🚱32〉─4─「管理会社が突然撤退」「マンションの管理人がいなくなる」恐怖とその対策。~No.142No.143No.144 

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 2022年10月28日 MicrosoftNews 現代ビジネス「【現在多発中!】「管理会社が突然撤退」「マンションの管理人がいなくなる」恐怖とその対策
 マンションを襲う「第3の老い」…管理人がいない!
 マンションや団地などの集合住宅を長期的な視野で考えると、「建築物としての老朽化」と「居住者の高齢化」は、「マンションを襲う2つの老い」などと呼ばれてきました。それぞれ「修繕費が高額になってしまう」「居住者の経済力が低下し大規模修繕が難しくなる」などの深刻な問題につながり得るからですが、そうした管理不全が起きてしまうマンションが社会問題化しています。
 しかし、その2つの老いだけではなく、「3つ目の老い」という問題が起きていることをご存知でしょうか? それは「マンション管理会社のスタッフの老い」です。
 背景となるのは高齢者を巡る「働き方改革」です。近年、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるよう、環境の整備を目的として「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されました。これにより、70歳まで定年を延長する企業が増えました。
 かつて、定年退職の平均年齢が55歳だった時代には、「マンションの管理人が定年退職後の再就職先の定番」などと長らく言われたものでした。しかし現代の定年は企業によっては70歳ですから、それから管理人の仕事に就くのは体力的にも精神的にも負担が大きいことのように思えます。
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 テレビドラマに出てくる管理人は、椅子に座り小窓から顔を覗かせていて椅子に座っているだけの簡単な仕事のようにも思えますが、実際の仕事は高齢者にとってはなかなかの重労働です。階段の上り降り、広い敷地の掃き掃除、植栽の水やり、雑草取り、朝のごみ出しなどは、多くのマンションでは基礎的な管理員業務になっているからです。それに加えて実際の作業としては、受付業務と点検業務、工事などの立ち合い業務もこなさなければなりません。最近では、パソコンの基本操作以上のスキルも求められます。
 このように意外とハードな仕事ぶりが求められるマンション管理人ですが、新しいマンションが建設されるとゴミ出しなどの問題で近隣住宅からの苦情が増えることから、大都市ではマンション建設に関わる条例として、小さいマンションでも一定時間管理人の駐在を義務付けている地方自治体も増え、こうした管理人の需要は増える傾向にあるのです。
 「高齢者の働き方改革」が招いた管理人の不足
 一方で、かつては「高齢者の就職の定番はマンションの管理人」などとも言われた高齢者の再就職先ですが、最近ではコンビニエンスストアファストフード店ファミリーレストランなど、シニアを積極的にパート・アルバイトとして採用する企業は相次いでいます。このような業界に限らず、高齢者の働く場所が多くなったので、3K労働(きつい、汚い、危険)と言われるマンションの管理人や清掃員の人手不足は大きな問題になっているのです。
 ある管理会社の話では、法律で定められた「最低賃金」で募集しても反応がないので、その2割増し、3割増しで募集をかけているそうです。特に、小さなマンションはゴミ出しと日常清掃だけで2~3時間という短い勤務時間になるので、時給をそれよりもさらに上げなければ集まらないそうです。
 人手不足なので求人のため、求人誌、新聞での募集など広告費用も増えているようです。管理員・清掃員の募集費用に毎月平均450,000円、面接費用に応募者18名、採用人数6名として一人採用するのに7万円以上かかるといいます。そして、人員不足を解消するために定着率を上げようとして皆勤賞、賞与(薄謝)を支給するなど賃金もどんどん上昇しています。
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 そうした間接経費があまりにかかるので、マンション管理組合の理事会で、管理会社との委託契約更新の話し合いで「管理員から時給1,100円で働いていると聞いている。どうして管理員業務費用がこの金額になるのか!」と担当者に詰め寄る場面も珍しくありません。実は「管理員業務費」は時給などの直接人件費に加え、前述の募集費用や社会保険料、交通費などの多くの費用が間接費用として掛かるのです。
 一般企業と異なり、管理員業務、清掃業務はその業務に当たる人数も契約に明記されています。一方で2019年4月から労働基準法が改正され、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち 年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
 ですので一たび、管理員や清掃員が休暇をとる場合には、代行の管理員、清掃員を補充しなければならないため、その分の費用も掛かるようになりました。代行の場合は通常人件費の1.5倍かかるといわれています。このような背景から、首都圏のマンションでは管理員業務費を時給換算すると1,800円~2,000円位になるといわれています。
 管理会社から「突然の撤退」の申し入れ
