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2024年2月19日 YAHOO!JAPANニュース Wedge(ウェッジ)「国外に脱出する」インド人と中国人 変わる〝大国の条件〟日本も他人事ではない!
2024年1月31日付のウォールストリート・ジャーナル紙で、同紙コラムニストのSadanand Dhumeは、「米国に不法入国してくるインド人や中国人がこの2~3年間に急増している。また、富裕層のインド人、中国人の合法的移住も多い。多くの人が逃げ出す事実は、両国を超大国の台頭と呼ぶにふさわしいか疑問を生む」と問題提起している。
地政学の専門家は、今を「アジアの世紀」と表現する。中国とインドの経済的台頭が、500年にわたる西側諸国の優位に終止符を打つと考えている。しかし、中国とインドは、世界の移民の大部分を占めている。国の繁栄と安定が保証されているのであれば、なぜ高学歴者や富裕層を含む多くの人々が国外に出ようとするのか。
23年度、インド人9万7000人、中国人5万3000人の不法入国者が見つかった。これは、21年度より、インド人は3倍以上、中国人は2倍以上である。
昨年、約5万5000人の中国人と約6万9000人のインド人が、卒業後1~2年の実務研修を受けて、米国での就職を目指した。インド人は現在、メキシコ人に次いで2番目に多い移民グループである。 中国人は3位である。
これらの移民パターンには、アジア世紀の信者が見落としがちな弱点がある。その一つは「富裕層」の流出である。
繁栄している国は、通常、資本や人材を惹きつける。富裕層を流失させることはない。しかし、22年、中国は1万800人の億万長者を失っている。2位はロシアで8500人、インドは3位で7500人である。
中国の場合、習近平が、民間部門を弾圧したことが大きな要因である。中国人は長い間、米国永住権を許可するEB-5投資家ビザを、どこの国より多く取得してきた。また、西側のパスポートは、中国において政治的混乱が再来した場合の保険である。
インドでは統治が行き届いていないことが、富裕層や高い教育を受けた人材を国外に流出させる。彼らは汚染された都市、税務当局による嫌がらせ、劣悪な公衆衛生プログラム、粗末な都市インフラから逃れたいのだ。昨年インド人は、EB-5投資家ビザを2番目に多く取得した。
これほど多くの中国人とインド人が超大国と目される両国から離脱している事実は、両国の台頭が果たしてどれだけ必然的であるか疑問を投げかけるものである。
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国を捨てる人たちはどう動くか
デュームの指摘は、一国の発展を見る上でとても重要な視点である。一国の国力を判断する際、経済力や軍事力等のハードパワーは重要な要素ではあるも、同時に「思想・表現・宗教の自由があり、安心して生活できる国か」、「生まれに関係なく、頑張れば夢を実現できる公正・公平な社会であるか」等のソフト面も大切な要素である。正に、富裕層も含め国民が大挙して退避するような国を「世界の超大国」と呼ぶことが適切かという疑問は、忘れてはならない視点だと思う。
デュームは、裕福な中国人が、ビザを得て中国を脱出する理由((1)習近平が民間部門を取り締まったこと (2)習近平の強硬姿勢が国民を怯えさせていること等)に触れている。
不法入国中国人の場合、米国のテレビ報道等によると、概ね次のようである。
「ビザなし」で入国できるエクアドルまで空路で行き、車や徒歩、船などで中南米諸国を通って直線距離で約3700キロ離れた米国に向かう。これらの人たちの多くが中級クラス以上で、移動のために5000から1万ドルを払う。亡命理由は(1)中国の夢」という理念に幻滅した、(2)自由が欲しいということに加え、(3)イスラム教徒(ウイグル人)、キリスト教徒など宗教上の理由を挙げる人もいる。
インドに関しては、デユームは、インド人が脱出を図る理由として (1)汚染された都市、(2)税務当局による嫌がらせ、(3)劣悪な公衆衛生プログラム、(4)粗悪な都市インフラなどから逃れたいとの点を挙げている。これらに加え、カースト制度、ヒンズー教とイスラム教の対立といった問題もあると推測する。
日本も考えるべき在留邦人の状況
中国人とインド人の海外脱出の増加は、日本にとっても人事ではない。日本は深刻な人口減と労働力不足に直面しており、その対策の一環として、現在、技能実習制度と特定技能制度の改正に取り組んでいる。
今年の通常国会で改正法案が審議される。また、AI関連技術者などの高度人材の受け入れにも取り組んでいる。向上心のある勤勉な外国人材(中国人、インド人を含む)を迎え入れることは、日本の将来にとって不可欠である。
この10年間で日本人の人口は約381万人減少している。22年の1年間で約75万人減少した。この人数は福井県の人口に相当する。毎年一つの県が消滅している規模の減少数になっている。
23年6月現在、日本に在留する外国人は、約322万人いる。中国人が1位で約79万人、2位はベトナム人約52万人、インドは約4.6万人で「その他」に分類されている。
在留外国人は10年前より約115万人増加し、日本人の減少分の約3分の1程度を補っている。また、23年10月現在、日本で働く外国人労働者は約205万人であり、この10年間で約3倍増となっている。
価値総合研究所の試算(22年2月公表)では、30年には約419万人の外国人労働者が必要と見込まれており、国を挙げての取組みが不可欠である。
岡崎研究所
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