¥20〉─3─人口激減による地方衰退で苦境に追い込まれる地方銀行。利益6割減で共倒れの危機。~No.101No.102 

地方銀行消滅 (朝日新書)

地方銀行消滅 (朝日新書)

  • 作者:津田倫男
  • 発売日: 2016/09/13
  • メディア: 新書
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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 外国人移民を増やしても地方経済は再生できない為に地方銀行は救われない。
 地方経済を復活させ地方銀行を再生させる為には、日本民族日本人を増やすしかない。
 戦前の「産めよ殖やせよ」以外に日本民族日本人を増やす方法はない。
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 2018年5月21日 産経WEST[【金融異変〜地方銀行の苦悩(上)】シェアハウスで8600万円を借りた…アパートローンに群れた地銀 
 「お金はちゃんと返してもらわないと。自己破産はしないでくださいね」
 スルガ銀行の東京都内の支店。同行から借りた「アパートローン」といわれる賃貸住宅の購入資金の返済が行き詰まり、今年1月に金利の引き下げを求めにいった大阪市の男性会社員(32)に対して、行員はこう言い放った。
 男性は平成27年12月、東京都足立区の貸家物件を年収の10倍近い8600万円で購入した。貸家はシェアハウスで、共同のキッチンなどを設けることで間取りを節約し、小さな敷地でも、多くの居住者を住まわせられ、投資物件として注目を集めていた。
 足立区の物件を販売・管理したのは破綻したスマートデイズとは異なるシェアハウスを専門的に行う都内の不動産業者だったが、融資を扱っていたのはスルガ銀だった。
 物件を一括借り上げしてもらい、入居者がいなくても、家賃収入を保証する「サブリース」契約をこの業者と結んだ。得られる家賃収入は月56万円。年約8%の高利回りが購入の決め手だった。
 ところが、賃料の支払いが昨年12月に突然、停止した。不動産業者の資金繰りの悪化が原因。物件購入を後押ししていたスルガ銀が融資に慎重になり、新規物件の販売がふるわず、既存物件の運営でも賃料を賄えなくなった。スマートデイズの「かぼちゃの馬車」と同じような構図だった。
 「そもそも銀行が物件の収益性を見抜いて融資を見送っていれば、こんな事態は起きていないのではないか」
 男性会社員は、今後、29年続く月39万円の返済に途方に暮れる。スルガ銀には貸し手としての責任を問う声が上がっている。
貸し出し、大手より多く
 ただアパートローンに目を付けたのはスルガ銀だけではない。日銀の黒田東彦総裁が打ち出した異次元の金融緩和に伴う超低金利政策により、一般の住宅ローンや企業向け融資の利幅は縮小。新たな収益源として、多くの地銀が群がった。
 全国地方銀行協会に加盟する地方銀行第二地方銀行協会に加盟する第二地銀は現在、あわせて104行。アパートローン残高は14兆6675億円(3月末時点、当時は105行)と全体の6割を占め、大手行より多い。
 メガバンクが地方店舗の統廃合を進め、グローバル企業への融資など国際業務に傾斜する一方、金融庁は地銀を中小企業への支援などを通じて地方経済の活性化を促す担い手として期待を寄せる。しかし、理想と現実には溝がある。
 金融庁の調査によると、地域銀行(地銀、第二地銀、埼玉りそな銀)の平成29年3月期の不動産、貸家業への貸出額は前期より約3兆円増えた一方で、製造業向けは数千億円規模で減少。「アパートローンを含む不動産融資、高リスクの有価証券運用の拡大などで足元の利益を確保する動きが広がっている」と分析する。派手な宣伝を展開していた銀行カードローン融資の貸出残高も地域銀行が44・8%を占め、2兆円近くある。
 「中小企業の支援の費用を賄うためには結局、どこかで稼がなくてはならない。きれいごとでは済まされない」。ある金融機関のOBはこう語る。
 不適切な融資が発覚したスルガ銀。不祥事は同行だけの問題だが、超低金利時代の苦境の中で、異変が起きる地銀の姿をあぶり出している。
