🌁19〉─3・A─若者の離職は不満型転職から不安型転職。人材より利益を優先する日本企業。〜No.80 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 バブル崩壊後、働き盛りの若者達は、大人達から「世界市場で戦う人材」ともてはやされたが、それはウソで、その実、人件費で経営を圧迫するリスク、お荷物とされ、リストラ・解雇され、身分が保障されていた正社員から人件費の安く使い勝手のいい派遣社員非正規社員契約社員の身分におとされた。
 そうした時代に学校を卒業した世代が、氷河期世代である。
 この時、主君の民に忠誠を誓って自己犠牲を厭わない滅私奉公の忠臣蔵は日本から消えた。
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 2023年2月15日6:48 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「人材を安く使い倒して利益を出してきた結果、日本は「危機的状況」に陥った
 出生数が急減している人口減少日本で各業種・職種に何が起こるのか? ベストセラー『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。
 【写真】衝撃…日本の総人口が2000人になる未来予測!
 今回、100万部を突破した『未来の年表』シリーズ著者の河合雅司さんと、4月の「こども家庭庁」発足に尽力し、長年日本の人口減少問題に取り組んできた衆議院議員野田聖子さんが、あまりに深刻すぎる少子化について縦横に語り合った。
 日本の少子化の「危機的状況」
 河合:2022年の出生数「80万人割れ」が確実になりました。結婚や子どもを持つことに対してネガティブなイメージを抱く若者が増えていますが、この危機的状況についてどうお感じになっていますか? 
 野田:まず、この国の「土台」が問題ですよね。昭和に大きな成功体験があったため、そこで思考が止まっている。「同一性」という特徴、年功序列、一括採用、終身雇用、長時間勤務、単身赴任……その残像が残っているような気がします。
 そのときにいい思いをした男性たちが今もトップに残っているし、人口の半分である女性の視点が活かされていない。女性の社会進出の動きや価値観も広がる中、働く女性の半数以上が非正規という現実があります。
 河合:非正規雇用は女性だけの課題ではありませんね。「若年者雇用実態調査」(2018年)によれば、20代後半から30代前半の男性の18%近くが正社員ではない働き方をしてます。
 多くの若者の雇用や収入が不安定で、日々の生活で精一杯で将来の生活が見通せない状況にあります。結婚や子どもを持つことを考える余裕すらないという人が少なくありません。
 野田:非正規雇用の方々は、なかなか中長期的展望が持てません。車が買えない、住宅ローンを組めない……そうした現実のなかで、「若い人たちが望んで晩婚化している」と考えるのは危険ですよね。
 河合:まったくその通りですね。政府や国会の少子化に関する議論を聞いていると、どうしても子育て時期の支援という話になりがちです。
 でも、子育てを終えた後の“もっと先の人生”にも不安があるんですよね。いまの若者には自身の老後のことを心配する人もいます。「生まれてくる子どもたちが生きる未来を考えると経済的に厳しくなりそうなので、産んだらかわいそうだ」といった声まで耳にします。少子高齢化の影響については、若い人ほどシビアに受け止めているんですよ。
 野田:昭和の時代は、子育てを支える手がありました。祖父母との同居も普通でした。しかし、いまは単独世帯が多く、なかなか厳しい状況です。
 河合:どの世代も1人暮らしが多くなり、全体の4割が単独世帯ですからね。親類が少ないうえに、近所づきあいを敬遠する人も少なくありません。
 国民生活基礎調査を見ると、現在、18歳未満の子どもがいる世帯は全世帯の5分の1でしかないんですね。子どもが2人以上いる世帯となるとさらに少数派です。子育てを支える手の有無どころか、肝心の子どもが本当に少なくなってきています。
人が「コスト」になってしまった時代
 野田:働いている人が子どもを持つときに手当てがあまり出なくて、子どもを持つことで女性のキャリアがスローダウンする。企業が見ないふりをすることが半世紀続いています。
