🚱20〉─2─小売業界最終戦争。イトーヨーカドーが「32店舗の大量閉鎖」へ。~No.86 

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 2023年3月15日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「イトーヨーカドーが「32店舗の大量閉鎖」へ…そのウラで始まる「小売業界最終戦争」の“過酷な実態”
 加谷 珪一 
 総合スーパー「イトーヨーカドー」が店舗の大量閉鎖を決断した。同店の不振は以前から指摘されてきたことであり、大きな驚きはない。だが今回の同社の決断は、本格的な人口減少社会を前に、小売りビジネスが、生き残りをかけた最終戦争に突入した現実を端的に示している。
 セブンにとって「総合スーパー」とは?
 セブン&アイ・ホールディングスは2023年3月9日、傘下の総合スーパー「イトーヨーカドー」の店舗を今後3年間で32店減らすと発表した。現在の店舗数は125店舗だが、3年間で93店舗に減少することになる。
 同社が総合スーパー事業の再構築を検討したのは今回が初めてではない。同社にとってスーパーは中核事業だったが、1974年に開始したコンビニ事業が急拡大し、グループ全体の収益をコンビニが支えることになった。総合スーパーの業態としては、買収などを通じて規模拡大を図ったイオングループと比べると競争力を欠いており、低収益が続いてきたのが現実だ。
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 市場からは幾度となくコンビニ事業への集中を求める声が上がったが、そのたびに同社はこうした圧力を退けてきた。その最大の理由は、イトーヨーカドーは同社の祖業であり、創業家にとって思い入れの深い事業だったからである。
 イオンやセブン&アイ・ホールディングスは、日本の高成長を背景に「価格決定権をメーカーから消費者に取り戻す」という、いわゆる流通革命の担い手となった企業である。
 メーカーから価格決定権を奪い取るには、大量調達による価格交渉が必須となり、店舗の大規模化がそのカギを握っていた。各社は米国のウォルマートなどを参考に、店舗を大型化する戦略を描いていたことから、総合スーパーはまさに戦略の中核となる店舗であった。イトーヨーカドーはもともと浅草の洋品店「羊華堂」が発祥である。その後、スーパーとして再スタートし、同社の発展を支えてきた経緯があり、総合スーパーは企業DNAそのものといっても過言ではない。
 米国では大成功を収めた流通革命だが、日本の場合、大型店舗を規制する大店法の影響もあり、店舗の大型化が思ったように進められなかった。同社はこうした現実を前に、コストが高い小規模店舗を多数、フランチャイズで展開するコンビニ事業に舵を切り、結果としてこれが大成功した。だがコンビニ事業は、高いコストを支えるため定価販売を余儀なくされ、消費者に安い商品を届けるという「流通革命」の基本戦略とは少なからず相反する業態でもあった。
 セブンが日本を代表する小売企業となったのは、総合スーパーとコンビニという、異なる業態を抱え込むというある種の矛盾が要因となっており、それゆえにスーパー事業からの訣別が遅くなった面がある。
 人口減少という「逆風」
 これまで、投資ファンドが繰り返し事業の再構築を求めてきたこともあり、今回の決断に至ったわけだが、4月からは創業家出身の伊藤順朗取締役が代表権を持つことが決まっている。奇しくもイトーヨーカドーの創業者である伊藤雅俊氏が3月10日に死去するなど、時代の変化を象徴する出来事が相次いだ。祖業である総合スーパー事業の再構築を創業家出身の役員が担うという人事からも、今回の本気度がうかがえるといってよいだろう。
 閉鎖対象となる具体的な店舗名は明らかになっていないが、今後、イトーヨーカドーは首都圏などへの店舗集中化をさらに進めていくと予想される。もともとイトーヨーカドーは地方よりも首都圏に強いスーパーではあったが、リストラ後はさらにその傾向が顕著となるだろう。
 同社はスーパー事業の再構築とコンビニ事業への集中化を行うことになるが、事態の打開は容易ではない。その理由は急激な人口減少によって、国内の小売市場そのものが、今後、急ピッチで縮小することが確実視されているからである。
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 厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の出生数は前年比で5.1%減の79万9728人となり、比較可能な1899年以降、初めて80万人を割った。これは政府が推計していたペースより11年も早く、人口減少が想定外の速さで進んでいることを示唆している。
 一方、総務省が発表した2022年の人口移動報告によると、東京都の転入超過が再び増加しており、これまで続いてきた東京一極集中の傾向が再び強まったことが確認された。
 人口が減少すると、各地で商圏を維持できない地域が出てくるため、人は自然と都市部に移動することになる。つまり人口減少と都市部への集約化というのは、同時発生的に起こるものであり、今後は、その動きがいよいよ加速することになる。今回、同社は総合スーパー事業の縮小と都市部への店舗集中を決断したわけだが、これは都市部における小売点の競争がさらに激しくなることを意味している。
 小売の「業態の区分」は消滅した
 先ほど、コンビニは定価販売を行い、スーパーは大量調達による安値販売を行う業態であると説明したが、その図式はすでに崩れつつある。本来、店舗の立地や顧客層においてスーパーとは差別化されているはずのコンビニだが、市場縮小を前に定価販売を取りやめ、利益率を下げてでもスーパーから顧客を奪おうとしている。
 さらに医薬品と生活用品に特化していたドラッグストアが生鮮食品や総菜などを本格的に取り扱うなど、スーパーやコンビニに対して正面から宣戦布告を行っている。スーパー、コンビニ、そしてドラッグストアという業態の違いはもはや完全消滅しつつあるのが現実だ。
 地方では急激な人口減少によって商圏が縮小し、減っていく顧客をめぐって各社が業態を超えた獲得合戦を繰り広げている。一方、人口集約が進む都市部では、やはり各業態が入り乱れる形で、地方から流入してくる顧客を奪い合う構図が見て取れる。
 人口が減って市場が縮小する以上、他の業態から顧客を奪う以外に自社が成長する道は残されておらず、日本の小売業界は生き残りを賭けた最終戦争に突入している。業界のリーダーでもある同社のスーパー事業の縮小は、その号砲と考えてよいだろう。
 もっともセブンについて言えば、飽和状態の国内市場に対して、海外事業は順調な伸びを示している。同社は米国でもコンビニ事業を手がけているが、2021年には2兆3000億円を投じてガソリンスタンド併設型のコンビニ「スピードウェイ」を買収した。これによって2022年2月期の決算では、営業収益の6割を海外事業が生み出す状況となっており、この比率は今後、さらに上昇すると予想される。
 セブンのスーパー事業縮小と海外強化戦略が明らかになった今、イオンなど国内主体の競合他社が急ピッチな人口減少を前にどのような戦略を描くのか、加えて、あらたに参戦してきたドラッグストア業界に対して、スーパーやコンビニがどう立ち向かうのか注目したい。
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