⛡286〉─2─AI導入で女性が職を失うリスクは日本が一番高い。〜No.676No.677   

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 2019年6月4日 msnニュース DIAMOND「AI導入で女性が職を失うリスクは日本が一番!「ガラスの天井」が深刻化
 岩本晃一
 © Diamond, Inc 提供 Photo:PIXTA
 AIやIoTなどのデジタル技術が職場に導入されると雇用や働き方に影響が出ることは、多くの研究や現在、導入されつつあるRPA(Robotic Process Automation 事務職の単純業務の自動化技術)で、銀行や自治体で人員削減が進んでいる現実を見れば一目瞭然だ。
 20年後、AIに職を奪われる女性
 30ヵ国で2600万人という推計
 最近でも、AIやIoT導入が女性の働き手に及ぼす問題を指摘した最も有名な論文が、IMFInternational Monetary Fund 国際通貨基金)のホームページに2018年11月に掲載された。
 この論文は、エラ・ダブラ・ノリス(Era Dabla-Norris)IMF財政局課長とカルパナ・コーチャー(Kalpana Kochhar)IMF人事局長の2人がまとめた。
 2018年11月16日にIMFのブログに掲載したもので、「女性、技術、仕事の未来(Women, Technology, and the Future of Work)」と題されている。
 同論文は、「私たちの調査によれば、更なる自動化は特に女性を大きく変える(Our new research finds the trend toward greater automation will be especially changing for women.)」
「女性はこれまで以上のガラスの天井に直面することになる(More than ever, women will need to break the glass ceiling)」
「女性は危機に直面している(Women at higher risk)」というサブタイトルがつけられている。
 抜粋を紹介すると、次のように記されている。
 私たちの働き方はかつてない速さで変化しており、デジタル化や人工知能(AI)、機械学習によって、低技能や中技能の定型業務を伴う仕事の多くが自動化され消滅している。
 自動化がさらに浸透していくこの傾向は、とりわけ女性に厳しい課題をつきつけるだろうことがIMFの新しい研究でわかっている。
 自動化によって男性が仕事を失うリスクの平均は9%であるのに対し、女性が仕事を失うリスクの平均は11%である。
 自動化が理由で失業している男性も少なくはないものの、調査対象30ヵ国で2600万人の女性が今後20年間にテクノロジーに仕事を奪われるリスクの高い仕事に就いていると推計される。
 この結果を踏まえて世界全体について試算すると、全世界で1億8000万人の女性がこうしたリスクの高い仕事に従事している計算になる。
 職場における男女平等を実現しようとするならば、こうした動向が女性の生き方に与える影響を理解しなければならない。
 この論文は、調査対象の30ヵ国(OECD加盟28ヵ国とシンガポールキプロス)で、仕事ごとに、機械で代替される可能性をだし、その数値が70%以上の仕事に従事してい人を、自動化によって「仕事を失う(奪われる)リスク」の高い人として、男性、女性ごとに推計し全体のなかでの割合などを出した。
 また論文では、自動化で仕事を失うリスクの男女差は国によって違うことも示している。
 下の図は、縦軸に「自動化されるリスクの差(女性対男性)」を示し、横軸に「女性の就労率」を示している。
 「自動化されるリスクの差(女性対男性)」とは、女性全体の就業者のうちの機械で代替される可能性のある仕事に就く女性の割合を、男性全体の就業者のうち機械で代替される可能性が高い男性の割合で割った数字だ。
 1よりも大きいと、自動化で職を失う可能性が、女性の方が男性よりも高いことになる。日本は、3.4程度であり、女性の方が職を失う可能性が男性よりも3.4倍高いことを示している。
 しかも、日本は女性の就業率(それぞれの国の女性全体のうち働いている女性の割合)は他国よりも低いので、図では左上に位置している。
 仕事を失う女性は男性の5倍
 日本の女性がリスクが一番大きい
 このIMFの論文は、特に日本の女性が自動化で職を失うリスクが調査対象の30ヵ国(図は19ヵ国)で最も高いと警告している。
 なぜなら、日本では、企業活動の中心は依然として男性であり、女性はその補助役という労働慣行が根強く残っており、最近、導入されつつあるRPAなどのデジタル技術は、女性の仕事に最も強く影響を与えるからだ、としている。
