¥20〉─1─都市銀行・地銀・第二地銀の破綻・廃業しない為の生き残り戦略。~No.96No.97No.98 @ 

住友銀行秘史

住友銀行秘史

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。  
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 2016年10月15日・22日号 週刊現代「このままでは銀行が潰れる
 まず信用金庫、地方銀行、そしてメガバンク
 有望な融資先を見つることはできない上、マイナス金利で経営は逼迫──そんな苦境のなか、銀行にさらなる脅威が立ちはだかる。
 ……
 カネの貸し先が見つからない
 『この国には銀行の数が多すぎる。しかも、担保を取って貸し出すだけで何の工夫もしないし、知恵もない。これだけ金融緩和をしているのに、融資を必要としている起業家たちにカネが回っていまいのはどういうことだ。金融機関がまともに機能していないから、日本ではアップルのようなイノベーション(技術革新)が生まれないんだ。
 自己保身しか考えない愚かな金融機関を潰さなければ、日本が滅びる。そうなる前に、一刻も早く銀行を淘汰と再編が必要だ』
 森信親金融庁長官はこう考えている。その思いが形になったのが、9月15日に発表された『金融レポート』だったすでに本業(貸し出しや手数料)。で赤字になっている地域金融機関は4割もあり、25年度にはもっと増えて、実に6割超で本業が赤字になるという衝撃的な内容だった。
 さらに同レポートは、『早期に自らのビジネスモデルの持続可能性について真剣な検討が必要である』とまで踏み込んだ。
 このままでは信用金庫や地方銀行などの地域金融機関は潰れる。私たちに警告を発した。それでも変わらないのなら、救う気はない。金融庁はそう言っているのである。
 『信金や地銀など中小金融機関は、人口減少で融資や手数料収入は増えないうえ、金利の低下で利ざやも減り、しかも体力がないから新しいサービスも始められない「三重苦」に陥っています。将来を考えると、「死ね」と言われているに等しい』(SBI証券投資調査部シニアマーケットアナリスト・藤本誠之氏)
 すでに地銀各行は他の地域と広域提携を結び、生き残りを図っている。だが、衰退する地方経済で有望な投資先など簡単に見つけられるはずもなく、ジリ貧から抜け出せていない。1つの地域に第1地銀、第2地銀をはじめ、信組・信金がある『オーバーバンキング』状態は、体力の低い金融機関から破綻を引き起こす。
 そして、危機に瀕しているのは地方金融機関だけではない。むしろメガバンクのほうが危機的かもしれない。その大きな要因は日本銀行が今年2月に導入した『マイナス金利』だ。
 元々、日銀はアベノミクスの『第1のエンジン』として、金融緩和で2%の物価上昇を達成し、経済を活性化させる役割を担っていた。しかし、目論見は大きく外れた。
 日銀はマネタリーベース(資金供給量)をアベノミクス以前の約7倍となる404兆円まで膨らませたが、世の中には回らなかった。百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が解説する。
 『銀行は融資先を見つけられない、もしくは貸したとしても少ない利ざやしか取れないため、銀行は余った資金で国債を購入したり、それを日銀に預けたりして運用してきました。日銀と銀行の間で国債と預金をやりとりするだけで、市中に資金が出回らなかったんです。これに業を煮やした日銀が、マイナス金利政策を導入することで日銀に資金を預ければ、逆にコストがかかるようにした。このため、メガバンクは大幅な減収減益に陥っている状況です。
 背景にはメガバンクの図体が大きい過ぎることが挙げられます。すでに民間から資金を集めて、成長産業に貸し出すといった、従来の銀行のビジネスモデルは成り立たなくなった。それなのに、高給で多くの銀行員を抱え、駅前の一等地にある支店の維持などのコストが大きい。今の利ざやでは銀行経営は苦しい。現状の数の銀行が生き残るのは難しいでしょう』
 老人相手の手数料ビジネス
 実際、マイナス金利メガバンクの収益を直撃している。金融庁の調査ではマイナス金利の影響で、3メガバンク合計で少なくとも3,000億円の減益になると試算している。
 もちろん、このような状況下でメガバンクも必死だ。顧客から手数料を搾り取ることで生き残りを図ろうとしている。
 ……
