🌁49〉─9・B─トラックドライバー不足を「外国人労働者」で穴埋めしようとする発想。~No.244 ㉜ 

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 2023年5月7日 MicrosoftStartニュース Merkmal「トラックドライバー不足を「外国人労働者」で穴埋めしようとする発想の耐えられない軽さ
 出島造(フリーライター
 減少する労働人口と「2024年問題」
 外国人労働者で人手不足を補充する――。移民受け入れの是非が現実的な問題となっているなか、トラック業界でも外国人労働者導入に向けた本格的な検討が始まっている。
 【画像】えっ…! これがトラック運転手の「年収」です(16枚)
 全日本トラック協会全国ハイヤー・タクシー連合会日本バス協会はいずれも2023年度の事業計画に外国人労働者導入に向けた取組を明記している。トラック業界では、2024年4月の働き方改革関連法施行により発生する「2024年問題」が大きな課題となっている。その解決の手段として、外国人労働者導入は、どれだけ有効なのか。
 2024年問題というキーワードでまとめられる、トラック業界の問題は多様だ。そのなかでも、ドライバー不足はいっそう厳しいものとなる。新たな働き方改革関連法では、ドライバーを対象にした時間外労働の上限が年960時間に制限される。このため、トラック業界ではより多くのドライバーを確保する必要に迫られる。
 また、低賃金のドライバーは時間外労働によって収入を確保することが常態化している。そのため、収入を増やす手段としての時間外労働が制限されるとなれば、離職を検討する人も増える。こうした“負の連鎖”によってドライバー不足は深刻化するのだ。
 人手不足はトラック業界だけではなく、あらゆる業界で深刻化している。少子高齢化がさらに進めばより厳しいものとなる。
 労働政策研究・研修機構(東京都練馬区)の調査によれば、2017年時点での労働人口は全国で約6720万人。これが、2040年には約5460万人まで減少するとしている。あと二十数年後には、社会を支えている労働力が約2割減るのだ。
 労働力の減少という事態において、人工知能(AI)などさまざまな最新技術を使って解決を図る動きはある。しかし、最新技術で解決が可能なのは一部の業界に限られている。そのため、多くの業界では外国人労働者の確保を唯一の解決策として、制度の導入を求めている。
 時代錯誤的な全ト協
 トラックドライバー(画像:写真AC)
 © Merkmal 提供
 全日本トラック協会が求めている外国人労働者の導入とは、どういうものか。2023年度版の事業計画書には、次のように記されている。
 「外国人労働者の導入に向け、国内免許の取得や政府の有識者会議における制度見直しなどの課題はあるものの、一連のドライバー業務を外国人在留資格の「技能実習」に追加することについて引き続き関係機関と調整を進める。また、労働力確保を目的とした「特定技能」についても、関係機関と調整を進める」
 「技能実習」とは、いわゆる外国人技能実習制度のことだ。これは、日本で得た技術や知識を開発途上国へ移転することで、国際協力を図ることを目的とした制度だ。現在は、2017年に施行された「外国人の技能実習の適正な実務及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」によって、運用されている。
 しかしこの制度が、技能実習とは名ばかりの低賃金労働者を確保する手段となっていることは、これまでも数多く報道されている。
 この制度では90種類を超える職種で外国人を雇用することが可能になっている。建前では開発途上国の出身者に技術を継承することとされているが、実際には
 「低賃金で外国人を雇用する手段」
 として悪用されている。
 この制度で来日した外国人は転職が禁止されているため、低賃金どころか賃金未払いも横行、劣悪な環境で身柄を拘束され働いている。長野県川上村の特産品であるレタスの収穫や北海道猿払村のホタテの殻むきは、外国人実習生なしには成り立たない産業とされている。
 しかし、そうした単純労働に従事させる行為が技能実習となっているとは考えられず、幾度も問題として取り上げられてきた。そして、2023年4月には政府でも制度廃止に向けた検討を本格化させている。
 既に批判が殺到し、廃止議論すら持ち上がっている制度を取り上げて「引き続き関係機関と調整を進める」とする全日本トラック協会の方針は、あまりにも時代錯誤的だ。