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 高い収益力で評価を得ていた地方銀行のスルガ銀(静岡県沼津市)が金融庁の検査を受け、シェアハウスをめぐる融資姿勢を問われる事態になっている。また日銀の黒田東彦総裁も再任され、超低金利の局面は長期化。人口減少とともに収益環境が悪化する中、地銀が直面する問題を探る−。」
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 5月22日 産経WEST「【金融異変〜地方銀行の苦悩(中)】再編でも「地銀」64行、利ざやとれない…共倒れに危機感
 今年4月11日、金融庁有識者会議が出した報告書に金融業界は驚いた。「地域金融の課題と競争のあり方」と題したリポートはこんな未来を予想していた。
 《和歌山、富山、島根など23県で地域銀行が消え、京都、愛媛、熊本など13道府県では1行なら存続、神奈川や愛知、大阪など10府県でも2行しか生き残れないかもしれない》
 46道府県別に存続可能な行数を試算したもので、将来の人件費やシステムの費用を収益で賄えるかなどを調べて導き出した。
 報告書は「人口減少が進む見通しで、本業である貸し出しの残高の大幅な減少が予想される」と指摘。地銀の存在意義を問いかける内容だった。「生き残れないと名指しされたエリアの危機感はさらに高まるだろう」。ある関西の地銀トップはこう語った。
合併、厳しい競争が後押し
 報告書が公表される10日前、バブル崩壊後の金融危機を経験し、再編を遂げてきた関西の地元3行による金融グループが誕生した。りそなホールディングス(HD)グループの近畿大阪銀行大阪市)と三井住友銀行子会社の関西アーバン銀行(同)、みなと銀行(神戸市)の3行を傘下に置いた関西みらいフィナンシャルグループ(FG)だ。資産規模は地域金融グループの中で全国6位に付けた。
 「とにかくできることからどんどん進めていきたい」。関西みらいFGの菅哲哉社長は昨年9月の経営統合の合意以降、3行トップが出席する毎月の委員会で、スピード感を持って合理化に向けた作業を進めるよう訴えてきた。
 今回の再編は、不良債権処理で苦しんだ金融危機当時とは事情が異なる。背中を押したのは、過当競争による共倒れへの危機感だ。
 「貸し出し利回りの低下で利ざやがとれない」。今月14日に出そろった近畿の主な地銀の平成30年3月期連結決算発表で、多くの担当者らはこう説明した。好景気にもかかわらず、大阪府を地盤とする近畿大阪、関西アーバン、池田泉州の3行が軒並み最終利益が減益。消耗戦に陥っている。
 資産や財務規模が比較的小さい第二地銀は、とりわけ先行きへの焦りは強い。
金利、人口減
 大正銀(大阪市)は、香川銀(高松市)と徳島銀(徳島市)を傘下に置くトモニホールディングス(HD)に28年4月に合流。32年以降とみられていた徳島銀との合併を1年前倒しで決めた。大正銀の吉田雅昭頭取は「日銀のマイナス金利政策が解除されても、低金利が続く。どうせやるなら早いほうがいいと判断した」と話す。
 バブル崩壊が始まりつつあった2年以降、合併を余儀なくされたのは経営基盤の弱い第二地銀が中心だった。この四半世紀あまりで68行から現在は40行(30年5月1日時点、日本総研調査)にまで減った。これに対して、国立銀行などをルーツとし経営体力のあった地方銀行は、第二地銀などをのみ込む形で存続。公的資金の投入を受けて、地域金融システムの要となってきたところも多く、2年当時と64行のまま変わっていない。
 そんな地方銀行も低金利と人口減少という市場の縮小に直面し、ようやく合併に動き出した。
 ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、傘下の親和銀(長崎県佐世保市)と、ライバルの十八銀(長崎市)との合併を計画。再編で長崎県内の貸出金シェアがほぼ独占されることを懸念する公正取引委員会の承認が得られず、審査が長引いているが、あきらめるつもりはない。FFGと十八銀は同県内の融資先1万6千社を対象に、ほかの金融機関に借り換えるかの意向調査を始めた。昨年5月に大口の数百社を対象に調査をしたのに続き、債権譲渡額の上積みを探るため対象を大きく広げた。債権譲渡は、顧客を失う苦渋の選択だが、身を切るほどに追い詰められているのが地銀の現実だ。」