 『森金融庁長官は、「(ドラマの)半沢直樹になれ。企業を育てろ」、「銀行の利益ではなく、顧客の利益を考えろ」と銀行の尻を叩いています。顧客第一という姿勢に変わらないと、銀行は生き残れないという正論です。
 ところが、実際の銀行は顧客に損を押しつけて儲けようとしている。
 最近も、銀行が窓口販売している外貨建て生命保険について、銀行が高い手数料を取っていることが問題化しました。金融庁が銀行に手数料の開示を求めた結果、この低金利時代に約7%もの手数料を取っていることを渋々顧客に明かにしました』(金融ジャーナリスト・浪川攻氏)
 ……
 メガバンクに勤める30代の中堅行員がこう愚痴をこぼす。
 『銀行は投資信託や保険を売る「手数料ビジネス」にシフトしました。しかし、それも限界に近づいていると思います。
 商品内容を理解していない老人にリスクの高い商品を強引に買わせた上に損をさているのですから、当然ですよ。私だって手数料が高く損をする商品など売りたくないのですが、支店にいたとき、一度上司に文句を言ったら、「嫌なら別の商品を売っても構わないが、売り上げ目標は必ず達成しろ」と言われました。手数料の安い投資信託を売っていたら、ノルマに届かずこっぴどく叱られた経験があります。自分の将来を考えたら、今は嫌でも従うしかないと諦めていますが』
 こうした現状に、自身も信金で金融の最前線に立ってきた城南信用金庫元理事長の吉原毅氏が提言する。
 『元々銀行の仕事とは、お客様の夢を実現し、困っている人を助けること。この根元的な役割に立ち帰るべきです。技術はあるが経営が苦しい人や、新しいアイデアがあっても起業の仕方がわからない人は大勢います。そういう人を助けるために何ができるのかを、銀行員も徹底的に考える。
 そうしてお客様が成果を出し、新たなビジネスが生まれれば、そこで初めて自分たちも利益を得られるという風に発想を転換するべきです。
 そういう意味ではこれから最も苦しむのはメガバンクです。彼らの取引相手の中心は大企業ですが、大企業ほどすでに成長が終わっているからです。さらに成長しようとすれば、メガバンクもより大きくリスクを取らざるをえなくなる』
 ところが、メガバンクは本業に立ち戻るどころか、新しい分野に進出し始めた。フィンテックだ。
 これは金融(ファイナンス)とIT技術(テクノロジー)の融合を指す。
 AIを使って、小口融資の需要を掘り起こす。ロボットに窓口業務を担わせる。海外送金を手軽に行えるようにする。独自の仮想通貨を発行する、といったことが実現可能だと言われている。
 ……
 新しい技術によって、顧客にもっと便利で手軽なサービスを提供し、収益の核にしたいとメガバンクは息巻くが、経営コンサルタントの加谷珪一氏は、『認識の甘さ』を指摘する。
 『海外でフィンテックは銀行のビジネスを破壊する技術という認識です。フィンテック企業は銀行を滅ぼそうと考えており、銀行側は彼らを飲み込まないと自分たちは殺されるという強い危機感を持っています。
 ところが、日本ではフィンテックと言うと、資産運用へのアドバイスがこれまで以上に的確にできるとか、家計管理が楽になるといって金融サービスの利便性が高まることだと捉えられています。銀行側の人間でさえ、フィンテックの進歩を歓迎し、提携しようとしている。実に楽観的です』
 メガバンクが諸手を挙げて歓迎するフィンテックは、実は銀行にとって諸刃の剣だ。銀行の主要な業務の1つ、顧客の資金運用もAIに取って代わられるからだ。
 『人工知能が金融を支配する日』の著者で、東京銀行ソニー銀行で勤務した経験もあるRPテック取締役の櫻井豊氏が解説する。
 『金融の仕事のほとんどは数字を扱うものですが、人間にミスはつきもので色々なものを見落としますし、思い込みの余地も入ってしまいます。
 そかし、人工知能にはそういったヒューマンエラーはなく、膨大な数字を瞬時に分析して統計的なパターンを読み取り、適切な解答を導き出します。金融業界は人工知能の活躍にうってつけの場なんです。
 たとえば、どう資産運用をすればいいのかについて、人間では24時間チームを組んで働いたとしてもたどり着けないほど緻密な分析が可能となります。いくら優秀な銀行マンでも商品知識には偏りがありますからね』
 つまり、従来の『銀行員』も『銀行とその機能』もAIの時代には必要なくなる。フィンテックは、メガバンクの行員にとって悪夢になりかねない。メガバンクの海外事業担当の行員が話す。