 デジタル技術による雇用への影響は、雇用形態や業務内容、働き方や仕事の内容などに違いがある以上、当然ながら違いが出てくる。
 正規職員よりも非正規職員の方に、また総合職よりも一般職の方に強く影響が出ると考えられ、日本では、非正規や一般職とも女性の割合が多いからだと考えられる。
 ただこのことは、他国でも日本ほどではないにしてもみられる問題であり、IMFの論文は次のようにも記している。
自動化を進めつつも女性による経済貢献を確実なものにするために、各国政府は今どのような政策を実施できるだろうか。
 女性はより高いリスクに直面している。
 女性の多くが働く業種や職種が自動化されるリスクが高いとしたら、有償労働に従事する女性の数を増やし、女性の賃金を男性と同等まで引き上げるための政策を通じてようやく実現された改善が短期間のうちに水泡に帰してしまうかもしれない。
 40歳以上の女性や、事務職、サービス職、販売職に就いている女性は不釣り合いに大きなリスクに直面している。
 学歴が高卒以下の場合、現在の仕事が自動化されるリスクの高い男性の(働いている男性全体に対する)割合は40%である一方で、同様の女性の割合は50%近くである。大卒以上の女性の場合、このリスクは1%である。
 こうした男性と女性のリスクの差は、職種や業種ごとにみた下の図でもわかる。
 図では、職種や業種ごとに、機械に代替されるルーティン業務の存在比率(ルーティン業務の密度、RTI:Routine Task Intensity )を数値化し、「RTIレベル」としている。
 そして、その職種や業種で、ルーティン業務をしている男性と女性の比率の差を「RTIギャップ」としている。
 また、職種や業種の円の大きさは、それぞれの職種や業種で働く人の数の多さを示し、また円の色が濃くなるほど女性労働力の割合が高くなっている。
 例えば、職種でみると、専門職は機械に代替されるルーティン業務の比率が低い一方、男女比はほぼ1に近いのに対して、事務職はルーティン業務の比率が高く、ルーティン業務をしている男女比は女性が高い。
 業種でみれば、健康や教育では、ルーティン業務が多く残っていて、機械に代替されるリスクが大きい。RTIギャップ(男女比)はほぼ1に近いので、男性と女性がほぼ同じようにルーティン業務をしているが、就業者数全体やその中での女性労働力の比率が高いので、女性が職を失うリスクが高いといえる。
 デジタル経済で、女性の働き手が厳しい状況に置かれやすいことを示した論文をもう2点、紹介しよう。
 1つ目は、オックスフォード大学のリンダ・スコット(Linda Scott)教授が2018年2月26日に発表した「ジェンダー平等と第四次産業革命(Gender Equality and the Fourth Industrial Revolution)」である。
 スコット教授は、2015年に雑誌『プロスペクト』による「世界思想家トップ25人」に選ばれた実績を持つ(Professor Scott was selected as one of the Top 25 Global Thinkers by Prospect magazine in 2015)。
 この論文の結論だけを紹介すると、仕事を失う女性の数が男性の5倍である、としている。
 2つ目の論文は、ダボス会議を主催しているWEF(World Economic Forum 世界経済フォーラム)が執筆したもので、「産業のジェンダーギャップ:第四次産業革命における女性と労働」(2016年1月)と題されたものである。
 この論文の結論だけを紹介すると、今後のデジタル技術の進展により、男性は、1人の雇用増に対して3人が職を失うのに対して、女性は1人の雇用増に対して5人が職を失うというものだ。
 銀行や自治体でRPA導入
 非正規の女性が削減対象に
 では、実際に今、日本ではどのようなことが起きているか。
 企業では、3種類の職場で、急速にIoT、AIなどデジタル技術の導入が進んでいるが、このうち、女性の雇用に影響が出ているのは、事務部門で進む自動化だ。
 AIなどの導入が進む部署の第一は、デジタル技術を用いた新しい製品・サービスやビジネスモデルなどの開発や将来に向けた研究を行っている、いわゆる「研究開発」の部署だ。
 ただこの部署では、雇用で男女差は一切ない。今、企業は、デジタル分野の研究開発ができる人材が喉から手が出るほど欲しい。それに男女差はない。
 第二は、製造業の現場だ。新しいデジタル技術の導入が進んでいるため、それらの技術を使いこなせる人材、例えば、データエンジニアやデータサイエンティストが強く求められている。
 なぜなら、今の日本にそうした人材はほとんどいないからである。大学に、データエンジニアやデータサイエンティストを育成する学部学科がないことが大きい。
