🌁64〉─1─円安で外国人労働者が離れていく?日本に魅力がない明らかすぎる理由。~No.308 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2022年10月20日 YAHOO!JAPANニュース ビジネス+IT「円安で外国人労働者が離れていく?日本に魅力がない明らかすぎる理由
 実質賃金が大幅に下落へ…日本で働く魅力が下がっている(Photo/Getty Images)
 進行する円安、実質賃金の低下など、外国人労働者が日本で働く魅力が低下している。外国人の「日本離れ」を表すかのように、ベトナム政府からは実習生に対する強気な待遇改善要請があり、影響は如実に表れてきている。外国人労働者を取り巻く環境はどのように変化しているのだろうか。
 【詳細な図や写真】技能実習制度は、低賃金、長時間労働などの過酷な環境での労働を強いられるなど問題も多い(Photo/Getty Images)
●円安と懸念される外国人労働者の獲得
 10月は2022年でもっとも大規模な値上げの月となり、さまざまな商品・サービスが値上げされた。今後も値上げが予測されるものも多く、また同じ商品が何回か値上げされているものもある。
 値上げの原因は、円安や原材料価格の高騰、原油高などによるものだ。ロシアのウクライナ侵攻による影響も大きく、日本にとどまらず、世界的に物価が上昇する中、円安が加速、多くの原料・商品を輸入に頼る日本では、さまざまな商品の値上げに終わりが見えない。一方で賃金は大きく伸びず、名目賃金が多少上がっても物価上昇に追いつかずに、名目賃金を物価指数で割った実質賃金は下がり、さらに家計を圧迫している状況だ。
 しかし、円安や物価上昇は、目に見える商品の値段を上げたり、家計を苦しくしたりしているだけではない。このままでは業界・職種によっては人材不足が加速する可能性もあるのだ。
 もし、米ドルなど海外の通貨に対する円の価値が下がり、日本企業の賃金は上がらないとしたらどうなるか?そう、外国人人材が日本で働く魅力が下がってしまう。
 今回は、こうした円安と外国人人材獲得への影響の懸念について整理する。
●知っておきたい、「特定技能」制度とは何か
 少子高齢化によって労働人口が減少している日本では、段階的に外国人人材の受け入れが進んでいる。今でも外国人人材受け入れに反対する人が少なくないが、そうした国民感情もあって、当初は単純労働については表立った受け入れを行わず、あくまでも技術・技能の提供という「技能実習」の制度で海外から人材を受け入れた。
 しかし、技能実習の制度は結局、その実態が非常に過酷な環境での外国人労働者の確保を目的としたものになってしまい、来日した技能実習生が逃げ出したり、さらに犯罪に手を染めてしまったりする問題も発生している。その後、正式に労働力の確保を目指して2019年にスタートしたのが「特定技能」の制度だ。
 「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2段階がある。特定技能2号では在留期間の制限がなく、働く本人だけでなく家族の帯同も認められるという、本腰を入れた外国人人材確保の制度となっている。さらに特定技能の制度はアップデートされており、今年8月の閣議決定でも分野ごとの受け入れ人数の調整や、分野の統合といった改善が盛り込まれた。特定技能2種の分野の増加や、在留期間の制限撤廃などの検討の話もある。
 しかし、コロナ禍の影響も含めて、特定技能での受け入れ人数は、国が定めた目標達成には遠い。そこに円安によるさらなる懸念が重なってきている状態だ。
 既に、円安による外国人人材への影響を如実に表した出来事が発生している。9月、ベトナムの労働大臣から日本政府に対し、在日ベトナム人労働者の待遇改善の要請が2回も行われたのだ。
●強気なベトナムに、「足元を見られる」日本
 ベトナムのダオ・ゴック・ズン労働傷病軍人社会事業大臣は、今年9月上旬に来日し、加藤勝信厚生大臣と会談、9月下旬にはハノイを訪れた中谷元首相補佐官と会談した。この際にズン氏から日本側に要請があったのは、ベトナム人実習生に対する住民税と所得税の免除だ。さらに最低賃金の引き上げ、技能実習の対応職種をベトナム人労働者が得意とする外食業、運転手、鉄道、廃水処理などへと広げること、技能実習や特定技能の制度改善にまで及んだ。