 『著名な投資家ウォーレン・バフェット氏の投資先として知られる米ウェルズ・ファーゴ銀行は、いち早くフィンテックを導入しました。その結果、同行の支店は日本の銀行とはまるで違うものになりかした。
  コンピューターが業務のほとんどを処理してしまうので、行員がやると言えば、訪れた顧客にスマホの使い方を教えたり、融資の書類を処理したりする程度。このため、支店の広さは6畳間程度で、行員は2人ぐらいしかいません。不動産の賃料は安く済みますし、行員の人件費も安く抑えられ、多額の利益を叩き出しています。……』
 メガバンクの経営陣にとっては人件費のカットにつながるが、一方で、これまでとまったく違った仕組み作りと維持・更新には莫大な費用がかかる。金融知識に加えてITに精通した新たな人材の確保も必要となる。ただでさえ収益の悪化に苦しむメガバンクの経営を直撃するのは確実だ。
 『食われていく』運命
 加えて、システムが発生したら、メガバンクがこれまで築いてきた顧客からの『信用』という資産が一瞬にして崩壊しかねないリスクもはらんでいる。
 『これまでの銀行の最大の強みは、顧客からの信頼の上で資金の流れを見られることでした。カード決済をどれくらい使っているか、家賃はどう払っているか、金融資産はいくらあるかといったデータを蓄積していた。これは銀行が決済に使われているから得ている情報で、こういったデータを元に金融商品の売り込みなどを行っていた。
 ところが、フィンテックによって、資金の流れが銀行に見えなくなるという事態が起こります。すでに海外では銀行の口座ではなく、スマホを通じて給料を支払う仕組みができている。
 グーグルやアマゾンが決済のやり取りのすべてを抱え込むようにば、銀行はおカネの流れの外に置かれる。銀行は「リアルなおカネを預ける金庫」という、さえない存在になってしまうのです。銀行がいらなくなる日は十分にリアルティがあります』(楽天証券経済研究所客員研究員・山崎元氏)
 将来的には、銀行ではないところが銀行になる。その動きはすでに始まっている。前出の百年コンサルティング代表・鈴木氏が言う。
 『金融機関は数少ない融資先をフィンテック企業に奪われています。たとえば、飲食店はこれまで銀行のお得意様でした。ところが、フィンテックが会計アプリなどを提供して、飲食店の経営状況を把握するようになると、優良店を判断することができるようになります。銀行だけでなく、フィンテック企業にも「おいしい顧客」、つまり資金需要があり、健全経営をしている会社の情報がわかるようになる。そこに融資を持ちかけ、銀行から顧客を奪うといった状況がすでに出てきています。銀行の利ざやはますます減るので、体力のないところからどんどん潰れていくでしょう』
 メガバンクでさえ、このままでは3つも残らないだろう。金融業界のドラスティックな再編はもう間近だ。
 現在、顧客の預金が保護されるのは1行1,000万円まで。虎の子資産を逃がす先を、一刻も早く考えたほうがいい」
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 10月12日 産経ニュース「倒産件数は減少したが…消費低迷、先行き弱気 企業・家計とも回復実感できず
 企業倒産の減少は日本経済の回復がまた一歩近づいてきたことを印象づけた。ただ、日銀の9月全国企業短期経済観測調査(短観)で、多くの中小企業が先行き3カ月の景況感について弱気の見通しを持っていることが明らかになるなど、企業や家計は景気回復を実感し切れずにいる。
 東京商工リサーチがまとめた今年4〜9月期の企業倒産を業種別でみると、婦人・子供服小売が60件、紳士服小売が16件といずれも前年同期から4件増えた。原因別でも「販売不振」が最多の2886件と全体の約7割を占め、個人消費関連の弱さが目立った。
 今後の企業の景況感を探るカギとなるのは為替レートの動向だ。東商リサーチによると、平成28年3月期決算で、大企業は減収増益と「収益力の根強さを示した」のに対し、中小企業は増収減益と「利益なき成長」に終わった。担当者は「為替レート次第では、大企業から中小企業への発注単価の切り下げなど、中小企業の業績悪化につながりかねない」と警告する。
 元日銀理事の門間一夫氏は11日、日本記者クラブで記者会見し、「企業の成長期待を高める政策が必要だ」と述べ、政府に構造改革の取り組み強化を求めた。(米沢文)」
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 10月28日号 週刊朝日「地銀64行+第二地銀41行が全部で20行に再編!?