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 5月23日 産経WEST「【金融異変〜地方銀行の苦悩(下)】利益6割減、1兆円割れ…超低金利、人口減のショック
 「アベノミクスの前に戻ったような感がある」
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の笹島勝人シニアアナリストは、地方銀行の平成30年3月期の決算の状況を総括してこう指摘した。
 訪日外国人の増加や好調な海外事業により、過去最高益を計上する企業が相次ぐ中で、地銀は景気低迷期に逆戻りした不況業種のようだ。
 上場している地銀(80社)の最終利益は、30年3月期は5年ぶりに1兆円を割り込んだことが同社の集計で明らかになった。
 6割の地銀が減益で、31年3月期も1兆円を下回ると予想され、さらに業績が悪化する恐れもあるという。
 地銀関係者の危機感は強い。地銀の業界団体「全国地方銀行協会」(地銀協)が16日に都内で開いた定例会見は、地銀の経営の深刻さを訴える場となった。
 「地域金融機関の収益力が低下していく中で、経済危機などのショックが起きたら、大きなダメージを被り、金融システム不安を惹起しかねない」
 佐久間英利会長(千葉銀行頭取)はこう述べ、十数年前に収束したはずの金融不安の再来の恐れにまで踏み込んだ。
 銀行の本業は本来、企業への貸し出しで雇用や設備投資を活発化し、経済成長の好循環を通じて利益を得ることだ。それが大規模な金融緩和策に伴う低金利の長期化で、利益を出しにくくなっている。収益をカバーしようとリスクの高い外国債券や株式の運用に傾斜。市場環境の急激な悪化で、しっぺ返しを受ける恐怖におびえているのが今の地銀の姿だ。
 手数料引き上げ
 大学生らの就職戦線にも異変はあらわれた。就職情報会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースの調査によると、31年卒業予定の男子文系では、ほぼ四半世紀ぶりに人気トップ10から銀行の名が消え、三菱UFJ銀行が13位に入ったのが最高位。メガバンク人工知能(AI)の導入を進め、大幅な業務量の削減を検討。地銀では、人口減少で今後、経営のかじ取りが一段と難しくなると見越している。自分の将来を懸けるに等しい就職先選びだけに学生は真剣。先行きへの不安が高まると、その会社や業界の人気が落ちる。
 本業の貸し出しによる業績が振るわず投資のリスクが高まる中、地銀はこれまで低い料金や無料で行っていたサービスの手数料の引き上げに手を付け始めた。
 昨年5月に三井住友銀が両替手数料を引き上げて以降、関西の地銀も追随。例えば、京都銀では紙幣を硬貨50〜100枚に両替する窓口の手数料を108円から3倍の324円にした。池田泉州銀の藤田博久頭取は「今後はコストに応じたサービスに見直しさせていただきたい」と理解を求める。
 窓口の手数料を引き上げれば、ATM(現金自動預払機)やインターネット決済などに利用者が流れ、店頭での業務量が減少。人件費などの経費削減の効果がある。料金のアップは利用者の痛手になるが、コストを度外視したような事業を続けることの方が、むしろ顧客に弊害をもたらすと金融庁はみている。
 無理な経営は、結果的にどこかにひずみが入る。
 それは営業ノルマの成績で従業員を縛りつけ、顧客に寄り添わない経営姿勢にもつながりやすい。シェアハウスの購入者へのずさんな融資が問題化したスルガ銀では、営業部門が融資の適否を判断する審査部門に圧力をかけていたことが明らかになった。
 金融庁は、地銀に対して、地域経済の発展を担う役割を期待しているが、理想にはほど遠い。超低金利時代は、地銀協の佐久間会長が指摘したように、地銀の経営体力を弱らせ、重要な経済インフラである金融システムにさえ影を落とし始めた。中小企業への貸し出しを通じて、新しいビジネスや事業承継を促す−。地銀は、当たり前の役割を果たすことができない経営の状況に苦悩している。」

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銀行員はどう生きるか (講談社現代新書)

銀行員はどう生きるか (講談社現代新書)

  • 作者:浪川 攻
  • 発売日: 2018/04/19
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