 これはやはり日本の生産性を人件費に追い求めた結果なのかなと。リストラとか見かけの益出しをしてきたわけですが、それは間違っていたと認めていかなければいけません。
 河合:人材をなるべく安く使い倒して利益を出す――そんな経営者が有能で素晴らしいという価値観は捨てるべきです。こうした経営者は、社員を「コスト」としか見ていない。
 人材育成に投資していかないと個々のスキルが上がらないし、スキルが上がらないと低賃金になっていく……そうした悪いループが起きています。
 野田先生と私は同世代ですが、我々の世代が就職した1980年代半ばの企業はOJTなど職場での教育がしっかり機能しているところが少なくありませんでした。
 転職する人は珍しく、企業としては終身雇用なので社員教育によってそれぞれの「企業の色」に染め上げようとしたということでもありましたが、みんな上司や先輩から仕事を叩き込まれ、年功序列である程度までポジションが上がっていくというのが当たり前でしたが、いまは状況が全く異なります。
 野田:その頃と比べると、研修以前にそもそも男女ともに正社員が減っていますよね。
 河合:そうですね。非正規雇用が増えるのに比例して、正社員に対する社員教育も熱心でなくなった印象がありますね。
 コンピュータが普及し、かつては人間が経験を積むことで得られてきたスキルを簡単に手にできるようになったことも多分に背景としてあるのでしょう。スキルの向上は機械の性能アップに任せ、一部の社員を除いて大半の人はマニュアル化した仕事を着実にこなしてもらえれば効率的に利益を上げられるとなったのです。
 この結果、自分の成長が見込めない若い人は簡単に転職するようになり、一方の企業は教育してもすぐに辞めてしまうということで人材投資を費用対効果で考えるようになりました。多くの社員にスキルの向上を求めないのだから、人材教育の投資もそこそこに行えば十分ということです。
 これでは、賃金も上げる必要がないという発想になりますよね。非正規問題ばかり注目されますが、正規雇用者も賃金上昇を抑え込まれてきたので、これからは老後資金を十分に貯め切れずに定年を迎える人が増えますよ。人を「コスト」ととらえてきた経営が社会にもたらすツケは大きいですね。
 利益が出ても投資をしない
 写真:現代ビジネス
 野田:国会でも賃金の話ばかりで生産性をどう上げるかはほとんど議論されません。でも、少なからず日本経済は成長しているなかで、利益はどこに行っているんですか? 
 河合:利益の多くは企業の内部留保に行っています。総じて投資意欲が弱いですから。
 コロナショックが襲ってきても内部留保を取り崩して何とかやっていけた大企業が多かったのは皮肉でしたね。利益を蓄えることに一生懸命で社員の賃金や教育費用に回すこともしなければ、チャレンジングな先行投資や大規模な設備投資もしない。
 野田:少し前――自民党が野党の時――に、時の経済界からとにかく為替を円高から円安にしてくれと要請がありました。当時76円くらいだったんですが、100円であれば利益が出るということで、どうにか円安になりました。それで企業が利益を上げて税金を払えるようになったんですが、下請け企業が削られていたんです。本当に驚きました。
 河合:バブル時代に「財テクだ」と言って、本業そっちのけで資産運用や投機によって利益を上げる企業が多かったですが、そうした成功体験が忘れられないのかなとの印象を受けるお話ですね。
 すべての企業がそうだとは言いませんが、バブル後も資産運用やコストカットで利益を生み出すことに懸命な企業が少なからずありました。社員をコストと認識し非正規雇用を増やしてしまで人件費を削ったのも同じ発想からです。
 それで結果を出せたものですから少子高齢化が進んでいるというのに構造改革が進まず、新商品の開発に全力投球もしなくなってしまった。
 これでは世界を席巻するような画期的なモノが誕生するはずもありませんよね。そうしているうちに30年経ってしまいました。
 野田:賛否ありますが、ユニクロが賃金を最大4割アップするという方針を表明しました。こうして「賃上げができる」ということを何社かでも示してくれれば、日本はまだ良い方向に向かうかもしれませんね。
 河合:人口減少社会において必要なのは、全体的なスキルの底上げです。国内マーケットが縮小し働き手が減っていく中で、各企業とも高付加価値化と生産性の向上が欠かせません。