 地銀が消える日
 地元の〝名門〟だった地方銀行が大揺れだ。各地で人口が減り、地域経済を支えた中小零細企業の資金需要は細るばかり。そこにマイナス金利が決定的な追い打ちをかけた。全国に計105行ある地銀は今、戦国時代を迎えている。生き残る銀行はどこか。消えるのはどこか。
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 福岡市に本拠がある地銀、西日本シティ銀行や長崎銀行(長崎)などを束ねる持ち株会社『西日本フィナンシャルホールディングス(FH)』が10月3日に発足した。傘下に入ったのは証券会社、カード会社など計7社。2日前には、常陽銀行(茨城)と子会社に足利銀行(栃木)を持つ足利ホールディングス(HD)が経営統合し、『めぶきファイナンシャルグループ(FG)』ができたばじゃりだ。
 『地方銀行消滅』の著者、津田倫氏はこう語す。
 『全国の地方銀行は今、〝戦国時代〟を迎えています。地銀64行、第二地銀41行で計105行。経済情勢を勘案すると多すぎる。5年後には多くの銀行が統合や合併で消え、20ちょうどくらいのグループにまとまるでしょう。歴代、財務官僚が頭取に就いてきた〝大蔵銀行〟の横浜銀行(神奈川)まで東日本銀行(東京)と統合し、驚いた』
 津田氏は『再編が先行し、最初に決着するのは九州』とみる。……
 再編した西日本FH、めぶきFGは……
 マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストはこう指摘する。
 『両社に限らず、地銀の統合効果は決死して高くない。「座して赤字を持つよりはマシ」という動きです』
 原則に反して不動産にすがる
 九州最大の都市で、アジアへの玄関口としても知られる福岡市。その中心部、博多区は秋めく空気などどこ吹く風、熱く燃え盛っている、博多駅周辺で、ホテルの建設ラッシュが続いている。もともと宿泊施設が不足気味だったところに、訪日外国人客(インバウンド)が押し寄せ、需要が急増。少なくとも7つの建築プロジェクトが動き始め、2018年までに客室が1,000室も増える計算だ。
 博多区や福岡区では、住宅の建設ラッシュも続く。不動産経済研究所の松田忠司・主任研究員は『単身赴任需要が強い。ワンルームマンションなどが堅調な地域です』と指摘する。
 住宅ローン控除などの政策的な下支えに加え、相続税対策の機運も高まった影響か、九州では他の地域でもアパートや戸建ての建設が活発という。人口が減り、空き家が増えているにもかかわらず、だ。経済原則からすれば明らかにおかしい。そもそも、ホテルでも住宅でも、資金の裏打ちがなければ建設は進められない。
 九州にある地銀の現役支店長が内情を明かす。
 『銀行員にとっては、10年後を見据えて融資を判断したところで自分の人事評価にはつながらない・短い、せいぜい半年程度であげた成果で評価されるんです。そのために手っ取り早いのが、アパートローンあどの不動産融資。アパート建設計画で融資を求められ、目の前に億円単位の条件が来たら『ノー』とは言えないでしょう』
 地銀は従来、地域の企業や住民にきめ細かいサービスを提供し、強固な顧客基盤を持っていた。それが今や、将来性に疑問のあるような不動産開発に目が眩んでしまうというのだ。
 日本銀行によると、地銀を含む国内銀行による不動産業への融資残高(6月末時点、個人住宅向けローンは除く数字)は計68兆3,206億円と過去最高を記録。四半期ベースでみた不動産業への新規貸し出しも、もっぱら1兆〜2兆円台を行き来していたものが、8期連続で2兆円超が続いており、『不動産ミニバブル』だった06年前後以来の好調ぶり。バブル期、ミニバブル期に匹敵し、山脈のような高い水準を示している。
 住宅ローンの新規貸し出しをみても、6月末まで2期連続で4兆円超。連続はミニバブル期以来だ。SMBC日興證券のリポートによると、都市銀行が不動産融資に慎重な姿勢でいるのに対し、地銀の昨年の新規融資の半分を『不動産業』が占めているという。
