🌁58〉─1─国際法違反。名古屋入管におけるスリランカ人女性拷問虐待死事件。~No.290No.391No.292 ㊵ 

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 2021年8月22日 MicrosoftNews プレジデントオンライン「「手や足を引っ張り、まるで動物のように…」30代女性に名古屋入管職員が行っていた"許されざる行為"
 © PRESIDENT Online 5月17日、遺族は名古屋入管を訪れ、ビデオ開示と真相解明を改めて訴えた
 今年3月にスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が名古屋入国管理局の施設で死亡した問題で、国は最終報告書を公表した。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんは「施設内でのウィシュマさんの様子を写した約2週間分の映像はごく一部が遺族のみに開示されたのみで、真相の解明とは言えない内容だった。2007年以降、入管施設では17人が死亡し、そのうち5人は自殺だ。このままでいいはずがない」という――。
 1人の留学生が収容され、亡くなるまで
 「人間を人間として扱ってほしい」――この言葉を何度、ウィシュマさんのご遺族から耳にしただろう。そう誰かに言わせてしまう社会は、果たして望ましい社会だろうか。
 3月6日、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が、名古屋出入国在留管理局(以下、名古屋入管)の収容施設で亡くなった。
 ウィシュマさんは「日本の子どもたちに英語を教えたい」と夢見て来日後、学校に通えなくなり、在留資格を失って昨年8月から施設に収容されていた。
 今年1月頃から体調を崩し、やがて自力で歩けないほど衰弱していく。嘔吐してしまうため、面会中もバケツを持っていたと面会を重ねていた支援団体などが指摘してきた。こうした状態に追い込まれても、点滴などの措置は最後まで受けられなかった。
 国連から「国際法違反」の指摘を受ける日本の「入管」
 そもそもこの「収容」とはどういった措置なのかということをまず振り返りたい。
 例えば、仕事を失ってしまう、困難を抱えて学校に行けなくなってしまう、パートナーと離婚するなど、様々な生活の変化によって、日本国籍以外の人々は、日本に暮らすための在留資格を失ってしまうことがある。空港で難民申請をした人の中には、最初から在留資格がない人もいる。
 「収容」とは本来、在留資格を失うなどの理由で、退去強制令書を受けた外国人が、国籍国に送還されるまでの「準備」としての措置という「建前」のはずだ。
 ところが、収容や解放の判断に司法の介在がなく、期間も無期限で、何年もの間、施設に閉じ込められたまま、いつ出られるのかも定かではない人たちもいる。
 昨年、国連人権理事会の「恣意的拘禁作業部会」が、こうした実態を「国際法違反」と指摘した。それ以前から、国連の「拷問禁止委員会」などの条約機関からも度々勧告を受けてきている。
 入管が「拷問していることを認めている」
 ウィシュマさんは、同居していたパートナーからのDVと、その男性から収容施設に送られてきた手紙に、「帰国したら罰を与える」など身の危険を感じるような脅しがあり、帰国ができないことを訴えていた。
 2018年1月、入管局長名で全国の入管施設に出された「DV事案に関わる措置要領」の改訂版には、DV被害者にどのように対応すべきかが細かく記載されていたが、職員にその存在さえ周知されていなかったことが「最終報告書」でうかがえる。
 ウィシュマさんはDV被害者として対応されることもなく、仮放免(一時的に収容を解かれること)を申請するも不許可となり、二度目の仮放免申請の判断が出る前に亡くなった。
 「最終報告書」では、ウィシュマさんの仮放免を不許可にし、収容を続けた理由として、「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国を説得する必要あり」などという記載している。
 これは本来掲げられている「建前」とはかけ離れたものではないだろうか。8月10日の記者会見で遺族代理人の指宿昭一弁護士は、「長期収容による身体的、精神的苦痛を与えて、意思を変えさせることを“何が悪いのか”と開き直っていますが、拷問していることを入管は認めている」と強く指摘した。
 全体としても、施設内の医療体制の「制約」など、表面的な改善点を挙げるのみに留まり、収容体制の根本には切り込んでいない。遺族の求める「真相解明」とは程遠いものだ。
 遺族だけに見せられた監視カメラの映像
 さらに8月12日、入管庁はウィシュマさんが亡くなるまでいたとされる居室の監視カメラのビデオ2週間分を、わずか約2時間分に切り縮め、遺族のみに見せた。
 姉が苦しみ亡くなる映像を見ること自体、あまりに精神的負荷が大きいことだろう。ところが代理人弁護士の同席は、「特別の人道上の対応としてご遺族にご覧いただく」「現段階においても保安上の問題などがあることから、ご遺族外への開示は相当ではない」という理屈にもならない理由を掲げられ、認められなかった。
 その状況でビデオを見せたこと自体もまた暴力だろう。指宿弁護士は、「代理人の制度を、法務省自ら否定している」、と憤る。
 結局、ご遺族は1時間10分ほどの映像を見進めた時点で中断し、ビデオを見たウィシュマさんの妹で次女のワヨミさんは、涙が止まらず、嘔吐してしまう場面もあったという。
 「人権なんてここに全くありません。姉を助けることはできたはずなのに、犬のように扱っていました」と震える声で語った。日ごろは穏やかに話すワヨミさんの、心からの叫びだった。「すべての外国人の皆さんに伝えたいです。明日はあなたの番かもしれません」。
 職員が馬鹿にしたように笑う場面も
 「最終報告書」には、2月26日午前5時15分頃、ベッドから落下したウィシュマさんが、「数回に渡り」インターフォンで職員の呼び出しを試みたことが記されている。2名の職員がベッドに戻そうとするも、持ち上げられず、勤務者が増える8時頃まで床の上に寝かせていたことが、さも「やむをえなかった」ことのように書かれていた。