 これまでと同じことをやっていたのではうまく行かないわけだから、過去の成功体験をベースにしたマニュアルではもう対応できません。新たな構想力を磨くべくしっかりと人材投資していくことが不可欠なんです。
 変革には痛みが伴うでしょうが、人口が減少しても経済成長を実現できさえすれば、賃金は現在より上昇します。そうなれば、若い世代も結婚や妊娠・出産を考える余裕が生まれてきますよね。日本にはまだまだ底力も希望もあると信じています。
 野田 聖子/河合 雅司(作家・ジャーナリスト)
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 現代の若者には、日本の伝統文化であった愛社精神はない。
 その原因を作ったのは、日本人人材は経営悪化・国際競争力低下リスクとしてリストラし、正社員から契約社員派遣社員非正規社員に切り替えた産業界・経済界、会社・企業である。
 氷河期世代と言われる日本人は、「大人」と言われた経済学者と大学、エコノミストとメディア、経営者・政治家・官僚に騙され続けている犠牲者である。
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 3月19日 MicrosoftStartニュース 集英社オンライン「「職場がゆるくて不安」不満型転職から不安型転職へ。会社を辞める若者たちが抱える新しい不安の正体とは
 オピニオン 火曜日
 現代の若者たち(特に2010年代後半から新入社員として働いている人々)が置かれている状況を正確に伝えた一冊、『ゆるい職場 若者の不安の知られざる理由』(中公新書ラクレ)から、若者たちが抱える不安の正体について、一部抜粋し紹介する。(サムネイル、トップ画像/撮影◎中央公論新社写真部)
 若者と職場の目指すべき新しい関係性はこちらから(3月14日 11:40公開予定)
 若者の「不安」の正体
 2015年の若者雇用促進法や、2019年の働き方改革関連法により、2010年代後半以降に入社した新入社員の職場環境は、特に現在管理職にあたる40~50歳代が入社した環境とは全く異なるものになっている。
 言うまでもなく、労働時間の削減や厳しい職務内容の低減など、明らかに働きやすくなっているのだ。当然離職率は下がるものだと考えられるが、驚くべきことに離職率は年々上がり続けている。
 なぜ職場環境が良くなっているのに若者たちの離職率は下がらないのか、彼らが何に不安を感じているのか、大手企業の新入社員を取り巻く職場環境が変化している可能性について、調査結果から整理した。
 結果として明らかになったのは若者たちの認識上、現在の職場環境については「比較的負荷が低く、職場環境もサポーティブで、想像を悪い方向へ裏切られることも少なく、会社のことは以前の新入社員より好き」であるという相対的傾向が見られる。
 こうした結果は、なぜ新入社員の36.4%が「ゆるい」と感じているのかという疑問に対して、その理由を饒舌(じょうぜつ)に述べその実像を明らかにしている。
 加えて判明したのは、大手企業の新入社員の多くが同時に「ストレス実感は決して低くなく、自分は別の会社や部署では通用しなくなるのでは、などの"不安"を抱えている」ことだった。
 「ゆるい」のに「不安」、という状況が矛盾しているように感じられるだろう。しかし、職場を「ゆるい」と感じている大手企業の新入社員の方が自身のキャリアの不安を感じているという明確な関係も発見されているのだ。
 職場の「ゆるさ」が生んでいる不安の代表例としてひとつの集計を掲示したい(図1)。
 図1 「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」割合(職場の「ゆるさ感」別) ※リクルートワークス研究所「大手企業における若手育成状況調査」(2022年)。
 © 集英社オンライン 提供
 「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」という項目に「強くそう思う」「そう思う」と回答した者の合計は、職場を「ゆるいと感じる」と回答した新入社員が非常に高い結果となり、合わせて62.6%に達している。
 特に、「強くそう思う」については23.7%であり、圧倒的に高い割合である。このように、職場のゆるさは新入社員のキャリア不安に直結している。
 ただしゆるいと感じている新入社員はその会社のことが嫌いというわけではない(図2。「ゆるい」と感じている職場は、上司・先輩の支援が手厚く、労働時間が短く負荷が低い傾向が見られるため、当然と言うべきかもしれない。