 地銀がそこまで追い込まれた要因は何か──。
 マイナス金利に利益が食われる
 日本の銀行はバブル崩壊後の1990年代、過剰融資による不良債権問題を抱えた。97年に拓銀、98年に長銀日債銀が破綻。政府が都市銀行に大なたを振るい、再編が加速した。統合による規模の拡大、コスト削減効果などを見込まれ、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行といったメガバンクが生まれた。
 政府は全国各地の地銀・第二地銀の再編にも着手しようとしたが、不動産ミニバブルなどの資金特需もあって銀行業界は壱岐を吹き返し、このときは『笛吹けど踊らず』だった。
 ところが、潮目が変わった。2月に始まった『マイナス金利』だ。地銀の主な収入源は、預金金利と貸出金利の差などの『利ザヤ』と、送金と為替、投資販売などの手数料だが、日本銀行当座預金に預けた金額に応じ、世間より有利な利子をもらってきた。ここが、マイナス金利のせいで危うくなったのだ。
 さらに深刻なのは、預かったお金を運用するという本業の一角、債券運用への悪影響だ。
 S&Pレーティング・ジャパンの芳澤亮二・主任アナリストによると、地銀が運用する債券の平均的な運用期間は3.5年。満期が来れば、マイナス金利の影響で利回りが低下した別の債券に入れ替えるため、将来得られる金利収入は現在より少なくなる。
 芳澤氏の試算では、地銀がマイナス金利によって減らす利益幅は実施1年目に『対前年比15%程度』。都市銀行の倍だ。
 都市銀行の貸し出し事業では、海外比率が3割近くに達するが、地銀の貸し出しはほぼ国内限定。マイナス金利で被る負のインパクトが都市銀行より大きいのだ。債券入れ替えが進む3年後には、対前年比20%超の減益となる見通しというから驚きである。
 追い込まれた地銀の領域に〝巨人〟も進撃を始めている。
 もともと銀行業界には棲み分けがあった。都市銀行が大都市と大企業を相手にし、地銀は地方都市と中小企業を領地としてきた。ところが今、都市銀行という名の巨人が、地方に進出し始めているというのだ。
 前出の津田氏によると、目立つのは東北。東日本大震災で被災し、建て替えなどの復興が進む仙台など。東北にわく資金需要に直接的、間接的に巨人が食いつき、地元の地銀は気が気でない状況だ。
 野村證券の策動資金突き上げ
 さらに別の大きな影も迫る。金融業界のガリバーと呼ばれる野村證券、さらに政府系金融機関も現れた。
 ……
 政府系金融機関が繰り出す低金利の貸し出しも脅威だ。各地に店舗があるゆうちょ銀行も預金で競合。民業圧迫さながらだ。また、名古屋や東京では力のある信用金庫が台頭。とりわけ低い『名古屋金利』などを武器に、下から地銀を突き上げている。
 金融庁は9月、地銀の25年3月期の経営状況などの見通しを発表。貸し出しや投信販売などの本業で地銀全体のおよそ6割が『赤字転落』という衝撃的な試算を明らかにした。
 『名ばかり地銀』組織も弱体化
 わずかに残る〝水場〟を求めてさまよう地銀は、背に腹は代えられず、自ら壁を乗り越えて大都市圏にも進出。企業への貸し出しなども狙っている。
 ……
 統合しようがしまいが、判断力と行動力を持つ強い組織でないと苦境を乗り切れない。ところが、組織内で静かに崩壊が進んでいるという声もある。前出の支店長が言う。
 『最近の新入社員は学歴こそ高いが、コミュニケーションが下手。世間の動きにも関心が薄く、新聞やニュースも見ていない。今後を予測するための知識や知恵をつけ、融資先との相性を見つけ出して提案する力があれば、まだ資金需要はあるはずですが・・・』
 経営陣に対しても悲観的な見方を示す。
 『自分たちは若手行員の教育を上手くやっていると思っている地銀がほとんどだと思います。トップには「裸の王様」が多い。問題意識を持って人材教育をすればいいのですが、今から種まきをするようでは遅い。もう芽が出たぐらいでないと手遅れです』