 映像を見たご遺族によると、ウィシュマさんは泣きながらインターフォンで「23度」にわたり職員に助けを求めていたのに対し、職員は「そこには行けない、自力でやりなさい」と答えていたという。
 その後、職員が部屋に来たものの、手や服の一部などを引っ張り、ウィシュマさんに対し「肩を上げなさい」など自力で動くよう指示した上、「大声出さないで」などと対応したという。体を持ち上げてベッドに戻そうとする様子にはとても見えなかったという。
 「最終報告書」には、亡くなる5日前の3月1日、ウィシュマさんがカフェオレを飲もうとしたところ、うまく飲み込めずに鼻から噴出してしまう様子に、「鼻から牛乳や」と職員が発言していたり、亡くなった当日でさえ、反応を殆ど示さないウィシュマさんに対して「ねえ、薬きまってる?」などと発言していたと記されていた。
 だがビデオを見たご遺族は、他にもウィシュマさんの尊厳を傷つけるような発言があったと指摘する。ベッドの上で、自力で体を動かせないウィシュマさんを介助しようとした職員が、「重いですね」「食べて寝てを繰り返しているから太っている」と馬鹿にしたように笑う場面もあったというのだ。
 記者会見に臨んだウィシュマさんの妹、ポールニマさんは、痛がっているウィシュマさんに対し「手や足を引っ張ったり、まるで動物のように扱っていました。姉にこのような扱いをしたのであれば、他の外国人にも同じことをするのでは」と憤る。「ここで働く人間には心がないのでしょうか?」。
 暴言を吐いた職員について、この日の午前中に遺族と面会した入管庁の佐々木長官は、「注意と指導はしています」と述べるにとどめ、具体的な処分について踏み込んだ発言はなかったという。
 国は監視カメラの映像を隠し続ける
 あくまでも「保安上の理由」を国側は掲げ続けているが、過去に国賠訴訟の過程などで内部の映像は開示されている。
 2014年、茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」の入管施設でカメルーン人男性が亡くなった後、原告である遺族側が裁判の中で国に映像の提出を求めた。
 遺族側の代理人を務める児玉晃一弁護士によると、国側は裁判所に、職員がさも適切に対応していたかのように見える部分だけを恣意的に切り取り、編集した45分のビデオを“証拠”として提出してきたという。
 開示された監視カメラの映像を見ると、床をのたうち回るほどの苦痛を訴え続け、「I'm dying」「みずー」と叫ぶ、あまりに凄惨な状況がそこに映し出されているが、カメラはそんな男性に、対応にあたった職員がぞんざいな対応をし、体の上をまたいでいく様子も捉えていた。さらに、職員たちは監視カメラで男性の様子を観察しても、動静日誌に「異常なし」と書き込んでいたという。
 そもそもこれは、国の管理下の施設で起きた事件であり、ウィシュマさんが映るビデオは、佐々木長官や上川法務大臣の私物ではない。
 「収容という苦痛を与え、追い詰める」
 8月13日、真相解明とビデオ開示を求めオンライン署名を続けていた「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」が、5万筆をこえる署名を、丸山秀治出入国管理部長に手渡した。
 この日の署名提出会見には、小説家の中島京子さんも駆けつけ、「収容という苦痛を与えて、それから逃れるためには帰国しかない、というふうに追い詰める。収容施設はそのための“手段”と化しているのだと思います。そのことに反省がなければ、何度でも同じことを繰り返すでしょう」と訴えた。
 難民に門戸を閉ざし続ける日本
 こうした中、アフガニスタンではタリバンが首都カブールを制圧した。カナダのトルドー首相は早々に、他国への退避を求めるアフガニスタンの市民2万人の移住を支援する考えを示した。カナダは米国と共に2001年、アフガニスタンに侵攻した国でもあり、その意味での責任も問われてくるだろう。
 ただ、それ以外の国が何も応答する必要がないわけではないだろう。難民条約に加入している、日本はどうか。そもそも日本の難民認定率は1%にも満たず、難民条約に加入しながら、難民にほぼ門戸を閉ざしてきた。そして、入管での冷酷な処遇は、難民申請者に対しても変わらない。
 児玉弁護士によると、2001年、突然収容されたアフガニスタンの難民申請者が、解放後に顔を出して会見に臨んだ後、本人たちの銀行口座の残高など、本来の難民該当性とは何ら関係のない個人情報を公開されるなど、法務省からの嫌がらせがあったという。
 今後アフガニスタンからの難民申請者への適切な対応が必要である一方、入管行政の根本が変わらなければ、また人権侵害や無期限収容に苦しむ人々を生み出してしまうかもしれない。
 ウィシュマさんを最後の犠牲者するために
今回の事件はウィシュマさんの問題だけにとどまらない。2007年以降、17人もの人々が、入管の収容施設で亡くなっている。うち5人は自殺だ。このままの「幕引き」では、ウィシュマさんを最後の犠牲者にすることはできないだろう。上川陽子法務大臣は8月20日、再発防止に向け、省内に「出入国在留管理庁改革推進プロジェクトチーム」を発足させたことを公表したが、まっとうな検証なくしてどんな「改革」が成り立つだろうか。その前に、独立した第三者調査の実施とビデオの開示をすることが、真相解明のため、そして繰り返さないために、国として最低限果たす責務ではないだろうか。

                    • 安田 菜津紀(やすだ・なつき) フォトジャーナリスト 1987年神奈川県生まれ。NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事―世界の子どもたちと向き合って―』(日本写真企画)、『故郷の味は海をこえて「難民」として日本に生きる』(ポプラ社)、『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』(新潮社)他。上智大学卒。TBSテレビ「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。 ----------」

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