 「特定技能」とは何か
 トラック(画像:写真AC)
 © Merkmal 提供
 協会が事業計画書でもうひとつ触れている「特定技能」とはどういうものか。これは、2019年に導入された制度で専門職の高い技術を持つ外国人を対象にした制度である。
 この制度は技能実習と異なり、人手不足の解消や専門的な知識を持った外国人の受け入れを目的としたものだ。未経験で日本語の能力がなくても就労できる技能実習とは異なり、一定水準の技術や日本語の能力が要求される。
 この制度では、既に外国人がタクシードライバーとして就労することも可能になっている。ただ、タクシーが可能だから、トラックドライバーの導入もスムーズに進むというわけにはいかない。
 現在、外国人がタクシードライバーとして就労するためには、特定技能のなかで「特定活動46号」という在留資格を得る必要がある。この在留資格の要件は次のようなものだ。
●学歴
 日本の4年制大学の卒業及び大学院の修了に限られる。短期大学及び専修学校の卒業並びに外国の大学の卒業及び大学院の修了は対象にならない。
●日本語能力
・I:日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する者が対象(※日本語能力試験については、旧試験制度の「1級」も対象となる)
・II:その他、大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した者についても、Iを満たす
●業務
 日本語を用いた他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であり、学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれている、又は、今後当該業務に従事することが見込まれること。
 このように、極めて高い能力がなければ外国人はタクシーのハンドルを握れない。ここまで高度な能力が求められている理由は、それ以外のことも想定されているためだ。
 「新たな労働問題」を生む火種に
 トラックドライバー(画像:写真AC)
 © Merkmal 提供
 この在留資格の目的は、インバウンド需要の増加を見込み、外国人観光客に対して通訳や観光案内も行える人材を確保するためだ。タクシードライバーとしての業務だけではない“付加価値”が求められているわけだ。
 そのため、トラックドライバーは目的の範囲外である。なにより、在留資格の範囲をトラックドライバーに広げたとして、こんな高度な能力を持つ人材が、かつてならともかく、低賃金長時間労働のトラックドライバーを選ぶはずがない。
 全日本トラック協会の事業計画書を見てみると、過去から一貫して、現在の制度にトラックドライバーを組み込むことを求めていることがわかる。しかし、2023年になっても技能実習での外国人労働者確保に言及しているあたりに、感性の鈍さを感じる。単に、人手不足を解消するために、なりふり構わず外国人労働者の導入を図っているだけなのだから、開いた口が塞がらない。
 トラック業界だが、2024年問題の原因を解消できていない。
・荷主都合による待機で労働が長時間になっている
・ドライバーが無償で荷物の仕分けなどを強いられる慣習が常態化している
 ことは放置されたままだ。こんな状態で、外国人労働者を導入しても
 「新たな労働問題」
 が発生するだけなのは火を見るよりも明らかだ。なにより、これらの問題を解決できない各社が、外国人労働者を受け入れるための体制を整えることができるはずがない。
 トラック業界の勘違い
 トラック(画像:写真AC)
 © Merkmal 提供
 ここからわかるのは、トラック業界の
 「外国人労働者は日本で働きたがっている」
 という、極めて旧態依然とした意識だ。
 彼らは日本で働きたいわけではない、高賃金な国で働きたいだけなのだ。アジア諸国が経済力を持つなか、もはや日本はその選択肢から外れつつある。
 1980年代の「ジャパゆきさん」的思考は古すぎる。もはや、日本人が海外に出る「からゆきさん」時代が訪れているのだ。そんななか、こんな意識では解決するものも解決しない。2024年問題が叫ばれながらも一向に解決策が見えないのは、こうした業界の化石化した思考のためだろう。
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