 先行する欧州大幅人員削減
 地銀は再編の果てに消えるのか。
 火花を散らしている九州にある地銀(第二地銀を含む)は、全部で18行。『ふくおかフィナンシャルグループ(FG)』『西日本FH』『九州FG』の3つが中核的存在だ。これに加え、山口県から北九州銀行(福岡)を開業して九州進出を図る『山口フィナンシャルグループ(FG)』も4つ目の勢力となって対抗している。
 支店長は『もっと減る。最後は2つ』と予測している。地銀の将来について、こう続ける。
 『(ITと金融が融合する)フィンテックやAI(人工知能)の出現で、銀行窓口などの人も不要になる。いま我々が考えるべきは、どうやって自行の人材の高度化を図るからです。地銀は金融業だけではやっていけない。将来は農業や小売業も手がけないと。「銀行」という名前も消え、流通業から金融に参入したイオンなどに対抗できるような企業グループ化が進む。そうでないと、地銀はもう生き残れません』
 実際、横浜銀行群馬銀行(群馬)、東邦銀行(福島)、池田泉州銀行(大阪)などは続々と証券業務に進出。三井住友銀行秋田銀行(秋田)はコメ作り、鹿児島銀行はタマネギ栽培など、農業に手を広げる動きも出ている。
 経営統合しながら業態も多様化していく地銀。当面は、全国各地の再編劇が続きそうだ。芳澤氏が言う。
 『資金需要がない場合ではビジネスができない。県ごとにある地銀も昔は意味があったが、今では不自然。結局はどこの地域でも、需要のある中核都市に収斂していく。九州だったら福岡、東北だったら仙台。中核都市では止まらずに東京を目指すかもしれない』
 一足早くマイナス金利を導入した欧州の動きが未来の日本を暗示している。
 報道では、ドイツ銀行が世界で9,000人、英ロイズ銀行は1,230人の新たな人員削減を発表。直近の約1ヶ月間に欧州の各金融機関が発表した人員削減計画を合計すると、2万人規模にのぼるという。
 『欧州の銀行では審査業務にAIを使う動きが加速しています。人員削減の要因は、短期的にはマイナス金利。中長期的にはAI。日本の地銀も、職員や店舗を減らさずを得なくなるのではないか』(大槻氏)
 地銀の再編が、私たちにどんな恩恵をもたらすのか。吉澤氏はこう話した。
 『地銀再編後、成長が鈍化すれば、顧客サービスが低下する可能性はあります。そもそも、こちらが支払う金額に見合ったサービスしか期待できないのは当然のこと。これまで地銀は、採算の合わないサービスをしてくれていたとも言えます。フリーランチはない、ということです』
 本誌・鳴澤 大」
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 10月30日号 サンデー毎日五木寛之×荻原博子
 『嫌老』『反老』?豊かな国に広げる不安と不信
 『老人』vs.『若者』の階級闘争が起きるかも
 超高齢社会ニッポンの『異常事態』
 ……
 荻原 65歳以上の高齢者の6世帯に1世帯は、家や田畑を除いた金融資産だけで4,000万円以上を持っているという統計があるんです。
 ……
 {団塊サラリーマンの希薄な危機意識}
 ……
 まず、その世代(1947年から49年)の人たちはモノがない時代に生まれているのです、質素倹約が身についていることが一つ。調べたことがあるんですが、彼ら(団塊世代)は小学校の頃に『貯蓄教育』というのを受けていたんです。日本銀行が国民に貯蓄させ、その金で銀行が企業に融資し、工場を大きくして人を雇い、給料を払うという循環を作っていたのです。貯蓄は美徳という教育を受けているから浪費癖がない。しかも、団塊世代の大半は、就職してから会社というレールに乗っているだけで自動的に生活が保障されていったでしょう。『三つ子の魂百まで』で、お金を使わない体質のうえに、退職金もそこそこもらえるし、高度成長期に買ったマイホームの値段は何倍にもなっているし・・・だから彼らが持つ資産だけが膨らんでいるんです。