 以上見てきたような状況から、管理員・清掃員等の人件費の高騰で管理会社の経営も採算割れになり、管理委託費の値上げをめぐり管理組合とトラブルになるケースが多発しています。
 以前は、親会社が分譲したマンションで親会社のブランド名が入っているフラッグシップ物件であるため、それに配慮して少しくらいの採算割れも企業努力で何とかしてきたというような背景もあったのですが、最近ではそうしたフラッグシップ物件でも管理組合が値上げを拒否した場合、管理会社が容赦なく契約を解除するという事例も多くなっています。
 国土交通省が公表している『マンション標準管理委託契約書』https://www.mlit.go.jp/common/000027774.pdf では、相手方に対し少なくとも3ヵ月前に書面で解約の申し入れをすれば管理委託契約の解約はできます(第19条)。
 もしこのような事態となり管理会社が撤退すると、管理員は来ないのでゴミ出し、清掃は管理組合および居住者が自分たちでやらなければいけませんし、たとえば突然の漏水、停電、断水などが起きた際にも、自分たちで業者に依頼するなどの緊急対応をしなければなりません。
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 さらには管理費・修繕積立金の徴収なども自分たちでしなければなりません。引っ越しの届け出があると、引っ越し業者に廊下やエレベータにキズを付けられないように、段ボールなどで養生しなくてはなりません。自転車置き場のどこが空いていて、誰がどこを借りているかもわかりません。わからない事だらけです。
 さらに言ってしまうと、管理委託契約書の別表1~4まで全部を自分たちでやらなければならないことになります。ほとんどのマンションの管理組合は、管理会社に全てを任せているため、管理組合が会計担当理事や設備担当理事という役割を担っていても、結局は何もできないことを思い知ることになります。そもそもの「管理会社が変わった」という通知を出すための組合員名簿がどこにあるのかを知らない管理組合も多いと思います。
 突然、管理会社の撤退を通告され、今まで管理会社を怒鳴りつけていた管理組合の理事も初めて、事の重大さに気が付くことになるのです。
 失敗しない管理会社の探し方、変更の仕方
 一般に管理会社の変更は管理組合の総会決議事項なので、新しい管理会社を探して組合員に理解してもらうために数社から相見積もりを取得して説明会を開催したり、アンケートをとったりして丁寧に合意形成を得る必要があるため、期間としては少なくても半年以上の期間が必要です。
 そのため、先の「3ヵ月前に管理会社から突然解約通知を受ける」ということになってしまうと、管理組合が右往左往してしまうのはあたり前なのです。こうしたことを背景に、管理組合の理事会は管理会社からの「解約、撤退」という威嚇に屈するほかないことが多く、仕方なく提示された金額で管理委託契約を継続してしまうことが多いのです。
 管理会社と価格交渉するには、適正な相場価格や、同業他社の委託費用などと比較する必要があります。そのため、管理委託費の適正な金額を知りたいというご相談は多く寄せられます。しかし国土交通省のマンション総合調査でも、管理委託費の平均の金額などは公表されていません。それは、マンションの管理委託費は築年数、規模、設備、清掃の頻度、管理員の勤務時間等により大きく変わるので平均の金額が出すことが困難だからです。
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 そのため、取れる手段として残るのは同業他社数社から相見積を取って比較することで、適正な金額なのかぼったくりの金額なのか比較できます。この時に必要なことは、管理の仕様書を作成して同じ仕様で見積を取得することが重要です。管理組合で仕様書を作成することが困難な場合には、現行の管理会社の管理委託契約書の別紙1の内訳明示の金額だけを黒塗りにしてコピーして仕様書の代わりしてもいいでしょう。
 良い管理会社を探すにはどのようにすればいいのでしょうか。
 悪い管理会社に引っ掛からない方法しては、「国土交通省のネガティブ情報検索サイト」を利用するといいでしょう。このサイトでは最近2年分のマンションの管理の適正化の推進に関する法律に違反して行政処分等を受けた情報を公開しています(国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト (mlit.go.jp)。行政処分を受けている管理会社を選考から外すことができます。
 また他に具体的な選考方法としては、マンションの業界誌などが、フリースペースを設けて無料で管理会社の紹介記事を掲載するサービスがあるので、それを利用することで多くの管理会社を知ることが可能です。また、近隣のマンションでご自分のマンションと同規模のマンションの中で、管理の行き届いたマンションをいくつか選んでその管理員に色々ヒアリングしたり、その管理組合の生の声を参考にしたりして、その管理会社を紹介してもらうなども良い方法と言えます。
 マンション管理は時間や労力だけではなく、建物設備の専門知識、法律の知識などが必要です。そのためには、管理会社と信頼関係を構築して、その管理会社に依存し100%のサービスを受けるのでなく、居住者のお一人お一人がそのサービスの一翼を担う気持ちで住み続けることが必要なのです。
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