上げを招きかねず、「宅配危機」の余波が思わぬ形で出ている。
 「引っ越しはできるだけ早く業者に申し込んで下さい。荷物を少なくして宅配便で送ることもお勧めします」。東京都や千葉県で女性専用の学生寮を運営する北園会館は先月から、見学の入居希望者らにこう説明している。提携の引っ越し業者から「例年以上にドライバーの人手が足りず、依頼を断る可能性もある」と告げられたからだ。「これまで、そんなことはほぼなかった」(広報)。国立大の合格発表が続いており、地方の学生の引っ越し予約は今後さらに増える。
 企業や官庁の人事異動もあり、3月下旬〜4月上旬は業者にとってはかき入れ時だが、今年はやや状況が違う。アップル引越センターの文字放想(もんじゆきお)社長は「今年は依頼を100件以上、断らざるを得ない。人手が3割前後足りない」という。
 違法な長時間労働の発覚をきっかけに宅配業界がドライバーらの待遇の改善に踏み切り、その影響で、引っ越し業界からの転職が相次いでいるという。アップルでは昨年、正社員ドライバー約10人が流出した。引っ越しの学生アルバイトも、日給を例年より約3千円増の1・6万円前後にしたが、人手の確保は芳しくない。きつい仕事として敬遠されがちなうえ、他に割のいいバイトがあるからだ。
 求人サイト運営のマイナビによると、引っ越し関係の求人は「昨年の同時期の2倍ぐらい出ている印象」(広報)という。」
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