 また、生産現場で、デジタル技術が導入されたからといって、人員削減は起きていない。むしろ現状は、現場作業員の負担の軽減、高齢化で不足する人員の補充など、現場にとっても歓迎する形で導入が進んでいる。
 影響が出ているのは、RPAなどの導入が進む事務部門だ。
 RPAが代替する業務が、経理処理や帳票業務など高スキルのルーティン業務のため、その業務を担ってきた働き手に大きな影響が出ているのであり、それが主に女性なのである。
 RPAによって代替された人のうち正規の一般職は、配置転換などで対応されているが、非正規は雇い止めなどが今後発生してくると予想される。
 RPA導入により人員削減が進んでいる代表例が、低金利などで業績が苦しい銀行業界だ。
 3メガバンクは、2020年度の新卒採用を19年度の約2割減にする予定だ。各銀行は、店舗数も減らし、また店舗はデジタル化して人間がいない機械化された店舗を拡大する計画である。
 こうした人員削減の動きは学生にも敏感に伝わり、かつては人気就職先の1つだったのに、今ではAIやフィンテックに仕事を奪われる代表的な業種として、人気が低下している。
 地方自治体もRPAの積極導入が進められている分野の1つだ。
 総務省の調査によれば、2016年4月時点で非正規雇用者数は約64万人であり、2012年度の調査に比べて約4万5000人増えている。
 財政が厳しく、経費削減のため臨時・非常勤の職員を増やしているのだが、自治体で働く臨時・非常勤職員のうち女性が約48万人で74・8%を占める。また事務補助職員は約10万人である。
 しかい今後さらに、自治体がRPAを導入する動きは加速すると予想され、置き換えられて職を失う人の大部分は女性である。
 在宅勤務は増えるが
 多くは低賃金、不安定雇用
 一般にはデジタル技術が発展し、企業に導入が進めば在宅勤務(テレワーク)が増え、女性にとってメリットが大きいと漠然と考えられている。
 しかし実際は少し違うのではないだろうか。
 デジタル技術が進めば、確かに技術的には在宅勤務はしやすくなる。だが一方で、デジタル技術が進むと、企業の秘密情報が漏えいしやすくなるため、秘密を守る必要性が高まる。
 このことを考えると、在宅勤務に従事する人数は時代のニーズともに増えるかもしれないが、ある制約の下での増加であり、単純になんでもかんでも在宅勤務にということにはなりそうにない。
 まず、秘密情報を扱う人は、USBやパソコンの持ち込みや持ち出しを禁じられた部屋に出勤し、そこで仕事をするという形態が進むのではないか。
 例えば、新商品の開発を行う技術者は、企業の秘密の持ち出しを防ぐために、そうした環境の下で働くことになると予想される。
 これら技術者は、必ず機密が守られる空間に出勤して開発に従事することになり、在宅勤務などは考えられない。また男女の区別なく、優秀な才能だけが求められる。
 また、営業などの仕事も、新商品の開発情報ほどではないが、企業の外で機密情報を扱う仕事をする場合は、それなりに制約を受けるだろう。
 一方、漏えいしても構わないような情報を扱う簡単な業務が、外注(アウトソーシング)されたり、在宅勤務に回されたりするだろう。
 そのため、在宅勤務は簡単な仕事しか扱わなくなり、人数は増えるかもしれないが、賃金は安く、雇用が不安定になるのではないだろうか。
 専門的なスキルを持つ一部の女性はフリーランスの在宅勤務で高収入を得るようになり、女性の稼げる仕事の1つになるかもしれない。
 しかし子育て中の女性が在宅で仕事をすることが多い現状を考えると、デジタル化が進めば、テレワークが増え、女性にメリットを与えるという単純な図式にはならないと考えられる。
 最近の日本における論調は、AIが導入されれば、女性の働き方がより柔軟化・多様化され、テレワークの機会が増え、女性にとってメリットが大きいという意見が大勢を占める。
 だが、ここで記したように、世界の研究ではこれからAIが代替していく「より高スキルのルーティン業務」は女性にとって厳しい雇用環境を生み出し、また在宅勤務もさほど女性にはメリットを与えないというものだ。
 日本ではこれまで長い時間をかけて女性の社会進出が進んできたが、AI時代になって、これが一気に逆戻りする可能性がある。筆者はこの問題を「AI時代のジェンダー問題」と独自に命名している。日本はAIなどの導入で職を失う女性に対する対策を早急に講じなければならいない。
 AIが雇用に与える影響をよりきめ細かく研究し、漠然としたイメージや印象だけで物事を進めるのでなく、事実とデータに基づいた科学的な対策を打つ必要がある。
経済産業研究所日本生産性本部 上席研究員 岩本晃一)
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