 ……
 大概の人は40年間サラリーマンを続けて日本経済と同じように右肩上がりの生活を送ってきたわけですから、自分がもらっている給料が紙くずになるなんてことは考えてもいないでしょう。でも状況が一変したのが2000年ごろですよ。小泉改革で経済がグローバル化して、銀行が潰れるといった考えられないことがバタバタ起きました。今までと違う流れが自分の周りに起きて、皆、不安でおろおろし始めたのです。
 五木 〝異常事態〟に対する実感がない。
 荻原 そうなんです。戦後日本は、政府が『経済』を守ってきましたでしょ。銀行を潰すと経済の循環が立たれてしまうから、破綻させないよう護送船団方式で守ってきた。それがグローバル化の波をモロにかぶって『貯蓄から投資へ』と、国がそれまでと逆のことを言い始めた。リスク感覚を持たない人たちが定年退職後に投資を勧められ、よくわからないまま、なけなしの退職金を持って銀行や証券会社に行って投資商品に手を出そうとする。カモになるのは当然ですよね。……」
    ・    ・    ・   
 日本が、将来、確実に襲ってくる深刻な人口激減の低迷期においても安定した安心できる社会を維持できるかどうかは、2030年頃までに、明治以来の人口爆発期インフレ経営モデルを人口激減期デフレ経営モデルに切り替えられるどうかにかかっている。
 それは、大企業であろうと中小企業であろう、大手銀行であろうと地方銀行であろうと、日本の閉じ籠もっている限り例外はない。
 優れた良い物を作って店頭に並べれば売れるという幸せな時代は、終わろうとしている。
 内需を支えた消費人口が減少するからである。
 内需はとは、労働人口ではなく消費人口である。
 不足する、労働人口は人口知能やロボットで十分に補えるが、消費人口は人間だけの行動である限り補えない。
 日本市場が求める日本国民消費者とは、日本民族日本人であって、外国人移民・難民の日本国籍所有者日本人ではない。
 不足する労働人口対策として外国人移民を増やした所で、日本人生産者が希望する消費人口は増えない。
 では、どうすれば良いか。
 既存の人口爆発期経営モデルをそっくりそのまま残した状態での少子高齢化による人口激減を迎えるという事は、人類史上初めての事である以上、暗中模索で、これをやれば必ず成功し乗り越えられるという優等生的方法はない。
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 企業の生き残り戦略は、少数精鋭である。
 如何にして即戦力の優秀な人材を獲得し、迅速に競争が激化している現場に投じられるかにかかっている。
 優秀な人材とは、別に日本人でなくてもかまわず、欧米人はもとより、韓国人、中国人、インド人であろうと構わない。
 企業が生き残るには、日本人にこだわる必要なない。
 もし不満に思うならば、日本人であるという自意識を捨て、外国の優秀・有能な人材に負けないだけの能力・技術を持つしかない。
 それこそ、明治から昭和初期の日本人のようにである。
 当時は、白人至上主義の人種差別が絶対正義とされ非白人の日本は、世界から袋叩きにされ苦境に立たされ、そしてついには戦争へと追い込まれた。
 現代は、昔ほどに人種差別は酷くない。
 昔は、如何に歴史的な大発見しようと、如何に人類に貢献を残そうと、ノーベル賞は受賞できず、後発の欧米人に功績を奪われた。
 現代は、まがりなりにも功績が認められてノーベル賞を受賞できるようになっている。
 日本人は、日本人であるから中国人、韓国人、インド人なの非白人に比べて優秀なのではなく、彼ら以上に努力してきたから優れていたに過ぎない。
 日本人が、日本人である事のみに頼って努力せず怠惰に過ごせば無能な人間でしかない。
 人口減少時代は、日本人にその非情を突き付ける。
 今と同じ、同レベルの生活を続けたければ、今以上の経済的努力が必要となる。
 経済大国日本人という特権意識を捨て、日本民族日本人である事を忘れない事である。