 図2 職場の「ゆるさ感」別所属企業の評価点(10点満点)
 © 集英社オンライン 提供
 10点満点での自社の評価点を出してもらい、職場に対するゆるさ感別に平均点を示すと、最も評価点が高いのが「ゆるいと感じる」新入社員である。
 著しく労働環境・条件が悪い回答者が一定数含まれると考えられる「ゆるいと感じない」が一番低いことも頷けるが、いずれにせよ成長できるかどうかと会社が好きか嫌いかは全く別であることが、若者の現状への理解を非常に難しいものとしている。
 不満型転職から不安型転職へ
 こうした若手の厄介な状況は実は非常にシンプルな図式で整理できることを、本章の多くの調査データの最後に示そう。職場を「ゆるい」と感じている新入社員が、離職意向が強いという事実である。
 図3 「ゆるい職場」と就労継続意識(%)
 © 集英社オンライン 提供
 図3からは次のことがわかる。
 ① 現在の会社との関係を2,3年程度の短期的なものと最も考えているのは、職場が「ゆるいと感じる」新入社員である。「すぐにでも退職したい」が16.0%、「2,3年は働き続けたい」に至っては41.2%に達しており、合わせて57.2%がごく短い期間の在職イメージしか持っていない。
 ② 「すぐにでも退職したい」については、職場を「ゆるいと感じない」新入社員が最も高く、29.7%であった。これはいわゆるブラック企業、労働環境・条件の良くない状況で働いている新入社員の意向が反映されているものと考えられる。
 ③ 「2,3年は働き続けたい」については、職場が「ゆるいと感じる」新入社員が最も高く、実に41.2%に達している。
 なお、全体では、16.2%が「すぐにでも退職したい」、28.3%が「2,3年は働き続けたい」、15,6%が「5年は働き続けたい」、13,7%が「10年は働き続けたい」、5,4%が「20年は働き続けたい」、20,8%が「定年・引退まで働き続けたい」と回答していた。
 全体の結果でも44,5%が「すぐにでも」「2,3年程度で」退職したいと答えており、こうした流れは終身雇用への信用とそれを前提に就職するという認識が大手新入社員のなかで既に崩壊したということを示している。
 そして注目すべきは、このなかで、職場が「ゆるいと感じる」新入社員では、合わせて57.2%が「すぐにでも」「2,3年程度で」退職したいと、その数字が跳ね上がることである。
 つまり全体を総合すれば、「会社のことはゆるくて好きだが、キャリアは不安なので、退職を考えている」という若手の存在が浮かび上がる。「職場がきつくて辞める」者のグループも存在しているが、現代における新しい状況は「職場がゆるくて辞める」というグループを生み出したのだ。
 私はこの「職場がゆるくて辞める」状況を、「不満型転職から、不安型転職へ変わった」と理解している。データからは不満は相対的にはかなり減少していると言って良いだろう。そもそも不満の源泉になってきた、職場環境や上司との関係性による負荷、労働時間の長さなどは相当程度改善されたことは明らかで、リアリティショックも低減している。
 このため、若手になればなるほど、初職の企業への評価点が上昇している傾向があることはすでに示した通りだ。かつての日本企業で当たり前にあったネガティブな感情、会社や職場への「不満」はなくなりつつある。しかし問題は、「不安」が高まっているということであり、特にキャリア不安にその源泉がある可能性はすでに指摘した。
 これが、職場が嫌で上司と合わないことが「不満」で転職する不満型転職から、不安型転職へ変化していると言った現状である。
 不安をどうマネジメントするか
 「不満」をマネジメントするのは実は簡単だった。会社や上司に対する不満を晴らすためには、同僚や同期と飲みに行って愚痴を言い合えばたちまちその何割かは解決していたかもしれない。
 はたまた、上司や先輩が不満を抱えていそうな部下を察して「一杯いくか」と1対1で飲みに行き、腹を割って話せば、若手の悶々としていた悩みもどこかへ行ってしまっていたかもしれない。
 上司の指示や叱責が理不尽で納得がいかなくて、それでも飲み込んで働いている若手にはこうした機会こそが解決手段となりえた。
 深夜土日まで自分だけが残業して不満を溜めていても、上司から「見てるぞ」「頑張ってるな」と言われればその一言で震えるほど嬉しかった、という経験がある読者も多いのではないか。