 こうしたズン氏の要請に対し、日本国内からは「足元を見ている」などと反発の声が聞かれるが、実際、ベトナムの通貨・ドンに対しても円は安くなっており、最低賃金が上昇しているベトナム国内と比べても、まだ日本で働く方が高い賃金を得られるものの、その差が急速に縮まっている状況だ。
 さらに、ベトナム人が選ぶ国外の働き先として、日本が諸外国と比べられた場合はさらに深刻だろう。ベトナム人の働き先となる国では依然日本がもっとも多く、次いで台湾、韓国などが挙がり、この両国、特に台湾の賃金は安い。しかし、ベトナム人人材はドイツなどの欧州や、オーストラリアが人材獲得に力を入れ始めている。最低賃金が約1,700円のドイツや約1,900円のオーストラリアと比べると、日本の賃金との間には大きな差が生まれてしまう。
 さらに円安の影響があり、家族への仕送りや借金返済などでベトナムに送金した際の目減りが大きくなりつつあることで、日本で働くことの魅力が以前より低くなってしまっている。
 日本では外国人労働者の受け入れに反対する人々も少なくないため、外国人人材にとって日本が魅力的でなくなることをむしろ歓迎する声もある。とはいえ、技能実習制度が誕生してから30年近く外国人人材を受け入れ続けてきた業界にとっては、外国人が来日しなくなる影響は大きいだろう。
 今年や来年などに外国人人材の就業が急速に低下することはなく、それでも就業は増えると言われている。しかし、これまで安い労働力として外国人人材を受け入れてきた企業はさまざまな見直しが必要だろう。
セイコーエプソンJVCケンウッド、国内回帰する日本企業
 実際に国内の労働力の見直しが始まってている。生活用品大手のアイリスオーヤマが、製品の生産を中国から日本国内に移すという。生産拠点の移管の話だが、海外のコストが上昇し、日本国内のコストが相対的に下がったことを物語ると言える。
 他にもセイコーエプソンJVCケンウッドなど海外で生産していた製品を日本国内での生産に切り替えたメーカーも見られ、国内生産拠点の増強を行うメーカーも多くなっている。
 こうしたメーカーの国内回帰は、海外の人件費を含めたコストの増加や円安だけでなく、日本への輸送コストの増加や、国際情勢によるリスクなども背景にあるが、それでも相対的に海外における日本企業の影響力が弱まっていることが印象付けられる。
 ベトナムや中国、インドネシアなどの国では、日本企業の生産拠点も多く、また日本で働く労働者も多い。こうした国の拠点が縮小・撤退したならば、その国の人が日本で働きたいと思うかにも影響が出る可能性がある。
 さて、生産拠点の国内回帰を目指すメーカーは、国内でもある程度人材確保のめどがある、もしくはロボット化ができる企業なのだろう。しかし、現在、外国人人材が必要とされる職場は、日本人のなり手も集めにくい職場だ。今後もし、外国人人材の確保が難しくなったなら、こうした産業はどのように対応すべきなのだろうか。
 たとえば、ロボット導入を含めた自動化も対策の一つだろう。外食産業での券売機設置やタブレット端末導入、セルフサービス店舗なども、コロナという背景もあったと思うがかなり進んできている。しかし、自動化が難しく人員配置が必要な職場もまだまだあるだろう。
 シニアの転職支援をしている身としては、長い経験とスキルを持ち、即戦力として投入しやすいシニア人材の活用をお勧めしたい思いはあるが、そもそも、物価上昇に比べて賃金の上昇が低いことや、所得税・住民税などの税負担については海外人材だけの問題ではなく、国内の労働者の立場でも苦しみを感じる問題である。なり手がいないが社会で必要とされる仕事については、国の主導で待遇改善や人材育成を進めていく必要があるかもしれない。
 少子高齢化が止まらない日本では、「とにかく人数を集めたい」「とにかく安い人材を雇いたい」といった考えでは、労働力を確保できなくなっている。企業としても、これまでの社員の仕事内容や役割にとらわれず、場合によっては既存業務から一部を切り出し、他の役割と融合して新しい職種を創るといったような、大きな改革が求められる日が来る可能性がある。
 執筆:シニアジョブ 代表取締役 中島康恵」
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