 何時まで続くか分からない人口激減による大氷河期を生き抜く為に、体力のある今、大氷河期に突入していない今のうちに準備を整えておく必要がある。
 人口爆発時代であれば、放蕩三昧の享楽に耽る個性豊かなキリギリス(セミ)の様な生活は許された。
 人口激減時代は、何が起きても堪えられ様に巣を強化しながら広げ、より多くの食料や必要物資を集められる様に仲間を増や、個性が目立たないアリの様な生き方をするしかない。
 人口激減時代では、人口爆発時代の経営モデル・ビジネスモデルは一切通用しない。
 人口激減時代を生きる日本人も、その事を覚悟して生活する必要がある。
   ・   ・   ・   
 やらねばならない事は、今以上の経済発展による収益の増加である。
 江戸時代の様な人口安定期であればあくせく働かなくてもよいが、人口激減期では介護者が急増する為に介護費を稼ぐ必要がある。
 経済発展を拒絶し、金儲けを忌避しては、面倒を見なければならない人が増え続ける日本は生き残れない。
 日本経済の発展、日本国家の増収増益、日本国民の生活を支えるような有望な科学技術に資金を集めてベンチャー起業しなければ、日本の未来はない。
 それが、2020年までの切羽詰まって日本の実情である。
 100のベンチャー起業の内99近くは失敗し、巨額の投資は無駄となり、金融恐慌のように多くの銀行や信金などは破産や休業に追い込まれる事になる。
 銀行に金を積み立てていた預金者は、国が保障する預金額以上の預金を失う。
 預金者は、利子や配当金で少しでも貯金を増やす事を望むが、ベンチャー起業などの博打的投資で貯金を失う事を望まない。
 銀行など民間金融機関は、預金者の金を預かり運用して利益を上げ利子を払う事が主業務業務である、成功の保障のない、担保のない、ベンチャー起業には融資ができない。
 ベンチャー起業は、日本資本で資金を調達できなければ外国資本から借りるしかない。
 外国で借金するという手法は、明治から昭和初期まで常識ある日本人起業家から嫌われ、そして世界史的知識を持った日本人指導者に拒否されて来た禁じ手である。
   ・   ・   ・   
 甚大で深刻な大被害が立て続けに襲い来る自然災害多発地帯で、発狂せず暴動を起こさず冷静に秩序を保ちながらしぶとく生きてきた日本民族日本人であれば、100年でも、200年でも、耐え忍んで乗り越えられると、信じるしかない。
 苦難・困難・苦境の日本民族日本人を支えるのは、日本天皇を中心とした揺るぎない日本の歴史と日本神道・日本仏教で育んだ柔軟な大和心・大和魂・日本精神である。
 つまりは、信じるしかないのである。
 日本の歴史に於いて、日本列島に絶望して中国大陸や朝鮮半島へ逃げ出した日本民族日本人は皆無である。
 例外は、日本天皇の支配を嫌ったエセ日本人だけである。
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 心すべきは、今の大人達である。
 自滅による地獄を子供や孫、その先の子孫に残すかどうかは、今、多少の余裕を持つ大人にかかっている。
 老い先短い大人が、子供や孫に対して、多額の借金や巨額の負債を残し食い逃げとして死んで行くか、皮以外にも多少の骨や肉を残して死んで行くか、である。
 現代日本には、自分だけが良ければそれでいいという前者が多い。
   




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捨てられる銀行 (講談社現代新書)

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地方銀行消滅 (朝日新書)

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  • 作者:津田倫男
  • 発売日: 2016/09/13
  • メディア: 新書