 しかし、「不安」、特にキャリアの不安は別だ。
 この職場で仕事をしていたら転職できなくなっていくのではないか、同世代と比べて差をつけられているのではないか。こうした不安を抱えている若手がいるとしよう。
 上司が一緒に飲みに行く、というこれまでの不満解消手段は何の役にも立たないと想像できる。
 同僚と愚痴りあって飲み明かしても、今日もまた3時間もいつもと同じ話をしてしまった、と非生産的に感じるだけであろう。
 また、上司から「見てるぞ」と言われたところで、その瞬間は嬉しいだろうが、上司が少し見て評価してくれたところで、労働市場における自分の価値が上がるわけではない。
 不満解消型のマネジメント・コミュニケーションは、このキャリア不安の問題に対して何の有効性もない。
 企業や上司には、若手のキャリア不安をいかにして解消するのか、というこれまでに日本企業が直面したことのない新たな課題が発生しているのだ。
 ロールモデルになりえない上司・先輩
 前述したように、大手企業における大卒新卒の早期離職率は近年、決して下がってはおらずむしろ上がっていた。そしてその原因はキャリア不安が高まるなか、それを放置せざるをえない組織側にある。
 ただ、若手のキャリア不安を現場の管理職層がマネジメントできないことの原因は、管理職層のマネジメントスキルを上げられないからだ等という単純な話ではない。
 そもそも、上司が若手のロールモデルになりえないという構造的問題に一因があるためだ。本書でもたびたび例に出しているが、今の40、50歳代の大手企業管理職層の新入社員時代の職場環境と、現代の「ゆるい職場」では笑ってしまうほどの違いがある。
 管理職層の新入社員時代の話を聞いても、「また武勇伝か」くらいにしか感じられない若手のことを誰が責めることができようか。
 事業部対抗野球大会があり、日曜日に練習をし、「遊びじゃねーんだよ! これで仕事を学ぶんだよ! と真剣に怒られた」(大手総合電機メーカー、50代)といった話を聞いた若手が、おとぎ話の類だと感じることを誰が否定できようか。
 当時と今とでは職場環境が違いすぎ、その若手時代の成長過程をストレートに参考とすることはほとんど不可能だろう。
 さらに、企業との関係性を短期的なものとして考える若手にとっては、その会社一筋で出世してきた人の多い大手企業の管理職層は自分の職業人生のモデルとはなりづらい。
 実際に新入社員に「ロールモデル」の話を聞くと、驚くほどにみな、数年程度年上、特に2,3年上の社員の話をする。会社の採用パンフレットでもエース級と目される部長や課長のキャリアパスも掲載している企業が多いが、実はあまり読まれていないのだ。
 最後に、ライフスタイルの考え方の違いも大きい。先述の調査で若手に「プライベートを大事に生活したい」か「仕事をメインに生活したい」か問うたところ、前者が68.7%と3人に2人以上であった。
 現代では性別に関わらず、仕事は人生の一部分に過ぎないという認識は若手の普遍的な価値観となっており、「黙って職場の上司のやり方についていこう」とはならない。
 育つ環境が違いすぎ、2,3年上をモデルとし、ライフスタイルの考え方も違う。もはや上司・先輩は、若手のロールモデルにはなりえないのだ。
 文/古屋星斗
 若者と職場の目指すべき新しい関係性はこちらから(3月14日 11:40公開予定)
 ゆるい職場 若者の不安の知られざる理由
 古屋星斗
 「職場がゆるくて不安」不満型転職から不安型転職へ。会社を辞める若者たちが抱える新しい不安の正体とは
 © 集英社オンライン 提供
 2022年12月8日発売
 990円
 新書版 256ページ
 ISBN:
 978-4121507815
 「働きやすい会社」を、なぜ若者は辞めてしまうのか?
 新時代の、若者・仕事・日本社会を紐解く――
 「今の職場、“ゆるい”んです」「ここにいても、成長できるのか」。そんな不安をこぼす若者たちがいる。2010年代後半から進んだ職場運営法改革により、日本企業の労働環境は「働きやすい」ものへと変わりつつある。しかし一方で、若手社員の離職率はむしろ上がっており、当の若者たちからは、不安の声が聞かれるようになった――。本書では、企業や日本社会が抱えるこの課題と解決策について、データと実例を示しながら解説する。
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